更新日:2024.11.27
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本記事では、インボイス制度に対応するための「適格請求書」について詳しく解説します。適格請求書に必須の記載項目、フォーマットへの切り替え手順、発行時の注意点などを、わかりやすく丁寧に説明していきます。標準税率10%やフリーランス向けの請求書など、具体的な例も交えて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読めば、適格請求書の発行に必要な知識を網羅的に理解し、スムーズにインボイス制度に対応できるようになるでしょう。
適格請求書には、以下の項目を記載する必要があります。
【適格請求書に記載義務のある項目】
【義務ではないが記載すべき項目】
ここからは、それぞれの項目について紹介しますので、請求書フォーマットを切り替える際の参考にしてください。
宛名には、従来どおり請求書を受け取る側の法人名や個人名を記載します。法人名を記載する場合は部署や担当者名を入れておくことで、受領する側が処理しやすくなるでしょう。
送付側には、適格請求書を発行する適格請求書発行事業者の名称を記載します。事業者の名称だけでなく、法人なら本社事業所の所在地、個人なら住所を記載することが多い傾向です。登録番号は、税務署から通知された登録番号を記載します。
請求書番号とは、発行する請求書の管理がしやすいように付ける番号です。記載義務はありませんが、番号付けしておくと「必要なときに探しやすい」などのメリットがあります。番号の付け方は、主に以下の2通りです。
別の請求書と番号が重なってしまうと区別しにくくなるため、重複しないように付けるようにしましょう。
請求書を発行した日付は、作成した日または発送した日を記載するのが一般的です。請求書の発行日が取引先の業務の締め日や経理処理に影響する場合は、取引先と打ち合わせた日付を記載しても問題ありません。
内容には、以下の項目の記載が決められています。
取引内容に商品がある場合は、商品名だけでなく品番を記載しておくと、ミスを防ぎ管理しやすくなります。軽減税率対象品目に当てはまる場合は「※」など、記号で表記しての記載も可能です。税率10%と8%に分けて、それぞれ合計した以下の項目を記載します。
取引金額は、税込・税抜表示のどちらでも構いません。
振込先や支払期限を記載します。特に記載義務はありませんが、請求書内に記載しておくことで、取引先の経理処理の手間を軽減することが可能です。振込先には、以下の内容を記載しましょう。
記載する支払期限は、取引先と事前にすり合わせしておいた日付です。年末年始やお盆休みなど、金融機関の休業期間と重なる場合は、休み前・休み後どちらにするかを話し合っておきましょう。振込手数料は、どちらが負担するかを事前に決めておき、合わせて明記します。
個人事業主が請求書を発行する場合は、さらに源泉徴収額の記載も必要です。源泉徴収制度とは、売手側の報酬から所得税を天引きし、買手側の企業に納税してもらう仕組みを指します。
請求書に源泉徴収額が記載されていなくても、取引先は所得に対して源泉徴収の支払いを行っています。請求書にあらかじめ源泉徴収額が記載してあると、取引先の経理処理の手間が省けるでしょう。
従来の請求書から適格請求書へフォーマットを切り替えるには、以下の手順を参考にしましょう。
インボイス制度が本格的に導入されるまで、6年間の段階的な経過措置が設けられており、従来の請求書フォーマットでも仕入税額控除は受けられます。しかし、2029年10月からは適格請求書フォーマットで対応しなくてはなりません。適格請求書への切り替えは、事前に余裕を持って行いましょう。
適格請求書には、事業者の名称だけでなく登録番号の記載が必要です。また適格請求書を発行するには事前に税務署へ申請し、適格請求書発行事業者に登録する必要があります。適格請求書発行事業者に登録できるのは、課税事業者のみで免税事業者はできません。
免税事業者とは、消費税納税の基準となる期間の課税対象となる売上高が1,000万円以下の事業者です。消費税納税の基準となる期間は、個人事業主であれば前々年、法人なら前々事業年度が該当します。
課税対象となる売上高が1,000万円を超えると、課税事業者への変更が必要になり、消費税の納税義務が発生します。登録申請はe-TAXか書面提出で行うことが可能です。自社に合う申請方法を選択しましょう。
適格請求書発行事業者として税務署に登録されると、登録番号が記載された通知書が届きます。登録番号は「すでに法人番号を持つ事業者であるか」によって違いがあります。
通知された番号が上記のルールに当てはまるかを確認し、異なるようなら税務署に問い合わせましょう。適格請求書発行事業者として登録された番号は、取引先がインボイスを発行するのに必要です。通知された番号を確認したら、取引先に通知しましょう。ただし、取引先が適格請求書発行事業者に登録していない場合は通知する必要はありません。そのため、事前に確認しておくことが必要です。
適格請求書のフォーマットには、従来の記載項目から以下の項目を追加する必要があります。
適格請求書のフォーマットは、自社でオリジナルを作ることも可能ですが、Webサイトからダウンロードもできます。取引内容によってさまざまなフォーマットが紹介されているので、活用するのもおすすめです。
消費税の仕入税額控除を受けるためには、発注先から発行される適格請求書が必要です。自社が適格請求書発行事業者に登録済みで発注先が登録していない場合は、適格請求書が発行できないため買手側が消費税額を全額負担する必要があります。
発注先が登録しているかどうかは、国税庁の公表サイトで確認可能です。もし発注先が免税事業者である場合や、適格請求書発行事業者でなく今後も申請する予定がない場合は、適格請求書発行事業者になるよう働きかけが必要になるでしょう。
適格請求書を取引先に発行する際は、以下の3点に注意しましょう。
適格請求書等保存方式への対応に向けて、これらのポイントに注意しながら切り替え準備をすすめましょう。
適格請求書は、電子インボイスとして電子データでの提出も可能です。電子インボイスの提出には、以下の方法があります。
電子帳簿保存法により請求書や帳簿の電子保存が義務化されると、電子インボイスの保存もデータで行う必要があります。電子帳簿保存法とは、企業の経営に関わる税法の中で紙での保管が義務化されている書類を、電子データで保存することを認める法律です。
2024年1月より義務化される予定でしたが、令和5(2023)年度の税制改正大綱により、事情がある場合に限り猶予が設けられました。この事情とは、電子インボイスを保存するシステムの準備や、社内でのワークフローの未整備などが挙げられます。電子インボイスの電子保存には、専用のシステムが必要です。電子帳簿保存法の義務化に間に合うように、体制を整えておきましょう。
消費税の記載する際は、税率ごとに分けた適用税率または消費税額等のどちらかを記載します。消費税額等を記載する場合は、一通の適格請求書について8%・10%の税率ごとに端数処理を1回行うことが必要です。
例えば請求金額の1円の単位と、消費税8%・10%の対象合計を合わせた単位が一致しない場合、いずれかの税率の消費税を調整して請求金額に合わせます。取引した商品ごとに消費税額を計算して端数処理を行い、合計金額を記載することはできません。そのため、消費税額を記載するときは注意が必要です。
適格請求書の発行元や受領先は、発行してから7年間保存することが義務となっています。発行元は適格請求書の写し、受領先は発行した適格請求書で保存します。また、仕入税額控除を受けるためには適格請求書の原本の保存が必要です。ただし、必要事項が記載されていれば、帳簿や明細表でも問題ありません。
適格請求書は紙での書類だけでなく、CDやハードディスクに電子データで保存することも認められています。電子インボイスで保存する場合は、電子帳簿保存法に従って保存が必要です。適格請求書への切り替えに伴い、保存体制を整えましょう。
適格請求書のフォーマットには、適格請求書発行事業者として決められた項目を記載する必要があります。従来の請求書の記載項目に加え、以下の記載項目の追加が必要です。
適格請求書は、取引先が仕入税額控除を受けるために必要な書類です。適格請求書を発行するには、課税事業者であり、税務署へ申請・登録された事業者である必要があります。
適格請求書は、受領側と発行側ともに7年間の保管義務があるため、請求書のフォーマット切り替えと同時に準備をはじめましょう。また、適格請求書は電子インボイスとして発行・受領が可能です。電子帳簿保存法が義務化されると、電子データでの保存が必要になることに注意しましょう。