更新日:2024.11.28
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請求書のルールは自身だけでなく、取引先も関係することから、知っておかないとトラブルに発展する可能性が高まります。とくに、支払期限は「いつに設定したら良いのか」が明確に決まっておらず、疑問に思う方も少なくありません。
このような請求書にまつわるルールを知っておけば、自身を守る盾になり、また取引先との良好な関係性を築けるようになります。また、ビジネスでの「常識」という一面もあるため、もし知らない場合にはこの記事で解説の内容をおさえておきましょう。
本記事では、請求書の支払期限と過ぎた場合の対応について、ルールや対策も交えて解説します。
請求書の支払期限は、支払遅延や買い叩きなどを避けるために必要です。期限が定められていることで、法律上のルールに則った対応が可能となります。
一般的に、請求書の支払期限は、商慣習上から「翌月末支払い」で設定することが多くあります。ただ、これは明確に決まっているわけではなく、取引先との合意があれば早めることも可能です。
上記を踏まえ、取引をスムーズに進めることに鑑みて、締日から「1か月以内」に支払期限を設定するのが妥当といえるでしょう。
請求書の支払期限は、具体的に「いつに設定すべき」と定められているわけではありません。
そのことから「翌月末支払い」が多い一方で、「翌々月末支払い」とする取引も少なくありません。これは法律上のルールでも問題がないため、支払期限を設定する際の選択肢にできます。
ただし、取引先によっては早期の支払いを希望する場合もあるため、必ず取引先との合意を取ってから設定するようにしましょう。
もし企業が下請事業者と取引する場合、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の適用がされる可能性が高いため注意が必要です。
下請法では請求書の支払期限について、取引の対象となる商品やサービスが受領された日から60日以内で、可能な範囲で短くすることを定めています。つまり、「60日超」の設定ができないため、必ず「60日以内」にする必要があります。
請求書の支払期限は、「支払期限」や「振込期限」の欄に「◯年◯月◯日」あるいは「◯年◯月末」と記載します。
基本的に会計ソフトや請求書作成ソフトを使用した場合、記載する位置はあらかじめ決まっています。一方で、記載欄がない場合には請求書の受領した相手が見て、わかりやすい位置に支払期限を記載しましょう。
また、ほかにも請求書の支払期限の書き方には注意すべき点があります。
例えば、「発行日から30日以内」や「納品日の1か月以内」などの表記では、取引先との認識に相違が生じるかもしれません。また、「ただちに」や「迅速に」などの表現も取引先が誤解する可能性があります。
このようにあいまいな表記はトラブルに発展するリスクもあるため、避けるようにしましょう。
休日や祝日は金融機関が休業しているため、支払期限に設定してしまった場合には期日当日に支払えません。
このような事態を避けるために、休日や祝日、また金融機関の休業日の前後を支払期日に設定しましょう。なお、事前に取引先と「休日・祝日が支払期限となる場合は、直前の平日を支払期限とする」と決めておけば、休日や祝日が原因で生じるトラブルを避けられます。
請求書の支払期限が過ぎても取引先から支払いがない場合、こちら側から行動を起こさないと対応してもらえないケースがあります。ただ、起こすべき行動を誤れば、トラブルがより深刻になるリスクもあるため、慎重に進めていくようにしましょう。
ここでは、請求書の支払期限が過ぎた場合にとるべき行動・対処法について、4点解説します。
支払期限が過ぎても支払いがない場合、請求書に記載された内容が取引先と認識相違している可能性があります。また、請求書の記載が誤っている場合もあり、こちらで確認すればすぐに解決するかもしれません。
取引先に手間をかけてしまうことも踏まえて、直接相手へ行動をとる前に請求書の内容を確認しておきましょう。
取引先の社内トラブルによって支払いができていないケースも存在します。
このような場合には、こちら側で対応することはできないため、まずは請求書に記載された支払額が支払われていない旨を取引先に伝えましょう。窓口担当者が経理関係に詳しくない場合もあるため、経理担当者に取り次いでもらうのもおすすめです。
もしメールやチャットツールでの返答がない場合には、電話での連絡も視野に入れましょう。
連絡を入れても長期間支払ってもらえない場合には、郵便局の内容証明で催促状を送付しましょう。
「内容証明」は書留郵便の内容文書を証明してもらえるサービスであり、催促状においては催促内容や通知日を証明してもらえます(※)。この制度を利用すれば、裁判に発展した場合の証拠として扱われます。また、請求書の有効期限は5年間ですが、催促により時効の完成を6か月遅らせることも可能です。
催促状には「いつまでに支払わないといけないのか」や「支払わない場合、法的措置を講じる」旨を記載しておきましょう。
催促状を送付しても支払われていない場合は、裁判所へ「支払督促」を申し立てましょう。支払督促の制度を利用すれば、支払いの催促を裁判所が代わりに行ってもらえ、最終的に取引先への強制執行も可能となります(※)。
通常の訴訟と比べても手続きが簡易であり、またコスト面も抑えられます。しかし、取引先に対して強制力が伴う方法であるため、今後の関係性も踏まえて検討するのがおすすめです。
(※)参考:最高裁判所「支払督促」
請求書の支払期限は小さなことであっても、トラブルやアクシデントに発展するリスクがあります。取引先も関わる問題であることから、問題が発生する前にどのような点に注意すべきかを把握しておきましょう。
最後に、請求書の支払期限に関するよくある疑問とポイントを紹介します。
請求書に支払期限が記載されていない場合、基本的には支払いタイミングは任意で問題ありません。ただし、取引先が下請事業者である場合には、「60日以内」になるべく早く支払うようにしましょう。
一方で、自身が請求書を作成した側であれば、取引先に連絡を入れておき、いつまでに支払ってもらいたいかを伝えておくことも大切です。
請求書の支払期限が、例えば「1週間以内」や「10日以内」と短い場合、資金や予算の兼ね合いで支払いが困難な可能性があります。そのため、もし支払期限が短すぎる請求書を受領した場合、すぐに取引先へ相談するようにしましょう。
また、請求書を作成する際には、必ず取引先へ確認をしておき、支払期限の認識に齟齬を生じないようにしておくことも大切です。
本記事では、請求書の支払期限と過ぎた場合の対応について、ルールや対策も交えて解説しました。
請求書のルールは明確でないこともありますが、大前提として「取引先への配慮」と「事前の取り決め」が大切といえるでしょう。請求書を作成・受領するタイミングではなく、取引を進めていくなかで、取引先との相違がないように決めておけば、多くのトラブルは未然に防げます。