更新日:2024.10.30
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請求書に収入印紙が必要かどうかの判断基準を知りたい方もいるでしょう。通常、請求書に収入印紙を貼る必要はありません。ただし、領収書を兼ねた請求書では収入印紙が必要な場合があります。
さらに、収入印紙が必要な場合、貼り忘れてしまうとペナルティとして過怠税(かたいぜい)が課される可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、以下の内容を解説します。
収入印紙に関する正しい知識を知って、請求書を作成しましょう。
原則、請求書に収入印紙は不要です。
収入印紙とは印紙税を支払った証として、書類や文書に貼る政府発行のシールのようなものです。印紙税の納税が必要な書類は印紙税法によって定められています。
印紙税の納税義務があり、収入印紙が必要な課税文書の例は、以下のとおりです。
※これらすべての文書に収入印紙が必要ではなく、取引する金額や内容によって異なります。
つまり、印紙税法で定められる課税文書には「請求書」は含まれないため、収入印紙は必要ありません。
参照:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
参照:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
参照:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
請求書に収入印紙が必要となる例外なケースは、領収書を兼ねた請求書です。領収書としての役割があると課税文書となる可能性があるため、収入印紙の貼り付けが必要なケースがあります。
通常の領収書を発行するときと同様に、請求書兼領収書の場合も5万円以上の取引に対して印紙税が課される可能性があります。
収入印紙が必要な「請求書兼領収書」かどうかは、記載内容で見分けることが可能です。
以下のような場合、請求書であっても領収書の役割があるため「請求書兼領収書」として扱います。
書類のタイトルが「請求書」であっても、支払いが完了したことを示す内容が含まれている場合は、印紙税の課税対象となる可能性があります。自社が発行する請求書が領収書に該当しないかしっかり確認しましょう。
参照:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
課税文書に収入印紙を貼り忘れると、過怠税(かたいぜい)が課されます。過怠税は、納税者が納めるべき印紙税を納付しなかった際に課される税金です。
税務調査などで収入印紙の貼り忘れが発覚した際は、貼り忘れた印紙税の額とその2倍相当の金額、つまり印紙税額の3倍が過怠税として徴収されます。
例えば、500万円を超え1千万以下の「領収書兼請求書」を作成した場合、1万円の収入印紙を貼る必要があります。しかし、印紙を貼り忘れた場合、過怠税の額は3万円となる計算です。一方で、自ら申告して誠実な対応をおこなった場合などは、申告者の状況や行動を考慮して柔軟な対応となるケースもあります。
また、収入印紙が貼られていても請求書兼領収書の役割を果たしていると気づかなかった場合や、消印がない場合は適切な手続きが完了していると見なされないことがあります。このような場合でも、税務処理の遅延で過怠税が課される恐れがあるため、十分に注意しましょう。
参照:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
「請求書兼領収書」であっても、電子データで取引先に送付する場合は、収入印紙が不要です。国税庁では「取引先にメールで送信した電磁的記録に関する印紙税の取り扱い」について、以下のように説明しています。
「印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。したがって、電磁的記録に印紙税は課税されません。」
つまり、メールで電子文書を送る場合は課税文書に該当しないため、収入印紙を貼る必要はありません。しかし、発行者がPDFとして作成した「請求書兼領収書」をプリントアウトして取引先に送付した場合は、課税文書の扱いとなり収入印紙が必要になる可能性があるため注意してください。
参照:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
請求書に収入印紙が必要な場合は、印紙の貼り方やルールを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、収入印紙が購入できる場所や印紙税額の一覧表、貼り方を解説します。
収入印紙は主に、以下の場所で購入できます。
「ゆうゆう窓口」のある郵便局では24時間利用できるため、いつでも収入印紙を購入できて便利です。しかし、郵便局の規模や収入印紙の購入枚数、金額によっては在庫がないケースもあるため、事前に確認すると良いでしょう。
コンビニエンスストアでは、200円の収入印紙であれば購入可能な場合が多いですが、高額な収入印紙は取り扱いがありません。
一部の金券ショップでは割引価格で購入できますが、消費税の適用や仕訳時の科目が通常購入と異なるため、経理処理を行う際は注意が必要です。なお、基本的に収入印紙の購入は現金のみ対応で、クレジットカードや電子マネー、キャッシュレス決済では購入できません。
また、購入した収入印紙は払い戻しができないため、注意してください。ただ、未使用の収入印紙は郵便局で交換手数料を支払えば、他の収入印紙と交換できる場合があります。
参照:日本郵便「誤った額面の収入印紙を購入した場合、他の額面の収入印紙と交換することはできますか?」
印紙税法第3条では「課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」と定められています。したがって、原則的に印紙税は発行者が負担することになります。
2024年10月時点での「請求書兼領収書」に必要な収入印紙の金額は、以下のとおりです。
記載金額 |
税額 |
5万円未満 |
非課税 |
5万円以上100万円以下 |
200円 |
100万円を超え200万円以下 |
400円 |
200万円を超え300万円以下 |
600円 |
300万円を超え500万円以下 |
1千円 |
500万円を超え1千万円以下 |
2千円 |
1千万円を超え2千万円以下 |
4千円 |
2千万円を超え3千万円以下 |
6千円 |
3千万円を超え5千万円以下 |
1万円 |
5千万円を超え1億円以下 |
2万円 |
1億円を超え2億円以下 |
4万円 |
2億円を超え3億円以下 |
6万円 |
3億円を超え5億円以下 |
10万円 |
5億円を超え10億円以下 |
15万円 |
10億円を超えるもの |
20万円 |
「請求書兼領収書」では、記載金額が5万円以上となる場合に収入印紙が必要です。そのため、金額が5万円未満の請求書には、収入印紙を貼る必要はありません。
参照:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
「請求書兼領収書」の収入印紙の貼り付け位置は、特に規定は設けられていません。しかし、消印を押すことを考慮して貼ることが大切です。
一般的に収入印紙の貼り付け位置は、書類の「左端」または「右端上部」の空いたスペースに貼ります。
課税書類に収入印紙を貼った後は、必ず消印を押しましょう。消印とは、収入印紙の再利用を防止するために押すハンコのことであり、印紙と文書にまたがって押印します。
消印の押し方は、収入印紙の彩紋(模様部分)と台紙をまたぐように押します。印影の一部が欠けたり、不鮮明になっていたりする場合は、その印影に重ならない別の場所に改めて消印を押しましょう。
消印に使用する印章は、主に以下のものが適しています。
また、ボールペンでの署名も認められていますが、単に「印」と書いたり、斜線を引いたりしただけでは署名者が特定できないため無効です。消せるペンや鉛筆は改ざんが可能なため、使用不可とされています。
収入印紙が不要な請求書に間違って貼った場合や、所定の印紙税額を超えて貼った場合は、税務署で還付手続きができます。
還付手続きの手順は以下のとおりです。
還付手続きには、印鑑(法人の場合は代表者印)が必要です。なお、還付手続きは請求書を作成した日から5年以内に行う必要があります。期限を過ぎると還付を受けられないため、誤りが発覚した場合は早めに手続きしましょう。
参照:国税庁「D2-6 印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続」
請求書に必要な収入印紙は、その内容や取引額に応じて異なります。特に「請求書兼領収書」で記載金額が5万円以上の場合、収入印紙と消印が求められることがあります。
一方、電子取引の場合は収入印紙の貼付は不要です。印紙税の規則を正確に把握し、適正な会計処理を心がけましょう。