更新日:2024.06.02
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近年、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入などにより、請求書を電子化する企業が増えています。自社でも請求書の電子化を実現したいと考えていても「本当にメリットがあるのか」「セキュリティ上の問題はないか」など不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、請求書を電子化するメリット・デメリットについて詳しく解説します。電子化の種類別の特徴や導入時の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
電子請求書とは、データ化されたメールやクラウド経由で送受信可能な請求書です。PDF形式も電子請求書に該当します。ここでは、電子請求書の種類と特徴を詳しく見ていきましょう。
メール型の電子請求書は紙やオフィスツールで作成した請求書をPDF形式に変換し、メールに添付して送る方法です。スキャナを使えば請求書をデータ化できるため、紙の請求書を扱っていた場合でも簡単に電子化することが可能です。
ただしメール型の電子請求書は、誤送信による情報漏えいのリスクがあります。別の取引先に請求書を送信すると誤送信の対応に人的・時間的コストがかかるだけでなく、企業としての信頼が失われてしまうため注意が必要です。
またデータの管理方法も、あらかじめ明確にしておかなければなりません。請求書の内容を修正したときに、どれが最新なのか分からなくなったり、必要なデータを削除してしまったりすることがあります。
システム型の電子請求書は、発行や送付など請求関連の業務を一貫して行えるタイプです。一般的に取引先を選択してから請求書を作成するため、誤送信のリスクを最小限に抑えられます。また請求書を送付すると自動で取引先に通知が行くので、連絡する手間がかからず業務効率化につながるでしょう。
請求書の再発行や修正が発生した場合でも、容易に対応できます。検索性も高く、過去の請求データを簡単に確認することが可能です。
ダウンロード型の電子請求書はPDF化したデータをクラウド上にアップロードし、取引先にダウンロードしてもらうタイプです。請求書の共有方法は、クラウドストレージやファイル転送サービスなどがあります。クラウドストレージは、インターネット上にデータを保管するサービスです。権限を持っていれば請求書以外の書類もアクセスできるため、共有範囲をしっかり設定する必要があります。
ファイル転送サービスはパスワードを入力することで、特定のURLからダウンロードが可能です。ダウンロードされたか確認できるものの、一定期間が過ぎるとデータが自動的に削除されるため注意しましょう。取引先が期限直前になってもデータをダウンロードしていない場合は、リマインドを行う必要があります。
従来の請求書は紙に印刷し、郵送する方法が一般的でした。しかし現在は以下2つの背景から、請求書の電子化が注目されています。
電子請求書にはさまざまなメリットがあるため、今後も導入する企業が増えると予想されています。
電子帳簿保存法の改正により、電子データで作成された請求書はそのまま保存することが義務化されました。電子データで受け取った請求書を紙で保存するのは、原則認められません。また電子データの保存要件が緩和され、スキャナ保存をする際に従来必要であった税務署長による承認が不要となりました。
電子帳簿保存法は、書類管理の負担軽減や円滑かつ正確な納税の履行を目的としています。インターネット上で請求関連が完結するため、取引先とスムーズなやり取りが可能となります。
インボイス制度は、売り手が買い手に対して正確な消費税額や適用税率を伝えるための法律です。売り手がインボイス(適格請求書)を発行することで、買い手が仕入税額控除を受けられるようになります。しかしインボイス制度の導入により請求書の記載項目が増加したため、以前よりも請求業務が複雑になりました。
企業は請求業務の効率化を図り、経理の負担を軽減することが課題です。請求書の電子化は、インボイス制度の導入による課題の解決策として注目されています。
請求書を電子化することで、以下4つのメリットを享受できます。
請求書を電子化する場合は、導入時・導入後にコストが発生します。また請求書を紙から電子データに移行する手間もかかりますが、総合的に見るとメリットの方が多いです。ここでは、電子請求書の導入で得られるメリットを詳しく見ていきましょう。
電子化された請求書はメールやクラウド経由で送付するため、印刷や郵送の作業が不要となります。経理の業務効率化につながり、担当者はより重要度の高い業務に時間を割り当てることが可能です。また、請求書に再発行や修正が発生した場合でも容易に対応できます。更新したデータをそのまま送付するだけなので、請求に関する取引先とのやり取りもスムーズになります。
担当者は社外からでも請求書を発行・送付できるため、テレワークも推進しやすいです。紙の請求書を発行する際は、義務ではないものの押印しているケースが多くありました。一方で電子請求書であれば発行や押印のための出社が不要となり、柔軟な働き方を実現できます。
電子請求書は郵送が不要となるため、郵送料金のコスト削減につながります。将来的に郵送料金の値上げが決定されており、紙の請求書を扱っている企業の負担は大きくなります。値上げによる影響をなくすために、請求書の電子化は有効な手段です。郵送代の他に、請求書を印刷する紙代やインク代なども削減されます。また発行した請求書の控えを保管するスペースも不要となります。
請求書を電子化することで、請求関連の業務で使う紙の量を削減できます。ペーパーレス化は経費だけでなく、環境負荷の軽減も可能です。近年はSDGsへの関心が高まっており、持続可能な社会を実現する企業の取り組みにも注目が集まっています。請求書の電子化はSDGsの取り組みの一環であり、企業全体で実行することでイメージ向上にも繋がります。
電子請求書はメールやクラウド経由で送付するため、送信履歴を容易に確認できます。紙の請求書の場合、封入・発送後の状態が分かりません。一方で電子請求書であれば送付先や請求書の内容が残るので、誤送信や不着などのトラブルが起きた場合でも素早い対応が可能です。また紛失リスクを最小限に抑えられることも、請求書を電子化するメリットとして挙げられます。
請求書の電子化はメリットだけでなく、以下2つのデメリットもあります。
電子請求書を導入しても、取引先によっては完全に移行できない可能性があります。そのため請求書を電子化するデメリットも把握したうえで、導入を進めることが大切です。
請求書を電子化しても、紙でのやり取りを希望する企業が一定数存在します。取引先に紙の請求書を求められた場合、個別の対応が必要です。取引先によって請求書の方式を変えなければならないため、手間が増えてしまう可能性があります。
ただし、郵送代行サービスを提供している請求書発行システムも多く販売されています。経理担当者のリソースが足りない場合や負担を最小限に抑えたい場合は、代わりに郵送してくれるサービスを活用しましょう。
請求書の電子化にあたってシステムを導入する場合は、コストがかかります。初期費用や月額費用はシステムによって異なるため、導入前に比較・検討が必要です。セキュリティ面や操作性なども、システムを選定するうえで重要なポイントになります。
セキュリティが低いシステムを導入すると、情報漏えいのリスクが高まります。情報が社外に流出すると企業の信頼性が低下する他、法的な賠償責任や罰金などが発生するケースも多いです。またシステムを導入しても、操作性によっては業務効率が悪くなる可能性があります。導入後すぐに業務で活用してもらうために、経理部門であれば誰でも使えるシステムを選びましょう。
紙から電子データの請求書に移行する場合、以下2つのポイントに注意が必要です。
電子請求書を導入する際は、取引先への周知が欠かせません。あらかじめ伝えておくことで、スムーズに請求書を電子化できます。
請求書を電子化する際は、事前に取引先へ周知する必要があります。取引先が電子請求書に対応可能かも把握できるため、導入がスムーズに進みやすいです。周知を行う際は、取引先側のメリットもあわせて伝えると受け入れてもらいやすくなります。
合意を得られなかった場合は、引き続き紙で請求書を発行しなければなりません。紙と電子データの両方に対応するためには、取引先によって送付方法を分けられるシステムを選ぶのがおすすめです。
電子請求書を導入するときは、情報漏えいや不正アクセス防止に向けてセキュリティ対策を徹底的に行うことが重要です。メールに請求書を添付する場合は、送信前にダブルチェックをしたり、ファイルにパスワードをかけたりする方法が効果的です。請求書発行システムを導入する際は、通信の暗号化や二要素認証などの対策が挙げられます。
電子請求書は3種類あり、自社に合った方法を採用することが可能です。いずれの方法でも電子請求書は、業務効率化や郵送料金のコスト削減などにつながります。またシステム型やシステム型の電子請求書であれば、誤送信のリスクも抑えられます。
ただし電子請求書を発行する際は業務フローが従来と変わる可能性があるため、マニュアルの策定・従業員への教育が必要です。またセキュリティ対策や取引先への周知も欠かせません。請求書を電子化しても、紙でのやり取りを希望する取引先が出てくるケースもあります。柔軟に対応できるように、当面は紙・電子データに関わらず請求書を発行できる体制を整えておくことが重要です。