更新日:2024.10.15
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請求書払いは企業間で用いられる決算手段のひとつですが、詳しく知らないという方も多いでしょう。
請求書払いは企業の信用にも大きく影響します。導入を検討する際は概要だけでなく、メリット・デメリットについてもしっかり押さえておくことが大切です。
本記事では、請求書払いの決済の流れ、請求する側・される側双方にとってのメリット・デメリットを紹介します。ぜひ参考にしてください。
請求書払いは、商品やサービスを先に受け取り、後日指定された期日に代金を支払う決済方法です。 企業間取引においては一般的な支払い方法ですが、最近では個人向けのサービスでも利用が増えています。
請求書払いは、主にBtoB取引で利用される決済方法です。企業は、必要な商品やサービスを先に受け取り、後日まとめて支払うことができます。
請求書払いの利用には、買い手側の信用力(与信)の審査が不可欠です。売り手側は、買い手が期日までに代金を支払えるかどうかを事前に評価します。
請求書払いは、商品やサービスの提供後に代金を受け取るため、売り手側にとっては代金回収のリスクがあります。そのため、請求書払いの利用には、買い手側の信用力(与信)の審査が不可欠です。
財務状況は、企業の安定性を評価する上で重要な要素です。企業であれば、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を基に、安定した収益があるか、債務超過に陥っていないかなどを確認します。例えば、赤字が続いていたり、債務超過の状態にある企業は、支払いが滞るリスクが高いと判断される可能性があります。
個人であれば、収入や預貯金、他の借入状況などを確認します。安定した収入があり、十分な預貯金があれば、支払い能力が高いと判断されます。一方、収入が不安定であったり、他の借入が多い場合は、与信審査に通らない可能性があります。
過去の取引実績は、買い手の支払い能力や信頼性を評価する上で重要な情報となります。過去の取引において、支払いが遅延したことはないか、取引額は適切であったかなどを確認します。
例えば、長年にわたり取引があり、一度も支払いが遅れたことがない企業は、信用力が高いと判断されます。一方、過去に支払いが遅れたり、取引額が不適切であった場合は、与信審査に不利に働く可能性があります。
信用情報は、買い手の信用力を客観的に評価するために利用されます。信用情報機関に登録されている情報を確認し、過去のクレジットカード利用状況やローン返済状況などを確認します。
例えば、クレジットカードの支払いを延滞したことがある場合は、信用情報に傷がつき、与信審査に不利に働く可能性があります。一方、クレジットカードやローンの利用がなく、信用情報に問題がない場合は、与信審査に通る可能性が高まります。
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | 資金繰りの改善:商品やサービスを先に受け取れるため、手元の資金が少なくても必要なものを調達できる・事務処理の効率化:都度支払う必要がなく、まとめて支払えるため、事務処理の手間を削減できる |
デメリット | 代金回収リスク:買い手が支払わない場合、回収に手間やコストがかかる・事務処理の増加:請求書の作成や発送、入金確認など、事務処理が増える |
請求書払いは、以下の5つのステップを経て取引が完了します。
請求書払いは、商品やサービスの提供後に代金を受け取るため、売り手側にとっては代金回収のリスクがあります。
買い手が期日までに代金を支払えるかどうかを事前に評価するため、売り手は買い手に対して与信審査を行います。
与信審査では、主に以下の3つの要素が評価されます。
要素 | 説明 | 例 |
---|---|---|
財務状況 | 企業の安定性を評価する上で重要な要素です。 | 企業:貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を基に、安定した収益があるか、債務超過に陥っていないかなどを確認します。・ 個人:収入や預貯金、他の借入状況などを確認します。 |
過去の取引実績 | 買い手の支払い能力や信頼性を評価する上で重要な情報となります。 | 過去の取引において、支払いが遅延したことはないか、取引額は適切であったかなどを確認します。 |
信用情報 | 買い手の信用力を客観的に評価するために利用されます。 | 信用情報機関に登録されている情報を確認し、過去のクレジットカード利用状況やローン返済状況などを確認します。 |
与信審査に通ると、取引が開始されます。売り手は、買い手に対して商品やサービスを提供します。
売り手は、買い手に対して請求書を発行し、送付します。請求書には、以下の情報が記載されています。
項目 | 説明 |
---|---|
取引内容 | どのような商品やサービスを提供したのかを具体的に記載します。 |
金額 | 取引金額を明確に記載します。消費税の有無も忘れずに記載しましょう。 |
支払期日 | 買い手が代金を支払うべき期日を明確に記載します。 |
振込先 | 買い手が代金を振り込むべき銀行口座の情報(銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義)を記載します。 |
買い手は、請求書に記載された支払期日までに、指定された方法で代金を支払います。売り手は、入金を確認し、請求情報と入金情報を照合して入金消込を行います。
支払期日を過ぎても入金がない場合は、売り手は買い手に対して督促を行います。督促状を送付したり、電話やメールで連絡を取ります。
それでも支払いがされない場合は、法的措置を含めた回収手続きが必要となる場合もあります。
請求書払いは請求する側にメリットがないと思われがちですが、そんなことはありません。次に紹介する3つのメリットがありますので、確認してみてください。
請求する側の経理担当者は、月に1度などのベースで請求業務を行うようになるので、大幅に負担が減らせます。頻繁に取引があり、その都度請求を起こさないといけない状況だと、同じ単価の仕事でも利益が圧迫されてしまいます。少し大袈裟な言い方をすると、負担が減るので利益が出るようになるということです。
請求書払いにすると、都度請求ではなく月一度の請求業務になるため大幅に会計処理が減らせます。そのぶん、会計処理におけるミスも少なくなるでしょう。
会計処理のミスは、追徴課税などのペナルティを受けることもあるので、企業にとっては非常に危険なものです。請求書払いを導入すれば、会計処理をチェックする頻度も減り、経理担当者はゆとりをもって処理できるようになるでしょう。
請求書の発行にかかる費用の削減も大きなメリットです。
取引先が多くなるほど、宛先と請求書の送付先が一致しているか確認する手間が発生します。誤って別の企業の請求書を送ってしまうなど、トラブルの恐れもあるでしょう。
請求書払いによって煩雑な業務が簡略されるため、通信費だけでなく、人件費の節約も期待できるのです。
請求書払いは、請求する側にとってデメリットとなる要素もあります。請求書払いの主なデメリットを3つ紹介しますので、しっかり確認しておきましょう。
請求する側にとっての、最も重要なデメリットは、債権が回収できなくなるリスクが高くなることです。その都度決済をする方法ではないので、回収不能となった際のダメージが大きい可能性があります。
請求書払いで与信が行われることがあるのも、回収不能となるリスクがあるからです。回収不能となったら倒産に繋がると思われる場合は、慎重に与信を行い、与信管理も徹底した方がよいでしょう。
請求書払いは、請求する側の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。資金繰りに問題がなければよいのですが、そうでない場合は、何らかの対策が必要です。
一般的には、取引をするに当たって保証金を受け取る対策をとる企業が少なくありません。また、企業規模や資本金によっては請求書払いを受け付けないといった基準を設けている企業もあります。
取引する相手の信用調査をする場合は、調査にかかる手間が負担になる場合があります。ただし、信用調査をすれば安心というわけではありません。調査した結果、取引できないケースもあるでしょう。
また、信用情報を調べたり、信用調査会社に依頼したりする際にかかる費用は自社で負担します。企業の規模が小さいほど信用調査の負担は大きくなるので、注意が必要です。
請求書払いは、後払い決済のことなので、支払いをする側のメリット大きくなります。ここでは、支払う側に生じる代表的な3つのメリットを紹介します。
請求書払いによって資金繰りがよくなる点は大きなメリットです。企業にとって資金繰りは死活問題になることもあり、ときに企業の存続にも影響します。
ただし、資金繰りがよくなったぶんだけ、取引相手の資金繰りが厳しくなります。取引相手の資金がショートしてしまうと、その時点でサービスが受けられなくなることもあるため、注意しましょう。
請求書払いの導入によって、経理担当者の負担は大きく軽減されます。
頻繁に取引があるなどして決済が積み重なると、経理担当者の負担になります。請求内容や支払いに関する確認作業がまとめられるので、人件費の削減にも繋がるでしょう。
振込手数料を代金支払い側が負担する場合は、振込手数料の削減効果も大きくなります。1回あたりの手数料は数百円程度ですが、頻繁に振込手数料が発生すれば、負担が大きくなるのは当然です。さらに、その都度精算をしている企業が多くなれば、無視できないほどの振込手数料の負担になることもあります。
経費削減は、利益に直結しますので、人件費の削減効果と同様、企業が利益を出しやすい体質になるといえるでしょう。
請求書払いのデメリットは、支払う側にもあります。メリットとあわせて、しっかり確認しておきましょう。
請求書払いを導入すると、資金繰りがよくなる一方、まとまった金額の請求を受けることになります。資金繰りの管理がいい加減だと、代金の支払いができなくなってしまいます。
資金繰りを理由に手形の発行をすると、不渡りが発生し、倒産の恐れも。取引相手から取引を断られるリスクもあるので、資金繰りの管理を厳格にしないとなりません。
取引相手から信用調査を受けることに心理的な抵抗を感じる場合は、与信の手続きがデメリットになります。とくに直近の決算書類を提出するように求められて、最終的に取引ができなかった、となると自信を失ってしまう可能性もあります。
請求する側の企業が取引先選定の方針を行うため、方針変更にともない取引中断となる恐れもあります。
たとえば、途中で「個人事業主とは取引をしない」と決まる可能性もあるのです。請求書払いがずっと有効であるとは考えないようにしましょう。
企業にとって請求書払いのサービスが重要である程、ダメージは大きなものになります。サービスが受けられなくなった際の対処についても考えておく必要があります。
信用を第一に考えることが、トラブル回避のポイントです。請求する側の企業が決められた日に確実に請求を起こし、請求された企業も期日に間に合うように入金しないといけません。請求書払いの導入によって取引相手とトラブルが生じないよう、厳密に取り扱いましょう。
サービスや商品の提供においても、信用が失われてしまうと請求書払いの付き合いができなくなります。相手の信用を調べるだけでなく、自分の信用を失わないようにすることも重視しましょう。