更新日:2024.11.29
ー 目次 ー
適格請求書に記載する登録番号の正しい位置は?正しく扱うための6つの注意点
適格請求書等保存方式(インボイス制度)に記載する登録番号は、適格請求書発行事業者に対して発行される番号のことをいいます。
登録番号は、適格請求書に記載する際に、細心の注意が必要な要素の1つです。なぜなら、適格請求書発行事業者によって作成された請求書でも、登録番号が書かれていない請求書では消費税の仕入税額控除をおこなえないからです。
しかし、登録番号をはじめ、適格請求書に必要な要件を理解せずに請求書の作成や受領をしている方は多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では登録番号とは何か、登録番号の正しい記載位置、注意点について解説していきます。登録番号について理解を深めることで、適格請求書を作成したときや受領したときに不備がないか判断できるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
インボイス制度における登録番号とは、事業者が消費税の仕入税額控除をするために請求書に記載が求められる項目の1つです。管轄地域の「インボイス登録センター」やe-Taxで申請をおこない、その申請が認められることで登録番号が付与されます。
登録番号の申請は、法人に限らず、個人事業主でもおこなうことが可能です。どちらも番号の構成は「T+13桁の番号」になっています。
法人や団体が認定を受けた場合、13桁の数字の部分は法人番号と同じ数字です。法人番号とは、国税庁が国の機関や設立登記した法人に対して指定する13桁の数字のことをいいます。
例えば、法人番号が「1234567890123」であれば、登録番号は「T1234567890123」となります。万が一、登録番号を失念してしまった場合は、法人番号の頭に「T」をつけるとよいでしょう。
ですが、法人番号はあくまでも法人や団体の識別に使われるもののため、登録番号との用途とは異なります。同じ番号で混合してしまいかねませんが、法人番号だけを請求書に記載しないように注意しましょう。
インボイス制度には、以下の2種類の請求書があります。
これらの請求書の違いについて詳しく紹介します。
適格請求書は、令和5年10月1日に導入された、インボイス制度に定められている請求書のことです。この請求書には、以下の項目の記載が求められます。
定められた通りに作成した請求書でないと、消費税の控除ができません。そのため、登録番号を含む必要な項目を漏れなく記載するようにしましょう。
また、請求書を作成時の注意点を後述していますので、あわせて確認してください。
一方、適格簡易請求書(簡易インボイス)は、適格請求書よりも記載事項が簡略化された請求書のことです。適格簡易請求書には、以下の項目を記載する必要があります。
適格請求書と比較すると、記載すべき項目が少ないことが特徴です。また、交付する相手の名称が不要だったり、税率ごとの消費税額を適用税率で代用できたりする違いがあります。
簡略化できるメリットがありますが、この請求書を取り扱えるのは以下の事業者に限られています。
自身が適格簡易請求書を取り扱うことができる業種かどうか、慎重に確認しましょう。
登録番号の正しい記載位置は、法的に定められているわけではありません。どこに記載するかは事業者に任されています。
もし、登録番号の記載位置に悩んだ場合は、発行者の氏名や屋号が記載されている付近がおすすめです。なぜなら、氏名や屋号などの近くに登録番号を記載すると、請求書を受け取る事業者が確認しやすくなるからです。
法的に登録番号の正しい位置はありませんが、一般的にわかりやすい位置に記載しておくと良いでしょう。
インボイス制度が導入される前の請求書では、消費税に関する記載内容は比較的簡素でした。しかし、適格請求書では、新たに記載しなければならない項目があります。
この記載すべき項目を理解しておくと、請求書を作成する時や受領する時に正確な請求書かどうか判断できるようになるでしょう。記載すべき項目を以下で詳しく解説します。
適格請求書に記載する最も重要な項目の1つが、登録番号です。記載する場所は事業者に任されていますが、請求書を受け取る事業者が確認しやすいように事業者名の近くに記載することがおすすめです。
軽減税率制度の対象の有無についての記載も求められます。軽減税率制度とは、原則10%の消費税の税率を、定められた一部の商品だけ8%とする制度のことです。軽減税率が適用される商品が含まれる場合、軽減税率の対象であることを記載しましょう。
例えば、商品名の横に「※」や「注」などの記号を記載して、「軽減税率適用対象」と注記することが可能です。
税率ごとに分けた税抜額と税込額の記載も必要です。なお、税抜額と税込額はどちらか一方の記載でも問題はありません。
税率ごとに、消費税額も別々に記載する必要があります。そのため、標準税率と軽減税率に適用される消費税額を、それぞれ算出して記載しましょう。
適格請求書を作成した時と、受領した時に記載している登録番号が正しいか確認する3つの方法を紹介します。
自分の登録番号は「登録通知書」で確認しましょう。登録通知書とは、適格請求書発行事業者の申請が終わった際に通知されますが、受け取る方法は申請方法によって異なります。電子申請をおこなった場合は、e-Taxの「通知書等一覧」で届き、郵送で手続きをおこなった場合は書面で届きます。
登録通知書を紛失してしまうと、原則再発行はおこなわれません。また、e-Taxの場合、通知は5年ほどで削除されてしまいます。そのため、必ず大切に保管しておきましょう。
請求書を受領した際に、登録番号が合っているか調べる方法として、適格請求書発行事業者公表サイト(※)があります。
このサイトは国税庁が運営しており、登録された事業者の情報を検索できるため、相手の登録番号が合っているか確認できます。
請求書を受領したときは、活用しましょう。
※参考:国税庁|インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト
相手が法人であり、適格請求書発行事業者かどうか調べるときは、「法人番号公表サイト」(※)を利用するのがおすすめです。法人番号公表サイトでは、商号や名称から法人番号を検索できます。
法人の登録番号は、「T+法人番号」です。そのため、前述の適格請求書発行事業者公表サイトで法人番号を入力して調べることで、相手がインボイスに登録しているか確認できます。
※参考:国税庁法人番号公表サイト
請求書を作成するときや受領するときに、把握すべき6つの注意点を解説します。
インボイス制度が導入される前は、消費税額の端数処理について決まりはなく、商品ごとや合計金額などから端数処理をおこなえました。導入後は、税率ごとに消費税額の端数処理をおこなう明確なルールが設けられました。
例えば、標準税率の商品の合計金額から消費税額をもとめ、消費税額の端数処理をおこないます。一方、軽減税率の商品がある場合は、別途計算して端数処理をおこないます。
そのため、導入前のように、商品ごとに端数を処理できなくなるため注意が必要です。国税庁の資料「適格請求書等保存方式の概要」(※)で、税率ごとに消費税額の端数処理をおこなう記載例が掲載されているので、ご参考ください。
インボイス制度の請求書は、一定期間の保存が義務付けられています。保存期間は、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間です。
保存義務を怠ると消費税の控除ができなくなるため、適切に保存しましょう。
請求書に不備があると、消費税の控除の対象外になります。例えば、登録番号をはじめ必要な項目の記載がなかったり、登録番号に誤りがあったりすると不備があると判断されます。
不備がある請求書は、受領側で修正できません。不備を見つけた場合、請求書の発行元事業者に依頼して、再発行してもらいましょう。
標準税率と軽減税率の商品が混在する場合、税率ごとの記載が必要ですが、単一税率の場合、書き方が異なります。
例えば、標準税率の商品のみの場合は、軽減税率について記載なしでも問題ありません。一方、軽減税率の商品のみの場合は、軽減税率のみであることを記載します。
単一税率は、標準税率か軽減税率かによって書き方は変わりますので、適切な記載方法を確認しておきましょう。
インボイス導入前は、3万円未満の取引は領収書やレシートを保存していなくても消費税の控除を受けられました。インボイス導入後は、適格簡易請求書が必要になるため、注意しましょう。
しかし、請求書の交付が困難なサービスであれば、要件を満たした帳簿を保存することで消費税の控除がおこなえます。例えば、自動販売機やコインロッカーなどの自動サービスや公共交通機関などのサービスが該当します。
ただし、3万円以上の公共交通機関の利用の場合、適格請求書が必要になるので覚えておきましょう。
インボイス導入後は3万円未満の請求書の保管が必要になりますが、1万円未満の取引に関しては、少額特例の対象となる場合があります。
少額特例とは、令和5年10月1日から令和11年9月30日の期間限定で1万円未満の取引はインボイスの保存がなくとも消費税を控除できる特例のことです。
ただし、必要な事項が書かれた帳簿が必要であったり、年間の課税売上高が1,000万円未満の事業者に限定されていたりします。少額特例の要件を満たしているか確認しておきましょう。
適格請求書には、正確な記載が求められる項目が多くあります。そのうちの1つが登録番号です。
登録番号は適格請求書発行事業者公表サイトや登録通知書などで調べる方法があります。
適格請求書を作成したときや、受領したときに、登録番号や税率ごとの消費税額、軽減税率の有無など漏れがないかしっかり確認して、不備のない経理処理を実現しましょう。