更新日:2026.08.14

ー 目次 ー
「電子帳簿保存法の対象書類が多すぎて、どれをどう保存すればいいのか分からない」
経理の現場では、いまだにこうした声が絶えません。区分によって対象書類も保存要件も異なり、2024年1月からは電子取引データの保存が完全義務化されています。
本記事では、電子帳簿保存法の対象書類を整理し、区分ごとの保存要件・保存期間・罰則やよくある質問まで、実務目線でまとめて解説します。
まずは全体像を押さえましょう。電子帳簿保存法は、対象書類が「どの区分」に当てはまるかで保存方法が変わります。
ここで区分と対象者を整理しておくと、以降の要件が一気に理解しやすくなります。
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿・書類を電子データのまま保存することを認める法律です。1998年に施行され、直近では2022年1月に大きな改正が行われました。
紙でやり取りした書類はこれまで印刷して保管する必要がありましたが、改正により電子データのまま保存できるようになり、書類管理や経理業務の負担軽減が期待できます。
改正の詳しい変更点は、以下の記事で解説しています。
電子帳簿保存法は、法人・個人事業主を問わず、電子取引を行うほぼすべての事業者が対象です。
副業で得た雑所得でも、その業務に係る前々年分の収入金額が300万円を超える場合は、電子データで授受した請求書や領収書を電子保存しなければなりません。
逆に、電子取引をまったく行っていない事業者は対象外となります。
当該の書類が「電子データ」か「紙」か、また「取引先とデータでやり取りしたもの」か「自社で作成したもの」かによって保存方法が変わります。以下の早見表で全体を把握しておきましょう。
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区分 |
どんな書類か |
主な対象書類 |
対応 |
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自社がPC等で作成 |
貸借対照表・損益計算書・総勘定元帳・売上台帳 など |
任意 |
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紙で受領・自社が手書きで発行 |
請求書・領収書・契約書・納品書 など |
任意 |
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取引先と電子データでやり取り |
請求書・領収書・見積書・注文書 など |
義務 |
参考:国税庁 電子帳簿保存法の内容が改正されました
ここからは、3つの区分ごとに対象書類と保存要件を確認します。区分を取り違えると保存要件も変わってしまうため、自社の書類がどれに当てはまるかを意識しながら読み進めてください。
電子帳簿等保存は、自社が最初から一貫してパソコン等で作成した国税関係の帳簿・書類、その控えが対象です。手書きで作成した書類を電子化する場合はスキャナ保存に該当するため注意しましょう。
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分類 |
主な書類 |
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会計ソフトで作成する帳簿 |
仕訳帳/総勘定元帳/売上帳/仕入帳/売掛帳/買掛帳/固定資産台帳 など |
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会計ソフトで作成する決算関係書類 |
損益計算書/貸借対照表/棚卸表/合計残高試算表/勘定科目明細書 など |
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PCで作成した書類の控え |
見積書/請求書/納品書/領収書/送り状 など |
なお、一定範囲の帳簿を「優良な電子帳簿」の要件(訂正削除履歴の保存・帳簿間の相互関連性・日付/金額/取引先での検索機能)を満たして保存し、あらかじめ届出書を提出している場合は、後から過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減されます。

参考:国税庁 優良な電子帳簿の要件
スキャナ保存の対象は、取引先から紙で受領した書類や、自社が紙で発行した書類の控えです。決算関係書類(貸借対照表・損益計算書・棚卸表など)を除く国税関係書類が該当し、具体的には契約書・見積書・注文書・納品書・検収書・請求書・領収書などが対象です。
スキャンする際は、解像度200dpi相当以上・カラー画像(赤緑青それぞれ256階調以上)での読み取りが基本です。要件を満たせばスマートフォンやデジカメでの撮影も認められます。

なお、2024年1月からは令和5年度税制改正により、実務がさらに簡素化されています。
取引先と電子データでやり取りした書類は、そのまま電子データで保存しなければなりません。注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などが対象で、自社から送付した控えも保存対象です。紙で直接やり取りしたものは対象外となります。
電子取引の具体例は次のとおりです。
保存要件は、改ざん防止措置をとり、ディスプレイ・プリンター等を備え付けることで満たせます。改ざん防止措置は、タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残るシステムの導入のほか、「事務処理規程」を定めて運用する方法でも代替できます。
ファイル名を「取引年月日」「取引先」「取引金額」で検索できる状態にしておけば、システムを導入せずに検索要件を満たせます。
ここが本記事でもっとも注意すべきポイントです。電子取引データの保存は2024年1月から完全義務化されましたが、同時に期限を定めない新しい「猶予措置」が設けられています。2023年まであった「宥恕措置」とは別物なので、混同しないようにしましょう。
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比較項目 |
宥恕措置(〜2023年12月) |
猶予措置(2024年1月〜) |
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期間 |
2023年12月31日で終了 |
期限の定めなし |
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電子データの保存 |
保存していなくてもよい(紙保存で可) |
電子データの保存は必要 |
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主な条件 |
やむを得ない事情があること |
①所轄税務署長が「相当の理由」を認める②ダウンロードの求め・出力書面の提示に応じられる |
猶予措置では、宥恕措置と異なり電子データそのものの保存は省略できません。ただし「相当の理由」が認められ、税務調査時にダウンロードや出力書面の提示に応じられれば、改ざん防止措置や検索機能といった要件への対応は不要になります。
この「相当の理由」は、システムや社内ワークフローの整備が間に合わない場合などが該当するとされ、宥恕措置のような「やむを得ない事情」がなくても、事業者の実情に応じて幅広く認められる点が特徴です。ただし、最終的な判断は所轄税務署長に委ねられるため、該当するか不明なときは事前に所轄税務署へ確認しておくと安心です。
すでに対応ワークフローが整っているのに一部だけ紙保存にする、といった対応は認められない点に注意しましょう。
令和5年度税制改正では、検索機能をすべて不要とする措置の対象者も広がりました。
基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」から「5,000万円以下」に拡大され、さらに「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる事業者」も検索要件が不要になっています。
保存期間は事業者の形態によって異なります。起算日は書類の作成日ではなく「確定申告書の提出期限の翌日」である点に注意しましょう。
法人は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間です。ただし、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた場合などは10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。
また会社法第432条により、会計帳簿等は10年間の保存が定められています。
参考:国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間
個人事業主は、申告方法や書類の種類によって保存期間が異なります。
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申告区分 |
対象書類 |
保存期間 |
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青色申告 |
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)/決算関係書類/現金預金取引等の関係書類 |
7年 |
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上記以外の書類(請求書・見積書・納品書など) |
5年 |
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白色申告 |
収入金額・必要経費を記載した帳簿 |
7年 |
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上記以外の帳簿・棚卸表・請求書・納品書・領収書など |
5年 |
なお、インボイス制度に登録している場合は、上記にかかわらず対象書類を7年間保存する必要があります。
保存期間の詳細は、以下の記事で解説しています。
電子帳簿保存法への対応を怠ると、単なる手間の問題では済みません。経理責任者として押さえておきたいリスクは次のとおりです。
複数の拠点・店舗を展開する企業ほど、拠点ごとに保存ルールがばらつきやすく、統制が課題になります。全社共通の保存ルールとチェック体制を整えることが、リスク回避の第一歩です。
A. 起算日が「確定申告書の提出期限の翌日」であるため、事業年度終了日から数えると、実質的に約11年書類を保持することになるケースがあります。
特に欠損金が生じた事業年度は10年保存が必要なため、余裕をもった管理が安心です。
A. 原則として認められません。電子取引データは電子のまま保存するのが原則です。ただし「相当の理由」が認められる猶予措置の対象であれば、データを保存したうえで出力書面の提示にも応じられる状態にしておく運用が可能です。
A. 電子データでの取引をまったく行わず、すべての書類を手書き・紙で授受している事業者のみが対象外です。メールでの請求書受領などがある場合は対象となります。
電子帳簿保存法は、2024年1月からほとんどの事業者が対応すべき制度です。「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3区分で対象書類も保存要件も異なり、保存期間も法人・個人で変わります。
まずは早見表で自社の書類を仕分けし、電子取引データの保存を確実に行うことが最優先です。新しい猶予措置や検索要件の緩和もあわせて押さえ、税務リスクを避けながら業務効率化につなげていきましょう。
