更新日:2024.10.15
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「経費で落とす」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。「経費で落とす」とは経費にするという意味で、事業に関する費用を支出として扱います。事業者は法人税や個人事業税を支払いますが、その税額の算出に経費が深く関わってきます。簡単にいうと、経費が多いほどかかる税金を抑えられます。では、どのようなものが経費となるのでしょうか。
そこで、今回は経費で落とすための条件について詳しく解説します。経費計上できるもの、できないものについて知りたい経理担当者の方は参考にしてください。
経費とは、個人事業主や法人などが事業活動のために使用した資金を指します。経費にすることを、「経費で落とす」という言葉で表現されることが多いです。では、経費で落とすための条件はどのようなものがあるのでしょうか。この章では、経費の概要について詳しく解説します。
事業を運営していると、さまざまな費用が発生します。経費とは、そういったさまざまな費用のことで、端的にいうと事業活動のために使用する資金を指します。事業利益は売上から経費を差し引いたものとなるため、経費が持つ役割は非常に大きいです。また、経費には以下のような意味もあります。
いずれも、先ほど紹介した経費の意味と同様であることがわかります。
「経費で落とす」という言葉は、経費として計上するという意味です。事業で稼いだ売上には、所得税などの税金がかかります。このときの税金は、売上からではなく売上から経費を差し引いた利益から算出されます。つまり、事業でかかった費用をしっかりと計上することで、事業者は支払う税金を抑えることができるわけです。
経費で落とす、つまり経費計上できる費用とはどのようなものがあるのでしょうか。これは行っている事業によってさまざまです。例えば、業務上パソコンを使う事業者であればパソコンは経費として認められますが、業務上パソコンを使わない事業者であれば経費として認められません。
このように、経費とするべきものが事業で使われているかどうかが経費で落とせる基準となります。また、経費で落とすためには、法人税法上で一定期間領収書などを保管する義務があります。また、国税庁では経費計上について、以下の条件を示しています。
経費で落ちる費用は具体的にどのようなものがあるのでしょうか。この章では、経費で落ちる費用について10個紹介します。
人件費は、従業員に支払っている給与や賞与にかかった費用を指します。事業者によりますが、人件費は経費の中でも占める割合が高い傾向にあります。
交際費は、事業を円滑に進めるために取引先との会食などで発生する費用を指します。類似の費用として接待費というものもありますが、厳密な基準があるわけではなく区別は難しいです。また、交際費は社外だけではなく社内の人間に使う場合も該当します。例として、一部の従業員が参加するような会社の記念旅行にかかる費用は交際費として計上します。
消耗品費は、消耗または摩耗する備品にかかる費用を指します。国税庁では、事務用品やガソリンなどを消耗品費として定義しています。また、使用可能期間が1年未満もしくは10万円未満の什器なども消耗品費に該当します。
旅費交通費は、業務の際に使用した公共交通機関の費用を指します。出張など宿泊を伴う場合は、その宿泊費も旅費交通費に該当します。また、出張手当を支払う場合はその費用も旅費交通費として扱います。
通信費は、事業で使用する通信のために使用した費用を指します。電話・回線料金や郵便料金などが通信費に該当します。電話のリースや宣伝用のDMなどは通信費として扱えないので注意が必要です。
福利厚生費は、従業員に支払った給与と賞与以外の費用を指します。取引先など社外の人間との会食は交際費、一方社内の人間との会食は福利厚生費に該当します。他にも、従業員の冠婚葬祭における費用も福利厚生費になります。
広告宣伝費は、不特定多数に向けて商品やサービスの認知を行うために使用した費用を指します。広告チラシや社名入りのカレンダーなどにかかった費用が広告宣伝費に該当します。類似の費用として販売促進費がありますが、販売促進費はあくまでも特定の顧客に対して使用する費用になります。
研究開発費は、新しい商品やサービスまたは既存のものに改良を加えた研究にかかった費用を指します。他の技術を導入して製造されたもの、既存のものを修理・仕様変更したもの、製造工程を見直したものなどは研究開発費に該当しません。
新聞図書費は、事業に必要な書物にかかった費用を指します。事業によっては、絶えず新しい情報を知っておくために必要となる経費になります。
水道光熱費は、水道やガス、電気にかかった費用を指します。法人にとっても重要な経費ですが、自宅開業を行う個人事業主にとっても非常に大きな経費です。自宅と事務所を兼用している場合は、事業とプライベートで使用料の按分が必要になります。
経費で落ちる費用について理解できたと思いますが、逆に経費で落ちない費用はどのようなものがあるのでしょうか。この章では、経費で落ちない費用について4つ紹介します。
前年所得に応じて発生する所得税・住民税は経費として計上できません。所得税・住民税は事業のための支出ではなく納税、つまり国民の義務です。法人税や個人事業税も同様です。
社会保険料も所得税・住民税同様、国民の義務であるため経費として計上できません。ただし、従業員の社会保険料を負担している場合は、会社負担分のみ法定福利費として経費計上可能です。
私的な買い物にかかった費用は、当然ですが経費として認められません。ただし、事業と併用する場合は使用按分を計算の上、事業にかかった費用のみ経費計上可能です。例としては、個人事業主が使用するパソコンなどが該当します。
事務用品は事務用品費などで経費になりますが、未使用である場合は経費として認められない場合があります。なぜなら、事務用品費の概要に使用期間が1年未満と定められているためです。つまり、1年以上使用しない事務用品費はその概要に該当しないことになります。
事業者が経費計上する目的は、支払う税金を抑えるためです。事業者は、法人税や個人事業税などを支払わなければなりません。これらの税金の算出ベースとなるのが所得になります。所得は売上から経費を差し引いたもので、経費が多ければその分所得を抑えることにつながります。
例えば、売上2,000万円・経費500万円の企業があったとします。この企業の所得は1,500万円です。この場合の税率は23.4%なので、法人税は351万円となります。では、経費を1,000万円として計算してみましょう。所得が1,000万円となり、法人税は234万円となります。
このように、同じ売上でも経費の金額が変われば、支払う税金も大きく変わることがわかります。
経費が多いほど支払う税金を抑えられるなら、さまざまなものを計上したいところですが、経費で落とすという行為は出費の増加を意味します。出費が増えすぎると、利益がなくなり赤字になってしまう恐れがあります。
他にも、経費として処理するには国税関連書類の保管が必要になります。事業者によっては経理作業が追いつかなくなる懸念があります。また、一番恐ろしいのが経費で落ちないものまで、経費で計上してしまうことです。そうなってしまうと最悪の場合、脱税疑惑をかけられてしまうことにつながります。
経費を計上する上で不正が発覚したり、脱税を疑われたりした場合、どのような罰則があるのでしょうか。この章では、経費計上における罰則について詳しく解説します。
過少申告加算税とは、正しい税額よりも少ない税額で申告した際に支払う罰則です。不足分に10%加算した税額を納める必要があります。ただし、追加で納める税額が当初の申告額または50万円、どちらか大きい方を超過している場合は税率が15%になります。
なお、税務調査の事前通知以前に修正申告をすれば、過少申告加算税の対象外となります。そのため、帳簿の間違いに気付いた段階で修正申告を行いましょう。
無申告加算税とは、納付しなければならない税額があるのに期限までに申告しなかった際に支払う罰則です。事業者は毎年確定申告を行いますが、ここでいう期限は確定申告の期限を指します。また、災害や通信の途絶など正当な理由があれば猶予が認められますが、特に理由がない場合は支払いの義務が生じます。
計算方法は納付すべき税額によって異なります。50万円以下であれば15%を加算した額、50万円以上であれば20%を加算した額となります。
不納付加算税とは、源泉徴収などの国税が期限までに完納されなかった際に支払う罰則です。源泉徴収は、法人や個人事業主が従業員の代わりに所得税を納めることです。不納付加算税は、源泉所得税に10%を加算した額となります。なお、5,000円未満は切り捨てとなるため、源泉所得税が5万円以上の方が対象となる罰則です。
納付期限を過ぎても自主的に納付を行った場合は税率が5%になります。
重加算税とは、偽装や隠ぺいを行った際に支払う罰則です。他の3つの加算税と違い、悪質な事業者に対して請求されるペナルティです。意図的に脱税を行おうとしている事業者を対象としているため、罰則はかなり重いです。
過少申告加算税または不納付加算税の対象となる事業者に対して、これらの加算税の罰則に代わりに35%の税率を加算した額を請求します。無申告加算税の対象となる事業者に対して、無申告加算税の罰則の代わりに40%の税率を加算した額を請求します。加えて、延滞税の請求もあります。
また、常習性が認められる場合は、税率が45~50%に引き上げられることもあります。
経費計上はかかる税金を抑える利点がありますが、嘘の計上をした場合のリスクも大きいです。では、罰則を受けずに経費精算する方法は何があるのでしょうか。この章では、ペナルティを受けずに経費精算する方法を3つ紹介します。
経費のことは税務署に相談するのが無難でしょう。税務署では確定申告の時期でなくても、年中相談窓口を設けています。また、相談料も無料となっており電話での相談も可能です。ただし、相談窓口での相談は、予約が必要になる場合があるので注意しましょう。
担当の税理士がいる場合は税理士に相談しましょう。税理士は専門的な知識を持っており、さまざまな悩みや疑問に答えてくれます。担当の税理士がいない場合も税理士に相談するメリットは多いでしょう。費用はかかってしまいますが、確定申告に必要な処理などを代行してくれたりするため、結果的に税金の節約につながることでしょう。
正確な経費計上を行うには、会計ソフトの導入が望ましいです。会計ソフトの中には、クレジットカードの明細や銀行口座の取引明細などを取り込んで、勘定項目を予測してくれるものもあります。手作業で行う部分を機械化できるだけでなく、仕訳の判断ミスも防げます。何よりも経理担当者の作業負担を削減できる利点があります。
本記事では、経費で落とすための条件などについて詳しく解説してきました。経費は、事業を行う上で欠かせない費用です。事業者はかかる税金を抑えるために、できる限り事業にかかった費用を経費として計上します。ただし、勘定すべき項目が間違っていたり、経費にできないものを計上したりすると、ペナルティを課せられてしまいます。
意図的に偽装や隠ぺいをした場合は、非常に重い罰則を課せられます。加えて、事業者としての信頼も落としてしまうことでしょう。あらぬ疑いをかけられないよう、経費に対して不安があれば、管轄の税務署や税理士などに相談しましょう。また、経理システムの導入などで、正確かつ効率的な会計処理を目指しましょう。