更新日:2024.10.26
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2023年10月からインボイス制度が施行されました。さまざまな現場でインボイス制度について議論されたものの、今でもインボイス制度を正しく理解できていないと感じている方が多いのではないでしょうか。
インボイス制度は企業だけの問題ではなく、個人事業主やフリーランスで働いている方にとっても大きな問題となります。
そこで、本記事ではインボイス制度とは何か、導入する上で知っておくべきメリットやデメリットについて解説していきます。インボイス制度について理解を深めることで、賢く制度を利用するためにもぜひ最後までご覧ください。
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インボイス制度とは、これまでの区分記載請求書方式が2023年10月1から「適格請求書等保存方式」へと変更された制度です。適格請求書には商品やサービスに対して、適用されている税率(標準税率・軽減税率)や税率ごとの消費税額、登録番号の記載が必須となります。すべての要件を満たしていない場合は、請求書の受領側の仕入税額控除が適用されません。
区分記載請求書の発行は任意であったものの、適格請求書では交付義務があります。ただし、適格請求書の発行を行うことができるのは「適格請求書発行事業者」のみです。適格請求書発行事業者への登録は課税事業者のみ申請することができ、登録申請書を税務署へ提出することで手続きできます。申請後は審査が行われたのちに登録され、登録番号が発行されます。
2023年10月1日に導入されたインボイス制度。 個人事業主にとって、この制度に登録するかどうかは重要な判断となります。 登録にはメリットだけでなくデメリットも存在するため、しっかりと理解した上で判断する必要があります。
インボイス制度に登録することで、個人事業主は以下のようなメリットを得られます。
インボイス制度では、適格請求書発行事業者だけが、仕入税額控除の適用を受けるための適格請求書を発行できます。 つまり、インボイス制度に登録していない事業者は、取引先に適格請求書を発行できず、取引先が仕入税額控除を受けられなくなってしまうのです。
そのため、インボイス制度に登録することで、取引先との関係を維持・拡大できる可能性が高まります。 特に、大企業やインボイス制度に登録している事業者との取引を継続するためには、登録が必須となるケースが増えてくるでしょう。
インボイス制度に登録しているということは、適格請求書発行事業者として、税務署に認められていることを意味します。 これにより、取引先からの信用力が向上し、新規の取引につながる可能性も高まります。
また、消費税の納税義務者であることを示すことにもなるため、事業者としての責任感や透明性をアピールできます。
年間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は、消費税の納税が免除される「免税事業者」となります。 免税事業者は、消費税を納める必要がないというメリットがある一方、消費税を転嫁できないというデメリットもあります。
インボイス制度に登録することで、免税事業者ではなくなり、消費税の納税義務が発生します。 しかし、その一方で、消費税を転嫁できるようになり、価格設定の自由度が高まります。 また、仕入税額控除を受けることができるため、税負担を軽減できる可能性もあります。
インボイス制度に登録するメリットがある一方で、デメリットも存在します。 主なデメリットとして下記の3つが挙げられます。
インボイス制度では、適格請求書に記載すべき事項が細かく定められています。
これらの要件を満たすためには、請求書の様式を変更する必要がある場合があり、それに伴い事務処理の負担が増加する可能性があります。 また、適格請求書は7年間の保存が義務付けられているため、保管スペースの確保なども必要となります。
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、取引先から適格請求書を受け取る必要があります。 しかし、取引先が免税事業者の場合、適格請求書を発行できません。 そのため、免税事業者から仕入れた goods や service に対する仕入税額控除を受けられなくなり、結果として消費税の控除額が減ってしまう可能性があります。
インボイス制度に登録しない免税事業者は、取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引を敬遠される可能性があります。 特に、大企業やインボイス制度に登録している事業者との取引を継続することは難しくなる可能性があります。
これは、売上1,000万円以下の免税事業者にとって、大きなデメリットと言えるでしょう。
インボイス制度では、課税事業者と免税事業者で対応が異なります。
課税売上高によって該当する事業者が異なるため、自分がどちらに該当するのか注意してください。
課税事業者(消費税課税事業者)とは、消費税を納入する義務がある法人や個人事業主を指します。
課税事業者は、以下のいずれかの条件に当てはまる方が対象です。
・基準期間(該当の事業年度の前々年度)の課税売上高が1,000万円以上超えていること
・特定期間(前年度の期首から6カ月間/個人事業主の場合はその年の前年1月1日~6月30日まで)で課税売上高が1,000万円以上超えているか
いずれかの条件に該当する方は課税事業者となり、消費税を計算して納税しなければなりません。
課税事業者はインボイス制度の対象事業者として、適格請求書発行事業者の登録申請手続きを行う必要があります。
免税事業者は、基準期間および特定期間における課税売上高が1,000万円以下となる法人または個人事業主を指します。免税事業者は、「事業者免税点制度」により消費税の納付を免除されています。
インボイス制度導入では、課税事業者が申請の対象となるため、免税事業者は申請等の必要はありません。
インボイス制度の目的や必要性は、以下の2つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
インボイス制度が導入されたのには以下のような益税が現行の制度で問題視されています。
・課税事業者は受け取った消費税を納める義務があるが、免税事業者は納める義務がない
・簡易課税制度と呼ばれる消費税の概算での算出方法「受け取った消費税−(受け取った消費税×仕入率)」では、本来納付する消費税額と差額が生じる
つまり、免税事業者も含めて正確な税額を把握し、適切に納税してもらうという目的からインボイス制度の導入が検討されました。
2019年に導入された軽減税率の導入は、税率が8%と10%に区別されています。そのため、取引において税率ごとに記載された請求書でなければ、事業者は正確な税額と仕入税控除額の把握が難しくなりました。
これに対応するべく、取引ごとの消費税率と消費税額を細かく記載した請求書が「区分記載請求書等保存方式」です。今後は、適切な税額や控除額を把握するべく「適格請求書保存方式」、つまりインボイス制度が導入されます。
一方で、インボイス制度にも以下のようなデメリットがあります。
インボイス制度導入時に置ける注意点に留意し、インボイス制度に対応できる経理体制を整えましょう。
インボイス制度の開始後は、これまで使用していた区分記載請求書では仕入税額控除が受けられないため、義務要件を満たした適格請求書のフォーマットを用意する必要があります。新たな請求書では、税率ごとの消費税率や消費税額を記載しなければならないため、入力作業が増えてしまうことがデメリットとして挙げられます。
また、請求書を受領する側の場合も「記載要件に則しているか」確認しなければなりません。不備が発覚した場合は、発行側に要件を満たした請求書を再交付してもらう必要があり、受領側での修正は認められていませんので注意しましょう。加えて、7年間の請求書の保存義務もありますので、管理フローを決めておくことをおすすめします。
インボイス制度導入による経理の複雑化は必然的に起こるので、制度対応に関連するセミナーに参加したり企業で研修会を行なったりするなど、企業全体でインボイス制度の体制を整えるようにしましょう。
インボイス制度の導入により、取引先が免税事業者であれば、仕入税額控除を受けることができません。そのため、消費税の控除額が減少してしまう可能性があります。また、適格請求書発行事業者になるには、課税事業者になる必要があります。
しかし、免税事業者が課税事業者になるには、今まで免除されていた消費税の納付義務が発生します。税負担が増えるため、簡単に課税事業者になることは難しいとされています。
ただインボイス制度には経過措置があり、「適格請求書発行事業者以外(免税事業者)からの仕入も一定割合で控除できる」という内容が含まれています。経過措置の期間は10年間であり、軽減税率が開始された2019年からカウントされるため、実際には2029年が経過措置終了予定となります。
インボイス制度を焦って導入するよりも、一旦様子をみながら対策を行うようにしましょう。
2023年10月以降も免税事業者のままでいる場合は適格請求書の発行ができず、取引先が仕入税額控除を受けられないため、取引継続を懸念される可能性があります。課税事業者にならない場合は、契約内容の見直しや取引停止のリスクも考えられます。
また、免税事業者が課税事業者になる場合、消費税分の納税負担が増えることになるため、現在の収支状況や経過措置を踏まえた検討が必要です。課税事業者になるかの判断は、自身の状況を鑑みて取引先の方針を確認した上で行いましょう。
インボイス制度に対して、SNSや口コミなどで否定的な意見がでたり反対運動まで起こしている人がいる状況です。理由として、下記の3つが挙げられます。
これらの背景から、インボイス制度に対する負担軽減のための経過措置が設置されました。ここでは、3つの負担軽減措置や特例について解説します。
2割特例とは、仕入税額控除の金額を特別控除税額にできる特例制度です。対象はインボイス制度により課税事業者になった事業者で、以前より課税事業者であった場合は適用することができません。本来であれば納付義務が免除されていた期間として、負担が緩和されています。
2割特例を適用すると、インボイス制度開始後の3年間の間に免税事業者から課税事業者になった場合は、消費税の納税額を売上税額の2割にすることができます。この期間の間に取引先を増やしたり、受注金額の交渉などを実施する期間として、資金状況が急激に悪化することを防ぐ効果もあります。
2割特例は特別な申請など必要なく、確定申告時に適用する旨を記載するのみで活用できますので、対象の事業者はぜひ参考にしてください。
免税事業者との取引がある場合は適格請求書を受領できないため、仕入税額控除を受けることができません。そのため、義務要件が満たされていない請求書でも、一定の期間や割合で控除を受けられるよう以下のような経過措置が定められています。
上記の期間は、全額ではないものの区分記載請求書などでも仕入税額控除の適用が可能です。請求書の受領側は経過措置の内容を踏まえて、免税事業者との取引や契約内容を検討しましょう。
ただし2029年10月1日以降は、適格請求書以外の請求書では仕入税額控除を受けられなくなるので注意が必要です。
少額特例とは、売上高が一定規模以下の場合に事務負担を軽減できる措置として制定されています。具体的には税込1万円未満の仕入れであれば、インボイスの保存義務がなく帳簿保存のみで仕入税額控除が受けることが可能です。送料や手数料などの細かい金額のやり取りが発生した場合、手間なく控除できる点がメリットとなります。
また、少額特例は「基準期間における課税売上高が1億円以下もしくは特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者」が対象です。基準を満たしていない事業者は、金額に関わらず請求書の保存が義務対応となっていますので注意しましょう。
インボイス制度の導入にあたって、不利益が生じないよう導入までに以下のことを準備しておきましょう。
インボイス制度の対応に不備がないよう、ぜひご確認ください。
課税事業者でなければ適格請求書発行事業者の登録を行うことができないため、免税事業者の場合は課税事業者への転身が必要です。
ただし課税事業者となった場合は、これまで免除されていた消費税を納税しなければなりません。そのため、現在の収支状況を確認した上で、必要であれば取引先との金額交渉や相談をした上で、登録すべきか判断しましょう。
管轄の税務署宛に「適格請求書発行事業者登録申請書」を提出し、登録を済ませることでインボイスを発行できます。申請方法は「e-Taxによる電子申請」「書面を直接持参」「郵送」のいずれかで申請を行うようにしましょう。
令和5年度の税制改正大綱にて、事業者の準備状況に差があることなどを踏まえ、申請書に「困難な事情」の記載を求めず、4月以降の登録申請を可能とする緩和措置が定められています。そのため、適格請求書発行事業者への登録申請は2023年10月1日以降でも可能です。
これから登録する場合は、登録申請書に提出日から15日以降の日付を登録希望日として記載することで、希望日から適格請求書発行事業者となります。
申請したものの登録番号がきていない場合に、取引先から対応について質問されるケースがあります。その際は申請した登録希望日と登録番号の取得がまだである旨を伝え、対応について相談しましょう。
適格請求書は仕入税額控除を受けるための記載要件があるため、新しいフォーマットを用意する必要があります。以下の6つの項目を必ず入れておきましょう。
これらのフォーマットを準備し、不備なく請求書を発行できるようにしておきましょう。
現行の制度では、請求書を発行した側に保存の義務はありません。しかしインボイス制度の開始後は、請求書を発行した側でも保存の義務があります。さらにインボイス制度の導入により経理業務が複雑化するため、業務フローを整備しておきましょう。
免税事業者などと取引がある場合は、適格請求書が発行されないパターンの管理方法を整理しておく必要があります。どちらの請求書を受領・発行した場合でも、スムーズに対応できるようにしておきましょう。
インボイス制度に対応できる会計システムを新たに導入することで、経理業務を効率化するようにしましょう。導入するにあたっては「運用中の会計・請求書作成システムがインボイスに対応可能かどうかを確認しておくこと」「電子帳簿保存方法の要件にも対応しているか」を確認しておく必要があります。
インボイス制度は対応が煩雑になるため、経過措置や負担軽減のための特例が制定されています。インボイス制度をきっかけに課税事業者になった事業者のための2割特例や、売上規模が一定以下の事業者を対象とした少額特例など、主に小規模事業者を対象とした様々な負担軽減措置が存在します。
対象となる事業者に関しては、適用することでのメリットが大きいため、自社が条件に当てはまっているかを確認しておきましょう。
また期間が定められているものがあるので、細かな詳細や内容をしっかりと理解しておくことも大切です。
インボイス制度を導入することで、請求書をデータで管理可能になるだけでなく、適切な消費税額を把握できるといったメリットを受けられます。制度に対応しているシステムを導入するためのコストはかかるものの、請求書のデータ改ざん・不正を防止できるでしょう。
また、事務負担の増加や免税事業者にかかる税負担などのデメリットも挙げられますが、経過措置や特例制度の活用することで、手間の削減や負担の軽減も可能です。
2023年10月に制度が開始されたため、2029年までの経過措置も活用して適格請求書が発行できるよう社内の体制を整えていく必要があります。
今回の記事で解説したインボイス制度におけるメリットやデメリットを参考に、インボイス制度に正しく対応できるようにしましょう。
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