更新日:2024.11.27
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請求書は、納品した商品やサービスの代金を取引先に請求するときに提出する書類です。請求書に決められた書式はありませんが、記載する項目が定められています。Web上には、必要な記載項目を満たす請求書のテンプレートが紹介されているため、自社で作成せずにテンプレートを利用するという企業も多いです。
一方で、請求書のテンプレートにはさまざまな種類があり「顧客との取引に相応しいテンプレートがどれか迷ってしまう」という企業の担当者がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、請求書テンプレートの選び方を用途別に詳しく解説します。テンプレートを選ぶときの3つのポイントと、個人事業主が請求書を作成するときの注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
請求書は、顧客との取引内容を証明し代金を請求する大切な書類です。請求書には、国税庁が定めた項目を記載する必要があります。2023年10月より開始したインボイス制度により、取引先が仕入税額控除を受けるには従来の記載内容だけでなく追加項目を記載した「適格請求書」が必要となりました。
追加項目としては、適格請求書発行事業者であることを示す登録番号や、消費税率ごとに計算した消費税額などが当てはまります。ここからは、請求書の概要と記載項目について紹介します。
適格請求書には、記載が必要な6つの項目が国税庁によって決められています。また、取引先の代金の入金作業の手間を軽減するため、記載しておいた方がよい項目は3種類です。
記載項目 |
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必ず記載する項目(6項目) |
1.書類作成者の氏名または名称、登録番号 2.取引年月日 3.取引内容(軽減税率の対象である旨) 4.税率別に区分して合計した対価の額(税込) 5.税率により区分した消費税額等 6.書類の交付を受ける事業者 |
記載しておいた方がよい項目(3項目) |
・請求書番号 ・振込先(口座情報と振込手数料など) ・支払期限 |
必須記載項目の「登録番号」とは、インボイス発行事業者として税務署に登録されている番号です。小売業や飲食業、タクシー事業者が発行する適格請求書には、4,5,6の項目を記載しなくても良いとされています。
請求書のテンプレートは、取引先の要望や取引内容によって以下の7種類に分けられます。
ここからは、それぞれの請求書テンプレートの特徴を紹介しますので、テンプレートを利用する際の参考にしてください。
必ず記載しなければならない項目と、記載した方がよい項目のみのシンプルなテンプレートは、値引きや源泉徴収税の対応が必要ない取引におすすめです。必要最低限の項目を記載したシンプルな請求書は、見やすく処理しやすいというメリットがあります。取引先からの要望や記載項目に追加がなければ、シンプルな請求書テンプレートを使いましょう。
商品に「値引き」が発生した場合は、値引き金額を請求書に記載して発行します。商品の値引きが行われるのは、以下のケースです。
クレーム対応とは、納品した商品に不具合があった場合、割引処理することです。大量購入とは、取引先が商品をまとめて購入してくれた場合に、通常より安く提供することを言います。相殺とは、商品の不具合による返金と新たな取引の請求金額を合わせて計算し、請求金額から値引きすることです。
また値引き対応だけでなく、前月からの繰越金額に対応した「値引き・繰越」対応の請求書もあります。通常の取引だけでなく、値引き金額と繰越金額を相殺した請求金額を、自動計算してくれるテンプレートを使うと便利です。
請求書の記載項目に、源泉徴収税欄がある請求書テンプレートは、個人事業主やフリーランスの方におすすめです。源泉徴収税とは、給与を支払う側が税金や保険料を天引きして預かり、納税者に代わって納付する仕組みを指します。企業であれば、源泉徴収税の計算は担当部署が行いますが、個人事業主は自分で計算しなければなりません。
源泉徴収税率は基本的に10.21%(1回の支払いが100万円を超える場合は20.42%)です。源泉徴収税額は、対象となる金額が消費税を含むか含まないかにより変わります。また、取引先によっては自社で記載を希望されるケースもあります。源泉徴収額の記入は、取引先に前もって確認しておきましょう。
各項目を入力すると、源泉徴収税額も含めた最終的な金額が自動計算されるテンプレートもあります。作成の都度計算する必要がないため、たいへん便利です。
立替経費を請求する必要がある場合は、専用の請求書テンプレートを選びましょう。「立替経費」とは、本来企業が負担する経費を従業員が一時的に立替えた費用を指します。例えば、社内の業務で使う文房具を従業員が購入し、後ほど会社に請求するケースです。備品の購入だけでなく、以下のケースにも当てはまります。
テンプレートには通常の請求を記載する項目の下部分に、立替経費の記入欄が作成してあるケースが多く見られます。
請求書テンプレートの中には、領収書が付いているケースもあります。企業間での取引では、請求する時期と支払いの時期は異なっていることが一般的です。領収書付き請求書は、請求と支払いを同時に行う以下のようなケースで使われます。
領収書付き請求書のテンプレートには、通常の請求書内容を記載する下部分に「領収書」の枠が作成してあるケースが多くあります。
本来であれば別々で提出される納品書と請求書を、一緒にまとめた書式もあります。納品書と請求書をまとめて一度に提出することで、経理処理の手間を省くことが可能です。納品書ですが請求書も兼ねているため、7年間保管する必要があります。
インボイス制度に基づく規定により、仕入税額控除を受ける場合は取引先から提出された適格請求書を保管する義務が発生するためです。請求書テンプレートの表題には「納品書兼請求書」と記載してあるケースが多くあります。
請求書を送付するための宛名書きの手間を省きたい場合は、窓付封筒対応のテンプレートを選びましょう。窓付封筒とは、封筒の中身が見える窓が付いた封筒です。窓の部分に印刷した送り先を表示できるため、宛名を書いたり宛名シールを貼ったりする必要がありません。
また「かがみ」と呼ばれる送付状が付いた請求書テンプレートもあります。「かがみ」とは、請求書などに同封される用紙で、商取引の習慣の1つです。かがみは、相手への敬意を表したり請求書の要点を記載したりという用途で使われます。
多くの従業員が勤務する企業であれば、請求書作成などの経理作業は担当部署が行います。しかし、個人事業主やフリーランスの方は、通常の業務だけでなく請求書などの経理作業も必要です。
また、個人事業主の請求書への記載項目は、法人とは一部異なる箇所があります。個人事業主が請求書を作成するときには、以下の3点に注意しましょう。
取引先との請求書のやり取りをスムーズに行うため、正しい記載内容で発行状況に抜けがないか確認しながら行いましょう。
取引先に源泉徴収されている場合は、請求金額から源泉徴収額を差し引いた上で請求しましょう。発注先から特に何も言われなくても源泉徴収しているケースがあるため、請求書を作成する前に確認しておくようにします。源泉徴収税率は、報酬の税抜き金額の10.21%です。
もう1つ気をつけなければならないのが、消費税の記載です。個人事業主は、前々年の売上高が1,000万円を超えると、課税事業者として消費税を申告し納税する義務が生じます。また、適格請求書発行事業者となるために、課税事業者となった場合も同様です。請求書に消費税を記載する場合は、以下の2つの方法があります。
見やすさや取引先の経理処理のしやすさを考慮し、記載方法を選びましょう。取引先が指定する場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
報酬を銀行振り込みにする場合、振込手数料が発生します。振込手数料は、自社か取引先かどちらが負担するか、前もって確認しておきましょう。民法485条によると、取引先との特別な取り決めがなければ、振り込みする側の手数料負担が原則とされています。
取引先との取り決めがなければ、請求書には振込手数料の負担を依頼する旨を記載しておくと、先方にも分かりやすいでしょう。
個人事業主は、業務の対応だけでなく請求書の管理も自分で行う必要があります。取引先が多くなり、十分な確認が行えなくなると、請求書の発行漏れが発生するかもしれません。請求書を期日までに発行しないと、報酬が振り込まれないケースもあります。
業務の進行状況と同時に、請求書を発行したかどうかも確認しておくことが必要です。取引先によって請求書を発行するタイミングが異なるため、事前に確認しておきましょう。
Web上で提供されている請求書テンプレートには、顧客との取引の違いにより、さまざまな種類があります。テンプレートを選ぶ際は、どのようなことを確認する必要があるでしょうか。請求書テンプレートを選ぶ際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。
ここからは、それぞれのポイントについて紹介します。
請求書は、取引先ごとに適した記載項目を満たすテンプレートを選びましょう。顧客の要望や取引内容に合わせて最適なテンプレートを選ぶことが、請求書のスムーズなやり取りに重要です。
取引先によっては、前月からの繰り越しを請求書に記載するケースや、請求書を兼ねた納品書を要求されるケースがあります。また、中には請求書テンプレートを指定する取引先もあります。取引先の希望や取引内容に合わせ、記載項目を網羅したテンプレートを使用しましょう。
Web上でダウンロードできる請求書テンプレートは、無料で使えるものが多くありますが、途中から有料に変わる場合があります。請求書テンプレートをダウンロードできるWebサイトの中には、無料でダウンロードできるのはお試し期間のみで、それ以降は有料になるサイトもあります。
例えば、テンプレートを無料でダウンロードしたサイトで、期間を置いてから再び別のテンプレートをダウンロードすると、有料契約になるケースです。請求書ごとにレイアウトなどが大きく変わるのを避けたければ、有料に切り替わる条件やタイミングを知っておきましょう。
請求書テンプレートを選ぶ際は、取引先の担当部署が確認しやすく処理しやすい書式を選びましょう。テンプレートの中には、シンプルなものから重要項目が見やすいよう工夫された書式まで幅広くあります。一方でデザイン性の高いテンプレートなどは、無駄な装飾がついており内容が読み取りにくい場合があり、数値を読み間違う原因になる可能性があります。
経理の担当者が処理しやすい請求書は、必要な項目が記載されたのみのシンプルなテンプレートです。また、請求書に適度なスペースがあるテンプレートは、経理処理の際に追記事項などをメモできるため、喜ばれる場合もあります。
請求書は、商品やサービスの料金の支払いを取引先に請求するための書類です。必ず記載する必要がある項目があるだけでなく、取引内容によって記載する項目が変わります。
用途ごとに自社のテンプレートを作成するのが手間だと思う場合は、Web上のテンプレートを利用しましょう。請求書テンプレートを選ぶ際は、以下のポイントを確認します。
個人事業主やフリーランスの方は、一般的な企業が記載する項目だけでなく、源泉徴収税や消費税の記載が必要になります。請求書のテンプレートはさまざまな種類があるため、顧客との取引内容や要望に合わせて最適な種類を選びましょう。
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