更新日:2025.04.30
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インボイス制度がはじまったことで、事業者が仕入税額控除を受けるためにはインボイス(適格請求書)の発行が求められるようになりました。
これにともない、賃貸借にあたって賃貸借契約書に仕入税額控除の要件を満たすための項目を記載しなければなりません。未対応の場合はインボイスを発行できず、貸主・借主ともに仕入税額控除を受けられないおそれがあります。
賃貸借契約書をインボイス制度に対応させるには、要件や記載項目などの要点をおさえることが重要です。
本記事では、賃貸借契約書をインボイス制度に対応させる方法について、ひな形や駐車場の契約も交えながら解説します。
2023年10月1日にはじまったインボイス制度により、不動産の賃貸借契約書にもインボイス制度への対応が必要となりました。
そのため、貸主・借主が仕入税額控除を受けるために、インボイス(適格請求書)の発行や保存が求められます。一方、所有する物件が賃貸住宅の場合や、借主がインボイスの交付を求めていない場合はインボイス制度に対応する必要はありません。
なお、保存が必要なインボイスは一定期間の取引をまとめて交付できるため、借主は貸主から一定期間の賃借料に関するインボイスの交付を受け、それを保存することが可能です。
また、賃貸借契約書にインボイスの要件となる項目の一部が記載されていれば、通帳といった実際に取引した事実を示す書類とともに保存することで、借主は仕入税額控除の要件を満たせます。
仕入税額控除の適用要件を満たすためには、賃貸借契約がインボイス制度に登録する前後で対応方法が異なります。そのため、まずは賃貸借契約書を作成した時期を確認することが重要です。
対応方法を把握することで、インボイスの交付を求められた場合にスムーズに対処できます。
ここでは、賃貸借契約書をインボイス制度に対応させる2つの方法を解説します。
既存契約の場合、インボイス制度に対応した賃貸借契約書が締結されていません。そのため、インボイス制度に対応するには、覚書の発行によって不足事項を借主に通知する必要があります。
借主に通知する覚書には以下の記載が必要です。
借主に不足事項を通知する際は、書類またはメールの送付が認められています。ただし、メールを送付する場合は電子帳簿保存法への対応が必要となるため、注意しましょう。
新規契約の場合は、インボイス制度に対応した賃貸借契約書の用意が必要です。インボイス制度の開始後はインボイス(適格請求書)の交付義務が課されるため、定められた記載事項を明記しなければなりません。
賃貸借契約書の作成時には以下の要件を明記する必要があります。
家賃の支払方法が口座振替の場合、借主が仕入税額控除を受けるためには、預金通帳が必要になります(※)。また、請求書を発行する場合は、貸主による請求書へのインボイス制度の対応が必須です。
新規契約を締結する際には、既存契約と区別するために適用時期を明記しておきましょう。
(※)参考:国税庁「(口座振替・口座振込による家賃の支払)」
不動産業者がインボイス制度に対応する場合、自社に適したひな形を用意しておくと便利です。今後の新規契約や既存契約に対する不足事項の通知が、スムーズにおこなえます。
ここでは、インボイス制度に対応した賃貸借契約書と覚書のひな形を紹介します。
2023年10月1日以降に新規契約を締結する場合には、インボイス制度に対応した賃貸借契約書が必要です。今後の新規契約に備えて、インボイス制度に対応した賃貸借契約書のひな形を事前に用意しておきましょう。
賃貸借契約書を作成する際は、以下のひな形を参考にしてください。
賃貸借契約書 契約要項の賃貸人(以下「甲」という。)と賃借人(以下「乙」という。)とは、 【契約要項】
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既存契約でインボイス制度に対応する場合、覚書を発行して借主に不足事項を通知する必要があります。そのため、対応すべき既存契約の件数が多い場合には、覚書のひな形を作成しておくと便利です。
覚書を作成する際は、以下のひな形を参考にしてください。覚書のひな形を用意しておけば、契約ごとに消費税額を変更するだけでよく手間を省けます。
覚書 〇〇株式会社では、20XX年 月 日付けにて、〇〇様と締結した賃貸借契約書について、適格請求書等保存方式の導入に伴い、下記の内容を追加することを通知します。
本契約にかかる消費税額:〇〇円/月 |
駐車場の賃貸借では、原則として消費税が課税されます。そのため、駐車場の賃貸借において仕入税額控除を受けるためには、インボイス制度に対応しなければなりません。
駐車場の場合もテナントの賃貸借と同様に、既存契約か新規契約かで対応方法が異なります。
また、口座振替によって家賃を支払う場合、契約書と通知書、通帳をあわせて保管することが必要です。
最後に、賃貸借契約書のインボイス制度対応に関してよくある質問を紹介します。
仕入税額控除を受けるためには、賃貸借契約書にインボイス(適格請求書)の登録番号を記載する必要があります。
インボイス制度に対応した契約書には以下の記載事項が必要です。
個人向けの住宅を貸している場合、借主から受け取る家賃は消費税の対象外です。そのため、インボイス制度に対応した賃貸借契約書を作成する必要はありません。
原則として、土地の賃貸借における消費税は非課税とされています。そのため、土地の賃貸借をおこなう場合はインボイス制度に登録していなくても問題ありません。
参考:国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」
原則として、課税売上高が1,000万円以下の場合は消費税を納税する義務はありません。ただし、取引先(借手)がインボイスの交付を求める場合は、取引条件を考慮して登録するほうが良いケースもあります。
本記事では、賃貸借契約書をインボイス制度に対応させる方法について、ひな形や駐車場の契約も交えながら解説しました。
賃貸借では、インボイス制度への対応が必要なケースがあります。とくに、取引先からインボイス(適格請求書)の交付を求められる場合や仕入税額控除を受ける場合には、インボイス制度に対応した賃貸借契約書を用意しなければなりません。
インボイス制度への対応を検討しているなら、賃貸借契約書や覚書のひな形を作成しておくのがおすすめです。インボイスの要件を満たした賃貸借契約書があれば、今後の契約をスムーズに進められます。
賃貸借契約書や覚書のひな形を作成して、今後の対応を効率化しましょう。