更新日:2025.06.26
ー 目次 ー
デジタル技術の進展で、電子帳簿保存法への対応は企業や個人事業主にとって避けて通れない課題です。2024年1月1日からは電子取引データの保存が全面的に義務づけられ、多くの事業者がその対応に迫られています。
しかし、法律の内容が複雑で、「何から手をつければよいかわからない」という声も多く聞かれます。また、対応を怠った場合の罰則や、システム導入にかかるコストへの不安も、事業者の大きな懸念事項です。
これらの懸念を放置すると、税務調査での指摘や取引先との信頼関係の悪化など、事業運営に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
本記事では、電子帳簿保存法の基本的な内容から2024年の改正ポイント、具体的な対応方法までを解説します。
電子帳簿保存法は、総勘定元帳や領収書などの国税関係帳簿書類の電子データでの保存ルールを定めた法律です。この法律は、所得税法や法人税法によって紙での保存が義務付けられている帳簿書類に対して、電子データでの保存を容認する特例的な制度として位置づけられています。
電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類の保存手段を3つのカテゴリーに区分し、各々に独自の条件と義務・任意の区別を設けています。保存区分は、以下のとおりです。
電子帳簿保存法は何度も改正がおこなわれており、2024年1月からは電子取引データの保存が全事業者に義務づけられています。したがって、事業者はメールで受け取った請求書やWebからダウンロードした領収書などを、紙ではなく電子データのまま保存する必要があります。
電子取引データ保存は、2024年1月1日を境に、全事業者が対応しなければならない義務となりました。
電子取引のデータ保存の際は単に保存するだけではなく、特定の要件を満たす必要があります。なお、紙の書類の電子化や自社帳簿の電子保存は、事業者が必要に応じて選択可能です。
ここでは、電子取引データ保存で満たすべき2つの要件について解説します。
2024年1月1日から全事業者に義務づけられた電子取引データの保存では、「真実性の確保」および「可視性の確保」の2つの基本的な要件を満たす必要があります。
それぞれの要件の概要と対応方法は、以下のとおりです。
要件 |
概要 |
対応方法 |
真実性の確保 |
保存された電子データが改ざんされていないこと、または改ざんされた場合にその事実と内容を確認できることを保証する |
・タイムスタンプの付与 |
可視性の確保 |
保存された電子データを、必要な際に速やかに確認・表示・検索できる状態に保つ要件 |
・システム環境の整備 |
真実性の確保は、複数の選択肢が用意されており、事業者は自身の状況にあわせて方法を選択できます。なかでも事務処理規程の備付け・運用は、特別なシステムを導入せずに対応できるため、多くの事業者が取り組みやすい方法です。
一方で、可視性の確保はすべての要件に対応する必要があるため、適切なシステムの導入や運用体制の整備が重要です。
「可視性」の確保の検索要件には、実務に配慮した緩和措置が設けられています。緩和措置は、以下のとおりです。
これらの緩和措置は、政府が電子帳簿保存法の普及を加速させつつ、中小企業の負担を軽減し、実態にあわせた柔軟な運用を模索しています。法律は常に変化しており、今後も実務の状況にあわせて改正される可能性が高いため、常に最新の情報を確認したうえで、継続的な対応が必要です。
電子帳簿保存法には、取引先とのトラブルや税務上の問題を防ぐためにおさえておくべきいくつかのポイントがあります。これらを踏まえて、自社の状況にあわせた計画的な対応を進めることで、電子帳簿保存法への確実な対応が可能です。
ここでは、電子帳簿保存法に対応する際の3つの重要なポイントについて解説します。
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類を保存すべきすべての事業者が対象です。この対象は業種や事業規模にかかわらず、大企業はもちろん、中小企業や個人事業主も例外ではありません。
電子帳簿保存法の対象は電子データが基本であるため、紙での取引が基本の事業者の影響は少ない傾向にあります。
一方で、紙での取引であってもスキャナを使った保存が認められているため、電子データ化での保存をおこなう場合には電子帳簿保存法の対象となる点には注意が必要です。
電子帳簿保存法は法律であり、要件を満たさない場合や悪質な違反と判断された場合には、罰則が科される可能性があります。
おもな罰則は、以下のとおりです。
関連記事:【2024年最新】電子帳簿保存法の罰則規定完全ガイド|対応をしないと100万円以下の罰則あり!
紙で受け取った領収書や請求書などをスキャナ保存する場合は、厳格な要件を満たす必要があります。
おもな要件と概要は以下のとおりです。
要件 |
概要 |
入力期間の制限 |
領収書などの重要書類は、受領後「最長2か月とおおむね7営業日以内」に電子データ化が必要 |
一定の解像度による保存 |
解像度200dpi相当以上で保存する |
カラー保存の義務 |
領収書などの重要書類は、カラー画像(24ビットカラー)での読み取りが義務づけられている |
タイムスタンプまたは訂正・削除履歴が残るシステムの利用 |
データの真実性を確保するため、タイムスタンプの付与、または訂正・削除の事実や内容を確認できるシステムの利用が必須 |
検索機能の確保 |
「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目で検索できるようにする |
電子帳簿保存法への対応は、単なる紙からデータへの移行にとどまらず、業務フローの見直しや効率化、ガバナンス強化の機会でもあります。適切なサービスやシステムの導入で、法令遵守はもちろん、日々の業務を円滑に進めることが可能です。
サービス・システム活用のメリットは、以下のとおりです。
適切なサービスやシステムの導入は、電子帳簿保存法への対応を「義務」としてではなく、「業務改善」や「経営強化」の機会として捉え、会社の成長につなげるための重要なステップとなります。とくに、電子帳簿保存法に対応した会計ソフトや文書管理システムの活用で、要件を満たしながら業務の効率化を実現できます。
本記事では、電子帳簿保存法の基本的な内容から2024年の改正ポイント、具体的な対応方法までをわかりやすく解説しました。
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類のデジタル保存を可能にする法令で、なかでも2024年1月1日より電子取引データ保存が全面的に義務づけられました。加えて、保存の際には「真実性の確保」と「可視性の確保」の厳格な要件も定められています。
このようなことから、電子帳簿保存法の基本的なルールを踏まえ、自社の状況に応じた対応を進めることが重要です。
正しい知識と適切なツールを活用し、着実に対応を進めることで、単なる法令遵守にとどまらず、ペーパーレス化による業務効率化や、デジタル化による競争力強化といった、企業の持続的な成長に貢献できるでしょう。