更新日:2024.11.29
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請求書には有効期限(時効)があり、その期間を過ぎてしまうと法律上から請求する権利がなくなってしまいます。
このように、有効期限について正確に把握しないまま取引を進めると、取引先に対して請求する権利がなくなったり、適切な支払期限を決定できなくなったりします。そのため、有効期限について詳しく知ることは、適正な取引を進めるうえで大切なことといえるでしょう。
本記事では、請求書の有効期限について、基礎知識から支払期限との違い、よくある質問を解説します。
請求書の有効期限とは、取引先へ請求する権利を主張できる期限です。そのため、有効期限を過ぎると請求書は法的効力を失います。これは民法166条に定められている規定であり、法律上のルールです(※)。
民法によれば、請求書の有効期限は支払期限の翌日から5年間です。ただし、2020年3月31日までに発行された請求書の有効期限は2年となります。
また、再発行しても有効期限は更新されません。
(※)参考:e-Gov 法令検索「民法 」
請求書の有効期限が過ぎれば、時効が成立します。この時効は取引先に対して請求する権利を主張できる期間であることから、成立後は取引先に対して請求できません。
しかし、以下の手段を用いることで有効期限は伸ばすことが可能です。
民法において時効中断が認められる要因はいくつか存在し、そのなかでも「催告」と呼ばれる手段を利用すれば時効の延長が可能です。
具体的には、取引先に内容証明書で請求に関する通知をおこないます。この行為は「催告」に該当するため、請求書の時効を6か月間延長できます。
なお、6か月の延長期間中に差し押さえなどの回収手続きをおこなわない場合、催告の効力がなくなってしまいます。また、延長後の再延長もできません。
訴訟や支払督促などの裁判所からの手続きでは、時効のリセットが可能です。
具体的には、長期間で支払いをおこなっていない取引先に対して、訴訟をおこなった場合、「訴状」や「答弁書催告状」などの書類が裁判所から交付されます。この裁判所からの書類を取引先が受け取った時点で、時効の進行がなかったことにできます。
請求書においては最終手段に近い手段であり、取引先との関係にも大きく影響する手段といえるでしょう。
請求書の支払期限とは、請求された側が請求した側に対してお金を支払う際の期限のことです。取引先に対して、「いつまでに入金したら良いのか」を伝えるために設定します。
この支払期限と有効期限との違いは、当事者同士で自由に決められるか否かです。支払期限は当事者同士で比較的自由に設定できる一方、有効期限は当事者同士で決められず、法律に則って時効の5年が適用されます。
請求書に支払期限を誤って書いてしまうと、トラブルの原因になりかねません。そのため、請求書を作成する際には1つ1つのポイントを確認し、正確かつ慎重に対応を進めるようにしましょう。
ここでは、トラブルを回避する請求書の支払期限の書き方について、解説します。
相対日付とは「発行日から◯日後」や「◯か月後」、「明日」「来年」という、基準の日に対してどの程度時間が経った日なのかという表現です。相対日付で書いてしまうと計算が勘違いしやすくなり、支払期限が誤って伝わるおそれがあります。
そのため、支払期限を書く際は「◯月◯日」のように、支払期限が明確にわかる書き方をすることが重要です。
支払期限をわかりにくい位置に書くことで、相手は支払期限を認識できず、期限を指定されていないと勘違いしてしまうリスクがあります。そのため、支払期限はわかりやすい位置に書きましょう。
わかりやすい位置の具体的な例としては、請求書の上部の重要な情報が集合している場所です。書き方も「支払期限:◯月◯日」のように、支払期限とわかるような書き方をしましょう。
土日・祝日は金融機関が休業であるため、請求された代金が入金されない可能性があります。取引先のスケジュールを圧迫することにもつながるため、入金が遅れる原因にもなります。
このような事態を避けるためにも、支払期限を土日・祝日に設定せず、前後の平日に設定するようにしましょう。なお、取引先とあらかじめ「支払期限が土日・祝日の場合は、直前の平日とする」などの取り決めがあれば、スムーズに対応できます。
基本的には、請求書の支払期限の設定にルールはありません。一方で、取引先が下請事業者であった場合には、下請代金支払遅延等防止法が適用される可能性があります。この点も含めて、取引先と相違がないように設定することが大切です。
ここでは、請求書の支払期限の設定方法について、解説します。
請求書の支払期限は、「月末締め・翌月末支払い」が多く採用されています。たとえば、10月1日から10月31日までに発生した取引の代金が11月30日に支払われます。
ただし、このサイクルはあくまでも多くの企業の場合であり、取引先によっては「月末締め・翌々月末支払い」のサイクルで取引をしているケースもあります。このような点も踏まえて、取引先に相談したうえで、無理のない日付を設定しましょう。
支払期限の設定で注意すべき点は、親会社と下請事業者との取引の場合です。この場合には、「下請代金支払遅延等防止法」と呼ばれる法律が適用され、支払期限を「60日以内で、なるべく早いタイミング」で設定しなければなりません。
なお、万が一法律に違反した場合、50万円以下の罰金を科せられます。
請求書のルールは細かく決まっていることもあり、ケースによっては複雑なものも存在します。過去の事例などを参考に、ミスの少ない対応を心がける必要があるでしょう。
最後に、請求書の有効期限・支払期限に関するよくある質問について、解説します。
受領した請求書に支払い期限が書かれていない場合は、まず請求書の発行側に連絡を取りましょう。
なお、「特に指定はない」と答えられた場合、最長でも請求書が発行された月の翌々月末までには支払うと良いでしょう。
発行した請求書に支払期限を明記したのにもかかわらず、相手から期限内の入金が確認できない場合は、まず未入金の原因を探しましょう。
自社に原因がないか確かめた後に相手に原因がないか確かめた後も、入金してもらえない場合は催促状や督促状を発行し、送付してください。最終的に入金が確認できないのであれば、法的措置も検討しましょう。
請求書が届かなくても支払いの義務はあります。自社と取引相手の間で取引が発生し、問題もなく取引が完了した以上は、取引先からの請求の有無は関係なく、支払いの義務が生じます。
また、取引先が請求を失念していた場合も同様です。取引先との関係を良好にするためにも、こちらから連絡するようにしましょう。
請求書の支払期限が短過ぎる場合、一度相手に確認しましょう。こちらの事情を説明することで、取引相手が支払期限を伸ばしてくれるケースがあります。
支払期限が過ぎるまで連絡を放置することは絶対に避けましょう。場合によっては、入金の遅延が理由で、ペナルティが課せられるおそれがあります。
支払期限が過ぎた請求書で入金できるかどうかは、請求した側によって異なります。
同じ請求書で入金できるケースもあれば、再発行が必要なケースもあるので、支払期限が過ぎた場合、まずは請求者に連絡を取りましょう。
本記事では、請求書の有効期限について、基礎知識から支払期限との違い、よくある質問を解説しました。
請求書の有効期限は、取引においてお金も関係する大切な項目です。そのため、本記事で解説した内容を理解したうえで、請求書対応を適切におこなうようにしましょう。
もし取引先で支払いが遅延しているケースがあった場合、こちらでとるべき行動を整理し、適切なタイミングで実行できるように準備を進めておくことが大切です。