更新日:2025.08.25
ー 目次 ー
請求書の電子化が進み、多くの企業でツールの導入が進むなど、経理現場は大きな転換期を迎えています。一方で、紙と電子の混在や制度対応により請求書業務の負担や混乱は増し、業務効率化はどの企業でも避けて通れない課題となっています。
今回は、そうした請求書業務における実態を"従業員数"に着目して調査を行いました。
請求書の処理は、企業規模の大小でどのような違いが出るのでしょうか?
本コラムでは、株式会社インボイスが実施した「企業を苦しめる請求書業務に関する調査」(対象:約500人)をもとに、企業規模別に見えてきた経理業務の実態を明らかにしていきます。
「自社と同規模の企業がどのような課題を抱えているのか?」
「現場の負担を減らすためにまず何から着手すべきなのか?」
自社に合った業務効率化を行うためのヒントを探っていきましょう。
回答者プロフィール
従業員数別の請求書を見てみると、企業の従業員数が増えるにつれ、請求書の受領枚数も増加しています。
月間で301枚以上の請求書を処理していると回答した割合は、1,000名以上の大企業で最も高く、規模が大きくなるほど業務量も増えるという結果となりました。
興味深い結果となったのは、受領枚数には「従業員数」よりも「拠点数」の方が影響が大きい、という点です。従業員数が500名以上かつ1〜30拠点の企業においては、各項目の回答に大きな差は見られませんでしたが、従業員数が500名以上かつ31拠点以上の企業では、枚数が多い項目ほど割合が高くなる傾向がみられました。
【従業員数別1カ月間に受領する請求書枚数】
【拠点数別1ヶ月に受領する請求書枚数(従業員数500名以上)】
従業員数が200名以上の企業では「非常に大変」「やや大変」と回答した割合が60%以上となり、一定の従業員数以上となった場合は請求書処理の業務負荷を感じやすい結果となりました。
また、「やや大変ではない」「全く大変ではない」の回答を従業員数別に確認すると、100名未満 は29%、1,000名以上は10%となり、企業規模が大きくなるほど"負担を感じていない"層が減少していることもわかります。
企業規模が大きくなれば、それに応じて経理部門の人員も増えていると予想できますが、それでも業務の量や複雑さがそれを上回り、処理の負担感はむしろ増していることがうかがえます。
【受領請求書の業務負荷】
従業員数が増えるにつれて、請求書の受領枚数も増加した科目は、以下5つの項目です。
・水道光熱費
・通信費
・広告宣伝費
・荷造運賃
・旅費交通費
なかでも通信費、旅費交通費は「請求書の枚数が多い」と 回答された割合が高い結果となりました。
特に通信費は、従業員数1,000名以上の企業において「請求書の枚数が多い」と回答された割合が最も高い項目となります。従業員数の増加に伴い、携帯電話やWi-Fiルーターの貸与、社員の交通費などが人員数に直結して増加していることが考えられます。
消耗品費は、従業員数100名未満の企業では49%が「請求書の枚数が多い」と回答しましたが、拠点数が増えるにつれ減少し、1,000名以上の企業では30%にとどまっています。これは、小規模の企業では購買を一元管理する仕組みや、まとめ買いの契約がないことが多く、取引先や発注単位がバラバラになるため、1件1件の請求書が細分化され、件数が増える傾向にあることが考えられます。
【受領枚数が多い請求書の科目】
業務負荷が大きい請求書の科目について調査すると、従業員数が 100名未満の企業においては、消耗品費が38%と最も高い割合となりました。一方、従業員数1,000名以上の企業においては、旅費交通費が37%と最も高い割合となっています。旅費交通費は主に、出張時にかかった新幹線や飛行機などの移動費や宿泊費、出張手当が該当するため、1度の出張で複数枚の請求書が発生する場合が多いでしょう。従業員が多い企業では、全体の出張の回数が多くなるため、負荷の大きさにつながってるといえます。
全体の傾向として、従業員数が多くなるにつれて受領枚数が増加する請求書の科目は、基本的に業務負荷を感じる割合も増加しています。
一方で、従業員数が多くなるにつれて請求書の割合が減少する消耗品費は、負荷と感じる割合も減少し、その分旅費交通費や販売手数料、水道光熱費、通信費などに負荷を感じるという結果となりました。
つまり、請求書の受領枚数に比例して、現場の業務負荷も大きくなっていくということです。
【業務負荷が大きい請求書の科目】
調査対象を500名以上の企業に絞り、拠点数別に傾向が異なるかを調査したところ、従業員数が同じでも、拠点数によって「枚数の多い請求書」や「負荷のかかる請求書」は異なることが分かりました。
通信費や水道光熱費は、拠点数が多い企業の方が請求書の枚数も多く業務負荷も大きいという傾向がある一方で、旅費交通費に関しては、拠点数が少ない企業の方が請求書の枚数も多く、処理の負荷も高いという結果となりました。
【受領枚数が多い請求書の科目 / 従業員数500名以上】
【業務負荷が大きい請求書の科目 / 従業員数500名以上】
請求書処理で特に負荷が大きい業務は、従業員数に関わらず「請求金額や内容の確認」や「支払伝票の作成」です。
とくに「部門仕分け(配賦)」は従業員数500名以上の企業で負荷が大きくなる傾向があります。部門数が多くなれば、その分請求書をどの部門に配賦するのかの判断や入力作業が必要になり、管理会計を導入している企業ほど負荷が増えてしまうのです。
また、従業員数500名以上の企業では、拠点数が多いほど請求書処理の業務負荷が大きい傾向にあります。従業員数別での調査ではあまり差がみられなかった「支払伝票の作成」や「科目の仕訳」は拠点数によって負荷に大きな差が見られ、拠点数が多いほど大きな負荷がかかっていることが分かりました。
一方で、「請求金額や内容の確認」や「部門仕分け(配賦)」は拠点数に関係なく常に負荷が大きい業務といえます。
【大変だと感じる請求書の処理業務】
【大変だと感じる請求書の処理業務 / 従業員数500名以上】
今回の調査では、従業員数の違いによって、請求書処理業務の量、内容、感じる負担が大きく変わる実態が見えてきました。
従業員の負荷を軽減するためにも、業務の効率化は避けて通れない課題です。その手段として、自動化ツールの導入を進める企業も増えているでしょう。しかし、「他社が使っているから」「流行しているから」といった理由だけで導入を進めてしまうと、実際の負荷とズレていた、業務フローが整わずかえって複雑になってしまった、といった結果になりかねません。
大切なのは、「自社にとって本当に負担となっている部分はどこか」を正しく見極めることです。
そのためにも、自社と同じ規模の企業がどのような課題に直面し、どこに負担を感じているのかを把握することが、業務効率化へのはじめの一歩になるはずです。
調査レポートでは、
・自社の規模と近い他社が負担に感じている業務とその理由
・どの請求書の科目が業務負荷を高めているのか?
・拠点数・従業員数別に見た改善例
など、企業規模別の課題を記載しています。詳しく知りたい方は、以下のボタンから調査レポートを無料ダウンロードしてみてください。
自社の課題を発見するヒントとして、ぜひお役立てください。