更新日:2024.08.26
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業務委託費とは、自社の業務を他社や個人に外注したときに支払う費用のことを指します。しかし、外注費との違いが分からない方やどのような時に支払う費用なのか分からない方もいるでしょう。
そこで本記事では、業務委託費の概要や、その他の用語との違い、メリット・デメリット、注意点などを解説します。業務委託費について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
業務委託費とは、本来なら自社で行う業務の一部またはすべてを外部の企業や個人に委託したときに支払う費用です。委託先とは業務委託契約を結びます。例えば下記のような費用が業務委託費の一例として挙げられます。
清掃業者に掃除を依頼した費用
警備会社に警備を依頼した費用
フリーライターに原稿を依頼した費用
個人事業主にホームページの作成を依頼した費用 など
基本的に業務委託費では源泉徴収の義務はありません。しかし、相手が個人事業主の場合は一部を除いて源泉所得税を差し引く必要があります。もし法人か個人事業主か迷った場合は、規定や約款があり独立した団体として活動しているかどうか確認してください。また、個人事業主で源泉徴収の対象になるかは、国税庁のホームページに詳しく掲載されているのでご覧ください。
(参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」)
業務委託費の勘定科目は、一般的に「外注費」「業務委託費」などが使用されます。また、所得税の青色申告決算書では「外注工賃」と書かれているので、それに合わせて「外注工賃」を用いるケースもあります。
下記は具体的な業務委託費の仕訳の方法です。
仕訳例:外部のデザイン会社にデザイン業務を委託し、毎月11万円を普通預金口座から支払っている。
借方科目 |
金額(円) |
貸方科目 |
金額(円) |
業務委託費 |
100,000 |
普通預金 |
110,000 |
仮払消費税等 |
10,000 |
個人事業主の場合は一部を除いて源泉所得税を差し引いた金額を支払います。その場合は、貸方科目に「預り金」として源泉所得税の金額を記入します。
業務委託費の仕訳においては、以下の点に注意が必要です。
業務委託費、外注費、人件費は、いずれも企業が外部に支払う費用ですが、契約形態や目的、対象などが異なります。
業務委託とは、特定の業務の完成を目的として、外部の事業者や個人に業務を委託することです。業務委託契約では、委託者は成果物に対して報酬を支払います。
例えば、システム開発やWebサイト制作、マーケティング調査などを外部に委託する場合、業務委託契約を締結し、業務委託費を支払います。
外注とは、製品やサービスの提供を目的として、外部の事業者や個人に製造や加工などを依頼することです。外注費は、製品やサービスの原価に算入される場合と、販売費及び一般管理費に計上される場合があります。
例えば、部品の製造を外部工場に依頼したり、商品の配送を運送会社に委託したりする場合、外注費が発生します。
人件費は、従業員に支払う賃金や給与、賞与などの費用の総称です。人件費は、損益計算書の「売上原価」または「販売費及び一般管理費」に計上されます。
例えば、正社員やパート、アルバイトなどに支払う給与や、社会保険料などが人件費に該当します。
社内で行う業務を他社や個人事業主などに依頼する方法として「外注」と「人材派遣」があります。業務委託とはそもそも何なのか、そして外注と人材派遣とは何が異なるのか詳しくみていきましょう。
業務委託は、業務を依頼する側と受ける側が雇用関係を締結することなく業務の完成を目的として交わす契約です。業務委託と外注は同じ意味として使われることもありますが、業務委託は外注の一部だと言えます。
業務委託契約を結んだ場合、両者の間には雇用関係がないため業務を依頼した側は指揮監督を行いません。また、業務委託の場合は勤務地を指定することはほとんどないため、それぞれの仕事場やテレワークなどで業務を行うことが多くなります。
外注は、外部の企業や個人に業務を発注するときなど広い意味で使用される言葉です。業務委託とほぼ同じ意味で使用されることも多いですが、外注には法的な意味がないため契約を締結する際には使わない方が良いでしょう。
下記で説明する人材派遣も外注の一部と言えます。
人材派遣とは、業務を依頼する企業に人材を派遣することです。派遣される労働者は業務を受託した企業と雇用契約を結びますが、派遣先の指揮監督のもとで業務を行います。また、人材派遣の場合は業務委託とは異なり、多くの場合、派遣先企業への常駐です。
法律面も人材派遣と業務委託では異なり、人材派遣では労働者派遣法や労働基準法が、業務委託では下請法などの規制が適用されます。
業務委託の契約には、請負契約と委任契約、準委任契約の3種類があります。請負契約とは業務の結果に対して報酬を支払う契約で、委任契約・準委任契約は業務を一定期間遂行することで報酬を支払う契約です。以下では「請負契約」と「委任契約・準委任契約」の2つに分けて詳しく解説します。
請負契約とは、成果物を納品し業務の結果を示すことで報酬を受け取る契約です。あらかじめ成果物の条件や納品期限を定めておき、受注者は成果物を納品して検収を受け、報酬を受け取ります。
成果物の一例として、「ロゴマークのデザイン」や「マーケティングの記事」などが挙げられます。もし、工務店が受注者の場合は「新築の一戸建ての家」が成果物となるなど、成果物の形はさまざまです。
依頼者が成果物を確認して不備があった場合、受注者には納品したあとでも修正に応じる義務が生じます。また、万が一納品期限内に納品できなかった場合は、報酬の支払いがなくなり、さらに賠償金が請求されることもあります。
委任契約と準委任契約は、特定の業務を遂行することで報酬を受け取る契約です。受注者は契約期間中に定められた業務を行う義務が生じますが、請負契約と異なり成果物の納品または一定の成果を出す義務はありません。
「委任契約」と「準委任契約」の違いは、法律行為にかかわるかどうかです。法律行為(契約など)を委託するものは委任契約、法律にかかわらない行為(事務処理)は準委任委託契約となります。例えば弁護士や税理士は委任契約、コンサルティング業は準委任契約に当てはまります。
業務委託にはコスト削減や業務に専念できる、専門家に依頼できる、といったメリットがあります。それぞれのメリットについて詳しく紹介するので、業務委託について知りたい方は参考にしてみてください。
業務委託の場合、必要なときだけ業務を委託できます。その業務のために社員を雇うと人件費が固定費として必要ですが、業務委託の場合は必要なときだけで済むので流動費となりコストの削減につながります。
社員を雇う場合には、賃金だけではなく社会保険料や教育・研修費などもコストとなるでしょう。しかし、業務委託の場合は、それらのコストを削減できるのがメリットです。
人手不足や業務の多様化などによって、自社の社員のみではなかなか仕事が回らない企業もあるでしょう。そこで日常的に発生する業務や単純作業を外注することによって、社内の業務や本来やるべき仕事にリソースを集中できます。
例えば決算の時期や年末処理など業務量が増えると分かっている時期に業務を外注することで、自社の社員が自分のやるべき仕事に集中できます。もし突発的な業務が発生したとしても対応できる余裕が作れるので、残業やミスの削減にもつながるでしょう。
動画制作やデザインなど専門的な業務の場合、自社に経験やノウハウがないことがあります。そのようなときは、専門業者やクリエイターに依頼するのがおすすめです。その業務を専門としている業者やクリエイターに依頼することで、クオリティの高い成果物が期待できます。
自社に経験やノウハウがないと社員を教育するコストと時間がかかりますが、外注することで教育にかかるコストや手間の削減にもつながります。
業務委託にはメリットがある一方で、デメリットもあります。自社のノウハウ・経験が構築されない、セキュリティ上のリスクがあるといったことです。メリットだけではなく、デメリットについてもしっかりと頭に入れておきましょう。
業務委託することで、クオリティの向上が見込めるメリットがあります。しかし一方で、外部にばかり依存していると、自社の人材にノウハウや経験が蓄積されず、内製化が難しくなるかもしれません。
また、委託先が倒産したり委託先が見つからなかったりするケースもあります。もし委託先の倒産や委託先が見つからずに自社で対応する必要が出てきた場合に、これまでと同じようなクオリティを担保できなくなる可能性があります。
そのため、外注した場合は少しでも自社でもノウハウが積めるよう、定期的にレポートを提出してもらったりミーティングを開催したりして、ノウハウを積む工夫も必要でしょう。
業務を外注する際、情報を外部に持ち出さねばならないこともあります。そのため情報漏えいのリスクが生じます。外注先のセキュリティ対策は当然、外注先が判断・実施するので万全ではないかもしれません。また外注先によって、管理のレベルが異なるのが実情です。
業務委託の契約時には通常、外注先がセキュリティ対策・管理をどのようにしているかチェックします。しかし、その後は定期的なチェックを行わず、セキュリティレベルが維持されているかを把握していないケースもあります。
業務委託費を計上する際には、注意すべき点があります。税金にかかわる事項でもあるので、しっかりと頭に入れておきましょう。
業務委託費は業務委託契約に基づく業務への報酬であり、給与は雇用契約に基づく業務の報酬です。給与として支払った場合は、所得税を源泉徴収する必要があります。また、業務委託でも外注先が個人事業主の場合は、一部を除いて源泉所得税を差し引かなくてはなりません。
一部を除きますが、業務委託費として処理した方が消費税分の支払いが少なくなります。しかし業務委託の契約書があれば業務委託費として処理できるわけではありません。税務調査の際には契約の内容と業務の実態を総合的に勘案して判断されるので、業務委託費としていたものが給与ではないかと指摘されることもあります。
業務委託費は適切に区別しましょう。すべての業務委託契約に係る報酬を業務委託費で処理すると、内訳が不明になる場合もあるのでおすすめできません。委託する業務内容や外注先の業種によって「運送費」「清掃費」「支払手数料」「販売促進費」などと区別して処理することをおすすめします。
支払手数料は会社の取引でかかる手数料や報酬で、税理士や司法書士などへの支払いが該当します。販売促進費はノベルティグッズやポスターなど販売促進を目的とした業務で支払う費用です。
業務委託費には、消費税が含まれます。消費税は、業務委託先に支払う必要があります。
消費税の処理を誤ると、税務調査で指摘される可能性があります。例えば、消費税を含まない金額で業務委託契約を結ぶと、後から消費税を追加で支払う必要が生じ、資金繰りに影響を与える可能性があります。
業務委託費とは、自社で行う業務の一部またはすべてを企業や個人事業主に外注したときに支払う報酬です。業務委託の契約形態は大きく2つに分けられ、請負契約は成果物を納品し報酬を支払う契約、委任契約・準委任契約は一定期間業務を行うことで報酬が支払われる契約のことを指します。
業務委託には、人件費のコストカットやクオリティの向上が見込めるといったメリットがある一方で、自社のノウハウ・経験が蓄積されない、セキュリティ面でリスクがある、といったデメリットもあります。
本記事では、業務委託費、その他の用語との違い、メリット・デメリットなどを詳しく紹介しました。ぜひ業務委託費についてしっかりと理解しましょう。