更新日:2024.06.17
ー 目次 ー
消耗品費として、いくらまで計上できるか悩んだことはありませんか。消耗品費の対象物品は、トイレットペーパーや電球、トナー、インクなど多岐にわたりますが、一括で計上できる上限金額は明確に定められています。
消耗品費の会計処理上限金額を超えると固定資産として計上する必要があり、減価償却費の検討の余地も発生します。そのため、消耗品費の上限金額を正しく理解することは、適切な経理処理・税負担の軽減へ繋がります。
本記事では、消耗品費の上限額や仕訳の方法について詳しく解説します。経理担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
消耗品費の上限額は、取得原価10万円未満と定められており、10万以上になると固定資産として処理が必要です。30万円以下であれば、少額減価償却資産の特例を適用できる場合があります。
本章では、以下の3つに分けて消耗品額の経理処理について説明します。
消耗品費として計上する物品は購入時から使用に伴って徐々に減少するため、一括で費用計上する必要があります。また、消耗品には文具や日用品など比較的安価のものが多いため、10万円未満に限度額が設定されています。
国税庁は、消耗品費として計上できる要件を耐用年数が1年未満のものまたは取得金額が10万円未満のものと定めています。
取得金額の上限があるため、購入時期や数量等を適切に管理して無駄な費用を抑えることが重要です。
消耗品費の取得原価が10万円以上あるいは耐用年数が1年以上である場合、その消耗品は固定資産として処理する必要があります。
固定資産として処理する場合、物品別の耐用年数に応じて減価償却という形で資産勘定に計上します。耐用年数については国税庁が定義しているのでご参照ください。
消費税は固定資産税の対象になりますが、固定資産に係る減価償却費が計上されることで、税負担の軽減へ繋がります。
固定資産の減価償却方法が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「減価償却累計額とはどんな勘定科目?減価償却との関係や仕訳方法について解説!」はこちら
一定の条件を満たす中小企業では、30万円未満の備品において、一括してその年度の経費にできるという特例(=少額減価償却資産の特例)があります。少額減価償却資産の特例では、令和6年3月までの間に取得した減価償却資産を損金の額に算入し、経費として処理できます。
当特例の対象は、青色申告法人である中小企業者または農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が500人以下(令和2年3月31日までの取得などについては、1,000人以下)の法人とされています。
加えて、資本金額あるいは出資金額が1億円以下の法人かつ以下の条件に該当しない場合、少額減価償却資産で30万円まで損金となります。
特例が適用されて備品の取得原価が100万円以下である場合、簡易な減価償却計算となります。具体的には、以下の方法で償却を計算できます。
特例が適用されると、通常の減価償却計算方法を適用する必要がなく償却費の計算や帳簿管理が簡素化されるという利点があります。ただし、備品の価値が著しく低下した場合は、取得原価を見直して償却費の再計算の必要があります。
参照元:「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」国税庁
消耗品費として計上される備品は多種多様で、他の勘定科目である雑費とよく間違われます。どのような備品が消耗品費として計上されるのかを知り、仕訳を行う上でのポイント等をしっかりと押さえて適切な経理計上する必要があります。
本章では、消耗品費に該当する備品や雑費の違い、消耗品費として計上した方が良い理由について説明します。
消耗品費は10万円未満あるいは消耗期間が1年以内である消耗品に対する費用であり、日々の業務運営で必要とする小口の消耗品を購入するために使う予算が含まれます。
具体的には以下の備品が該当します。
消耗品費として計上する項目は、企業の方針や会計上の取り扱い方によって異なる場合があります。また、消耗品費は経費として計上されるため、企業の財務諸表に影響を与える重要な費用です。明確な基準を設けて、仕訳を行う必要があります。
消耗品費は使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費です。一方、雑費は消耗品費のように明確な基準がなくどの勘定科目にも当てはまらない支出の中で経費として計上できるものを指します。
以下のようなものが雑費として計上されます。
雑費として計上される備品は、安価であり使用頻度の高いものを計上するのが一般的です。
雑費の金額が大きいと税務署の監査が厳しくなる可能性があります。そのため、金額が大きくなる場合は消耗品費として計上する方がスムーズな経理処理を行えます。
参照元:「平成30年分 確定申告書等作成コーナー よくある質問」国税庁
消耗品費は業務に直接的な関係が多いため、税務上の優遇措置や減価償却の対象になる場合があります。一方、雑費は業務に直接的な関係が少なく、優遇措置の対象外となる場合が多いです。そのため、可能な限り雑費ではなく消耗品費として正確に計上する方が望ましいです。
また、支出に雑費が多いと、正確な管理がされてないと判断されて融資を受けにくくなる可能性や、税務署の確認が及ぶ可能性があります。
企業の経営を正確に把握して適切な税務措置を取るためにも、できる限り雑費ではなく消耗品費として計上した方が良いでしょう。
消耗品費の経理処理についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「消耗品費とは?勘定科目や仕訳例、雑費・工具器具備品との違いを解説」はこちら
消耗品費の上限額は10万円と定められていますが、思わぬところで上限額を超えてしまう場合があります。よくあるケースとして、物品の取得価額を1セットで計上する場合が挙げられます。
例えば、PCを業務で利用する際に、PC本体とモニターがないと使用できない場合はこれらを1セットとして計上する必要があります。
その他、エアコンと室外機も同様に2機を合わせてはじめて稼働できるようになるため、1セットして計上すべき備品とみなされています。このように1セットとして計上して計10万を超えると消耗品費に該当しなくなるので注意が必要です。
経理上、非常に見落とされがちであり、資産計上や仕入れ勘定に紛れて計上されている可能性があります。消耗品勘定に関する税務調査が実施される場合もあるので、1セットでの計上について理解して慎重な経理業務を心掛けましょう。
備品を消耗品として計上する場面には、購入時と決算時があります。それぞれ、具体的にどのように仕訳を行うかを理解しておくことで、健全な経理業務を行えます。
本章では、消耗品費として備品を購入する場合と備品の決算時に消耗品費として計上する場合の2つに分けて、仕訳例を紹介します。
消耗品費として備品を購入した場合は、以下のように仕訳を行います。
【備品の購入時に消耗品費として計上する場合の仕訳例】
■仕入金額が10,000円(消費税額は非課税)の備品を現金で購入した場合
消耗品費:10,000円/現金:10,000円
■仕入金額が10,000円(消費税額が1,000円)の備品をカードで購入した場合
消耗品費:11,000円/未払金:11,000円
■仕入金額が10,000円(消費税額が1,000円)の備品を仕入先に支払い期限が1か月後の手形で購入した場合
消耗品費:11,000円/手形:11,000円
■仕入金額が10,000円(消費税額が1,000円)の備品を、前払費用として現金で購入した場合
前払費用:11,000円/現金:11,000円
備品の購入手段として現金や未払金、手形、前払費用があるため、貸方に購入手段と金額、借方に消耗品費を計上しています。また、消耗品費の計上時には、消費税は消耗品費と一緒に計上されます。
備品の購入時に消耗品費として処理して決算時に消費した分を振り替える場合には、貯蔵品(資産勘定)に計上します。
以下に、消耗品費として計上した物品を貯蔵品に計上する仕訳例を示します。
【備品の決算時に消耗品費として計上する場合の仕訳例】
■消耗品費への計上
消耗品費:1,000円/当座預金:1,000円
■貯蔵品への計上
貯蔵品:1,000円/消耗品費:1,000円
上記の仕訳例の通り、消耗品費から貯蔵品に振り替えることで、将来的に売却される在庫品目として管理できます。尚、貯蔵品に振り替えた消耗品費の金額は、減価償却の対象外であるため、減価償却累からは減算されません。
消耗品費として計上される消耗品に該当する者は非常に多いです。そのため、単に消耗品費として計上してしまっては、何への費用なのか分からなくなってしまいます。
消耗品費の管理が煩雑にならないためにも、本章では以下の2点を軸に消耗品費を管理するポイントを紹介します。
消耗品費を適切に管理する上で、補助科目を設定することが有効です。補助科目を記載することで、種類別の支出を管理でき、消耗品費の見える化へ繋がります。
消耗品費の補助科目の例として以下があります。
補助科目が多すぎると逆に煩雑化するため、適当数で設定するようにしましょう。
補助科目を設定するポイントとして、大きく以下の3つがあります。
消耗品には、文具、清掃用品、事務用品、食品などさまざまあるため、消耗品の種類に合わせた補助科目の設定により、支出の管理がしやすくなります。また、補助科目が何を表しているかを明確にすることで、補助科目を利用する人が理解しやすくなります。
消耗品の発注方法として、オンラインショッピングでの購入や直接店舗での購入等があります。消耗品の発注方法に応じて消耗品費を分けて補助科目を設定することで、何を目的にどこで何を購入したかが明確になります。
補助科目を設定することで消耗品費の内訳を詳細に把握でき、この情報を基に無駄な支出削減に向けた施策の検討もできます。
摘要欄は、取引内容や目的をわかりやすく記載する欄であり、勘定科目のメモ書きの役割を担います。備品の内容を詳細に記載できるため、分かりにくさを解消し経費管理に役立ちます。
摘要欄には以下のような情報を記載することが重要です。
摘要欄に適切な情報を記載することで、帳簿を見た人が取引内容をすぐに理解できるようになります。結果として、業務の効率化につながります。
消耗品費とは、10万円未満あるいは消耗期間が1年以内である消耗品に対する費用のことです。消耗品費として計上できる要件は耐用年数が1年未満のものまたは取得金額が10万円未満のものと定められています。
上限額を超えると、固定資産として処理する必要があります。また、備品複数1セットで計上する場合があり、消耗品費の上限額を超える可能性があるため、消耗品費としての計上を適切な理解をして、経費判断をすることが重要です。
本記事では、消耗品費の上限額の紹介だけでなく仕訳例やポイントの解説もしておりますので、実際に消耗品費の仕訳・計上の際に参考にしてください。