更新日:2024.11.29
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インボイス制度の開始により、請求書を発行する際、消費税の内訳が必要になりました。
1円未満の端数が出た場合、「切り捨てるのか?」それとも「繰り上げるのか?」など、対象方法を知っておかないと、いざ請求書を発行するときに悩んでしまいます。
また、消費税の計算方法も「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」から選択できるように改定されたため、あらかじめ計算方式も決めておいた方がいいでしょう。
この記事では、消費税の計算方式や端数処理について解説します。
適格請求書(インボイス)とは、適格請求書発行業者のみが発行できる書類(請求書や領収書)のことです。
商品やサービスの売り手が買い手に対して発行するものであり、書類には10%や8%の適用税率や消費税率が記載されています。インボイス制度導入後は、適格請求書がないと仕入税額控除を受けられません。
仕入税額控除とは、売上で購入者から受け取った消費税を事業者が納める際、仕入れ時に自分が支払った消費税分を差し引いて納税する制度です。
仕入税額控除を受けるには、消費税の支払いが必要な課税事業者に登録し、適格請求書発行事業者になる必要があります。
また、適格請求書には決められた項目を記載する必要があります。記載事項は以下のとおりです。
|
消費税は軽減税率の導入により、10%と8%の2種類あります。そのため、請求書にはどの商品や取引にどちらの税率をかけるか記載しなければなりません。
適格請求書の記載例は以下のとおりです。
【適格請求書の記載例】
日付 |
品目 |
金額(税抜) |
11/20 |
商品A |
12,000 |
11/21 |
食品B(※) |
23,000 |
11/22 |
食品C(※) |
17,000 |
小計 |
¥52,000 |
10%対象 |
¥12,000 |
10%消費税 |
¥1,200 |
8%対象(※) |
¥40,000 |
8%消費税 |
¥3,200 |
品目ごとに10%か8%のどの税率を適用しているかを示し、税率ごとの合計金額と消費税が何円かわかるように記載します。上記は記載例の一部のため、実際に適格請求書を発行する際は、「適格請求書(インボイス)とは?」の章で示した6つの記載項目に基づいて作成しましょう。
インボイス制度は消費税の計算方法が複雑です。間違えないようにポイントを押さえておきましょう。ここでは3つのポイントを解説します。
インボイス制度が導入される前は商品やサービスのひとつひとつに対して、消費税の端数処理を行っていました。しかし、インボイス制度導入後はひとつの請求書ごとに、端数処理を各税率ごとに1回行うよう変更されました。同じ税率の商品や取引の場合は合計した金額に税率をかけます。
導入前と導入後でどう変わったのか、例を挙げて解説します。A(税込3,015円)とB(税込1,005円)の商品を購入した場合の消費税は以下のとおりです。
【インボイス制度導入前】
AとBでそれぞれの消費税分を算出して端数を四捨五入すると、消費税の302円(A)と101円(B)を足した合計の消費税は403円になります。
・3,015円×10%=302円(301.5円) ・1,005円×10%=101円(100.5円) →302円+101円=403円 |
【インボイス制度導入後】
インボイス制度導入後は、AとBの合計金額に消費税率の10%をかけて算出します。
(3,015円+1,005円)×10%=402円 |
導入前と導入後では1円の誤差が生じます。
税抜金額で消費税を計算する場合、各商品を10%と軽減税率の8%に分けます。税率ごとに分けた商品の合計金額を算出し、10%または8%の税率をかけ、端数がでたら端数処理を行います。
税込金額で消費税を計算する場合、各商品の税込価格を消費税の10%と軽減税率の8%に分け、合計金額を算出します。合計金額に10/110、または軽減税率の場合は8/108をかけ、端数処理を行います。
消費税を計算したときに発生する1円未満の金額ですが、この処理方法に決まりはありません。
切り捨てや切り上げ、四捨五入などさまざまな方法がありますが、どう処理するかは事前にクライアントと決めておきましょう。計算が合わないとクレームに繋がる可能性があります。
また、「インボイス制度に対応した消費税の計算方法」の章でもお伝えしたとおり、インボイス制度での端数処理は、1枚の請求書や納品書ごとに、税率別(10%または8%)に1回のみと定められているため、注意しましょう。
インボイス制度が開始され、消費税の計算方法は「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」の2種類から選べるようになりました。
ここでは「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」について解説します。
割り戻し計算方式とは、同じ消費税率(10%または8%)の商品や取引額を合計し、その合計金額から消費税額を求める方法です。インボイス制度が導入される前は、原則、この計算方式が採用されていました。
割り戻し計算方式を採用した場合の例を見てみましょう。
消費税率 |
合計金額(税込) |
消費税 |
8% |
105円 |
7円 |
8% |
105円 |
7円 |
8% |
105円 |
7円 |
105円(税込)の商品を3つ購入した場合、合計すると315円です。315円から税抜価格を割り出すと、292円。315円から292円を引くと、消費税は23円となります。
積み上げ計算方式は、商品や取引ごとに記載されている消費税をそのまま足していく方法です。
消費税率 |
合計金額(税込) |
消費税 |
8% |
105円 |
7円 |
8% |
105円 |
7円 |
8% |
105円 |
7円 |
3つの商品の消費税である7円を3つかけると21円です。割り戻し計算方式で算出した消費税額が23円のため、積み上げ計算方式の方が2円少なくなります。
有利な計算方式を採用できればよいですが、一定のルールがあります。売上の消費税の計算方法に積み上げ計算方式を選択した場合、仕入れの消費税額の計算方法も積み上げ計算方式にしなければなりません。売上を積み上げ計算方式、仕入れを割り戻し計算方式にはできない決まりがあります。
売上の消費税の計算方法を割り戻し計算方式にした場合は、仕入れを積み上げ計算方式にしても問題ありません。
この記事では、請求書における消費税の計算方式を解説してきました。この記事をまとめると以下のとおりです。
インボイス制度の導入により、請求書の記載方法が変わった方も多いでしょう。消費税の計算方法や記載方法を理解し、適切に請求書を作成しましょう。