更新日:2025.01.30
ー 目次 ー
電子帳簿保存法への対応が求められる企業が多くなる中、具体的な準備手順や注意点について理解できていますか?
本記事では、電子帳簿保存法の基本的な概要から適用開始日、対応猶予の有無、具体的な準備方法について解説します。さらに、対応に必要な会計ソフトの選定ポイントや2025年最新の補助金情報も収録し、企業負担の軽減につながる情報を提供します。
本記事を読むことで、企業として適切に対応し、税務リスクを最小化しながら効率的な運用体制を整えるための具体的な対応方法を理解できます。
電子帳簿保存法とは、1998年に施行された法律で、電子的な取引データや帳簿、書類を国税関係帳簿として保存可能にする規定を定めたものです。この法律により、紙媒体での保存からデジタル化が促進され、業務効率の向上や保存コストの削減、ペーパーレス化が推進されています。
電子帳簿保存法そのものは1998年に施行されていますが、近年の働き方の多様化やデジタル化の進展を背景に、2022年1月1日に大規模な法律の改正が実施されました。この改正により「電子取引」データの保存が義務化され、デジタルデータによる保存又は適切な保存要件を満たすシステムの導入が不可欠になっています。
2022年の改正に際して、実務上の準備が整わない事業者のために猶予期間が設けられました。具体的には、電子取引による保存義務については2023年12月31日までの猶予が認められていましたが、2024年1月1日から「電子取引のデータ保存」が完全義務化され、すべての事業者が電子帳簿保存法に完全対応しなければならなくなりました。PDFやメール添付ファイルで受け取る請求書や領収書のデータを紙で保存することができなくなり、電子データとして保存しなければなりません。
さらに、電子取引データの訂正や削除を行う際には、タイムスタンプの付与や修正履歴の確保が法律の要件となっています。これらの要件を満たさない場合、法令違反となる可能性があるため、専用ソフトウェアやクラウドサービスを利用することが推奨されます。
電子帳簿保存法への対応を進めるにあたって、まず重要なのは社内体制の整備です。本法に対応するためには適正な事務処理体制を構築する必要があります。そのため、まず以下のような役割分担を明確にすることから始めましょう。
役割 |
具体的な責任内容 |
管理者 |
電子帳簿保存に関する全体管理、プロジェクト進行の監督、税務調査対応の窓口 |
担当者 |
日々の電子データ保存業務、法対応ソフトウェアの運用と更新 |
IT部門 |
システム面でのサポート、セキュリティ対策の実施 |
役割を明確にすることで、導入時のトラブルを最小限に抑え、スムーズな運用を実現できます。初めて電子帳簿保存法に対応する企業の場合は、外部のコンサルタントを活用するのも一つの選択肢です。
電子帳簿保存法に対応するため、適切な会計ソフトやクラウドサービスの導入が必須です。現行の会計ソフトが電子帳簿保存法に対応しているか確認し、対応していない場合は以下のような基準でソフトを選定しましょう。
また、クラウドサービスの活用も進めましょう。クラウド型ソフトウェアはインストール不要で運用負荷が低く、セキュリティ対策が施されているため安心です。クラウド会計ソフトとしては、「freee会計」や「マネーフォワードクラウド」などが挙げられます。
電子帳簿保存法を遵守するためには、適正な事務処理要件を満たすことが必要です。この要件は、主に以下3つで構成されています。
また、日常業務においては、書類作成時に電子帳簿保存法に基づいて記録を行うことを徹底しましょう。記録項目が漏れたり、不備があったりすると、税務調査でのリスクが高まります。オペレーションフローや業務プロセスを明確化することも重要です。
さらに、新たな業務フローを構築した後は、社員への研修を実施して理解を深め、スムーズな実践を促すことが肝要です。このプロセスを経ることで、電子帳簿保存法への対応を確実なものとすることができます。
電子帳簿保存法の要件について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
電子帳簿保存法の要件をわかりやすく解説|保存手順も紹介 | 請求ABC
電子帳簿保存法に対応するためには、社内で具体的な項目を確認することが不可欠です。以下に、検討すべき代表的な事項をリストアップしました。これらをチェックリストとして活用してください。
項目 |
内容 |
担当部門 |
対応状況の確認 |
電子帳簿保存法対応に必要な具体的要件を満たしているかをチェック。 |
経理部門 |
システム導入の状況 |
適切な電子帳簿保存対応ソフトを導入しているかを確認。 |
IT部門 |
社内ルールの整備 |
適正な事務処理体制に基づくルールが策定されているかをレビュー。 |
総務部門 |
クラウドの活用有無 |
必要に応じてクラウドソフトを活用し、ペーパーレス化を推進。 |
全社 |
税務署への事前相談 |
対応計画や運用体制について税務署に事前相談を行っているか。 |
経理/財務部門 |
電子帳簿保存法対応を進めるには、実務の段階ごとに具体的なスケジュールを決めることが必要です。以下にサンプルのスケジュール例をご紹介します。
期間 |
主な作業内容 |
関係者 |
1~2か月目 |
現状の帳票管理プロセスの把握、課題点の抽出。 |
経理・IT部門 |
3か月目 |
必要なITツールの選定、ベンダー比較。 |
IT部門 |
4~5か月目 |
ソフトウェア導入、試験運用。 |
経理・総務部門 |
6か月目 |
社内への導入教育、正式運用開始。 |
全社 |
電子帳簿保存法は適用時の準備だけでなく、運用後も継続的なメンテナンスが欠かせません。以下は、定期的な見直しで重要となるポイントです。
適用後も、このような取り組みを定期的に行うことで、電子帳簿保存法への完全対応が実現できます。また、不備が発覚した際にも迅速に修正できる体制を整えておくことが重要です。
電子帳簿保存法に対応するためのソフトウェアを選ぶ際、最初に検討するべきポイントは費用です。初期費用やランニングコストが企業の予算に適しているかを確認しましょう。特に、中小企業やスタートアップにとっては、コストパフォーマンスが重要です。
選択肢の多くはサブスクリプション型の料金体系を採用しており、毎月の費用が発生します。無料トライアルを提供しているソフトも多いため、事前の試用で使用感や費用対効果を確かめましょう。
導入後の運用を円滑にするためには、操作性や使い勝手も大切です。特に、経理部門や現場の従業員が使いやすいインターフェース設計であるかどうかを確認する必要があります。直感的な操作が可能なソフトであれば、社員の教育コストも抑えられます。
ベンダーが提供するデモやセミナーに参加して、実際の使用感を体験するのも良い方法です。導入後に「思っていたより複雑で使いにくい」ということがないよう、事前に十分な情報収集を行いましょう。
電子帳簿保存法対応ソフトは、経理データや取引情報など重要な機密データを管理する役割を担います。そのため、高度なセキュリティ対策が講じられているかどうかを必ず確認しましょう。
例えば、データ暗号化、アクセス制限、ログ管理などが備わっているかが判断基準の一つです。また、ISO27001やプライバシーマークなどの認証を取得している企業のソフトであれば、信頼性が高いと考えられます。
電子帳簿保存法では、データを長期間保存することが求められます。そのため、ソフトウェアが提供するストレージ容量や拡張性も重要な要因となります。特に、年数回のバックアップ機能やストレージのスケーラビリティなどを確認しましょう。
また、クラウド型ソフトの場合、ベンダーが提供するサーバーの安定性や障害対応の実績も考慮に入れて選定する必要があります。
電子帳簿保存法に対応していることを示す指標の一つに、国税庁が認定するJIIMA(日本文書情報マネジメント協会)認証があります。認証を取得したソフトウェアは、法令を満たしていることが客観的に証明されています。
この認証を取得したソフトを選ぶことで、法令に適合しないリスクを回避することができます。導入前に、必ずソフトウェアの公式サイトやカタログで認証の有無を確認しましょう。
多くの企業がソフト導入にかかるコストを懸念していますが、政府や自治体が提供する補助金や助成金を利用することで負担を軽減できる場合があります。特に、「IT導入補助金」や「中小企業デジタル化支援補助金」などが該当します。
これらの補助金には、申請条件や受付期間が定められているため、最新情報を公式サイトで確認することが大切です。例えば、IT導入補助金の公式ウェブサイトでは、詳細な条件や提出書類について説明されています。
初めて申請する企業は、行政書士や税理士に相談することでスムーズに進めることができます。補助金制度を活用することで、効果的でコスト効率の高い導入が実現できます。
電子帳簿保存法では、税務リスクを軽減するために明確な不正防止策が求められています。不正防止対策の主な内容として「改ざん防止機能の実装」や「権限管理の適正化」が挙げられます。帳簿保存システムや会計ソフトにおいては、データの改ざん防止に対応した仕組み(タイムスタンプ機能など)が義務付けられています。特に、2024年改正では不正行為への厳格な対応が追加される可能性があります。
また、社内業務では、複数の担当者が相互にチェックを行う仕組みを整える必要があります。業務の透明性を高めるだけでなく、責任の所在を明確にすることで、不正の抑止力となります。
電子帳簿保存法への対応において、税務調査への備えは不可欠です。電子データでの保存が適切に行われていない場合、調査時に指摘を受ける可能性があります。具体的には、以下の点を注視する必要があります。
項目 |
対応例 |
タイムスタンプの付与 |
全ての帳簿データに適切なタイミングでタイムスタンプを付与し、改ざんされていないことを証明。 |
検索機能の実装 |
税務調査時に特定データを迅速に検索できるよう、検索性の高いシステムを導入。 |
適正事務処理要件 |
承認フローを構築し、法令に従った運用記録を残す。 |
これらの対応に加えて、税務調査では保存データの整合性が問われます。そのため、帳簿データと実際の取引内容を一致させるチェック体制を整えておく必要があります。
税務調査の準備に関しては、税理士やコンサルタントに相談することで適切なアドバイスを得ることが可能です。
電子帳簿保存法対応とペーパーレス化は混同されがちですが、それぞれ異なる目的があります。ペーパーレス化は主に書類作成や保存におけるコスト削減や業務効率化を目指すものです。一方、電子帳簿保存法は、税務署への適正なデータ提出や税務調査に対応するための法律であり、必ずしもペーパーレス化を指導するものではありません。
具体的には、ペーパーレス化では必ずしも法に従った保存形式を求めない場合がある一方、電子帳簿保存法では厳格な保存要件が求められます(例:タイムスタンプ付与、適正要件を満たしたシステムの使用など)。そのため、ペーパーレス化を実施している企業でも、同時に電子帳簿保存法の要件を確認し、適切な対応を行うことが重要です。
ペーパーレス化を推進するメリットを得つつ、電子帳簿保存法の遵守も行うためには、両者の違いを理解した上で、最適なソフトウェアや運用方法を採用することが求められます。
電子帳簿保存法への対応は、企業にとって今後の業務効率化や法令遵守の観点で重要な課題です。法改正により技術要件が厳格化され、2025年現在は猶予期間が終了しており、すべての事業者が対象となっています。
本記事のチェックリストやソフト選定ポイントを活用し、万全な準備を進めましょう。企業の電子化促進は法対応にとどまらず、業務効率化やコスト削減といったプラスの効果も期待されます。この機会に全面的な改善を図り、競争力を高めることを目指してください。