更新日:2026.09.29

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デザイナーやライター、士業などに報酬を支払うとき、源泉徴収の対象は消費税を含めた金額なのか、含めない金額なのか。インボイス制度が始まってからこの点を確認する人が増えていますが、処理が分かれ、支払う側と受け取る側で認識がずれることがあります。
報酬10万円に消費税1万円を加えた請求書で、どちらの金額を基準にするかによって、手取りは1,021円変わります。金額としては小さくても、毎月の取引なら年間で1万円を超えます。
この記事では、源泉徴収の対象金額の考え方を国税庁の取扱いに沿って整理し、税抜金額で計算してもらうための請求書の書き方まで解説します。
先に答えをお伝えします。
| 状況 | 源泉徴収の対象金額 |
|---|---|
| 請求書に「ご請求額 110,000円(税込)」としか書いていない | 110,000円(税込)が対象 |
| 請求書に「報酬 100,000円/消費税 10,000円」と分けて書いてある | 100,000円(税抜)だけを対象にして差し支えない |
報酬・料金等の中に消費税等の額が含まれている場合、原則として消費税等を含めた金額が源泉徴収の対象です。ただし、支払を受ける者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとされています。
「税込が正しい」「税抜が正しい」のどちらか一方ではありません。請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されているかどうかで取扱いが変わります。
ネット上の解説で税込と税抜の両方が見つかるのは、原則と例外のどちらか一方だけを切り取っているためです。
| 説明 | 何を指しているか |
|---|---|
| 「源泉徴収は税込金額に対して行う」 | 原則の話。請求書で区分されていない場合はこうなる |
| 「源泉徴収は税抜金額に対して行う」 | 例外の話。請求書で区分されている場合の取扱い |
どちらも間違いではありませんが、片方だけを読むと処理を誤ります。判断の分かれ目は、請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されているかどうかです。
この取扱いはインボイス制度の開始によって変更されたものではありません。インボイス制度開始後も、従来と同じ源泉徴収の取扱いが続いています。
報酬100,000円、消費税10,000円、合計110,000円の請求で比べてみます。源泉徴収税率は10.21%とします。
| 項目 | 税込基準で計算した場合 | 税抜基準で計算した場合 |
|---|---|---|
| 源泉徴収の対象金額 | 110,000円 | 100,000円 |
| 源泉徴収税額 | 11,231円 | 10,210円 |
| 差引支払額(手取り) | 98,769円 | 99,790円 |
差は1,021円です。1円未満の端数は切り捨てます。
ここで誤解されやすいのが、税込基準で計算すると税金を多く取られて損をする、という受け止め方です。源泉徴収は所得税の前払いなので、年間の税額が確定した後、確定申告によって精算されます。源泉徴収額が最終的な税額を上回れば還付を受けられます。
ただし、その年の確定申告まで資金が戻ってこないため、資金繰りには影響します。毎月の取引であれば、区分して記載しておくほうが手元資金は安定しやすくなります。
受け取る側が税抜金額を源泉徴収の対象として処理してもらいたい場合は、請求書の書き方が重要です。
報酬額と消費税額を別の行に分けて記載してください。合計額だけでは、報酬額と消費税額が明確に区分されているとはいえません。
| 区分されていない書き方 | 区分されている書き方 |
|---|---|
| ご請求額 110,000円(税込) |
Webサイト制作費 100,000円 消費税(10%) 10,000円 小計 110,000円 源泉徴収税額 △10,210円 ご請求額 99,790円 |
源泉徴収税額そのものを請求書に書く義務はありませんが、書いておくと支払う側の計算ミスを防げます。差引後の入金額まで示しておけば、認識のずれも起きにくくなります。
この取扱いに適格請求書(インボイス)であることは必要ありません。インボイス未登録事業者が発行する請求書でも、報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬額のみを源泉徴収の対象として差し支えありません。
毎月の顧問契約などで請求書を発行していない場合は、契約書や支払明細書でも報酬額と消費税額を明確に区分しておくと、支払時の判断がしやすくなります。
「月額顧問料100,000円(税別)」とだけ記載するよりも、消費税額まで具体的に示しておく方法が確実です。
| 金額区分がわかりにくい例 | 金額区分が明確な例 |
|---|---|
|
月額顧問料 100,000円(税別) ※別途消費税を申し受けます |
月額顧問料 100,000円 消費税 10,000円 合計 110,000円 |
請求書を毎月発行していない取引では、契約書や支払明細書など、実際の支払金額を確認できる書類で報酬額と消費税額が明確に区分されている状態にしておきましょう。
そもそも、すべての外注費や業務委託費が源泉徴収の対象になるわけではありません。居住者である個人に支払う報酬・料金のうち、法律で定められたものが対象です。
| 対象になる報酬・料金の例 | 主な計算方法 |
|---|---|
| 原稿料、講演料、デザイン料など | 原則10.21%。一定の報酬では1回の支払額が100万円を超える部分は20.42% |
| 弁護士、税理士、公認会計士などへの報酬 | 原則10.21%。1回の支払額が100万円を超える部分は20.42% |
| 司法書士、土地家屋調査士、海事代理士への報酬 | 原則として(支払金額-1万円)×10.21% |
| プロスポーツ選手、モデル、外交員、芸能関係など | 報酬の種類によって計算方法が異なる |
謝礼、取材費、調査費、車代などの名目で支払っていても、実態が原稿料や講演料などの対象報酬と同じであれば源泉徴収の対象になります。
一方、支払者が交通機関やホテル等へ直接支払う通常必要な範囲の交通費・宿泊費については、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含めなくてよい場合があります。
原稿料、デザイン料、士業報酬など、ここで扱う所得税法上の報酬・料金の源泉徴収は、主に居住者である個人への支払いを対象としています。
そのため、株式会社や合同会社などの内国法人へ通常のデザイン料や制作費を支払う場合は、原則としてこの報酬・料金の源泉徴収は行いません。ただし、法人への支払いでも利子・配当や一定の賞金など、別の規定で源泉徴収の対象となるものがあります。
また、非居住者や外国法人への支払いには別の源泉徴収ルールがあります。「個人ではないから不要」「海外の相手だから不要」と一律に判断しないようにしてください。
国内の居住者である大家などへ通常の地代・家賃を支払う場合、一般的な報酬・料金の源泉徴収対象にはなりません。
一方、非居住者や外国法人から日本国内の不動産を借り、その賃借料を支払う場合は、原則として20.42%の源泉徴収が必要になるため、相手方の居住区分を確認することが重要です。
報酬を支払う側であっても、常に源泉徴収の義務があるわけではありません。
支払者が個人であって、給与等の支払いをしていない場合、または給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払っている場合は、ホステス等への一定の報酬を除き、報酬・料金等について源泉徴収する必要はありません。
| 支払う側 | 源泉徴収の義務 |
|---|---|
| 法人 | 対象となる報酬を支払う場合はあり |
| 個人事業主で、従業員等に給与を支払っている | 対象となる報酬を支払う場合はあり |
| 個人事業主で、給与の支払いがない(一人で事業をしている) | 原則なし |
一人で活動しているフリーランスが、別のフリーランスに仕事を外注して報酬を支払う場合、給与等の支払者でなければ原則として源泉徴収は不要です。
一方、青色事業専従者給与などを支払っている個人事業主は給与等の支払者にあたるため、源泉徴収の対象となる報酬を支払う場合は対応が必要です。
原稿料・講演料や弁護士・税理士等への報酬などでは、1回に支払う金額が100万円を超えると、100万円を超える部分の税率が20.42%になります。
| 支払金額 | 源泉徴収税額の計算式 |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払金額 × 10.21% |
| 100万円超 | (支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 |
たとえば150万円の報酬であれば、次のようになります。
| 計算 | 結果 |
|---|---|
| (1,500,000円 − 1,000,000円)× 20.42% | 102,100円 |
| 100万円までの部分 | 102,100円 |
| 源泉徴収税額 | 204,200円 |
この二段階税率は、1年間の合計額ではなく、原則として同一人に対する1回の支払金額で判定します。
ただし、すべての源泉徴収対象報酬がこの計算式になるわけではありません。司法書士等の報酬など、報酬の種類によって別の計算方法があります。
手取り額を先に決めて契約する「手取契約」では、源泉徴収前の支払金額を逆算します。
税率10.21%で、手取り10万円の原稿料とする場合は、次のようになります。
手取契約10万円の場合
100,000円 ÷ 0.8979 = 111,370円
源泉徴収税額:11,370円
差引支払額:100,000円
源泉徴収した税額は、原則として報酬を実際に支払った月の翌月10日までに納付します。
結論からいうと、源泉徴収の取扱い自体は変わっていません。
源泉徴収は所得税の制度、インボイスは消費税の制度であり、別の仕組みです。インボイス制度が始まったことで、源泉徴収の対象金額の考え方や税率が変更されたわけではありません。
| 項目 | 源泉徴収 | インボイス制度 |
|---|---|---|
| 対象の税 | 所得税・復興特別所得税等 | 消費税 |
| 何のための制度か | 所得税等を支払時にあらかじめ徴収する | 仕入税額控除の要件を明確にする |
| 対象となる相手・取引 | 法律で定められた報酬・料金等 | 課税取引における仕入税額控除等 |
影響があるとすれば、免税事業者との取引における消費税側の処理です。取引先が適格請求書発行事業者でなければ、買い手側の仕入税額控除に制限が生じますが、これは源泉徴収の要否や対象金額とは別の話です。
源泉徴収の対象金額を税抜にできるかどうかも、適格請求書かどうかとは関係ありません。インボイス未登録事業者が発行した請求書であっても、報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、税抜の報酬額のみを対象として差し支えありません。
令和8年度税制改正により、2027年(令和9年)1月1日以後に生ずる所得から、防衛特別所得税が新設されます。
ただし、報酬・料金の源泉徴収税率が実質的に上がるわけではありません。防衛特別所得税として源泉徴収すべき所得税額の1%相当額が加わる一方、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%へ引き下げられます。
| 時期 | 所得税への上乗せ | 報酬・料金の合計税率 |
|---|---|---|
| 2026年12月まで | 復興特別所得税 2.1% | 10.21% |
| 2027年1月から | 復興特別所得税 1.1% + 防衛特別所得税 1.0%相当 | 10.21%(変更なし) |
改正前と改正後で上乗せ部分の合計は2.1%のままなので、通常の10%の所得税率が適用される報酬について、10.21%という源泉徴収税率の計算方法は変わりません。
一方、復興特別所得税の課税期間は従来の2037年末から2047年末まで10年間延長されます。
経理担当者は、2027年1月までに会計ソフトや源泉徴収関係のシステム・帳票が改正に対応しているかを確認しておきましょう。
間違いではありません。税込金額を対象にするのが原則です。請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、税抜金額のみを対象として差し支えないという取扱いがあります。
多く差し引かれた分は確定申告で精算されます。手元資金への影響が気になる場合は、次回から報酬額と消費税額を区分して記載し、支払方法について取引先と認識を合わせておくとよいでしょう。
二重課税ではありません。源泉徴収は所得税等、消費税は消費税で、別々の税金です。
また、源泉徴収は所得税等の前払いです。年間の所得が確定した後に、確定申告などによって最終的な税額と精算されます。
ありません。適格請求書の記載事項にも含まれていません。ただし、支払う側の計算ミスや認識のずれを防ぐため、源泉徴収税額や差引後の入金額を任意で記載する方法があります。
国内の株式会社や合同会社などに通常のデザイン料・制作費を支払う場合、原則として所得税法上の報酬・料金の源泉徴収は不要です。ただし、法人への支払いでも別の規定で源泉徴収の対象になる所得があります。
給与等の支払者でなければ、原則として報酬・料金等の源泉徴収は不要です。ただし、ホステス等への一定の報酬など例外があります。
通常の10%の所得税率が適用される報酬について、10.21%という合計税率は変わりません。防衛特別所得税が加わる一方、復興特別所得税の税率が引き下げられるためです。
源泉徴収の対象金額は、原則として消費税を含めた税込金額です。ただし請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合には、税抜金額のみを対象として差し支えありません。ネット上で税込と税抜の両方の説明が見つかるのは、この原則と例外のどちらか一方だけを切り取っているためです。
報酬を受け取る側が税抜金額を基準に処理してもらいたい場合は、請求書で報酬額と消費税額を分けて記載しましょう。適格請求書である必要はなく、インボイス未登録事業者でも同じ取扱いです。
あわせて、源泉徴収の対象となる報酬は法律で定められており、報酬の種類によって計算式が異なること、個人事業主でも給与等の支払いがなければ原則として源泉徴収義務者にならないこと、原稿料や弁護士報酬等では100万円を超える部分の税率が20.42%になることも押さえておきましょう。
2027年1月から防衛特別所得税が加わりますが、復興特別所得税の引き下げと合わせた上乗せ税率は2.1%で変わらないため、通常の報酬に対する10.21%という計算方法も変わりません。