更新日:2024.12.27
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売上計上の時期は、会社の規模や業種、取り扱うサービスなどによってさまざまです。長期にわたる取引や締め日直前のサービス提供では、請求書が月またぎで発行されるケースがあります。
月またぎで受領した請求書を適切に処理できなければ、支払日を誤認してしまい取引先に迷惑をかける事態に発展しかねません。また、決算期をまたぐ場合は税務トラブルになりやすいため、とくに注意が必要です。
本記事では、月またぎの請求書が発生するケースについて、適切な処理方法や売上計上基準に注目して解説します。
請求書に対する適切な処理は、自社の財務状況やキャッシュフロー管理のために重要です。月またぎの請求書でも正確に対処し、税務リスクを回避しましょう。
企業間の取引形態は多様化しており、売上計上時期はそれぞれの会社ごとの基準で決められています。サービス提供や商品販売が複数の月にわたる場合に、請求書の月またぎが生じる可能性があります。
請求書の月またぎが発生しやすいケースは、以下のとおりです。
請求トラブルや税務リスクを回避するため、請求書が月をまたぐ場合に社内でどう処理するかのルールを徹底しておくことをおすすめします。
継続的なサービス提供や長期にわたるプロジェクトでは、請求書が月またぎになるケースが存在します。請求書に含まれる売上をいつ計上するかは、正確な経理処理をおこなうために重要です。
売上計上を当月にするか、あるいは来月にするか、社内のルールが徹底されていないと、二重計上や請求漏れなどの会計リスクが高まってしまいます。
このようなリスクを回避するために、売上計上基準を定め、基準に従った運用を徹底しましょう。自社の売上計上基準を理解しておけば、請求書が月またぎになる原因があっても会計リスクを未然に防げます。
ここでは、企業会計原則で用いられる主な売上計上基準について解説します。
実現主義とは、商品やサービスを提供し、取引先からの支払いが確定した時点で売上を計上する計上方法です。企業会計原則では、売上高は原則として実現主義で計上するとされています。
実現主義の認識基準として、代表的な4つの基準は以下の通りです。
出荷基準 |
商品を出荷した時点で売上を計上 |
納品基準(引渡基準) |
取引先に引き渡した時点で売上を計上 |
検収基準 |
取引先が商品の検収を終えた時点で売上を計上 |
船積基準 |
商品が船に積み込まれた時点で売上を計上 |
発生主義は、主に経費などを使用した際に用いられる計上基準で、取引が発生したタイミングに基づいています。
注文を受けたタイミングで売上計上するため、キャンセルや商品の不備などで取引がなくなった場合に、架空計上してしまうおそれがあります。そのため、売上計上には発生主義を適用できません。
現金主義は、現金の受け取りや支払いがおこなわれた時点で計上する会計方法です。
この方法は、取引の管理が現金の収受に基づいているため、現金の動きを把握しやすいメリットがあります。一方で、現金を受け取るまでは売上として計上されないことから、取引の実態と経営状況が乖離しかねないデメリットも存在します。
また、支払いや受け取りを意図的に遅らせ、売上の計上時期を操作できてしまうため、売上計上には基本的には適用されません。
請求書の締め日の設定について、法律上の特別な決まりはありません。多くの場合、「月末締め」が採用されています。月末締めでは月単位で売上管理をおこなうため、業務効率向上が期待できるほか、経営状況を把握しやすいメリットがあります。
ただし、締め日を決める際には、自社の資金繰りを優先的に考慮すると良いでしょう。資金繰りが悪化しないよう、売掛金の回収スケジュールを明確にすべきです。また、取引先との信頼関係を維持するため、相手企業にも配慮して締め日を設定する必要があります。双方が納得できるよう事前に話し合いをおこない、合意を得ることが重要です。
請求書の発行タイミングによっては、決算期をまたぐ処理が必要になるケースがあります。決算期をまたぐ場合、正しく処理できなければ重大な税務リスクが発生するおそれがあります。
決算期にまたがる請求処理の注意点を把握しておけば、期末決算のミスを防ぎ、会計トラブルを回避できるでしょう。
ここでは、決算期をまたぐ請求書について気をつけるべきポイントを解説します。
「期ズレ」とは、本来の会計年度に計上すべき売上や経費を、別の年度に計上してしまうことを指します。期ズレが起きると、収益を正確に計算できないために税務申告に影響を及ぼし、支払うべき税金が追加されるリスクがあります。
期ズレを防ぐため、請求書受領後のルールを明確に定め、正確な会計処理を徹底しましょう。
決算期をまたぐ請求書処理の際、人為的なミスで同じ請求書を翌年にも計上しないよう注意が必要です。二重計上があると、売上額が本来よりも高く計上されてしまい、不必要な税金を支払う事態になります。
処理済みの請求書と未処理の請求書をわけて管理したり、締め日や支払期限ごとに請求書を確実に処理したりなど、二重計上を防ぐ対策を講じましょう。
本来記録すべき売上や経費を抜け落としてしまう「計上漏れ」にも注意しましょう。計上漏れが意図的でなくても、税務調査で指摘されると、追加で税金を課されるリスクがあります。
売上計上のミスを減らすためには、社内の請求業務ルールを整備し、内容を徹底するのが重要です。経理担当者が複数いる場合は、互いに処理内容を確認してチェック体制を強化すると、トラブルになるような重大なミスを防げるでしょう。
最後に、月をまたぐ請求書や経費精算に関して、よくある疑問を紹介します。
月またぎの請求書への対応を誤ると、追徴課税が発生したり、会社の信用が低下したりなどのリスクにつながるため、ルールを正しく把握してトラブルを未然に防ぎましょう。
意図的に期ズレをおこなうと、重加算税が課されるおそれがあるほか、会社の信用を失墜しかねません。請求が月またぎになる場合は、売上計上基準にしたがって正確に処理し、無用なトラブルを回避しましょう。
売上計上の期ズレは、意図的でなくても税務調査で指摘され、売上を低く見せようと操作しているとみなされてしまうおそれもあるため、注意が必要です。
月をまたぐ経費精算は、民法上可能です。従業員は経費発生後5年間にわたり、会社にその精算を請求する権利を有しています。しかし、月またぎの場合は、通常とは異なる会計処理が必要で、頻発するとミスが発生しやすくなったり、会社の信用問題にまで発展したりするおそれがあります。
会社が定めた経費精算のルールを守り、適切なタイミングで申請をおこなうのが重要です。月またぎ処理を最小限にすることで、経理業務の効率化も期待できます。
本記事では、月またぎの請求書が発生するケースについて、適切な処理方法や売上計上基準に注目して解説しました。
正確な経営把握や税務申告のために、月をまたぐ請求が発生した場合でも正確に処理する必要があります。
サービス提供が長期になる場合には、売上計上基準にしたがって月またぎの請求が発生しやすくなります。売上計上基準は一度定めると原則として変更できないため、自社の取引形態に最適な基準を慎重に設定しましょう。
とくに決算期をまたぐ場合に誤った処理をしてしまうと、税務トラブルや会社の信用問題にもつながりかねません。会計計上ルールを正しく把握し、業務にあたることが重要です。