更新日:2026.08.31

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インボイス制度では、事業者の税負担や事務負担を抑えるために複数の軽減措置が設けられています。代表的なものは、2割特例、3割特例、少額特例、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置です。
ただし、それぞれ対象者・適用期間・申請の要否が異なります。たとえば、2割特例はインボイス登録をきっかけに課税事業者になった小規模事業者向け、少額特例は一定規模以下の事業者が税込1万円未満の課税仕入れについてインボイス保存を省略できる制度です。
この記事では、2026年8月時点で確認しておきたいインボイス制度の軽減措置を、対象者・期間・申請方法・使い分けまでわかりやすく整理します。
インボイス制度の軽減措置は、誰の負担を軽くする制度なのかで分けると理解しやすくなります。
| 軽減措置 | 主な対象者 | 軽減される内容 | 申請・届出 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者 | 納付税額を売上税額の2割にできる | 事前申請不要。消費税申告時に適用を選択 |
| 3割特例 | 一定の個人事業者 | 令和9年・10年分の申告で納付税額を売上税額の3割にできる | 事前申請不要。申告時に適用を選択 |
| 少額特例 | 基準期間の課税売上高1億円以下等の事業者 | 税込1万円未満の課税仕入れはインボイス保存不要 | 申請不要。帳簿保存が必要 |
| 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置 | 免税事業者等と取引する課税事業者 | インボイスがなくても一定割合を仕入税額控除できる | 申請不要。帳簿と請求書等の保存が必要 |
まずは、「自社が売り手として納税額を抑えたいのか」「買い手としてインボイス保存の手間や仕入税額控除への影響を抑えたいのか」を分けて考えましょう。
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者の負担を軽くする制度です。
通常、消費税の納付税額は、売上にかかる消費税額から仕入れや経費にかかる消費税額を差し引いて計算します。しかし2割特例を使う場合は、売上にかかる消費税額の2割を納付税額にできます。
2割特例を使えるのは、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、本来は免税事業者であったことが基本的な前提になります。
一方、もともと課税売上高が1,000万円を超えている事業者や、インボイス登録とは関係なく課税事業者になる事業者は、原則として2割特例の対象外です。
2割特例を適用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。個人事業者であれば、令和5年分の10月から12月分を含む申告から、令和8年分の申告までが基本的な対象になります。
2割特例は事前の届出が不要で、消費税の確定申告時に適用を受ける旨を記載して申告します。また、課税期間ごとに適用するかどうかを選べます。
3割特例は、令和8年度税制改正で設けられた個人事業者向けの軽減措置です。インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった一定の個人事業者について、令和9年分・令和10年分の消費税申告で納付税額を売上税額の3割にできます。
2割特例と同じく、売上税額をもとに納付税額を計算できるため、仕入れにかかる消費税を細かく集計する負担を抑えやすい制度です。
3割特例は個人事業者向けの制度です。法人は対象外のため、2割特例が終わった後は、原則課税または簡易課税制度で申告することになります。
個人事業者であっても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合や、インボイス発行事業者でない課税事業者などは対象外になるため、適用可否は申告前に確認しましょう。
少額特例は、一定規模以下の事業者が税込1万円未満の課税仕入れを行った場合に、インボイスの保存がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる制度です。
少額の経費精算や日用品購入など、インボイスを1件ずつ回収・保存する負担を軽くするための措置です。
少額特例を使えるのは、次のいずれかに該当する事業者です。
基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者
特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者
この条件を満たせば、インボイス発行事業者かどうかに関係なく少額特例を利用できます。
少額特例で特に間違いやすいのが、税込1万円未満の判定単位です。判定は、商品ごとの金額ではなく、一回の取引の課税仕入れに係る金額で行います。
例
税込6,000円の商品+税込5,000円の商品を同じ店で同時に購入
→ 1回の会計は税込11,000円
商品ごとは1万円未満でも、その取引全体は1万円以上です。この場合は少額特例の対象にはなりません。
少額特例は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間に行われる課税仕入れが対象です。
事前の届出や申告書への付記は不要ですが、帳簿に取引年月日、取引内容、支払対価の額、相手方の氏名または名称などを記載して保存する必要があります。
インボイス発行事業者ではない免税事業者等から仕入れを行った場合、原則として仕入税額控除はできません。ただし、制度移行の負担を和らげるため、一定期間は仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があります。
| 期間 | 控除できる割合 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 80% | 制度開始直後の経過措置 |
| 令和8年10月1日から令和10年9月30日まで | 70% | 令和8年度税制改正で追加・見直し |
| 令和10年10月1日から令和12年9月30日まで | 50% | 段階的に控除割合が縮小 |
| 令和12年10月1日から令和13年9月30日まで | 30% | 最終段階の経過措置 |
| 令和13年10月1日以降 | 控除不可 | 経過措置終了後は原則どおり控除不可 |
この経過措置を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、帳簿への一定事項の記載が必要です。
また、令和8年度税制改正では、一定額を超える大口取引について経過措置の適用が制限される見直しも示されています。大規模な取引がある場合は、最新の公表資料や税理士への確認をおすすめします。
軽減措置は複数ありますが、すべてを同じ場面で使うわけではありません。特に2割特例や3割特例を使う場合は、売上税額をもとに納付税額を計算するため、個々の仕入れについて少額特例を使って仕入税額控除を計算する必要は基本的にありません。
| 状況 | 優先して確認したい制度 | 理由 |
|---|---|---|
| 免税事業者からインボイス登録した個人事業主・小規模法人 | 2割特例 | 納税額と事務負担を大きく抑えやすい |
| 令和9年・10年分の個人事業者 | 3割特例 | 2割特例終了後の個人事業者向け軽減策 |
| 少額の経費精算が多い課税事業者 | 少額特例 | 税込1万円未満の課税仕入れでインボイス保存を省略できる |
| 仕入れや経費が一定程度あり、業種別のみなし仕入率が有利な事業者 | 簡易課税制度 | 2割特例・3割特例後の選択肢になりやすい |
| 免税事業者と取引する買い手側の課税事業者 | 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置 | インボイスがなくても一定割合を控除できる場合がある |
2割特例・3割特例の終了後に簡易課税制度へ移行する場合は、届出期限に特例が設けられています。通常の期限と異なる扱いになることがあるため、申告前に国税庁の最新情報を確認しましょう。
条件として両方の対象になることはあります。ただし、2割特例を使う場合は納付税額を売上税額の2割で計算するため、個々の仕入れについて少額特例を使って仕入税額控除を計算する必要は基本的にありません。
法人は3割特例の対象外です。3割特例は、令和9年分・令和10年分の申告について、一定の個人事業者が使える軽減措置です。法人は、2割特例終了後に原則課税または簡易課税制度での申告を検討することになります。
使えません。税込1万円未満かどうかは、一回の取引の課税仕入れに係る金額で判定します。商品ごとの金額で判定するわけではないため、同じ会計で合計額が税込1万円以上になる場合は注意が必要です。
2割特例・3割特例は事前申請不要で、消費税申告時に適用を選択します。少額特例も事前申請は不要ですが、帳簿への必要事項の記載と保存が必要です。
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置も、帳簿と請求書等の保存が前提になります。
インボイス制度の軽減措置は、2割特例、3割特例、少額特例、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置に分けて確認すると整理しやすくなります。
インボイス登録をきっかけに課税事業者になった小規模事業者は、まず2割特例を確認しましょう。個人事業者は、その後の令和9年・10年分について3割特例も検討対象になります。少額の経費精算が多い事業者は、少額特例の対象になるかを確認することで、インボイス保存の事務負担を軽減できます。
一方、免税事業者等と取引する課税事業者は、仕入税額控除の経過措置を確認しておくことが重要です。制度ごとに対象者・期間・申請方法が異なるため、自社の立場に合わせて使える軽減措置を整理しておきましょう。