接待交際費の「5,000円基準」とは？会議費との関連性や損金不算入での計算方法を解説

• 接待交際費の概要を知りたい
• 接待交際費の「5,000円基準」ってなに？
• 会議費とどう違うの？

接待交際費とは、交際費の一種のことで、取引先との業務関係維持のために使われる経費です。5,000円基準とは、交際費と会議費の仕訳ラインを指しています。

では、接待交際費はどのくらい経費として計上できるのでしょうか。また、会議費との違いはなんなのでしょうか。

そこで、本記事では接待交際費について詳しく解説します。接待交際費に関わる5,000円基準や損金不算入での計算方法について知りたい経理担当の方はぜひ参考にしてください。

接待交際費の定義と適用範囲

会社の経費において接待交際費という単語をよく耳にしますが、実は経理上の正式名称ではありません。法人税法においては「交際費等」に該当します。そしてこの交際費等は、適用範囲も厳密に定められています。この章では、接待交際費の概要と適用される費用の範囲について解説します。

接待交際費とは

接待交際費は法人税法における交際費等にあたります。交際費等とは交際費や接待費、機密費やその他の費用のことです。さらに法人が得意先や仕入先、その他事業に関連する者に対する接待・供応・慰安・贈答、並びにその他類する行為のために支出した費用を指します。

接待交際費は交際費等の中で、接待飲食費に分類されるものを指します。

適用範囲

接待交際費は交際費等の中で接待飲食費に該当したものを指します。その適用範囲は大まかに以下のように分かれています。

• 「接待交際費等」や「接待飲食費」に該当する費用
• 「接待飲食費」には該当しない費用
• 「福利厚生費」や「会議費」に該当する費用

この章では、さまざまな費用がどの分類に該当するか詳しく解説します。

「接待交際費等」や「接待飲食費」に該当する費用

接待飲食費とは、接待交際費等のうちの飲食に関するものから社内飲食費（社内での食事・打ち上げ・飲み会などを除く）を指します。また、その際は領収書があり飲食の内容（参加者、年月日等）が明らかなものである必要があります。

• 従業員が取引先を接待する際の飲食に関連する費用
• 取引先を接待する際の飲食に関連するサービス料
• 取引先を接待する際に利用した店に支払う費用
• 取引先を飲食に接待した後に店から持ち帰る品の費用

「接待飲食費」には該当しない費用

以下のケースの場合は、接待飲食費に該当しません。

• 取引先に贈るお中元やお歳暮など贈答品の費用
• 外部の事業に関連した者を帯同した旅行や観劇などに招待する費用
• 社内の従業員だけで行った飲み会に関連する費用
• 会社の記念式典などに関連する費用

「福利厚生費」や「会議費」に該当する費用

以下のケースは、接待交際費ではなく福利厚生費や会議費に該当します。

• 従業員の慰安を目的とした運動会や演芸会、旅行などに使われる費用
• 飲食その他これに類する行為に使われる費用（企業の役員・従業員、その親族に対する接待は除く）であり、その金額を参加した人数で割った際の算出額が5,000円以下の場合
• カレンダーや手帳、扇子やうちわ、その他類する物品を贈与する際に使われる費用
• 会議に関連している茶菓や弁当、その他類する飲食物を提供する際に使われる費用
• 新聞や雑誌などの出版物・放送番組を編集する目的に行われる会、またはその他の記事収集を目的とした放送の取材に使われる費用

接待交際費にかかわる「損金不算入」の仕組み

事業活動で発生する費用の中には、経費として計上できるものとできないものがあります。税金の計算上は経費計上できないことを損金不算入といいます。交際費等は原則として、全額損金不算入に該当します。ただし、一定の措置が設けられているためその限りではありません。

この章では、現在の「損金不算入」に関する制度や特例措置について解説します。

現在の「損金不算入」制度

そもそもなぜ損金不算入という制度があるのかというと、公平な課税と税収を目的としているからです。仮に交際費等に損金不算入がなければ、節税のために意図的に接待を増やす企業などが増えてしまうでしょう。しかし、交際費等が全額損金不算入となると必要な費用が発生してしまう企業にとっては不公平といえます。

そこで両者の公平を期すために、平成26年4月1日に損金不算入にかかわる制度が、以下のように改正されました。

• 社内の飲食費を除く接待交際費に含まれる飲食費は、定められた項目を記載し帳簿上の飲食費であれば、その額の50％を損金算入可能
• 飲食代が一人5,000円以下であれば接待交際費から除外され、会議費として損金算入可能

中小企業であれば損金算入の方法が選択できる

会社の規模によっては損金算入の方法が選べます。その基準は資本金または出資額が1億円を超えているかどうかです。資本金または出資額が1億円以上の企業は、接待飲食費の50％を損金算入できます。資本金または出資額が1億円以下の中小企業は、以下の2つから損金算入の方法を選択できます。

• 定額控除限度額の上限である800万円まで損金算入する
• 接待飲食費の合計額50％を損金算入する

「5,000円基準」で考える接待交際費と会議費について

接待飲食費において5,000円基準という単語をよく聞くかと思います。これは接待飲食費とそれ以外の経費に分けるためのボーダーを指しています。この章では、接待交際費と会議費と呼ばれる費用との違いや「5,000」円基準の適用要件について解説します。

接待交際費と会議費の違い

平成18年度の税制改正によって1人あたりの飲食代が5,000円以下、かつその他2つの要件を満たす場合は接待交際費から除外して会議費として計上できるようになりました。つまり、5,000円以上を超える経費は接待交際費として計上し、5,000円以下の経費は会議費として計上することになります。ただし、社内での飲食費は該当しないため社外の人を最低1人以上含めることが必要です。

会議費になる「5,000円基準」の要件

5,000円以下の経費は会議費として損金算入できますが、以下の3つの要件を満たす必要があります。

• 1人あたり5,000円以下
• 飲食その他これに類する費用
• 一定要件を満たす

なお、一定要件とは以下の内容を記載・保管しておく必要がある旨を指します。

• 飲食などがあった年月日
• 飲食などに参加した取引先など氏名・名称、またはその関係
• 飲食などに参加した人数
• 飲食などに関連した費用額、飲食店などの名称および所在地

また、残業時にかかった飲食代や大多数が参加する忘年会などは福利厚生費になるため、注意が必要です。

接待交際費・会議費の処理に関する5つの注意点

接待交際費および会議費を処理する上でいくつか注意すべき点があります。

• タクシー代やゴルフ代は交際費に計上する
• 会議費の税抜・税込かは会計処理の方法による
• 社内の飲み会は接待交際費・会議費に該当しない
• 取引先への贈答品は5,000円に含まれる
• 1次会・2次会は別会場であれば分けて計上できる

この章では、接待交際費・会議費の会計処理で悩みやすいポイントについて詳しく解説します。

タクシー代やゴルフ代は交際費に計上する

取引先と食事をする際の送迎タクシー代を自社負担した場合や、接待からの帰宅で自社の社員が使ったタクシー代は交際費になります。また、取引先との接待ゴルフのプレー代も、金額にかかわらず交際費です。プレー間の飲食代も交際費として計上します。

会議費の税抜・税込かは会計処理の方法による

接待交際費および会議費を処理する上でよくある疑問として、経費の中に消費税は入るのか入らないのかという点があります。これは企業の会計処理によって異なるでしょう。企業の経理が税込処理であれば税込5,000円、税抜処理であれば税抜5,000円で考えます。

また、課税事業者であれば税込、非課税事業者であれば税抜で扱います。

社内の飲み会は接待交際費・会議費に該当しない

取引先との食事は交際費にあたりますが、社内での飲み会などは接待交際費および会議費に該当しません。このケースでは福利厚生費として処理します。他にも、福利厚生費に該当する物としては、残業時に発生した飲食代や忘年会、社員旅行や社員への仕出し弁当提供などです。

なお、福利厚生費の場合は以下の要件を満たす必要があります。

• すべての従業員を対象としている
• 社会通念上、常識と考えられる範囲の金額

取引先への贈答品は5,000円に含まれる

取引先との食事でお土産を送ったり、持ち帰ったりする場合は、飲食した店での飲食代と合わせて5,000円以内に収めなければ会議費にできません。ただし、持参したお土産や菓子折りは接待交際費として計上可能です。

1次会・2次会が別会場であれば分けて計上できる

一人あたり5,000円以内であれば飲み会でも会議費として計上できますが、2次会がある場合は注意が必要です。1次会と2次会が同じお店であれば、通算して一人あたり5,000円以内でないと会議費にできません。そのため、2次会を1次会とは別の場所で開催し、それぞれ一人あたり5,000円以内に収めることで会議費として計上可能です。

5,000円以内の交際費は会議費として計上可能

接待交際費は法人税法上の交際費を指し、取引先との業務関係維持のために使われる経費です。そのうち取引先との食事やサービス料などは接待飲食費として処理できます。しかし厳密にはすべての交際費が経費とできるわけではありません。

経理担当者は損金不算入の仕組みを深く理解する必要があります。ここで重要なキーワードとなるのが「5,000円基準」です。一人あたり5,000円以内の交際費は会議費として計上できます。また、一定の要件を満たした場合は福利厚生費としての計上も可能です。接待交際費をしっかりと理解した上で正しい経費の仕訳を行い、企業活動における利益のコントロールをおこないましょう。