更新日:2024.12.27
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近年、軽減税率の導入やインボイス制度の開始など、請求書の記載様式が大きく変わる法改正が多くありました。もし事業で軽減税率の対象品目を取り扱っている場合、請求書の書き方が煩雑になり、業務フローの見直しが必要な企業もあります。
本記事では、軽減税率に対応した請求書の書き方やインボイス制度導入後の請求書の注意点を解説します。軽減税率に対応した請求書の記載例も解説するため、ぜひ参考にしてください。
軽減税率は、2019年の10月に消費税が8%から10%に増税されたタイミングで導入された制度です。この制度は特定商品の税率を低くすることで、低所得者の負担軽減を目的としています。
この軽減税率の対象となる商品は、「酒類・外食を除く飲食料品」「定期的に購読する契約をしていて週2回以上発行される新聞」です。そのため、テイクアウトが可能な飲食店では、店内飲食か、テイクアウトで税率が異なります。
軽減税率の導入によって税率が商品ごとに異なるため、請求書を発行するときも税率をわけて記載する必要があります。さらに、請求書の記載方式が変更となり、従来の請求書とは異なるフォーマットを使用しなければなりません。
軽減税率の導入によって商品ごとの税率が変更になったため、請求書においても税率8%と10%にわけて記載する必要があります。加えて、記載項目も変更になっていることから、実務上では軽減税率の変更点を理解しておくと請求書対応がスムーズになるでしょう。
ここでは、軽減税率による請求書の変更点を解説します。
軽減税率の対象となる商品が含まれる請求書を発行する場合、税率8%と10%で別々に合計額の計算が必要になります。もし軽減税率の対象となる製品が含まれない場合は、税率は一律10%となり、従来の請求書と変わりません。
なお、請求書に軽減税率の対象商品があるとき、税率別に商品をわけて記載する義務はありません。しかし、商品を税率別にわけ、税率ごとの合計額をわかりやすくしておくと、受け取り手に親切です。
軽減税率の導入と同時に、請求書の記載方式は「区分記載請求書等保存方式」に変更されています。この区分記載請求書等保存方式では、以下の項目を請求書に記載する必要があります。
ただし、区分記載請求書等保存方式は、2023年10月1日のインボイス制度の導入によって、適格請求書等保存方式に変更されています。
参考:国税庁「Ⅲ 区分記載請求書等保存方式(帳簿及び請求書等の記載事項並びにこれらの保存)」
2024年11月現在、インボイス制度の導入によって請求書の記載方式は「区分記載請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式」に変更されています。適格請求書等保存方式の記載項目は、以下の通りです。
適格請求書では軽減税率が引き続き適用されるため、対象品目は※マークをつけ、備考欄に「※印は軽減税率対象項目を示します」などで明記することがおすすめです。
軽減税率に対応した適格請求書を作成するときは、どの商品が軽減税率に対応しているのかわかりやすくする必要があります。決まりはないものの、※印をつける、あるいは税率ごとにわけて記載することが一般的です。
なお、1枚の請求書で税率をわけて記載してわかりにくくなる場合は、請求書自体を税率別に発行しても問題ありません。
ここでは、軽減税率に対応した適格請求書の記載例を解説します。
対象品目と対象外の商品を同じ請求書に記載する場合は、※印を使用して区分することが多いです。請求書で※印を使用するときの例は以下のとおりです。
日付 |
品名 |
金額 |
11/2 |
トマト ※ |
3,240円 |
11/2 |
ポリエチレン使い捨て手袋 |
2,200円 |
11/3 |
薄力粉 ※ |
5,400円 |
合計 |
10,840円 |
|
8%対象 |
8,640円 |
|
10%対象 |
2,200円 |
|
※印は軽減税率対象項目を示します |
軽減税率の対象品目と対象外の商品を載せる場合は、税率ごとの合計金額を計算し、請求書に記載しましょう。また、欄外に※印の意味を記載することで、取引先が請求書の内容を理解しやすくなります。
軽減税率制度の対象品とそれ以外をまとめて表示するときの例は以下のとおりです。
日付 |
品名 |
金額 |
11/2 |
トマト |
3,240円 |
11/3 |
薄力粉 |
5,400円 |
8%対象小計 |
8,640円 |
|
11/2 |
ポリエチレン使い捨て手袋 |
2,200円 |
10%対象小計 |
2,200円 |
|
合計 |
10,840円 |
軽減税率の対象品目が多い場合は、※印を使用するよりも、対象外の商品とわけて記載しておくと請求書が見やすくなります。
インボイス制度導入後に軽減税率対象商品を取り扱う場合は、以下3つの点に注意しましょう。
注意点を理解しないまま業務にあたると、請求書の再発行や税務調査のときトラブルになる可能性があります。
課税事業者は、取引先から適格請求書の交付を求められた場合に発行する義務があります。取引先は適格請求書に記載された登録番号がなければ、仕入れにともなう税金の控除を受けられなくなるため、制度上で決められています。
このようにインボイス制度導入後は登録番号を記載した請求書を求められることが増えるため、お互いの手間を増やさないためにも、あらかじめ適格請求書の発行準備をしておきましょう。
軽減税率の対象品目と対象外の商品を1枚の請求書に載せ、各税率の合計額が記載されていない場合、区分記載請求書の要件を満たしません。
税率ごとの合計額がないことを確認した場合はすぐに再発行し、取引先へ再度提出しましょう。ただし、軽減税率対象の商品しかない、もしくは対象商品の記載がない場合は、記載するべき税率は片方のみとなり、欄をわける必要はなくなります。
適格請求書は、発行者・受領者どちらも「交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。」とされています。
たとえば、課税期間が1月1日から12月31日の場合、2024年11月12日に交付された請求書であれば、2025年1月1日から2か月を経過した2025年3月1日から7年間の保存が必要になります。
また、買い手の場合、適格請求書がなければ仕入税額控除のおこなえなくなるため紛失しないよう注意が必要です。
本記事では、軽減税率に対応した請求書の書き方やインボイス制度導入後の請求書の注意点を解説しました。
軽減税率やインボイス制度によって、請求書の記載方法は以前より大きく変わりました。取引先にわかりやすい請求書を作成するためにも、軽減税率対象商品は見やすく記載しましょう。
軽減税率に対応した請求書を発行するときは、記載ルールを理解したうえでミスのない請求書作成を目指しましょう。