更新日:2024.12.28
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インボイス制度では、インボイス(適格請求書)で税込・税抜の表示を混在させてはいけません。表示を混在させてしまうと、インボイスの記載要件を満たさなかったり、事務処理の負担が増加したりする可能性があります。
また、表示が混在することで処理が不適切とされ、税務調査で指摘を受けるかもしれません。したがって、事前にインボイスの税込・税抜の表示方法を確認・統一する必要があります。
本記事では、インボイスでの税込・税抜の混在表示について、計算方法や端数処理と合わせて解説します。
インボイス制度とは、2023年から導入された消費税を適切に納付するための新しい制度です。この制度を利用するためには、「適格請求書等保存方式」にもとづいたインボイスの発行と保存をしなければなりません。
そして、インボイスを発行するためにはインボイス(適格請求書)発行事業者として登録を受ける必要があります。インボイス発行事業者として登録を受けることで、仕入税額控除が適用されます。
このインボイス制度により、これまでと比べて消費税の負担が抑えられるかもしれません。
インボイス制度の導入で、経理業務ではさまざまな影響が与えられています。この影響を理解しておかないと、今後、取引先との間でトラブルに発展してしまう可能性もあります。
ここでは、インボイス制度の導入で考えられる影響について、それぞれ解説します。
インボイス制度は、適切な消費税額を定めるための制度です。ただ、この制度を利用するためには、取引先から交付されたインボイス(適格請求書)の発行・保存が必要です。
現在、日本では標準税率(10%)と軽減税率(8%)の複数税率が導入されており、商品やサービスごとに税率を区分しなければなりません。インボイス制度では商品・サービスごとに税率や税率ごとの消費税額などを明記する必要があります。
インボイス制度では、免税事業者との取引は適用対象外です。このようなことから、インボイス発行事業者に登録していない事業者と取引をした場合、買い手の税負担が増えてしまうかもしれません。
税負担が増えるのを防ぐためには、インボイス発行事業者と取引をしたり、専門家に相談したりしましょう。
なお、事業者の負担を考慮して国税庁は経過措置を一定の期間設けています。経過措置の期間中は免税事業者などからの課税仕入も、仕入税額に相当する額の一定割合が控除の対象です。
インボイス制度では、消費税に関する計算方法をルールとして定めています。なかでも混同しやすいのが、税込・税抜の違いによる計算方法です。これらの計算方法に関する注意点を知っておかないと、請求書の記載方式を誤ってしまい、インボイス制度が適用されないかもしれません。
ここでは、インボイス制度で税込・税抜を計算する際に注意すべきポイントについて、それぞれ解説します。
従来の区分記載請求書等保存方式では、税込・税抜の表示に関して明確に定められていませんでした。一方で、インボイス制度では、税込・税抜の表示に関して明確な決まりがあります。
請求書を発行する際は、税込・税抜のどちらかに表記を統一するか、もしくは税込と税抜の請求書をそれぞれ発行する必要があります。品目ごとの明細は税込と税抜が混在しても問題ありませんが、合計金額は必ずどちらかの表記方法に統一しましょう。
インボイス制度では、個々の商品やサービスの税率ごとに合計金額を計算してから消費税の金額を計算しなければなりません。その際の消費税額の端数処理の方法は以下のとおりです。
これらの方法のいずれかを課税事業者ごとに選択しなければなりません。また、一度選択した方法は原則として変更できないため、事業の実態に合わせて慎重に検討しましょう。
インボイス制度では、請求書に消費税の金額を明記しなければなりません。消費税の金額の算出方法には、割戻し計算と積上げ計算があります。割戻し計算は、税率ごとに区分した取引の総額から消費税額を計算する方法です。たとえば、標準税率の税込金額が55,000円、軽減税率の税込金額が40,000円と想定します。
標準税率の場合の消費税額の算出方法は、以下のとおりです。
55,000×7.8/110=3,900円
軽減税率の場合の消費税額の算出方法は、以下のとおりです。
40,000×6.24/108=2,311円
なお、7.8/110は税込金額から標準税率の消費税額、6.24/108は税込金額から軽減税率の消費税額を算出するための係数です。
また、積上げ計算は、適格請求書に記載した消費税額などの合計額に、国税分のみを計算するための係数の78/100を掛けて消費税額を算出します。たとえば、以下の取引が発生したと想定します。
取引A~Cの消費税額は、以下のとおりです。
これらを税率ごとに消費税を合計して、78/100を掛けます。
10%対象:(300+500)×78/100=624円
8%対象:160×78/100=124円
事業者は割戻し計算と積上げ計算のどちらかを選択します。実務では会計ソフトを使って自動計算されることが多いですが、一度選択した計算方法は原則として変更できません。
ここでは、インボイス制度における消費税額の算出方法について、解説します。
売上税額の計算方法には、割戻し計算と積上げ計算があり、事業者はこのいずれかを選択します。割戻し計算が原則的な計算方法で、積上げ計算はインボイス発行事業者しか選択できません。
なお、積上げ計算を選択した場合は、仕入税額も積上げ計算でなければならないため、自社の業務形態に合わせて選択する必要があります。
仕入税額の計算方法も、割戻し計算と積上げ計算の2つから選択できます。原則は積上げ計算で、割戻し計算は売上税額の計算も割戻し計算を選択している場合にのみ選択が可能です。
なお、売上税額の計算で積上げ計算を選択している場合は、仕入税額も統一するようにしましょう。
また、どちらの方法でも、インボイス発行事業者以外の事業者との取引は計算対象に含まれません。
インボイス制度の導入で、請求書の作成や消費税額の計算がより複雑になりましたが、会計ソフトを導入することでこれらの作業を効率化できます。会計ソフトでは、以下のようなサービスや機能が備わっています。
上記の機能に加えて、多くの会計ソフトでは新制度や法改正にも対応していることから、適切な事業運営が実現できます。
本記事では、インボイスでの税込・税抜の混在表示について、計算方法や端数処理と合わせて解説しました。
インボイス制度の請求書では、税込・税抜の表記を統一する必要があります。また、消費税額の計算は、端数処理の方法を割戻し計算と積上げ計算のどちらかを事前に決めなければなりません。
これらの業務には、会計ソフトを活用するなどして業務効率化を図りながら、インボイス制度へも適切に対応しましょう。