更新日:2025.11.27

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地方公共団体(以下:地公体)の発行する納付書の金融機関窓口での取り扱い終了が進んでいることはご存知でしょうか?
2024年ごろから、大手銀行を中心に本格的に加速しています。
では、この動きは企業の経理業務にどのような影響を与えているのでしょうか?
今回は、株式会社インボイスが調査を行った「地公体納付書取り扱い終了に伴う企業の対応方針調査」(対象:441人)のアンケート結果から、現状の課題や企業の対応傾向を整理し、今後の改善に向けたヒントを探ります。
まず、拠点や本社でどの支出項目に納付書を使っているかを調査したところ、最も多かったのは「法人住民税・事業税」(45.0%)でした。続いて「固定資産税」(44.0%)、「自動車税」(41.1%)と、税金関連の支払いは今もなお納付書払いが中心であることが分かります。
公共料金についても、「通信料金(NTTなど)」(38.4%)や「水道料金」(36.4%)、「ガス料金」(29.1%)が上位に挙がっており、こうした定期的な支払いが経理部門にとって継続的な負担になっています。
【 Q 納付書による支払いが発生している支出項目を教えてください 】
納付書払いが残っている理由として最も多かったのは「取引先が指定している」(30.0%)でした。支払方法が取引先側で決まっているため、企業側で変更できる余地が限られているケースが多いことが分かります。
次に多かったのは、「電子化が進んでいない」(26.6%)、「代替手段がない」(21.9%)、「口座振替できない」(18.9%)といった回答です。これらは、制度やシステムの制約、運用上の課題が影響していることを示しています。
さらに、「拠点任せで管理できていない」(11.4%)と答えた企業も一定数あり、複数拠点を持つ企業では、支払方法の統一や管理体制の整備が課題になりやすいことも分かります。
こうした結果を見ると、納付書払いが残っているのは単なる慣習ではなく、制度やシステムの制約、管理体制のばらつきなど、いくつもの要因が関係していることが分かります。
【 Q 納付書払いが残っている理由を教えてください 】
水道料金や地方税などで口座振替が進まない理由の調査で最も多かったのは、「拠点ごとに管理されている」と「手続きが煩雑/紙対応のみ」で、それぞれ27.3%でした。これは、拠点ごとに請求書の受取者や支払者が異なることや、口座振替の手続き自体が負担になっていることを示しています。
次に多かったのは「指定金融機関が限られている」(23.2%)で、自治体や公共料金の支払いでは、口座振替に対応している金融機関が限られている場合もあります。
また、「統一管理が難しい」(15.5%)と答えた企業もあり、これは「拠点ごとに管理されている」と共通した課題と言えます。複数拠点を持つ企業では、地域ごとに異なる支払方法や制度に従う必要があるため、全社で統一した口座振替の仕組みを整えるのは簡単ではありません。
こうしたことから、口座振替が進まない背景には、拠点管理の違いや手続きの負担、金融機関や制度上の制約など、複数の要因が絡んでいることが分かります。
【 Q 水道料金や地方税など、口座振替が進んでいない理由があれば教えてください 】
納付書払いが根強く残る理由には様々な要因が絡んでいることが分かりましたが、はじめに触れたように、地方公共団体が発行する納付書では、大手金融機関窓口での取り扱い終了の動きが進んでいます。
そこで、地公体納付書の金融機関窓口での取り扱い終了の動きについて知っていたか?の調査を行ったところ、「ない/知らない」が57.8%で最も多く、「数回ある」(15.6%)、「まだないが聞いたことがある」(14.9%)と続きます。一方で、「はい(頻繁にある)」と回答した人はわずか11.7%にとどまりました。
この結果から、大手金融機関による納付書取り扱い終了は2024年から本格的に進んでいるにもかかわらず、過半数の企業が通知を受けていないか、知らない状況にあることが分かります。
これは、取り扱い終了の対象範囲が限定的であることが要因と考えられます。多くの場合、一部の地方公共団体や特定の支払項目に限られており、全社的な影響として認識されにくいのです。
さらに、企業によっては拠点ごとに取引銀行が異なる場合があります。その場合、通知を受けたのは一部の拠点だけで、他の拠点では知られていないこともあります。こうした事情により、納付書取り扱い終了の情報が全社で十分に認知されていない状況になっていると考えられます。
【 Q 金融機関から「納付書の取り扱いを終了する」という通知や案内を受けたことがありますか?】
次に、金融機関で納付書が使えなくなった場合の影響について尋ねたところ、「非常に困る」(16.5%)と「やや困る」(34.7%)を合わせると、困難を感じる層は51.2%でした。一方で、「影響は軽微」(30.6%)、「影響なし/既に移行済み」(17.8%)を合わせると、影響をあまり感じていない層は48.4%で、ほぼ半々に分かれる結果となっています。
既に口座振替や電子支払いに切り替えている企業では大きな影響はありませんが、納付書払いに依存している企業では、業務の見直しや負担増が生じる可能性があります。つまり、影響の程度は企業ごとの納付書払い依存度によって異なると考えられます。
ただし、「非常に困る」と答えた企業は2割未満にとどまり、「やや困る」や「影響は軽微」と回答した層が6割以上を占めています。多くの企業は、一定の影響はあるものの、業務に大きな支障が出るわけではないと捉えていることが分かります。
【 Q 金融機関で納付書が使えなくなった場合、自社にとって影響がありますか? 】
納付書の取り扱い終了に向けて、今後どのような対応を検討したいかを尋ねたところ、最も多かったのは「口座振替の導入・拡大」(52.0%)でした。多くの企業が口座振替を活用し、支払い手続きの負担を軽減したいと考えていることが分かります。
次に多かったのは「収納代行や一括請求サービスの活用」(31.6%)で、外部サービスを通じて支払方法を集約し、経理の負担を減らし、管理の一元化を目指す動きが見られます。
「拠点経費の立替精算+本社処理」(21.1%)は、拠点が一度立て替えて支払い、本社で後から精算する方法です。一時的な対応としては有効ですが、拠点・本社の双方で手間が増えるため、長期的には口座振替などへの切り替えが望ましいと考えられます。
また、「RPA・システム化で回避」(14.5%)といった回答もあり、業務の自動化によって効率化を図る方法も検討されています。
【 Q 対応として、今後どのような方法を検討したいと考えていますか? 】
地方公共団体の納付書取り扱い終了に関する調査では、制度変更の認知度や企業の準備状況にまだばらつきがあることが分かりました。特に「通知や案内を受けたか」という質問では、過半数の企業が「知らない」と回答しており、現時点では対象外の企業も多く、情報共有が十分に行き届いていない様子がうかがえます。
とはいえ、今後は対象範囲が広がり、取り扱い終了の影響を受ける企業が増える可能性があります。今のうちから備えておくことが重要です。
対応策としては、まず口座振替の導入・拡大が現実的な第一歩と言えます。口座振替を導入することで、経理業務の効率化や支払い漏れ・遅延リスクの軽減、管理負担の削減が期待できます。また、拠点ごとの管理方法を見直し、新しい支払方法の導入に必要な手続きを簡素化(承認フローの統一や書類の電子化など)することで、よりスムーズな運用につなげることも可能です。
制度変更への対応を進めるうえでは、社内での調整も欠かせません。まずは現状を把握し、自社で取り組めることから一歩ずつ進めていくことが大切です。
さらに、
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