更新日:2024.10.15
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通信費は、事業の通信手段に関わる費用を指します。オフィスの固定電話や支給した携帯電話、取引先に書類を送付する際の切手など、実に幅広いものが対象となります。
しかし、通信費には混同しやすい勘定科目も多く、仕訳をする際には正しい理解が必要です。間違った仕訳をしてしまった場合、税務調査時に注意されるだけでなく、ペナルティが発生し企業としての信頼を落としてしまう恐れもあります。
そこで本記事では、通信費の勘定科目について詳しく解説します。勘定科目の通信費について知りたい経理担当者の方は参考にしてください。
通信費とは、業務において通信手段に関わる費用のことです。該当するものとしては電話代やインターネット代などが挙げられます。この章では、通信費の概要や具体的に該当するものについて詳しく解説します。
通信費は業務で使う通信手段にかかる費用を指します。帳簿上でいうと、損益計算書(P/L)上の費用に該当します。通信費は、固定電話や携帯電話だけでなく、郵便切手やインターネットなどの代金も含まれます。
通信費は業務における連絡や通信で使われ、勘定科目として使える費用はさまざまです。実際に通信費に該当する具体的な費用は以下の通りです。
具体的な電話代として、社内の固定電話や従業員に配布する会社用携帯電話などが挙げられます。社内でFAXを利用していればFAX代も該当します。また、近年ではあまり使われなくなったテレホンカードも、通信費として計上可能です。
会社で使われているインターネット利用料も、通信費として計上可能です。インターネットを新規で使用するには、プロバイダ料金はもちろん、入会金や工事費などがかかります。これらすべてが通信費としてまかなえます。また、付随して契約するクラウドサービスやレンタルサーバーにかかる費用も、同様に計上できます。
取引先に請求書や納品書を送る場面があるかと思います。その際に利用する郵便切手は通信費として計上できます。また、宅配便や速達料金なども同様です。ポイントとしては、取引先に文書や売上に関係のない物品の郵送をしているという点です。つまり、バイク便や私書箱利用に関する費用も通信費として扱います。ただし、売上に関連するものは後述する「荷造運賃」とされます。
オフィス内にテレビを設置している場合、受信料を通信費として計上可能です。また、ケーブルテレビに契約している場合も、関連する費用はすべて通信費にできます。
実際に通信費を仕訳する場合、どのような記載をするのでしょうか。基本的に、通信費は「費用」の勘定科目なので、借方(左側)に記載します。また、何にかかったかを摘要欄に記載しましょう。この章では、通信費の仕訳例を4つ紹介します。
固定電話の料金5,000円を、普通預金口座から支払った場合
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
5,000円 |
普通預金 |
5,000円 |
固定電話料 |
また、未払金として仕訳をする場合は支払いが完了した際に、以下のように2回仕訳を行う必要があります。
ファックスの料金5,000円を、月末に支払う予定である場合
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
5,000円 |
未払金 |
5,000円 |
ファックス料金 |
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
未払金 |
5,000円 |
普通預金 |
5,000円 |
ファックス料金 |
(インターネット使用料10,000円を、普通預金口座から支払った場合)
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
10,000円 |
普通預金 |
10,000円 |
インターネット使用料 |
(インターネット開設の工事費用100,000円を、当座預金から支払った場合)
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
100,000円 |
当座預金 |
100,000円 |
インターネット使用料 |
(切手2,000円分を、現金で支払った場合)
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
2,000円 |
現金 |
2,000円 |
切手代 |
(ケーブルテレビの受信料5,000円を、普通預金口座から支払った場合)
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
通信費 |
5,000円 |
現金 |
5,000円 |
ケーブルテレビ受信料 |
通信費として扱える項目は広範囲にわたります。そのため、勘違いで通信費だと考え、仕訳処理を間違ってしまうこともあるでしょう。この章では、通信費と間違われやすい4つの勘定科目について詳しく解説します。
荷造運賃は、荷造や運輸に関連する費用のことです。取引先などに売上に関係のない物品を送る場合は通信費ですが、売上に関係のある物品を送る場合は荷造運賃が該当します。しかし、それ以外でいうと、通信費と荷造運賃の違いが定められていません。そのため、多くの企業では比較的軽量なものの郵送を通信費、重量なものは荷造運賃として使い分けている場合が多いです。ここで注意したいのが税務調査時です。企業として使い分けがあいまいになっていると、指摘の原因になります。
租税公課は、領収書に貼付する収入印紙の費用のことです。切手などは通信費ですが、類似している収入印紙もそのまま通信費として計上してしまうことがあります。収入印紙は、課税文書で課せられた手数料を支払うために発行されるものです。つまり、税金として扱われます。そのため、収入印紙を通信費として扱えません。
消耗品費は、短期間で消耗するものを購入する費用のことです。主に、ボールペンやコピー用紙などが該当します。また、取得価額が10万円未満のものも消耗品費として扱われます。リース料は、外部からレンタルしているものに対してかかる費用です。電話機やコピー機などが一般的です。
切手や電話の月額費用は「通信費」ですが、封筒や便箋は「消耗品費」、リースの電話機は「リース料」など、混同しやすいので注意が必要です。
貯蔵品は、事業に関連した商品や原材料以外の未使用品を指します。切手は通信費ですが、期末までに使用しなかった場合は貯蔵品として計上します。貯蔵品として計上されたものは、企業の資産として扱われます。切手以外にも、収入印紙や事務用の消耗品なども期末まで使用されない場合は貯蔵品に該当します。
企業によっては従業員に携帯電話の支給を行っていますが、使い方次第では仕訳時に注意する必要があります。この章では、通信費を仕訳する際の3つの注意点について詳しく解説します。
企業として業務上必要と判断した場合、従業員などに携帯電話の支給を行います。このケースでは、利用頻度やセキュリティ面を考慮して、企業が複数の携帯電話の契約を行います。携帯電話の購入代金を含み、基本的に会社で支給した携帯電話の料金はすべて経費として扱い、勘定科目は通信費となります。
携帯電話の支給を行っていない場合は、従業員に私用の携帯電話を業務で使わせている企業も多いのではないでしょうか。このケースでは一般的に、月の携帯電話料金の何割かを企業で負担する方式を採用しています。全体の携帯電話料金から仕事とプライベートの割合を按分して算出しています。按分をする際はおおざっぱな算出方法ではなく、税務調査時に説明できるようあらかじめ設定しておくのが望ましいでしょう。
会社から支給された携帯電話を使用する上で、注意したいのが付帯している電子マネーです。会社から支給された携帯電話の使用料は通信費となりますが、電子マネーで購入したものに関しては利用目的に応じて勘定科目を分ける必要があります。そのために、電子マネーを使用した内容の確認資料を取り寄せなければなりません。企業としては携帯電話を支給する際に、従業員に注意喚起をしておく必要があります。
通信費は事業において通信手段に関する費用を指します。固定電話やインターネットといった、多くの企業で一般的に使われている費用が対象となります。取引先に書類を送付するための切手も通信費となり、その範囲は広いです。ただし、他の勘定科目と混同しやすい懸念もあります。特に荷造運賃はあいまいな部分が多く、企業内できちんとした境目を定めておく必要があります。
また、携帯電話の扱いにも注意が必要で、特に中小企業に多いのが私用の携帯電話を使用させているケースです。この場合は明確な線引きのもと、按分の設定を行うようにしましょう。
通信費は企業にとって大切な経費です。正しく仕訳を行い、企業の利益確保を図りましょう。