更新日:2025.10.16
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AIの進化や働き方改革によって、私たちの働き方は日々変化しています。
こうした変化は、経理担当者のキャリアにも新たな動きをもたらしています。
では、経理職のキャリアにはどのような変化があり、経理担当者は今後どのようにキャリアを描いているのでしょうか。
今回の調査では、株式会社インボイスが発行する「経理職のキャリアと転職意識」(対象:441人)をもとに、経理担当者のキャリアの現状を明らかにしました。
転職を考える背景や士業志向にも着目しながら、今後のキャリア形成の方向性について考えていきましょう。
現在の勤務先に対する満足度についての調査では、最も多かった回答が「普通」(37.4%)で、次いで「やや満足」(31.3%)、「非常に満足」(12.1%)と続きました。一方で、「やや不満」(11.4%)と「非常に不満」(7.8%)は合わせても約2割にとどまり、大きな不満を抱えている経理担当者は少数派という結果になりました。
全体では8割近くが「普通」以上の評価をしており、現職に対して安定感を感じている傾向が見られます。経理業務は日々のルーティンが中心で、業務量は多いものの大きな変化は少なく、比較的安定した雇用や待遇が支えとなっています。こうした経理業務の特性が、現職に対する「不満は少ないが特別に満足でもない」という感覚につながっていると考えられます。
【 Q1 現在の勤務先に対する満足度を教えてください 】
調査では、「ある(たまに)」と答えた人が38.3%と最も多く、次いで「あまりない」(24.5%)、「まったくない」(20.4%)、「ある(頻繁に)」(15.3%)が続きました。合計すると、半数以上の経理担当者が転職を考えた経験を持っていることが分かります。
興味深いのは、現職への満足度の調査では「不満」と回答した人が2割未満にとどまっている一方で、転職を意識したことがある人は5割以上にのぼる点です。これは、現職への不満だけが転職を考える理由ではないことを示しているのではないでしょうか。
【 Q2 転職を考えたことがありますか? 】
調査では、転職を考える理由として「給与への不満」(59.7%)が最も多く、6割近くの回答者が挙げています。次いで「上司や文化への不満」(41.2%)が続きました。これらは、現職への不満が直接的に転職意欲に繋がる典型的な理由です。特に給与に関する不満は、経理職の専門性や市場価値を考えると、待遇や評価制度が転職を意識するきっかけになりやすいことが伺えます。
さらに「成長機会の少なさ」(35.7%)も多く挙げられ、スキルやキャリアの停滞感が転職検討の動機となっていることが分かります。給与や環境の不満だけでなく、将来の成長機会への期待も経理担当者の転職意識を左右しているのです。
こうした結果から、経理担当者の転職理由は大きく2つに分けられます。ひとつは「現状への不満」、もうひとつは「将来への不安」です。転職理由が「現状の不満」だけではない点を踏まえると、前問までの「現職の満足度」と「転職を考えたことのある人の割合」との乖離についても、理由の一端が見えてきます。
【 Q3 転職を考える理由はどんなものがありますか? 】
※複数回答可の設問のため、合計は100%を超えます。
「プライベートと両立しやすい安定的な働き方を重視したい」が39.1%で最も多く、"安心して働き続けられること"を大切にする傾向が強いことが分かりました。これは、転職を考える理由でも多かった「上司や文化への不満」や「残業の多さ」といった不満に直結している部分と考えられます。
次いで「今の業務の専門性を深め、価値を高めたい」(24.3%)、「資格(税理士・会計士など)を取得し専門家として活躍したい」(10%)と続き、スキルアップを考えている層は合わせて3割を超えており、市場価値を高めたいという意欲も見られます。この層は転職理由として挙げられた「成長機会の少なさ」と直結していると考えられます。
さらに、「管理職として組織を動かす立場になりたい」は8.7%と、わずか1割未満という結果となりました。経理職ではマネジメントより安定性や専門性を重視する傾向が強いようです。
【 Q4 どのようなキャリアを今後の目標として考えていますか? 】
調査では、「特になし」が44.9%と最多で、経理職の半数近くは資格を保有していないことが分かりました。この割合は意外にも高く、資格がなくても経理業務を担える環境や、企業側の研修・サポート体制が整っている状況が見えてきます。
一方で「簿記2級以上」を持つ経理担当者は40.5%にのぼり、簿記資格の重要性は高いと言えます。実際、採用時に「簿記2級以上必須」とする企業も多く、入社後に資格取得制度を整えるケースも見られます。
さらに、「税理士」(9.2%)や「公認会計士」(6.3%)、近年注目の「IT・RPA系資格」(4.9%)などは少数派であり、経理職全体で見ると専門性を極める資格取得は少数派であることが分かります。
【 Q5 保有資格(勉強中含む)は何ですか? 】
税理士・会計士などの士業志向があるかの調査では、「目指すつもりはない」と回答した人が62.8%と過半数を占めました。次いで「興味あり」と答えた人が25.7%、「すでに目指している」は8.3%と士業系を目指す人は少数派であることが分かりました。
士業系資格は専門性やスキルを高め、キャリアの幅や収入向上に直結するケースが多い一方で、その取得には長期間の学習と実務経験が必要です。これには大きな覚悟と時間的余裕が伴うため、経理担当者にとっては挑戦のハードルが高いのが実情です。
また、多くの経理担当者が「安定的な働き方」を重視していることも、士業志向が低い背景の一つと考えられます。専門性を追求する人やキャリア拡大を目指す人は一定数いるものの、士業資格は経理職全体のキャリア選択肢の中で主流ではないようです。
【 Q6 士業志向(税理士・会計士など)はありますか? 】
本調査から、経理担当者のキャリア意識には「安定志向」と「成長志向」の二つの方向性があり、特に「安定志向」でキャリアを考える人が多数派であることが分かりました。
こうした志向の違いは、転職を考える理由にも表れています。
転職を検討する理由としては、「給与への不満」「上司や文化への不満」といった現状への不満に加え、「成長機会の少なさ」といった将来への不安が中心でした。
今後のキャリアを考えるうえで、働き方に対する価値観や優先順位を見直すことは重要な一歩となります。まずは、本調査をもとに自分の働き方やキャリアの方向性を整理してみましょう。
企業にとっては、この多様性を踏まえた柔軟な働き方やスキル開発支援が、今後の人材確保と組織成長に欠かせない要素となります。
さらに、本資料では以下の内容も詳しく取り上げています。
今後のキャリアに悩む方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。本資料が、自身のキャリアを振り返り、将来の方向性を考える一助となれば幸いです。