更新日:2023.07.31
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「取引先に請求書を送りたくても、肝心の請求書の書き方がわからない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。取引先に請求書を送る場合、正しい請求書の書き方を押さえておかないと、金銭面のトラブルに発展する可能性があります。トラブルが多いと、取引の継続に支障が出てしまうでしょう。
そこで今回の記事では、取引先から報酬を振り込んでもらう際に必要な請求書の書き方について解説します。また、インボイス制度が導入されると既存の請求書から記載項目が追加されるため、請求書の書き方についてお困りの方はぜひ最後までお読みください。
請求書とは、取引先に対して商品・サービスの料金の支払いを請求するための書類です。作成するにあたり、さまざまなルールを理解しておく必要があります。この章では、電子版と手書きでの作り方に分けて、請求書の書き方を解説します。
電子版で請求書を作成する場合、WordやExcelなどのソフトを使うのが一般的です。請求書を作成するツールを利用すると、請求書の作成を自動化できます。
手書きだと請求書を作成する際に、毎回同じ情報をすべて記入する必要があって手間がかかってしまいます。しかし、電子版ならテンプレートを残しておくことで、記載する項目を短縮することが可能です。効率よく請求書を作成するならツールを使うことをおすすめします。
また、WordやExcel以外に請求書作成を専門としたサービスを利用する方法もあります。充実しているサービスだと、見積書や納品書も合わせて作成できるため、請求書作成サービスの導入も視野に入れてみてください。
請求書は手書きでも問題ありません。請求書に記載するのが望ましい項目さえ書かれていれば、請求書としての効力を発揮します。
手書きの請求書の用紙は、文房具店などで販売されています。簡単に手に入れられるものであるため、いつでもすぐに請求書が書けるように用意しておきましょう。
なお、手書きの請求書は外部からのサイバー攻撃の影響を受けにくいです。電子版だとサイバー攻撃を受けて社内の取引情報が漏えいするリスクがあります。リスクを減らして請求書を作成したい場合は、手書きでの請求書の作成が望ましいでしょう。
この章では、具体的な請求書の記載事項について説明していきます。請求書作成にあたって、国税庁が推奨している記載項目として以下のものがあげられます。
タイトルには、「御請求書」や「御見積書」などと記載します。継続して取引している取引先に対しては、「○月分御請求書」と記載しましょう。
請求番号は社内で請求書の管理を行うために使われる番号のことです。番号で請求書を管理しておくと、請求についての問い合わせがあってもどの取引のことを指しているのかすぐに特定できます。
宛先は取引先の会社名・住所・担当者の氏名、発行日は請求の締め日を記載しておきます。発行日については業種ごとで対応方法が異なるため、念のため取引先に確認を取っておいたほうがよいでしょう。
他にも、作成者がわかるように会社の角印を捺印することが多いです。ただし、発行者の会社名と住所だけ記載すれば問題ないケースもあります。
さらに、何に対しての請求なのかはっきりさせるために、商品名・単価・数量・消費税率・消費税額・合計金額・備考などを記載しましょう。加えて、振込先の口座情報や支払期限を記載し、取引先が振込手続きで困ることがないように必要な情報を明記しておきます。
また、2023年10月からはインボイス制度が適用されます。取引先が課税事業者なら、仕入税額控除を受けるために、以下の項目も請求書に記載してください。
この章では、請求書の書き方における4つの注意点について解説します。
請求書の書き方の注意点を押さえておくことで、請求書を作成した際にトラブルの発生を防ぐことが可能です。4つの注意点を踏まえてミスなく請求書を作成しましょう。
取引先に合わせて金額の書き方を変える必要があります。たとえば、「¥」と表記するところもあれば、「円」と表記するところもあります。他にも、数字3桁ごとに「,」を入力するところも少なくありません。
指定されていない金額の書き方をすると、取引先が金額を間違えてしまうケースもあります。そのため、事前に金額の書き方を取引先に確認しておくことがトラブルを防止するために重要です。
金額の書き方以外にも、合計額が合わないトラブルも少なくありません。途中で計算式がずれてしまうと、会計ソフトを使っていても正しい計算ができません。念のために間違いがないか会計ソフトを使わないで自身でも計算結果を確認することが大事です。
税込価格で契約している場合は消費税を記載してください。税込価格で記載しなかったために、本来よりも少ない金額が振り込まれることがあります。原則、税込金額を記載する義務があることを把握しておきましょう。
一方で、税抜価格で契約している際には消費税を記載する必要はありません。税込価格での契約が多いですが、取引先によっては税抜価格で契約するところもあります。どちらの対応の取引先なのか前もって確認しておきましょう。
心配な方は、取引先からの指定がなければ、税込価格・税抜価格・消費税をすべて記載しておくとよいでしょう。
個人事業主の方は、取引相手が法人の場合は源泉徴収税の有無について確認しましょう。取引先が源泉徴収を差し引いてくれるケースもあります。その際には、源泉徴収分を差し引いた金額が振り込まれます。取引先に源泉徴収の計算をさせないためにも、請求書に源泉徴収税の金額を明記しておくと良いでしょう。
源泉徴収税が差し引かれる取引先だと、年の初めに取引先から支払調書が送られてきます。源泉徴収は確定申告の際に重要となる要素であるため、確定申告書の作成時に備えてきちんと保管しておきましょう。
なお、源泉徴収として計算してよいものとして、主に原稿料やデザイン料などが該当します。すべての報酬に対して源泉徴収が適用されるわけではない点に注意が必要です。
請求書には角印を使ってください。丸印や銀行印を使わないようにしましょう。
丸印は役職名などが入る印鑑で、銀行印は金融機関での取引に使う印鑑です。どちらも重要度の高い書類にしか使わないものとなっています。
角印を使う際には、企業なら社名の横に押印し、個人事業主は氏名の横に押印します。一般常識として、押印する際には社名の一部が被るように押してください。
この章では、請求書を実際に書き始められるように、請求書の具体的な書き方について解説していきます。
まず取引先の名称については、「○○株式会社 ○○部」というように部署まで記載してください。複数部署がない企業であれば、会社名だけ記載すれば問題ありません。取引相手が個人の場合は、「○○様」と記載します。
取引内容や数量は内訳をわかりやすく記載します。原稿料を請求する場合は、どの原稿に対しての金額なのかわかるように原稿のタイトルを記載しておくのが適切です。「原稿料(タイトル) 10,000円」と表記すればどの原稿に対しての請求なのかがわかります。
また、振込手数料はどちらが負担するのかあらかじめ相談しておきましょう。取引先に振込手数料を負担してもらう場合は、「誠に勝手ながら、振込手数料はお客様のご負担でお願いいたします」と記載しておきます。
請求書の書き方について、2022年10月からのインボイス制度が適用されると記載する項目が増えます。この章では、請求書の書き方で困ることがないように、インボイス制度適用後の請求書の書き方について解説します。インボイス制度の基礎情報も説明するため、ぜひ参考にしてください。
インボイス制度は仕入額の消費税控除(仕入税額控除)を目的とした制度のことです。2023年10月1日から施行されるもので、軽減税率が適用されてから消費税の算出が複雑化していた問題を解消できる制度となっています。
インボイス制度適用後から税控除を受ける場合、事前に認定を受けている登録事業者でないと適格請求書が発行できません。また、免税事業者は適格請求書を発行できないため、取引において課税事業者は仕入税額控除を受けられません。そのため、取引先が課税事業者かつ取引の継続を考えているなら、可能な限り早めに適格請求書への登録申請を済ませましょう。
インボイス制度が適用されてからは、以下の項目を請求書に記載することになります。
適格請求書発行事業者ごとに登録番号が割り振られます。適格請求書発行事業者が書類を発行していることを証明するためにその番号の記載が必要です。
また、税率ごとに区分した消費税額と合計の適用税率も請求書の記載項目に追加されました。たとえば、消費税額は「10%対象の30,000円」と「8%対象の30,000円」と記載されます。そして、適用税率は10%対象のものは「消費税3,000円」、8%対象のものは「消費税2,400円」と記載されます。それ以外の項目は従来の請求書に記載する項目と変わりません。
なお、電子インボイスを利用して請求書を発行する場合、専用のシステムが必要となります。導入コストがかかってしまいますが、新制度の請求書の発行がスムーズになります。効率的に請求書を発行するなら、電子インボイス専用のシステムを早めに準備しましょう。
請求書は個人・法人にかかわらず取引先から報酬をもらうために必要なものです。請求書を発行する際には、決められたルールに沿って必要事項を記載していきます。必要事項が記載されていない請求書を発行すると取引先とのトラブルに発展する可能性もあります。今回の記事で紹介した内容を基に請求書を発行してください。
また、2023年10月1日からはインボイス制度が適用され、請求書に記載が必要となる項目が増えます。今のうちに記載項目について理解し、自社で新しい請求書フォーマットを用意しておきましょう。