更新日:2026.09.30

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「会社を設立すると2年間は消費税を払わなくていい」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
新設法人は、設立1期目・2期目に消費税の基準期間がないため、一定の条件を満たせば原則として免税事業者になります。
ただし、無条件で2年間免税になるわけではありません。資本金の額、設立後の課税売上高や給与等支払額、親会社等との関係によっては1期目や2期目から課税事業者になります。
また、免税事業者であっても適格請求書発行事業者としてインボイス登録すると、登録日以後は消費税の申告・納付が必要です。
この記事では、法人の消費税が免除される仕組みと条件、免除されないケース、インボイス登録するかどうかの判断基準、登録した新設法人が利用できる2割特例と2026年10月以降の対応まで解説します。
消費税の納税義務は、原則として2期前の事業年度である「基準期間」の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。
新たに設立された法人は、通常、設立1期目・2期目には基準期間がありません。そのため、一定の例外に該当しなければ消費税の納税義務が免除されます。
ただし、「新設法人=必ず2期免税」ではありません。
| 時期 | 免税となる主な条件 | 課税となる主なケース |
|---|---|---|
| 設立1期目 | 基準期間がなく、事業年度開始日の資本金等が1,000万円未満で、特定新規設立法人等にも該当しない | 資本金等1,000万円以上、特定新規設立法人、インボイス登録、課税事業者の選択等 |
| 設立2期目 | 上記の新設法人等の例外に該当せず、特定期間の判定でも課税事業者とならない | 特定期間の課税売上高による判定、資本金等1,000万円以上、特定新規設立法人、インボイス登録等 |
| 設立3期目以降 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、その他の課税要件に該当しない | 基準期間の課税売上高1,000万円超、特定期間による判定、インボイス登録等 |
「2年間免税」ではなく、厳密には「設立1期目・2期目は基準期間がないため原則免税」と考えるのが正確です。1期目が12か月未満なら、実際の免税期間は24か月より短くなることがあります。
設立1期目には基準期間がありません。
そのため、事業年度開始日である設立日時点の資本金または出資金が1,000万円未満で、特定新規設立法人などの例外にも該当しなければ、原則として消費税の納税義務は免除されます。
設立日の資本金・出資金が1,000万円未満
特定新規設立法人に該当しない
インボイス登録や課税事業者の選択等によって自ら課税事業者になっていない
なお、設立後に期中で増資した場合でも、新設法人の資本金判定は原則としてその事業年度開始日の金額で行います。翌事業年度の開始日時点で1,000万円以上となっていれば、その翌期の判定に影響します。
設立2期目も通常は基準期間がありません。
ただし、1期目が一定期間以上ある場合は「特定期間」の判定が必要です。
法人の特定期間は、原則として前事業年度の開始日以後6か月間です。
この特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合、2期目は課税事業者となります。ただし、国内事業者は課税売上高に代えて、特定期間中に実際に支払った給与等支払額で判定することもできます。
例
特定期間の課税売上高:1,500万円
特定期間の給与等支払額:700万円
この場合、給与等支払額を基準に判定すれば1,000万円以下なので、他の課税要件に該当しなければ2期目も免税となる可能性があります。
給与等支払額には、所得税の課税対象となる給与や賞与などが含まれます。一方、非課税の通勤手当や旅費、未払給与は含まれません。
設立1期目が7か月以下の場合は、その前事業年度に特定期間が存在しない扱いとなります。
そのため、2期目は特定期間の課税売上高による判定を行いません。
ただし、資本金1,000万円以上の新設法人や特定新規設立法人、インボイス発行事業者など、別の理由で課税事業者になる場合は免税にはなりません。
3期目以降は、原則として前々事業年度が基準期間になります。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者、1,000万円以下なら他の課税要件に該当しない限り免税事業者です。
そのため、「新設法人の免税は必ず2期で終了する」とは限りません。1期目の課税売上高が基準額以下であれば、3期目も免税となる可能性があります。
基準期間に含まれる事業年度が1年未満の場合は、その課税売上高を12か月分へ年換算して判定します。
基準期間がない事業年度の開始日において、資本金または出資金が1,000万円以上である法人は「新設法人」に該当し、消費税の納税義務が免除されません。
設立1期目だけでなく、基準期間がない2期目についても、その事業年度の開始日時点で資本金等が1,000万円以上であれば同様です。
2期目以降、特定期間がある場合は、その期間の課税売上高によって納税義務を判定します。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、国内事業者であれば給与等支払額を使った判定を選択できるため、給与等支払額が1,000万円以下なら免税となる余地があります。
資本金が1,000万円未満でも、大企業等に支配されて設立された一定の法人は「特定新規設立法人」として1期目から課税事業者になる場合があります。
主な判定では、他の者によって株式等の50%超を直接または間接に保有されるなどの「特定要件」に該当し、その判定対象者の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合が対象になります。
さらに、2024年10月1日以後に開始する課税期間では、課税売上高5億円超に加え、判定対象者の売上金額・収入金額その他の収益の合計額が50億円を超える場合も対象です。
一般的な小規模法人では該当するケースは限られますが、大企業の子会社・関連会社として法人を新設する場合は確認が必要です。
適格請求書発行事業者として登録を受けている法人は、基準期間・特定期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務が免除されません。
したがって、資本金1,000万円未満で新設法人の免税要件を満たしていても、インボイス登録を受けた場合は登録日以後について消費税の申告・納付が必要になります。
設備投資による消費税の還付などを目的として「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、自ら課税事業者を選択する方法もあります。
また、課税事業者である期間に一定の調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合は、その後一定期間、事業者免税点制度や簡易課税制度の適用が制限されることがあります。
1期目を7か月以下の短い事業年度に設定すると、2期目の特定期間による判定がなくなります。
そのため、特定期間の売上が急速に伸びることによって2期目から課税事業者になるケースを避けられることがあります。
一方、実際の免税期間は「短い1期目+2期目」となるため、設立から約24か月免税になるとは限りません。
設立日から1期目の決算日までを12か月に近づければ、1期目と2期目を合わせた期間も長くなります。
ただし、1期目が7か月を超えれば2期目に特定期間判定が生じるため、単純に「1期目を長くすれば必ず有利」とは限りません。
決算期は消費税だけでなく、繁忙期、資金繰り、法人税の申告時期なども踏まえて決めましょう。
個人事業主と法人は、消費税法上も別の事業者です。
そのため、法人成りした場合、個人事業時代の課税売上高をそのまま法人の基準期間や特定期間の課税売上高として使用するわけではありません。
個人事業主として課税事業者だった場合でも、新設した法人は法人として改めて納税義務を判定します。
また、個人事業主として取得したインボイス登録番号は法人へ引き継げません。法人としてインボイスを発行する場合は、法人名義で新たに登録申請が必要です。
免税事業者である新設法人が、適格請求書発行事業者として登録を受けると、登録日以後は課税事業者になります。
現在は、免税事業者が2031年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合、登録申請書に提出日から15日以後の日を「登録希望日」として記載することで、その日から登録を受ける経過措置があります。
この場合、原則として「消費税課税事業者選択届出書」を別途提出する必要はありません。
新たに設立した免税法人が設立した課税期間の初日から登録を受けたい場合は、その課税期間の末日までに所定の登録申請を行うことで、課税期間の初日に登録を受けたものとみなされる特例があります。
登録の必要性を判断するときに重要なのが、売上先の構成です。
| 主な取引先 | 登録判断のポイント |
|---|---|
| 本則課税の法人・事業者が中心 | 取引先が仕入税額控除のためにインボイスを必要とするため、登録の必要性が高くなりやすい |
| 一般消費者が中心 | 消費者は仕入税額控除を行わないため、インボイス登録の必要性は比較的低い |
| 簡易課税・2割特例・3割特例を利用する事業者が中心 | 相手側の納税額計算では個々の仕入先のインボイス有無の影響が小さいため、登録要請を受けない場合もある |
インボイス未登録の免税事業者からの課税仕入れについては、一定期間、買手が仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があります。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 控除不可 |
2026年10月1日からは控除割合が80%から70%へ下がります。
そのため、新設法人が免税を維持するか登録するかを考える際は、現在の取引先が未登録をどこまで許容しているかだけでなく、今後の控除割合の縮小も考慮しましょう。
インボイス登録をしなくても、基準期間や特定期間の判定によって課税事業者になることがあります。
すでに消費税の納税義務が生じるのであれば、インボイス登録によって新たに消費税負担が発生するわけではありません。
そのため、取引先がインボイスを必要としている法人では、「自然に課税事業者になるタイミングに合わせてインボイス登録する」という考え方もあります。
個人事業主のインボイス登録番号と法人の登録番号は別です。
個人事業主として適格請求書発行事業者だった人が法人化する場合も、法人として新たに登録申請を行います。
法人の登録番号を取得したら、取引先へ新しい番号を共有し、請求書・契約書・取引先マスタ等を更新しましょう。
インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者となり、課税事業者になった一定の事業者は「2割特例」を利用できます。
2割特例を利用すると、納付する消費税額を売上税額の20%とすることができます。
事前の届出は必要なく、確定申告時に適用するかを選択できます。
| 区分 | 2割特例の対象期間 | 終了後 |
|---|---|---|
| 法人 | 2026年9月30日までの日の属する課税期間まで ※3月決算法人なら2027年3月期まで対象になり得る |
本則課税または簡易課税。3割特例は利用できない |
| 個人事業者 | 原則2026年分まで | 一定の要件を満たす場合、2027年分・2028年分に3割特例 |
2割特例は、インボイス登録がなければ免税事業者であった事業者の負担を軽減する制度です。
そのため、インボイス登録とは別の理由ですでに課税事業者となる法人は、原則として対象になりません。
資本金等1,000万円以上の新設法人
特定新規設立法人
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える法人
特定期間の判定など、インボイス登録とは別の理由で課税事業者になる法人
「消費税課税事業者選択届出書を提出している=必ず2割特例を使えない」とは限りません。2023年10月1日以後に開始する課税期間では、課税事業者を選択していても、基準期間の課税売上高が1,000万円以下など一定の要件を満たせば2割特例を利用できる場合があります。
2割特例の終了後、法人は3割特例を利用できないため、本則課税または簡易課税で消費税を計算します。
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの要件を満たす事業者が選択でき、実際の仕入税額ではなく事業区分ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算します。
原則として簡易課税を利用したい課税期間の初日の前日までに届出書を提出します。
ただし、2割特例を適用した課税期間の翌課税期間については、その翌課税期間の確定申告期限までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、その課税期間から簡易課税を利用できる特例があります。
請求できます。
免税事業者が取引価格に消費税相当額を含めたり、請求書に消費税相当額を表示したりすること自体は禁止されていません。
ただし、適格請求書発行事業者ではないため登録番号はなく、適格請求書と誤認されるおそれのある表示をした書類を交付することはできません。
できます。
2031年9月30日までの日の属する課税期間では、免税事業者が登録申請書に登録希望日を記載することで、その登録希望日から適格請求書発行事業者になる経過措置があります。
登録希望日は、原則として申請書の提出日から15日以後の日を指定します。
登録日から課税事業者となり、その課税期間について登録日以後の取引に係る消費税の申告・納付が必要になります。
一定の場合は戻れません。
免税事業者が経過措置によって課税期間の途中から登録し、その登録日の属する課税期間が2023年10月1日を含まない場合は、登録を取り消しても、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者になれません。
短期間だけインボイス登録してすぐ免税へ戻す、という前提で登録するのは避けましょう。
「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。
翌課税期間の初日から登録を取り消したい場合は、その翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出する必要があります。
ただし、登録を取り消しても、その法人が基準期間・特定期間の売上高や2年間の課税制限などによって課税事業者に該当する場合は、消費税の申告・納税義務は続きます。
新設法人は設立1期目・2期目に基準期間がないため、資本金1,000万円未満など一定の条件を満たせば原則として消費税の納税義務が免除されます。
ただし、資本金等が1,000万円以上の新設法人、特定新規設立法人、特定期間の判定で課税事業者になる法人、インボイス発行事業者などは免税になりません。
また、1期目が7か月以下なら2期目の特定期間判定がないなど、事業年度の長さによっても実際の免税期間は変わります。そのため、「会社を作れば必ず2年間免税」と一律に考えないことが重要です。
インボイス登録するかどうかは、取引先が本則課税の事業者中心なのか、一般消費者中心なのか、自然に課税事業者となる時期はいつなのかを確認して判断しましょう。
2026年10月から、免税事業者等からの仕入れに係る買手側の控除割合は70%へ下がります。また、新設法人が利用できる2割特例も2026年9月30日までの日の属する課税期間で終了し、法人には3割特例がありません。
2割特例終了後は、本則課税と簡易課税のどちらが自社に合うかまで含めて、あらかじめ納税額を試算しておくことが重要です。