更新日:2026.09.30

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電子帳簿保存法について、「2024年からすべての帳簿・書類を電子保存しなければならない」と思っている方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、2024年1月1日から実務上特に注意が必要になったのは、メール添付のPDF請求書やECサイトの領収書など、電子取引で授受した取引情報を電子データのまま保存することです。
紙で受け取った請求書を必ずスキャンすることや、会計帳簿をすべて電子保存することまで一律に義務化されたわけではありません。
より厳密には、電子取引データを電子保存する原則は2022年1月1日に施行されましたが、2023年12月31日までは一定の場合に出力書面による保存を認める宥恕措置が設けられていました。この措置が終了したことで、2024年1月1日以降は電子取引データ自体の保存が必要となっています。
この記事では、電子帳簿保存法で何が義務なのか、対象となる事業者・データ、保存要件、2024年以降の猶予措置、違反時のリスク、実務上の対応手順まで2026年時点のルールに沿って解説します。
電子帳簿保存法には、大きく「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの区分があります。
このうち、対象となる事業者が電子取引を行った場合に対応が必要なのが「電子取引データ保存」です。
| 区分 | 対象 | 2026年時点の扱い |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受領・作成した請求書、領収書、契約書等をスキャンして保存する | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール、Web、クラウド、EDI等で電子的に授受した取引情報を保存する | 対象データは保存が必要 |
「電子帳簿保存法=すべて電子化する法律」ではありません。紙で受け取った請求書は紙のまま保存できます。一方、電子取引で授受した取引情報は、原則として電子データ自体を保存します。
「電子帳簿保存法の義務化は2024年1月から」と説明されることが多いですが、制度の経緯を正確に整理すると次のようになります。
| 時期 | 電子取引データの扱い |
|---|---|
| 2021年12月31日まで | 一定の条件のもと、電子取引データを出力した書面による保存も可能 |
| 2022年1月1日 | 改正法が施行され、電子取引データ自体を電子保存することが原則となる |
| 2022年1月1日〜2023年12月31日 | 準備が間に合わない事業者等への宥恕措置により、一定の場合に出力書面による保存を容認 |
| 2024年1月1日以降 | 宥恕措置が終了。対象となる電子取引データ自体の保存が必要 |
そのため、厳密には電子保存の原則は2022年から始まっており、2024年1月から「新しく法律が始まった」わけではありません。
2023年末に宥恕措置が終了したことで、2024年1月から電子取引データを削除して紙だけを残す方法では対応できなくなった、と理解すると分かりやすいでしょう。
電子取引データ保存の対象となるのは、所得税法・法人税法等で帳簿・書類を保存する義務があり、電子取引を行っている事業者です。
株式会社・合同会社などの法人
帳簿・書類の保存義務がある個人事業者
メール・ECサイト・クラウド等を通じて保存対象となる取引情報を授受している事業者
事業規模が小さいからという理由だけで、電子取引データの保存義務そのものがなくなるわけではありません。
一方、売上規模などによって検索機能の確保が不要になる特例があります。
電子取引データ保存の対象は、紙で授受した場合に保存対象となる注文書、契約書、見積書、納品書、請求書、領収書などに相当する取引情報です。
受け取ったデータだけでなく、自社から電子的に送った取引情報も対象になります。
| 取引の例 | 保存するデータの例 |
|---|---|
| メール | メール添付で受領・送付したPDF請求書、領収書、見積書等 |
| ECサイト | Amazon等のサイトで取得した領収書、請求書、購入明細等の取引情報 |
| クラウド請求書サービス | サービス上で受領・発行した請求書等の電子データ |
| EDI・電子契約 | EDIで授受した注文データ、電子契約サービスで授受した契約データ等 |
| キャッシュレス決済・Web明細 | 取引内容を確認できるカード利用明細、インターネットバンキング明細等の保存対象データ |
単に「電子メールやWebサービスを利用したか」で判断するのではなく、取引年月日、金額、取引先などの取引情報を電子的に授受しているかを確認しましょう。
電子取引データは、単にパソコンのフォルダへ保存しておけば必ず要件を満たすわけではありません。
主に、改ざん防止、検索機能、見読可能性、システム関係書類の備付け等を確認します。
電子取引データの不当な訂正・削除を防止するため、次のいずれかの方法などで真実性を確保します。
タイムスタンプが付与された電子データを受け取る
授受後、所定の期間内にタイムスタンプを付与する
訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除できないシステムを利用する
不当な訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に従って運用する
有料の専用システムを導入していなくても、事務処理規程を作成して運用する方法があります。
電子取引データは、原則として次の項目で検索できる状態にします。
取引年月日その他の日付
取引金額
取引先
また、原則として日付・金額の範囲指定と、2つ以上の記録項目を組み合わせた検索に対応します。
ただし、税務職員からの電子データのダウンロードの求めに応じることができる場合は、範囲指定・組み合わせ検索の要件は不要です。
さらに、次のいずれかに該当し、ダウンロードの求めに応じられる状態であれば、検索機能そのものの確保が不要になります。
判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下である
電子取引データを出力した書面を、日付・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている
ここでいう「5,000万円以下」の判定に使うのは電子帳簿保存法上の売上高です。消費税法上の「課税売上高」と必ずしも同じではありません。
税務調査等で保存している電子取引データを確認する必要がある場合に、速やかに内容を表示・出力できる環境を整えます。
パソコン、ディスプレイ、プリンタ等を利用し、データを明瞭な状態で確認できるようにしておきましょう。
自社開発のプログラムなどを利用して電子取引データを保存する場合は、システムの概要を記載した書類等を備え付ける必要があります。
市販・クラウドサービスを利用する場合でも、経理担当者が保存方法や操作手順を把握できるよう、サービスのマニュアルや社内運用ルールを確認できる状態にしておくとよいでしょう。
2024年1月以降も、電子取引データの保存要件へ対応することが難しい事業者向けの猶予措置があります。
次の条件を満たす場合には、検索機能や改ざん防止措置などの通常の保存要件に従うことができなくても、電子取引データ自体を保存することで対応できます。
1|保存要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が「相当の理由」があると認める
2|税務調査等で、電子データのダウンロードの求めと、電子データを出力した書面の提示・提出の求めの両方に応じられる
猶予措置を利用するための事前申請は必要ありません。
国税庁は、「人手不足」「システム整備が間に合わない」「資金不足」なども相当の理由となり得る例として示しています。
一方、要件どおり保存できる状態にあるにもかかわらず、特段の理由なく対応しない場合まで自由に利用できる制度ではありません。
猶予措置でも電子データ自体を保存する必要があります。「要件へ対応できないので、PDFを削除して印刷した紙だけ保存する」という対応はできません。
| 項目 | 宥恕措置 | 2024年以降の猶予措置 |
|---|---|---|
| 期間 | 2022年1月〜2023年12月 | 2024年1月以降 |
| 位置づけ | 改正直後の準備期間への配慮 | 保存要件への対応が困難な事情がある事業者への配慮 |
| 事前申請 | 不要 | 不要 |
| 現在 | 2023年末で終了 | 一定の条件を満たす場合に利用可能 |
紙で受領した請求書・領収書について、スキャナ保存は義務ではありません。
従来どおり、紙の状態で法定保存期間中保存する方法を選べます。
一方、PDFやWebサイト、クラウド等で電子的に受領した取引情報は、電子取引データに該当するため、元の電子データを保存します。
| 受け取り方 | 基本の保存方法 |
|---|---|
| 紙の請求書・領収書を受領 | 紙保存で可。任意で要件を満たしたスキャナ保存も可能 |
| メール添付PDFで受領 | PDF等の電子データを保存する |
| Webサイトから領収書等を取得 | 取得した電子データを保存。サイト上で保存要件を満たして保存できる場合もある |
| クラウド上で請求書を確認 | 法定保存期間中に取引データを確認・出力でき、保存要件を満たす状態を確保する |
電子帳簿保存法への対応では、「保存方法に不備があること」と、「電子データを利用して所得等を隠蔽・仮装すること」を分けて考える必要があります。
電子取引データに記録された事項に関連して売上除外、架空経費の計上などの隠蔽・仮装が行われ、重加算税の対象となった場合には、通常課される重加算税に10%が加重される場合があります。
これは「電子帳簿保存法の保存要件を一つ満たさなかっただけで10%加算される」という制度ではありません。
電子帳簿保存法の要件に従っていない場合、青色申告の承認取消しにつながる可能性はあります。
ただし、保存要件の不備があれば即座に取消しとなるわけではありません。
国税庁は、電子データの保存の程度、代わりとなる書面保存の状況、今後の改善可能性などを総合的に考慮して判断するとしています。
「電子帳簿保存法に違反=100万円以下の過料」といった一律の罰則ではありません。保存義務を履行できない状態や隠蔽・仮装がある場合など、具体的な状況によって税務上の取扱いが異なります。
令和7年度税制改正では、請求・決済データを自動で保存し、帳簿へ自動連携する一定の仕組みに対応した新制度が設けられました。
国税庁長官が定める基準に適合するシステムを利用し、所定の要件に従って電子取引データを送受信・保存し、事前に届出を行うなどの条件を満たす場合、その電子取引データに関連する隠蔽・仮装について、重加算税10%加重の適用対象から除外されます。
この重加算税の加重除外は、2027年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されます。
一般的な電子取引データ保存の基本要件とは別の制度なので、通常の電帳法対応ではまず既存の保存要件を満たすことを優先しましょう。
最初に、自社で電子的に授受している取引情報を洗い出します。
経理部門だけでなく、営業、購買、総務、店舗など、各部署が個別に受領しているデータも確認しましょう。
請求書・領収書等を受け取るメールアドレス
Amazon等のECサイト
クラウド請求書・電子契約サービス
EDI・取引先専用ポータル・Web明細
電子取引データをどこへ保存するのか、誰が保存するのかを決めます。
検索機能を備えた専用システムを利用しない場合は、規則的なファイル名や索引簿を利用する方法があります。
ファイル名の例
20260831_110000_株式会社○○.pdf
なお、ファイル名そのものに法律上決められた形式があるわけではありません。必要な検索要件を満たせる方法で管理してください。
タイムスタンプを利用するのか、訂正・削除履歴の残るシステムを利用するのか、事務処理規程を設けるのかを決めます。
中小企業などでは、既存のファイルサーバーやクラウドストレージと事務処理規程を組み合わせて対応できる場合もあります。
電子取引データは経理担当者だけが受け取るとは限りません。
営業担当者のメール、従業員のECアカウント、各部門が利用するクラウドサービスなどに証憑が分散していると、保存漏れが起こります。
受領後の処理期限、保存場所、命名方法、担当者、異動・退職時の引継ぎまで社内ルールとして文書化しましょう。
月次や四半期ごとに保存状況をチェックする運用も有効です。
電子帳簿保存法へ対応するために、有料の専用システムを必ず導入しなければならないわけではありません。
取引件数が少ない場合は、事務処理規程、共有フォルダ、規則的なファイル名、索引簿などを組み合わせて要件を満たせる場合があります。
一方、電子取引の件数や担当者が多い企業では、手作業によるファイル名変更、保存漏れ、検索項目の入力などが負担になりやすくなります。
システムを検討する場合は、「電子帳簿保存法対応」という表示だけでなく、次の点を確認しましょう。
自社が必要とする保存区分に対応しているか
日付・金額・取引先などを検索できるか
訂正・削除履歴や権限管理を確認できるか
会計・経費精算・請求書受領など既存システムと連携できるか
すべての帳簿・書類について電子化が義務付けられたわけではありません。
電子取引データの電子保存を原則とする改正は2022年1月に施行され、その後の宥恕措置が2023年末で終了しました。
2024年1月以降は、帳簿・書類の保存義務がある事業者が電子取引で授受した対象データについて、電子データ自体を保存する必要があります。
原則として削除できません。
PDFで電子的に受け取った請求書は電子取引データに該当するため、元の電子データを保存します。
確認用として紙へ印刷すること自体は問題ありません。
いいえ。
紙で受け取った請求書のスキャナ保存は任意です。
紙のまま法定保存期間中保存することもできます。
必須ではありません。
事務処理規程、ファイル名、索引簿、共有フォルダ等を組み合わせて要件を満たす方法もあります。
ただし、件数が多い場合は、専用システムを利用した方が保存漏れ・検索作業・権限管理などの負担を軽減しやすくなります。
2022年から2023年までの「宥恕措置」は終了しています。
一方、2024年以降は、保存要件に従えなかったことについて相当の理由があり、税務調査等で電子データのダウンロードと出力書面の提示・提出に応じられる場合の「猶予措置」があります。
猶予措置でも電子取引データ自体の保存は必要です。
いいえ。
5,000万円以下の場合に不要となり得るのは検索機能の確保です。
電子取引データそのものを保存する義務がなくなるわけではありません。また、検索要件の免除を受けるには、税務職員からの電子データのダウンロードの求めに応じられる状態にしておく必要があります。
電子帳簿保存法で電子保存が必要なのは、すべての帳簿・書類ではありません。
電子帳簿等保存や紙書類のスキャナ保存は任意です。一方、メール添付PDF、ECサイト、クラウドサービスなど、電子取引で授受した保存対象の取引情報は、原則として電子データのまま保存する必要があります。
電子取引データを電子保存する原則は2022年1月から施行されましたが、2023年末までは宥恕措置がありました。そのため、実務上「2024年1月から義務化」と説明されるケースが多くなっています。
まずは社内の電子取引を洗い出し、保存先、検索方法、改ざん防止措置、担当者を決めましょう。
要件への対応が難しい場合は2024年以降の猶予措置を利用できる場合がありますが、電子取引データそのものを保存しなくてよい制度ではありません。
また、電子帳簿保存法の要件不備だけで一律の罰金や青色申告取消しとなるわけではありません。一方、電子取引データに関連した隠蔽・仮装には重加算税の加重措置があるため、適切な保存と申告が重要です。
「電子で授受した取引情報は電子で残す」を基本に、自社の取引量や業務フローに合った方法で運用を整えましょう。