更新日:2026.08.31

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免税事業者や未登録の事業者から仕入れた場合、原則として仕入税額控除はできません。ただし経過措置により、支払った消費税の一定割合を控除できます。
この割合が2026年10月1日から変わります。これまでの80%は2026年9月30日で終了し、10月1日以後の仕入れからは70%になります。令和8年度税制改正前は「10月から50%」とされていたため、古い情報のまま準備を進めていると設定を誤ります。
この記事では、80%控除の計算方法を確認したうえで、70%になったときの計算、9月と10月をまたぐ取引の扱い、帳簿の記載方法までを整理します。
令和8年度税制改正により、経過措置は適用期限が2年延長され、控除割合の下がり方がなだらかになりました。現在のスケジュールは次のとおりです。
| 課税仕入れを行った時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 控除できない |
80%控除が使えるのは2026年9月30日までの課税仕入れです。切り替わりは決算期とは無関係で、仕入れを行った日で決まります。
改正前は、2026年10月に80%から50%へ一度に下がり、2029年9月30日で経過措置が終了する予定でした。
改正後は70%と30%が加わって4段階になり、終了時期も2031年9月30日まで延びています。2026年前半までに公開された解説記事や、会計ソフトの初期設定には改正前の内容が残っていることがあるため、切替前に確認してください。
経過措置の計算は複雑ではありません。通常どおり計算した仕入れに係る消費税額に、控除割合を掛けるだけです。
免税事業者に支払った金額のうち消費税に相当する部分を出し、その80%を控除の対象にします。残りの20%は控除できないため、費用として処理します。
割戻し計算は、課税期間中の課税仕入れの税込金額を税率ごとに合計し、そこから消費税額を割り戻す方法です。式は次のようになります。
10%対象:課税仕入れの税込合計額 × 7.8/110 × 80/100
8%対象:課税仕入れの税込合計額 × 6.24/108 × 80/100
7.8/110、6.24/108はいずれも国税分(消費税)の割合です。地方消費税は国税分から別途計算します。
積上げ計算には、インボイスに記載された消費税額等を積み上げる方法(請求書等積上げ方式)と、帳簿に計上した仮払消費税額等を積み上げる方法(帳簿積上げ方式)があります。
経過措置の対象となる仕入れにはインボイスがないため、請求書等積上げ方式は使えません。積上げで計算する場合は帳簿積上げ方式によります。
課税仕入れの都度、税込金額に10/110(軽減税率は8/108)を掛けた金額を仮払消費税額等として帳簿に計上し、その合計額に78/100と控除割合を掛けます。
仮払消費税額等の合計 × 78/100 × 80/100
免税事業者から税込11,000円(10%対象)で仕入れた場合を見てみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 支払額(税込) | 11,000円 |
| うち消費税相当額(11,000×10/110) | 1,000円 |
| 控除できる金額(1,000×80%) | 800円 |
| 控除できない金額 | 200円 |
申告書上は国税分と地方消費税分に分けて計算します。国税分は「11,000 × 7.8/110 × 80/100 = 624円」です。
軽減税率8%の取引で税込10,800円を仕入れた場合は「10,800 × 6.24/108 × 80/100 = 約499円」になります。端数処理の方法は自社の会計処理にそろえてください。
式の構造は変わりません。80/100を70/100に置き換えます。
10%対象:課税仕入れの税込合計額 × 7.8/110 × 70/100
8%対象:課税仕入れの税込合計額 × 6.24/108 × 70/100
先ほどと同じ税込11,000円の仕入れで比較します。
| 2026年9月30日まで(80%) | 2026年10月1日から(70%) | |
|---|---|---|
| 消費税相当額 | 1,000円 | 1,000円 |
| 控除できる金額 | 800円 | 700円 |
| 控除できない金額(自社の負担) | 200円 | 300円 |
| 申告書上の国税分 | 624円 | 546円 |
1件あたりの差は100円ですが、控除できない金額は200円から300円へ1.5倍になります。
免税事業者からの仕入れが年間で税込1,000万円ある事業者の場合を試算します。
| 項目 | 80%控除 | 70%控除 |
|---|---|---|
| 消費税相当額(1,000万円×10/110) | 約909,090円 | 約909,090円 |
| 控除できない金額 | 約181,818円 | 約272,727円 |
| 差額(年間の負担増) | — | 約90,909円 |
免税事業者との取引が多いほど影響は大きくなります。切替前に、取引先ごとの年間仕入額を把握しておくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
80%と70%のどちらを適用するかは、課税仕入れを行った日で判定します。請求書の発行日でも、支払日でもありません。
9月に納品を受けて10月に支払った取引は80%です。逆に、9月末に前払いして10月に納品を受けた取引は70%になります。
9月分の請求書が10月に届くケースが多いため、10月の入力時に無条件で70%を選ばないよう、担当者に周知しておいてください。
保守料や顧問料のように、一定期間にわたって役務の提供を受ける取引では、9月30日までの期間に対応する部分と10月1日以後に対応する部分に分けて計算します。
たとえば月額11,000円の保守料を2026年4月から2027年3月までの1年分としてまとめて支払っている場合、4月から9月までの6か月分は80%、10月から翌年3月までの6か月分は70%で計算します。
控除できない部分の消費税をどう処理するかは、2つの方法があります。取引先ごとにばらつくと決算で混乱するため、社内で1つに決めておいてください。
取引のたびに、控除できない分を仕入や経費の金額に含めて計上する方法です。税込11,000円の仕入れを80%控除で処理する場合は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,200円 | 現金 | 11,000円 |
| 仮払消費税等 | 800円 |
2026年10月以降の70%控除であれば、仮払消費税等が700円、仕入が10,300円になります。
都度計算する手間はありますが、決算での調整が不要になります。会計ソフトの税区分を設定しておけば自動で按分されます。
取引のたびは通常どおり消費税を全額計上しておき、決算のときに控除できない分をまとめて振り替える方法です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 現金 | 11,000円 |
| 仮払消費税等 | 1,000円 |
決算時に、控除できない200円を振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 雑損失 | 200円 | 仮払消費税等 | 200円 |
日々の入力は簡単になりますが、決算で対象取引を抽出する作業が必要です。免税事業者からの仕入れが少ない場合に向いています。
経過措置を適用するには、帳簿にその課税仕入れが経過措置の対象である旨を記載する必要があります。会計ソフトでは「80%控除対象」といった税区分を選ぶことで対応できます。
あわせて、区分記載請求書等と同じ事項が記載された請求書や領収書の保存も必要です。登録番号がないだけで、それ以外の記載事項は通常の請求書と同じものが求められます。
会計ソフトによっては、70%と30%の税区分が初期状態では用意されていないことがあります。改正前は80%と50%しか想定されていなかったためです。
切替前にソフトの更新状況を確認し、必要であればアップデートしてください。経費精算システムなど、会計ソフトと連携している周辺システムの更新も忘れずに行います。
あわせて注意したいのが、過去の仕訳を複製して新しい仕訳を作る運用です。10月以降に9月以前の仕訳をコピーすると、税区分が80%のまま残ります。
令和8年度税制改正で、経過措置に金額の上限が設けられました。一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、超えた部分には経過措置を適用できません。
改正前の基準は10億円でしたが、1億円に引き下げられています。この上限は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。控除割合の切替(2026年10月1日以後の課税仕入れ)とは基準が異なる点に注意してください。
大口の外注先が免税事業者である場合は、取引先ごとの年間仕入額を管理しておく必要があります。
税込1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる少額特例があります。この場合は満額を控除できるため、経過措置よりも有利です。
ただし、誰でも使えるわけではありません。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下という要件があります。適用期間は2029年9月30日までの課税仕入れです。
少額特例の期限(2029年9月末)と経過措置の期限(2031年9月末)は別なので、混同しないよう注意してください。
簡易課税制度を選択している場合、みなし仕入率で仕入税額を計算するため、仕入先が免税事業者かどうかで納税額は変わりません。経過措置の計算も不要です。
2割特例を適用している場合も同じです。経過措置の話は、本則課税で申告している買い手側の論点だと整理しておいてください。
請求書に登録番号があるかどうかで判断します。番号がある場合は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで有効な登録かを確認できます。番号がなければ、経過措置の対象として処理します。
控除割合は課税仕入れを行った日で決まるため、修正のタイミングにかかわらず80%です。返品や値引きがあった場合の調整も、もとの仕入れの控除割合に合わせます。
経過措置を適用せず、支払額の全額を費用として処理することも可能です。ただし控除できたはずの税額を放棄することになるため、通常は適用します。少額の取引が大量にあり、区分の手間が控除額を上回るような場合に限って検討する余地があります。
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについて、仕入税額控除が一切できなくなります。免税事業者との取引が多い場合は、それまでに取引条件の見直しや、取引先への登録の相談を進めておくことになります。
80%控除が使えるのは2026年9月30日までの課税仕入れです。10月1日以後は70%になり、その後も50%、30%と下がって2031年9月30日で終了します。
計算方法そのものは変わりません。消費税相当額に控除割合を掛けるだけです。実務で注意が必要なのは、9月と10月をまたぐ取引の判定、会計ソフトの税区分の更新、過去仕訳を複製したときの設定漏れの3点です。
あわせて、同じ相手からの年間仕入額が1億円を超える部分には経過措置が使えなくなる上限が新設されています。大口の免税事業者との取引がある場合は、取引先ごとの仕入額の把握も進めておいてください。