更新日:2023.06.28
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通信費は業務上通信や連絡に関連する支出を指します。インターネット社会である現代において、ほとんどの事業者で発生している費用です。そのため、通信費の経費計上はすべての企業担当者が理解しておくべき内容となります。
具体的な通信費の会計処理はどうやって行うのでしょうか。そこで本記事では通信費について詳しく解説します。通信費の定義や月額の平均相場、仕訳例などが知りたい企業の経理担当者は、ぜひ参考にしてください。
通信費の定義についてわからない企業の担当者は少なくないのではないでしょうか。通信費で処理できるものは実にさまざまです。また、意外と知られていない支出もあります。
この章では、通信費の概要や具体例について詳しく解説します。
通信費とは、業務を行う上で連絡または通信に関わる支出を指します。近年急増のテレワークによる諸費用も通信費として計上することが可能です。主な通信費の項目としては以下のようなものが挙げられます。
事業に関連していれば、これらはすべて通信費として経費計上できます。
通信費の代表格として挙げられるのはスマホ料金・固定電話料金です。業務を行う上で頻繁に使用するものであるため、当然経費として計上できます。また、事業によってはFAXを使用する場合もあるかと思いますが、業務に関連したFAX使用も通信費として計上可能です。
加えて、プロバイダやサーバーの使用に関して発生した料金はもちろん、インターネット設置などに関する工事費なども経費として計上できます。業務上、ハガキや封筒を送ることもあるかと思いますが、ハガキ代や切手代なども通信費として計上可能です。また、コピー機の修理代も通信費として計上できるため、企業の担当者は忘れずに覚えておきましょう。
他にも、NHK受信料やケーブルテレビ料金も通信費に分類されます。このように、一口に通信料といってもその分類は多く、1分類でも多く通信費として計上することで企業の節税に大きく貢献できることでしょう。
通信費には多くの分類があることがわかりましたが、経費にできないものもあります。そのため、この章では、通信費にできるものとできないものを紹介し、できるものの具体的な仕訳例について詳しく解説します。
通信費として経費計上できるかできないかの基準は、「事業に関連するものかどうか」によります。使い方によっては事業に関連しない場合もあります。その場合は通信費として経費計上できません。
事業に関連するインターネット料金は通信費になります。この場合、月額使用料はもちろん入会費や工事費なども経費として計上できます。また、個人名義のスマホ料金なども事業に関連していれば計上可能です。つまり、ポイントは事業に関連しているのかどうかです。
個人名義のスマホ料金もプライベートで使用した分については当然通信費にはなりません。この場合は後述する按分を参考に、プライベート分と事業分を分けて算出することで、事業分を通信費として計上できます。
また、取引先にFAXを送った場合の用紙の料金や取引先に送った封筒の料金は経費になりますが、通信費ではありません。通信費として間違われやすい項目ですが、正確には消耗品費として計上します。
通信費の具体的な仕訳例を紹介します。
スマホ代2万円を事業用の普通預金から支払った場合の仕訳
借方 | 貸方 | ||
通信費 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
インターネット使用料3万円を事業用の普通預金から支払った場合の仕訳
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
30,000円 |
普通預金 |
30,000円 |
取引先に手紙を送るための切手代240円を現金で支払った場合の仕訳
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
240円 |
現金 |
240円 |
取引先に書留を郵送するため郵便代800円を現金で支払った場合の仕訳
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
800円 |
現金 |
800円 |
通信費を経費として計上する際に、いくつか気を付けるべきポイントがあります。これらのポイントをしっかり抑えておかないと、税務調査があったとき税務職員に突っ込まれてしまいます。最悪の場合、誤申告ペナルティを課されてしまう恐れもあるでしょう。
この章では、通信費の経費計上において注意すべきポイントについて、2点解説します。
通信費として間違われやすい勘定科目に「荷重運賃」があります。荷重運賃とは、商品の発送・返送に関連する費用のことです。具体的には、商品の郵送費用や返送費用は通信費ではなく荷重運賃として経費計上します。しかし、商品カタログや商品の領収書の郵送費用は荷重運賃ではなく通信費となります。
通信費と荷重運賃を正確に仕訳するポイントとしては売上に関係しているかどうかです。売上に関連するものは荷重運賃、関係のないものは通信費としておくと間違いないでしょう。
通信費に該当するものでもプライベート分は経費計上できません。しかし、事業と兼用しているものであれば、按分をすることで事業分を経費計上できます。例えば、事業と兼用でスマホを使っている場合は、第三者が納得するデータに基づいて使用割合を計算します。そのデータとは通話時間やネット利用量などです。
仮に月額のスマホ代が3万円だとして、使用割合がプライベート用40%・業務用60%であれば、18,000円を通信費として経費計上できます。あくまで、按分の参考にするデータは事業者によって委ねられており正解はありません。そのため、第三者が見ても納得できる按分基準を設定しておくことが大切です。
通信費は具体的に月どれくらいかかるものなのでしょうか。
この章では、法人や個人事業主の通信費の利用状況について詳しく解説します。
参照元のデータによると、一人暮らし世帯の平均的な通信費は7,153円という結果があります。参考までに、5年前の2016年の平均的な通信費をみると6,416円となっています。背景として、近年のインターネット普及により、通信費の占める割合が上がっていると考えられます。
また、この通信費のうちスマホ代の占める割合は8割弱となっており、通信費の大部分がスマホ利用によるものであることもわかっています。2019年現在スマホ端末の個人保有率は67.6%となっており、3人に2人以上がスマホを持つ時代です。そのため、家計において通信費はライフラインと同等の費用として考える必要があります。
企業はもちろん、個人事業主も通信費を経費計上できます。スマホ代や固定電話代など、事業に関連していれば当然経費です。企業の場合、法人契約で社員に配布していれば業務専用で利用していると考えられますので、全額を経費計上することが可能です。また、自宅を事務所兼用している個人事業主のスマホ代やインターネット代も経費になります。
ただし、個人事業主の場合に注意したいのがプライベート用と事業用でしっかり分けられるかどうかです。事業用と兼用しているスマホ代は、そのすべてを経費にすることはできません。使用割合やデータ量に応じて按分することでおおよその経費を算出します。按分の目安は厳密に定められているわけではありませんが、第三者がみても納得する目安を決めましょう。
例えば、スマホ代でいえば全体のスマホ代から業務に使用した通話代を算出したり、インターネット代でいえば勤務日数や勤務時間から割合を算出します。毎日8時間勤務していたとすると1日の1/3を按分として、インターネット代の1/3を経費として計上できると考えられます。個人事業主は発生する通信費が多いため、無駄なく経費に計上できるようにしましょう。
通信費は経費として計上できますが、できるだけ通信費を抑えることで必要経費を抑えたいと考えることでしょう。とくに個人事業主は事業兼用でスマホを所持する方が多いため、通信費の節約は大きな課題といえます。全体の通信費を抑えることでかかる経費を抑えることにつながるため、私用の通信費の節約は事業においても影響を及ぼします。
この章では、使用の通信費を節約する方法について、詳しく解説します。
スマホ代の節約を考える上で、やるべきことは契約プランの見直しです。通信キャリアを変えるのも方法としてはありますが、時間と労力がかかるので最終手段として考えます。まずは、契約しているキャリアの中で自分にとって最適なプランを選びましょう。スマホのプランには使い放題プランや使った分だけ料金が発生するプランなどさまざまです。
例えば、ほとんど通話しないのに通話料金の定額プランに加入していると無駄になっている可能性があります。他にも、たくさんデータ通信するのに使い放題プランに加入していなくて、余計な出費を招いている可能性もあります。
また、無駄なオプションが付いていないか確認しましょう。スマホ契約時に自動的にオプションに加入する場合があり、そのときのオプションが未だに継続利用されていれば、その分月額料金に加算されています。
そもそも、インターネット自体あまり利用しないという方はモバイルルーターを検討しましょう。スマホ料金プランは、インターネット利用による費用が大部分を占めます。インターネットを使った分だけ料金が発生するプランもありますが、すべてのキャリア会社で行っているわけではありません。
モバイルルーターであれば月額料金も安く、インターネットを使わない方にすれば割安になる傾向があります。しかも、モバイルルーターは持ち運びができるため、外でインターネットを使うことも可能です。アプリのダウンロードなどは通信料が多くなるため、無料Wi-Fiスポットなどを利用することで通信費の節約ができます。
本記事では、通信費について詳しく解説しました。通信費とは、業務する上で通信や連絡に関連する支出のことです。通信費はほとんどの事業者が利用する経費なので、企業はもちろん個人事業主の方も概要を理解しておく必要があります。また、通信費は品目によっては荷重運賃や消耗品費と間違われやすいため、正しく区分できる知識が求められます。
個人事業主においても、とくに自宅を事務所兼用にしている場合、通信費を経費として計上する場合は利用分の一定割合を按分しなくてはいけません。また、按分の目安は、第三者がみて納得するデータに基づかせる必要があります。インターネット社会において、通信費は今後も無くなることのない経費です。通信費を正確に計上し、事業の利益確保を行いましょう。