更新日:2024.11.29
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「請求書の振込期限はどう設定するのが正解?」
「振込期限をどう設定すれば支払い遅延を防げる?」
などとお悩みではありませんか?
請求業務は、取引先と継続的に仕事をしていくうえで重要です。取引先からの入金が遅れると、信頼関係が損なわれるだけでなく、自社のキャッシュフローにも影響が出てしまいます。
ここでは、請求書の振込期限の設定方法を中心に法的なルールも含め、実務に役立つ情報を詳しく紹介します。経理担当者としての課題解決に役立ててください。
請求書の振込期限とは、取引先に対して指定した金額を支払ってもらう期限を指します。
企業間の取引において、振込期限は支払期日を明確にし、支払遅延のリスクを減らす重要な要素です。
振込期限が設定されていないと、取引先によって支払いが遅延する可能性が高まり、自社のキャッシュフローが不安定になる恐れがあります。また、振込期限の設定は自社の信頼性や取引の円滑さにも関わるため、適切な期限の設定が求められます。
以下では、振込期限の重要性や目的について詳しく見ていきましょう。
振込期限の基本的な意味は、請求書に記載された金額を取引先が支払うべき期日を明示することです。
取引が発生した日から一定の期間内に、支払いを完了させるための目安を提供する役割があります。振込期限が明確か否かで、以下のようなメリットやデメリットが生じます。
振込期限 |
自社 |
取引先 |
明確な場合 |
資金回収の予定を立てやすく、資金繰りの管理が容易 |
支払期日が明確になり、計画的な支払いが可能 |
不明確な場合 |
振込の催促や確認に労力や時間がかかる恐れ 支払期日の認識のズレからトラブルに発展する恐れ |
したがって、振込期限の設定は企業間の信頼関係を維持し、安定した取引を行うために重要です。
請求書に振込期限を設定する目的は、自社の安定した資金繰りの確保と取引関係のトラブル防止です。
自社が経営を続けるには、定期的に資金が回収される必要があります。振込期限がしっかりと設定されていれば取引先も期日を意識して支払いを行うため、資金が滞るリスクの軽減が可能です。
振込期限を明記すれば、取引先との間で支払期日について誤解が生じるリスクも低くなります。加えて、未払いが発生した際にはスムーズに対応する根拠としても機能します。
請求書における振込期限の設定は、円滑な取引に欠かせない措置といえるでしょう。
企業はキャッシュフローを管理する目的で、振込期限を「発行日から30日以内」のように、一定の日数に基づき設定しています。取引先や契約条件に影響されますが、一般的には「30日」「60日」などが選ばれる傾向です。
取引先との関係や自社の資金繰りを考慮し、無理のないスケジュールを設定することがポイントです。
請求書の振込期限に関する明確なルールはありませんが、代表的な例として「30日」「15日」「1週間」が挙げられます。
振込期限 |
概要 |
30日 |
取引先に十分な支払準備期間を与える一般的な期間 例)法人同士の取引 |
15日 |
迅速な支払いが求められる場合で比較的短めの期間 例)中小企業や個人事業主との取引 |
1週間 |
短期間での資金調達が必要な場合 例)緊急性が高いケース |
上の表のとおり、振込期限は取引内容や取引先の要望に応じて設定され、双方にとって負担の少ない期間を選ぶのが重要です。
振込期限を決めるときは、以下の3つのポイントを考慮する必要があります。
3つのポイントを押さえ、双方にとってメリットのある振込期限を設定するのが望ましいです。
※支払いサイト:取引において締め日から実際に代金が支払われるまでの期間
一般的な支払いサイトには「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月末払い」などの方法があります。
「月末締め翌月末払い」の場合、請求書を月末で締め、翌月末に支払いが実行されます。たとえば、1月末に請求書を発行する場合、支払期限は2月末です。
締め切り日から実際の支払いが行われるまで約30日かかるため、「30日サイト」とも呼ばれます。
支払いサイトを理解し、自社と取引先の双方が無理なく運用できる振込期限を設定することが、安定した取引関係を築くうえで重要です。
請求書に振込期限を明記することは、取引を円滑に進めるための重要なステップです。
ここでは「請求書の振込期限」の具体的な書き方や記載例を説明します。振込期限を適切に設定し、スムーズな支払手続きを確保しましょう。
請求書の振込期限を記載するときは、「発行日から〇日以内」といった表現が一般的です。
「発行日から30日以内」や「発行日から15日以内」などの具体的な期間を記載すれば、取引先に支払日を明確に伝えられます。
曖昧な表現を避けるために「振込期日:2025年1月31日」といった具体的な日付を加えると、より効果的です。
入金トラブルを避けるためにも、振込期限はできるだけ正確に記載しましょう。
振込期限を請求書に記載しない場合、入金の遅延リスクが高まります。振込期限が明確でないと、取引先は支払いタイミングを自由に解釈してしまう恐れがあるからです。
振込期限は必ず明記し、必要に応じて取引先に支払日を確認する手順を設けておくと良いでしょう。
さらに、振込期限に関する事前の合意や定期的な催促の仕組みを取り入れるなど、管理体制を整えれば、入金遅延リスクを軽減できます。
請求書の振込期限には取引の信頼性を保ち、支払いを円滑に進めるために、さまざまな法律が関係しています。
代表的なものとして「下請代金支払遅延等防止法」や「民法」の規定があり、適正な取引を維持し、未払いリスクを最小限に抑えるための役割を果たします。
支払期限のルールやガイドラインを把握すれば、振込期日を適切に設定・管理し、信頼性の高い取引関係を築けるでしょう。
振込期限に関して法律で直接的に定められている規定は少ないですが、支払期日を守ることは暗黙のルールとなっています。支払期日を守ることで信頼関係が維持され、取引が継続されます。
下請代金支払遅延等防止法では支払い遅延を防止するために、取引が完了した日から60日以内かつできるだけ早い期間に親事業者が支払うことを義務づけています。
法的な規定によって取引先とトラブルを避けられ、支払いの遅延が生じた場合の対応策が法的に保証されるのです。
振込期限に関する法的規定として、下請代金支払遅延等防止法のほか、民法にも関連する条項があります。
たとえば、民法では請求書を根拠とした請求(支払期限に定められた日の翌日から5年)や支払期日を過ぎた場合の遅延損害金に関する規定があり、未払いが続いた場合には遅延利息を請求することが可能です。
振込期限を過ぎた場合には速やかな対処が求められます。未払いが長引くと取引先との信頼関係が損なわれる恐れがあるため、初期対応から法的手段まで段階的に進めていくことが重要です。
以下に、支払遅延時の対応手順と各ポイントについて詳しく説明します。
まずは請求書の内容を再確認し、振込期限や振込先の情報が正確であるか、取引先に誤解が生じていないかを確認しましょう。
次に、振込が遅れた理由を取引先に確認しましょう。事務的なミスや確認不足が原因である場合、丁寧な説明を行えば円滑に問題解決が図れることもあります。適切な初期対応を行うことで、信頼関係の維持につながります。
初期対応の確認後、取引先への連絡を行って、適切に催促を進めましょう。
まずは、電話やメールで未払いの事実を伝えて、支払いを依頼します。このとき感情的にならず、冷静にあくまで事実を伝えることを心がけましょう。
次に、支払期日の再設定が必要な場合は取引先と柔軟に調整し、双方にとって無理のない期日を設定することが効果的です。
催促の際に丁寧な言葉を用いることで、関係性の悪化を防ぎ、今後の取引においても良好な関係を保てます。
取引先への催促を行っても支払いがない場合、法的手段を検討することが必要です。
まず、内容証明郵便を利用して支払いの意思を正式に確認する方法があります。支払いを求める文書を証拠として残すことで、取引先に対して正式な請求意思を示す手段です。
また、支払督促の申請も1つの方法です。簡易裁判所を通じて支払いを促す手続きで、未払いが解消されない場合の最後の手段として利用できます。
法的手段は慎重に使うべきですが、確実に支払いを求める際には有効な方法です。
参照:郵便局「内容証明」
参照:裁判所「支払督促」
請求書における振込期限の設定は、経理業務の円滑化と企業間の信頼関係を維持するために重要です。
適切な振込期限を設け、請求書に明確に記載することで、支払遅延のリスクを減らし、スムーズな取引を実現できます。また、振込期限を定める際は法律上の規定や業界の慣例を参考にし、取引相手の状況も考慮することが重要です。
万が一、振込期限が過ぎた場合でも冷静に対応し、必要に応じて法的手段も視野に入れることで、支払回収の遅れを最小限に抑えられます。
振込期限の設定と管理を徹底することで、安定したキャッシュフローの確保につなげましょう。