更新日:2026.08.28

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「所得税の確定申告は済ませたけれど、消費税の申告はしていない」。インボイス登録をした事業者から、この相談が増えています。
インボイス登録をすると、課税売上高にかかわらず課税事業者になります。つまり、消費税の確定申告と納税の義務が発生しているということです。所得税の申告とは別に、消費税の申告が必要になります。
放置するとペナルティが加算されていきますが、税務調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば、負担は大きく抑えられます。さらに、条件によっては納税額そのものを圧縮できる特例が使える可能性もあります。
この記事では、放置した場合にいくら払うことになるのかを試算したうえで、今から何をすればよいかを順に解説します。
適格請求書発行事業者になれるのは課税事業者だけです。免税事業者が登録した場合、登録日をもって課税事業者に切り替わります。
ここで見落とされやすいのが、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても関係ないという点です。売上が少ないから免税、という判断は登録後には成り立ちません。
所得税と消費税は別の税目で、申告書も期限も異なります。所得税の確定申告を済ませたことで消費税の申告も終わったと思い込んでいるケースが少なくありません。
| 税目 | 対象期間 | 申告・納付期限 |
|---|---|---|
| 所得税及び復興特別所得税 | 1月1日〜12月31日 | 翌年3月15日 |
| 消費税及び地方消費税(個人) | 1月1日〜12月31日 | 翌年3月31日 |
期限が2週間ほどずれているため、所得税の申告を終えた時点で気が緩み、消費税の申告を失念するという流れが起きやすくなっています。
年の途中で登録した場合、課税事業者になったのは登録日からです。申告の対象になるのも登録日から年末までの取引だけで、年初からの1年分ではありません。
この点を誤解して「1年分を集計しなければ」と身構え、着手が遅れているケースもあります。実際の作業量は想像より少ないことが多いです。
申告をしないまま放置すると、本来の税額に加えて次のものが課されます。
期限までに申告しなかった場合に課されます。税率は納付すべき税額に応じて3段階です。
| 納付すべき税額 | 原則の税率 | 調査通知前に自主申告した場合 |
|---|---|---|
| 50万円以下の部分 | 15% | 5% |
| 50万円超300万円以下の部分 | 20% | 5% |
| 300万円超の部分 | 30% | 5% |
注目したいのは右の列です。税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、一律5%まで下がります。金額が大きいほど、この差は開きます。
なお、300万円超の部分に30%が適用されるのは、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税からです。それ以前は50万円超が一律20%でした。
納期限までに納付しなかった場合、その日数に応じて課されます。利息にあたるものです。
| 期間 | 令和8年の割合 | 令和4〜7年の割合 |
|---|---|---|
| 納期限の翌日から2か月以内 | 年2.8% | 年2.4% |
| 納期限の翌日から2か月経過後 | 年9.1% | 年8.7% |
令和8年から割合が引き上げられています。特に2か月を超えると年9.1%となり、一般的な借入金利を大きく上回ります。放置している期間はこの利率で負担が積み上がっていると考えてください。
前年および前々年に無申告加算税または重加算税を課された事業者が、さらに無申告を重ねた場合、無申告加算税が10%加重されます。1年目より2年目、2年目より3年目のほうが負担が重くなる仕組みです。
「毎年やっていないから、今さら1年分だけ出しても意味がない」と考えて放置するほど不利になります。
売上を意図的に除外する、架空の経費を計上するといった行為があった場合は、無申告加算税に代えて重加算税が課されます。無申告の場合の税率は40%です。
単に申告を忘れていた、後回しにしていたという場合はここに該当しません。ただし放置期間が長引くほど、意図的とみなされるリスクは上がります。
納付すべき消費税額が50万円だったケースで、対応の違いによる負担額を比べてみます。
| 対応 | 無申告加算税 | 延滞税(1年放置) | 合計の上乗せ額 |
|---|---|---|---|
| 調査通知前に自主申告 | 2.5万円(5%) | 約4.2万円 | 約6.7万円 |
| 調査通知後に申告 | 5万円(10%) | 約4.2万円 | 約9.2万円 |
| 調査で指摘を受ける | 7.5万円(15%) | 約4.2万円 | 約11.7万円 |
※ 延滞税は納期限の翌日から1年間放置した場合の概算です。実際の金額は日数と適用割合によって変わります。
本税50万円に対して、自主申告と調査での指摘では5万円ほどの差が生まれます。税額が大きくなれば差はさらに開きます。気づいた時点で動くことが、最も確実な負担軽減策です。
まず、自分がいつから課税事業者になっているかを確認します。適格請求書発行事業者公表サイトで自社の登録番号を検索すれば、登録年月日がわかります。
その日から課税期間の末日までが、最初の申告対象期間です。
ここが最も重要です。インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった場合、納付する消費税額を売上税額の2割に抑えられる特例があります。
この特例は事前の届出が不要で、確定申告書に付記することで適用を受けられます。仕入れの集計も不要なため、帳簿が整っていなくても申告できます。
無申告のまま放置している方の多くは、この特例の対象に該当します。本税そのものが大きく下がるため、まず適用可否を確認してください。
なお、適用要件や期限後申告での取扱いについては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
期限を過ぎた申告は「期限後申告」として受け付けられます。申告できなくなるということはありません。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書を作成できます。2割特例を適用する場合は、その旨を選択する項目があります。
複数年分ある場合は、古い年分から順に作成していきます。
| 区分 | 必要なもの |
|---|---|
| 共通 | 課税期間中の売上がわかる資料(売上台帳、請求書の控え、通帳など) |
| 2割特例を使う場合 | 上記のみ。仕入れの集計とインボイスの整理は不要 |
| 本則課税で計算する場合 | 受け取ったインボイス、仕入台帳、経費の領収書など |
| 提出方法 | e-Tax、郵送、税務署窓口のいずれか |
2割特例を使う場合は売上の資料だけで申告できます。「経費の領収書を揃えないと申告できない」と思い込んで手が止まっている場合は、まずこの点を確認してください。
申告はできても納税が難しい、というケースもあります。この場合も、申告せずに放置するのは最も不利な選択です。
納付が困難な事情がある場合、申請により分割納付が認められる制度があります。認められれば、一定期間にわたって分割で納付でき、延滞税の一部も軽減されます。
申請には期限や要件があるため、納期限を過ぎる前に所轄の税務署へ相談してください。相談自体は無料です。
申告だけ先に済ませ、納税は相談のうえ計画を立てる。この順序が、結果として負担を最も小さくします。
必要です。課税事業者になった年から、申告していない年分すべてが対象になります。古い年分から順に期限後申告を行ってください。
申告していないことだけを理由に、直ちに登録が取り消されるわけではありません。ただし税務署からの指導や調査の対象になる可能性があり、取引先からの信頼にも影響します。
必要です。消費税は所得ではなく取引に対して課される税金のため、事業が赤字でも納税額が発生します。所得税とは判断基準が異なります。
複数年分ある場合や、本則課税で計算する必要がある場合は依頼を検討する価値があります。一方、2割特例が使えて1年分だけであれば、確定申告書等作成コーナーで自力で対応できることも多いです。
インボイス登録をした時点で課税事業者になっており、消費税の確定申告が必要です。所得税の申告とは別の手続きで、期限も異なります。
放置すると無申告加算税と延滞税が積み上がります。特に延滞税は令和8年から割合が引き上げられ、2か月を超えると年9.1%です。
ただし、税務調査の通知前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%まで下がります。さらに2割特例が使えれば、本税そのものを抑えられる可能性があります。売上の資料さえあれば申告できるケースが多いため、まずは登録日と特例の適用可否を確認するところから始めてください。