更新日:2025.12.18

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急な予約キャンセルが発生し、「キャンセル料の請求書はどうやって書けばいいの?」「失礼のないようにメールで伝えるには?」とお悩みではありませんか?この記事では、法的に有効なキャンセル料の請求書について、書き方を項目別に分かりやすく解説します。当日の無断キャンセルや支払いが遅れている場合など、シーン別の請求メール例文も豊富にご紹介いたします。万が一支払われない場合の対処法まで、キャンセル料の請求に関するあらゆる疑問をこの記事一本で解決します。正しい知識と書式に沿って請求することで、取引先との不要なトラブルを防ぎ、スムーズな回収を実現しましょう。
キャンセル料の請求書を作成する前に、まずその前提となる基本的な知識を整理しておくことが重要です。法的な根拠や請求できる範囲を正しく理解することで、取引先との不要なトラブルを避け、スムーズな請求業務につながります。
ここでは、キャンセル料を請求する上で必ず押さえておきたい3つの基本ポイントを解説します。
キャンセル料の請求は、法律で認められた正当な権利です。根拠となるのは、予約や申し込みの時点で成立する「契約」です。顧客がサービスを予約した瞬間に、事業者と顧客の間にはサービス提供に関する契約が結ばれたとみなされます。
顧客の都合でキャンセルする場合は、この契約を一方的に解約する行為とみなされ、民法上の債務不履行に当たることがあります。その結果、事業者が受ける損害を補う目的で請求するのがキャンセル料であり、性質としては「損害賠償金」にあたります。
ただし、キャンセル料を請求できるのは、あらかじめキャンセルポリシーを明示し、顧客がその内容を確認・同意していることが前提です。予約フォームや契約書にキャンセル規定をしっかり記載し、いつでも確認できる状態にしておくことが重要です。
さらに、相手が消費者の場合には消費者契約法が適用されます。この法律では、事業者が受ける「平均的な損害額」を超えるキャンセル料は無効とされています。実際の損害より著しく高いキャンセル料は請求できないため、金額設定には注意が必要です。
キャンセル料として請求できる金額は、事前に決めておくキャンセルポリシーの内容で決まります。ポリシーにはいつから、どのような条件で、いくらのキャンセル料が発生するのかを具体的に記載しておく必要があります。
実際に請求できる金額は、キャンセルによって失われた利益(本来得られたはずの売上)や、すでにかかった材料費・人件費などをもとに、常識的に妥当な範囲で設定します。業界やサービスによって相場は異なりますが、一般的には予約日が近づくほどキャンセル料が高くなる仕組みが多いです。
自社のサービス内容や実際に発生する損害に合わせて、合理的で明確なキャンセルポリシーを策定しましょう。
キャンセル料がいつから発生するかは、キャンセルポリシーの規定によって決まります。例えば「ご利用日の7日前からキャンセル料が発生します」と定めている場合、その期間に入ってからのキャンセル連絡に対して請求が可能になります。
判断の基準となるのは、原則として「相手からキャンセルの意思表示が事業者に到達した日時」です。具体的には、以下の時点が基準となります。
特に、営業時間外の連絡や休業日の連絡の取り扱いについては、事前にルールを明記しておくとトラブル防止につながります。「営業時間外の連絡は翌営業日の受付とみなす」といった一文をポリシーに加えておくとよいでしょう。また、連絡がなく予約日時に現れない「無断キャンセル(No Show)」の場合は、当日キャンセルと同様に扱い、規定に基づき100%の請求を行うのが一般的です。
キャンセル料の請求書は、取引先に明確な情報を伝えるための重要な書類です。初めて作成する方でも迷わないよう、基本的な書き方と必須項目をテンプレートに沿って解説します。各項目で記載すべき内容とポイントをしっかり押さえましょう。
請求書を一から作成するのは手間がかかります。効率的に作成するために、無料のテンプレートを活用するのがおすすめです。
まずWordを開き、その他のテンプレートを選択します。
次に左上の検索バーに請求書と入力すると、様々なタイプの請求書が表示されます。ご自身の使いやすい形式のものをダウンロードし、本記事で解説する項目を参考に内容を埋めていきましょう。
請求書が誰に対するものかを明確にするため、宛名を正確に記載します。
会社名、部署名、担当者名を記載するのが一般的です。敬称の使い分けに注意しましょう。
請求書の発行日と管理番号は、書類を管理する上で重要な項目です。
発行日
請求書を作成した日付を記載します。取引先との間で締め日が決まっている場合は、それに合わせるのが通例です。「◯年〇月〇日」のように年月日を正確に記入しましょう。
請求書番号(管理番号)
必須ではありませんが、設定しておくことを推奨します。請求書を連番で管理することで、自社での管理がしやすくなるだけでなく、取引先からの問い合わせ時にもスムーズなやり取りが可能になります。
誰が請求書を発行したのかを明確にするため、自社の情報を記載します。
以下の情報を漏れなく記載しましょう。
請求する金額の総額を、誰が見てもわかるように明確に記載します。
通常、「ご請求金額」「合計金額」などの見出しとともに記載します。金額は算用数字で「¥」マークを付け、3桁ごとにカンマ(,)を入れるのが一般的です。
何に対するキャンセル料なのか、取引先が正確に把握できるよう詳細を記載します。表形式(テーブル)にすると見やすく、分かりやすくなります。
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品名・サービス名 |
数量 |
単価 |
金額 |
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◯年〇月〇日 貸会議室A ご予約キャンセル料(50%) |
1 |
50,000 |
50,000 |
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〇〇セミナー参加予約 キャンセル料(100%) |
1 |
10,000 |
10,000 |
請求金額を振り込んでもらうための口座情報を正確に記載します。誤りがあると入金が遅れる原因となるため、何度も確認しましょう。
口座名義は、会社名や屋号を正確に記載してください。
いつまでに支払ってほしいのか、支払期限を明記します。
取引先との契約やキャンセルポリシーで定められた期日があればそれに従います。特に定めがない場合は、「発行日より1ヶ月以内」や「翌月末」など、一般的な期限を設定します。
「〇年〇月〇日までにお振込みをお願いいたします。」のように、具体的な日付を記載するのが最も確実です。
キャンセル料の消費税の扱いは、その内容によって異なります。
本来提供されるはずだったサービスの対価として受け取る場合は課税対象、逸失利益に対する損害賠償金としての性質を持つ場合は不課税となることがあります。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した請求書を発行する場合は、通常の請求書項目に加え、以下の記載が必要です。
請求書の主要項目以外に伝えておきたい事項は、備考欄に記載します。特に振込手数料の負担については、明記しておくとトラブル防止につながります。
【備考欄の記載例】
キャンセル料の請求書をメールで送付する際は、相手に不快感を与えないよう、丁寧で分かりやすい文面を心がけることが大切です。
ここでは、予約のキャンセルが発生したさまざまな状況に応じたメールの例文を紹介します。コピーして自社の情報に書き換えるだけで、すぐに利用できます。
まずはキャンセル連絡への感謝を伝え、事務的かつ丁寧な姿勢で対応することが重要です。キャンセル料が発生する旨と、その根拠となる利用規約やキャンセルポリシーを明確に伝えましょう。請求書を添付していることも忘れずにご案内します。
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当日・直前キャンセルへの請求メール例文 |
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件名 |
【株式会社〇〇】ご予約キャンセルのご確認とキャンセル料のご請求について |
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本文 |
[お客様名]様 |
無断キャンセル(ノーショー)の場合、お客様が予約を失念していた可能性も考えられます。高圧的な態度ではなく、まずは安否や状況を気遣う一文を添えることで、相手も冷静に対応しやすくなります。状況確認とキャンセル料の案内を丁寧に行いましょう。
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無断キャンセルへの請求メール例文 |
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件名 |
【株式会社〇〇】[予約年月日]のご予約に関するご確認 |
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本文 |
[お客様名]様 |
支払期限が近づいている、または過ぎて間もない場合は、単純な催促ではなく「ご確認のお願い」という形で連絡するのが適切です。相手が支払いを忘れているだけの可能性を考慮し、丁寧な表現を心がけましょう。前回の案内日を記載すると、より親切です。
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支払期限の再案内メール例文 |
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件名 |
【再案内】キャンセル料のお支払いに関するご確認(株式会社〇〇) |
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本文 |
[お客様名]様 |
再案内後も入金が確認できない場合は、より明確な催促メールを送ります。感情的にならず、支払期限が過ぎている事実と請求内容を淡々と伝えましょう。行き違いの可能性にも触れ、相手が返信しやすいように配慮することも大切です。
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支払催促メール例文 |
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件名 |
【重要】キャンセル料のお支払いについてのお願い(株式会社〇〇) |
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本文 |
[お客様名]様 |
キャンセル料の請求は、時にデリケートな対応が求められます。事務的な手続きとして請求書を送るだけでなく、相手との良好な関係を維持するための配慮も重要です。
ここでは、請求書を送付するタイミングから、万が一支払われない場合の対処法まで、知っておくべき注意点とビジネスマナーを解説します。
キャンセル料の請求書は、原則として「キャンセルが確定したら速やかに」送付するのが基本です。時間が経過すると、相手がキャンセルした事実を忘れてしまったり、支払いの優先順位が下がってしまったりする可能性があるためです。
具体的には、キャンセルが発生してから1週間以内を目安に送付すると良いでしょう。。
請求書を郵送する場合、請求書だけを封筒に入れるのはビジネスマナーとして不適切です。必ず送付状を添えましょう。送付状には、何の書類を、なぜ送ったのかを明確に伝える役割があります。
送付状には以下の項目を記載するのが一般的です。
〇年〇月〇日
株式会社〇〇
経理部 御中
(ご担当者様名)
〒XXX-XXXX
東京都〇〇区〇〇1-2-3
株式会社△△
担当:□□ □□
電話:03-XXXX-XXXX
件名:キャンセル料請求書ご送付のお知らせ
拝啓
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、X月X日付でキャンセルのご連絡をいただきました「〇〇サービス」のキャンセル料につきまして、下記の通り請求書を同封いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
お忙しいところ恐縮ですが、請求書に記載の支払期限までにお手続きいただけますと幸いです。
本件につきましてご不明な点がございましたら、お手数ですが担当の□□までご連絡ください。
今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
敬具
記
同封書類:
キャンセル料請求書 1通
以上
請求書を送付し、支払期限を過ぎても入金がない場合は、段階的に対応を進める必要があります。感情的にならず、冷静かつ事務的に手続きを進めることが重要です。
まずは、支払忘れの可能性を考慮し、メールや電話で状況を確認します。「〇月〇日期限のキャンセル料のお支払いについて、ご入金の確認が取れておりませんが、状況はいかがでしょうか」といった形で、丁寧な言葉遣いで連絡しましょう。この段階では「催促」ではなく「確認」という姿勢で接することが大切です。行き違いで既に入金手続きが済んでいる場合もあります。
電話やメールでの連絡に応じない、または支払いの意思が見られない場合は、書面で「督促状」を送付します。この際、送付した事実と内容を郵便局が証明してくれる「内容証明郵便」を利用するのが効果的です。内容証明郵便は、相手に心理的なプレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できるほか、将来的に裁判に発展した場合の証拠としても有効です。
督促状を送っても支払いがない場合の最終手段として、法的措置を検討します。請求金額に応じて、主に以下の2つの方法があります。
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手続きの種類 |
特徴 |
備考 |
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支払督促 |
裁判所を通じて相手に支払いを命じてもらう手続き。書類審査のみで、相手が異議を申し立てなければ強制執行が可能になります。 |
相手の住所が不明な場合は利用できません。 |
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少額訴訟 |
60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる特別な訴訟手続き。原則1回の審理で判決が出るため、迅速な解決が期待できます。 |
通常の訴訟に比べて手続きが簡便で、費用も比較的安価です。 |
これらの手続きは個人でも行うことが可能ですが、不安な場合や請求額が高額な場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
ここでは、キャンセル料の請求書を作成したり受け取ったりする際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。実務上の疑問点を解消し、スムーズな対応を目指しましょう。
法的に請求書の発行が義務付けられているわけではありませんが、たとえキャンセル料が少額であっても、請求書を発行することを強く推奨します。
メールでの連絡は手軽ですが、見落とされたり、正式な請求として認識されなかったりする可能性があります。
請求書という正式な書類を発行することで、取引の証拠が明確に残り、双方の経理処理もスムーズになります。また、相手方に対して支払いの義務を明確に伝え、後の「言った・言わない」といったトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。
相手方とキャンセル料の発生について見解の相違がある場合は、請求の正当な根拠を客観的に示す文言を備考欄などに追記することが有効です。感情的な表現は避け、契約や規約に基づいた事実を淡々と記載しましょう。
【文例】
このように、どの契約や規約に基づいた請求であるかを明記することで、請求の正当性を主張しやすくなります。
いいえ、原則としてキャンセル料の「請求書」に収入印紙を貼る必要はありません。日本の印紙税法において、請求書は課税文書として定められていないためです。
ただし、請求書と領収書を兼ねた書類(「請求兼領収書」など)で、すでに入金済みであることを示す「代済」「相殺」といった文言を記載する場合は注意が必要です。この場合、その書類は「売上代金に係る金銭の受取書」とみなされ、記載された金額が5万円以上であれば収入印紙が必要となります。
キャンセル料を会計処理する際の勘定科目は、請求する側(受け取る側)と支払う側で異なります。一般的な処理方法は以下の通りです。
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立場 |
一般的な勘定科目 |
摘要の記載例 |
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請求する側(収益) |
雑収入 または 営業外収益 |
〇〇様 サービスキャンセル料 |
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支払う側(費用) |
雑損失 または 支払手数料 |
株式会社〇〇 予約キャンセル料 |
本来の事業活動による売上や仕入とは性質が異なるため、営業外の収益・費用や特別損失として計上するのが一般的です。自社の経理規定や税理士にご確認の上、適切な科目で処理してください。
キャンセル料を円滑に回収するための最も重要な結論は、「事前にキャンセルポリシーを顧客に明示し、同意を得ておくこと」です。これが請求の正当な根拠となります。請求書を作成する際は必須項目を正確に記載することが不可欠です。特に、2023年10月から始まったインボイス制度に対応するため、適格請求書発行事業者は登録番号の記載などを忘れないよう注意しましょう。また、請求書を送付するだけでなく、丁寧なメールでの案内や、状況に応じた催促を行うことで、スムーズな支払いにつながります。万が一、支払いが滞る場合には、内容証明郵便の送付や法的措置といった次の手段を検討する必要があることも覚えておきましょう。