更新日:2026.09.29

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ネットバンキングで振り込んだときの手数料について、「インボイスを保存しなくても仕入税額控除できるのか」と迷っていませんか。
ATMの振込手数料は帳簿のみで控除できますが、ネットバンキングの振込手数料は扱いが異なります。
この記事では、国税庁のインボイスQ&Aに基づいて、ネットバンキングの振込手数料で必要になる書類、通帳や入出金明細を使った簡便な保存方法、少額特例を使える事業者の条件、帳簿の記載例、売手負担の振込手数料の処理までを解説します。
ネットバンキング(インターネットバンキング)で支払った振込手数料について仕入税額控除を受けるには、原則として金融機関が発行する適格簡易請求書と帳簿の保存が必要です。
一方、ATMでの振込手数料は「自動販売機特例」の対象になるため、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます。
ネットバンキングについては、原則どおりすべてのインボイスを毎回保存する以外にも、実務負担を軽減できる方法があります。
| 方法 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 簡便な保存方法 | 振込が多頻度にわたり、すべてのインボイスを保存するのが困難な場合、通帳・入出金明細等と、その金融機関における任意の1取引分の適格簡易請求書を保存する | 要件を満たす事業者 |
| 少額特例 | 税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除を受ける | 基準期間の課税売上高1億円以下など一定規模以下の事業者。2029年9月30日まで |
振込方法ごとの扱いは次のとおりです。
| 振込方法 | インボイスの保存 | 根拠・取扱い |
|---|---|---|
| ATM | 不要。一定事項を記載した帳簿のみで控除可能 | 自動販売機特例(税込3万円未満) |
| 金融機関の窓口 | 原則必要 | 適格簡易請求書+帳簿 |
| ネットバンキング | 原則必要。簡便な保存方法または少額特例で負担軽減可能 | 国税庁インボイスQ&A 問103-2 |
インボイス制度では、「自動販売機または自動サービス機により行われる税込3万円未満の商品の販売等」について、インボイスの交付義務が免除されています。
この自動販売機・自動サービス機とは、課税資産の譲渡等と代金の収受が自動で行われ、その機械装置だけで取引が完結するものを指します。
金融機関のATMによる入出金・振込サービスは、この自動サービス機に該当します。
一方、ネットバンキングは、利用者のパソコンやスマートフォンから金融機関のシステムへ振込指示を行うサービスであり、この意味での「自動販売機または自動サービス機」には該当しません。
「窓口を使わない=自動販売機特例」ではありません。ATMは対象ですが、インターネットバンキングは対象外です。
「ATMと同じく窓口を介さないため、ネットバンキングもインボイス不要」とする説明は、国税庁の現在の取扱いとは異なります。
国税庁のインボイスQ&A問103-2では、金融機関の窓口またはオンラインで決済した際の入出金手数料・振込手数料について、仕入税額控除を受けるには原則として適格簡易請求書と帳簿の保存が必要と明記されています。
ネットバンキングの振込手数料を帳簿だけで処理できる代表例は、後述する少額特例を適用できる場合です。
金融機関の入出金サービスや振込サービスは、一般的に不特定かつ多数の者に対して行われる取引に該当するため、適格簡易請求書の交付対象になります。
そのため、ネットバンキングの振込手数料について仕入税額控除を受ける場合は、原則として次の2つを保存します。
金融機関が提供する適格簡易請求書
課税仕入れの内容を記載した帳簿
適格簡易請求書の提供方法は金融機関によって異なります。ネットバンキングの画面からPDF等を取得する銀行もあれば、手数料に関する別の書類を提供している銀行もあります。
利用している金融機関の「インボイス制度への対応」などの案内を確認してください。
金融機関への振込みが多頻度にわたり、すべての振込手数料について適格簡易請求書を保存することが困難な場合、国税庁は簡便な保存方法を認めています。
| 保存するもの | 内容 |
|---|---|
| 通帳または入出金明細等 | 個々の入出金・振込について、取引年月日と対価の額が確認できるもの |
| 任意の1取引分の適格簡易請求書 | その金融機関における任意の1回の入出金または振込に係る適格簡易請求書。金融機関が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、1回のみ取得・保存すればよい |
この方法を使えば、振込のたびにインボイスをダウンロード・保存する必要はありません。
ポイントは、入出金明細から個々の取引年月日と手数料額を確認できること。月ごとの合計金額しか分からない資料では、この簡便な保存方法の要件を満たせない可能性があります。
金融機関から、適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号・適用税率・取引内容などが記載された「各種手数料に係るお知らせ」の提供を受けている場合、そのお知らせを保存することで、任意の1取引分の適格簡易請求書の保存に代えることができます。
この方法を利用する場合も、通帳や入出金明細等と組み合わせて保存します。
金融機関によって書類の名称や提供方法は異なるため、自社の利用銀行がインボイス対応としてどの書類を提供しているかを確認してください。
ネットバンキングを通じて適格簡易請求書が電子データで提供される場合、原則としてその電磁的記録を保存する必要があります。
ただし、同種の手数料の支払いが繰り返し行われており、適格簡易請求書のデータをネットバンキング上で随時確認できるなど、電子帳簿保存法上の一定の要件を満たす場合は、必ずしも毎回ダウンロードする必要はありません。
一方、銀行との契約を解約すると過去のデータを閲覧できなくなるサービスもあります。自社の保存期間中にデータへアクセスできるかを確認したうえで、必要に応じてPDF等を保存しておくと安全です。
一定規模以下の事業者には、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを保存しなくても一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除を受けられる「少額特例」があります。
ネットバンキングの振込手数料は通常1万円未満なので、少額特例の対象事業者であれば、金融機関から適格簡易請求書を取得・保存しなくても帳簿だけで処理できます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 事業規模 | 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下 |
| 対象取引 | 一回の取引に係る支払対価の額が税込1万円未満の課税仕入れ |
| 適用期間 | 2023年10月1日〜2029年9月30日に行う課税仕入れ |
少額特例に事前の届出は必要ありません。要件を満たしていれば適用できます。
また、取引先が適格請求書発行事業者かどうかは関係ありません。インボイス発行事業者からの税込1万円未満の課税仕入れであっても、買い手側が少額特例の対象事業者であれば帳簿のみで仕入税額控除できます。
少額特例を適用する場合、帳簿には通常の課税仕入れと同様に、次の事項を記載します。
課税仕入れの相手方の氏名または名称
課税仕入れを行った年月日
課税仕入れに係る資産または役務の内容
課税仕入れに係る支払対価の額
帳簿に「少額特例の対象」と記載することは法令上の要件ではありません。ただし、会計ソフトの摘要欄などに「少額特例」と残しておくと、後からインボイスを保存していない理由を確認しやすくなります。
振込方法と適用する制度ごとに、帳簿の記載例を整理します。
| 状況 | 相手方 | 取引年月日 | 取引内容 | 支払対価 | 摘要例 | 保存書類 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ATMで振込 | 〇〇銀行 | 2026/10/5 | 振込手数料 | 440円 | 自販機特例 | 帳簿のみ |
| ネットバンキング 少額特例対象 |
〇〇銀行 | 2026/10/5 | 振込手数料 | 330円 | 少額特例 ※任意 |
帳簿のみ |
| ネットバンキング 原則処理 |
〇〇銀行 | 2026/10/5 | 振込手数料 | 330円 | ― | 帳簿+適格簡易請求書 または簡便な保存方法 |
自動販売機特例を適用する取引については、2023年10月1日の制度開始時に遡って、帳簿に相手方の住所・所在地を記載する必要はありません。
なお、自動販売機特例を利用する場合は、特例の対象となる取引であることが分かる記載も必要です。会計ソフトでは摘要欄へ「自販機」や「自動販売機特例」などと記載しておくと分かりやすいでしょう。
取引先への支払時に、請求額から振込手数料相当額を差し引いて振り込む商慣行があります。
この場合の消費税処理は、当事者間の契約関係や売手側の経理方法によって主に3つに分かれます。
| 売手の処理 | 内容 | 売手が保存・確認するもの | 買手側の対応 |
|---|---|---|---|
| 売上げに係る対価の返還等として処理 | 差し引かれた振込手数料相当額を売上値引きとして扱う。原則は適格返還請求書の対象だが、税込1万円未満なら交付義務が免除される | 対価の返還等の事実を帳簿に記録する | 仕入対価の返還等として処理 |
| 支払手数料として処理 | 買手から代金決済上の役務提供を受けたものとして課税仕入れにする | 買手が交付する適格請求書、または売手が作成して買手の確認を受けた仕入明細書など | 必要なインボイス対応を行う |
| 買手による立替払として処理 | 買手が売手に代わって金融機関へ振込手数料を支払ったものとして扱う | 原則として金融機関の適格簡易請求書と買手が作成した立替金精算書等。ATMの場合は一定の要件の下で帳簿のみの保存が可能 | 必要書類を売手へ交付する |
一般的には、振込手数料相当額が1万円未満であれば適格返還請求書の交付義務が免除されるため、「売上げに係る対価の返還等」として処理する方法は事務負担を抑えやすい方法です。
2026年からは取適法にも注意が必要です。取適法の対象となる取引では、当事者間で合意していたとしても、買手が振込手数料を売手に負担させ、代金から差し引くことは禁止されています。自社の取引が取適法の対象かを確認してください。
月末に1か月分の振込手数料をまとめて会計処理すること自体は可能ですが、取引内容を確認できる資料を残しておくことが重要です。
特に国税庁Q&A問103-2の簡便な保存方法を利用する場合、保存する通帳や入出金明細等は、個々の取引年月日と対価の額を確認できるものでなければなりません。
そのため、1か月分の合計金額だけを帳簿に記載し、個々の振込手数料を確認できる明細を残さない運用は避けましょう。
外国為替取引そのものに係る役務の提供は、消費税法上の非課税取引です。そのため、外国為替業務の対価として非課税となる手数料については、仕入税額控除の対象にはならず、インボイス保存も仕入税額控除のためには必要ありません。
ただし、海外送金に関連して金融機関が提供するすべてのサービスが一律に非課税になるわけではありません。外国為替業務の周辺業務として別途提供されるサービスなどは、課税となる場合があります。
「海外送金手数料」という名称だけで判断せず、利用している金融機関の明細や手数料表で消費税区分を確認してください。
簡易課税制度や2割特例を適用している場合、納付税額を実際の課税仕入れに係る消費税額から計算しないため、インボイスの保存は仕入税額控除の要件にはなりません。
そのため、振込手数料についてもインボイスの有無によって消費税の納税額が変わるわけではありません。
ただし、法人税や所得税の経費を裏付ける資料として、入出金明細などの取引記録は保存しておきましょう。
なお、2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までで終了します。その後は、一定の個人事業者について3割特例が設けられています。
金融機関が提供する1枚の資料だけで、適格簡易請求書のすべての記載事項を満たす必要はありません。複数の書類を組み合わせて必要事項を確認できる場合もあります。
また、国税庁Q&A問103-2では、金融機関から適格請求書発行事業者の名称・登録番号・適用税率・取引内容が記載された「各種手数料に係るお知らせ」の提供を受けている場合、その書類を保存することで任意の1取引分の適格簡易請求書に代える方法も認められています。
金融機関の登録番号が正しいか確認する場合は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトを利用できます。
金融機関に支払う課税対象の入出金手数料や振込手数料については、基本的に国税庁Q&A問103-2の考え方で整理します。
ATMの機械装置だけで入出金や振込の取引が完結し、税込3万円未満である場合は自動販売機特例を利用できます。
窓口やオンラインで発生する課税手数料については、原則として適格簡易請求書と帳簿の保存が必要ですが、簡便な保存方法や少額特例を利用できる場合があります。
ネットバンキングの振込手数料は、ATMと異なり自動販売機特例の対象ではありません。仕入税額控除を受けるには、原則として適格簡易請求書と帳簿の保存が必要です。
ただし、振込が多頻度にわたりすべてのインボイスを保存するのが困難な場合は、通帳・入出金明細等と、その金融機関における任意の1取引分の適格簡易請求書を組み合わせる簡便な保存方法が認められています。
さらに、基準期間の課税売上高が1億円以下など一定規模以下の事業者は、2029年9月30日まで、税込1万円未満の課税仕入れについて少額特例を利用できます。振込手数料は通常1万円未満なので、対象事業者であれば帳簿のみで処理できます。
ATM・ネットバンキング・窓口ではインボイスの扱いが異なるため、自社の振込方法と事業規模を整理したうえで、最も負担の少ない保存方法を決めておきましょう。