更新日:2024.10.24
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経費の分類や会計処理は、税務上の正確性を保つために重要ですが、多岐にわたる勘定科目とその適用基準を理解するのは容易ではありません。そのため、適切な勘定科目の選択に不安を感じる経理担当者の方も多いのではないでしょうか。
経理処理では正しい勘定科目の選択が極めて重要となっており、誤った分類や記録は税務調査などの際に問題となる可能性があります。また、適切な経費計上は費用管理や税金対策にも直結するため、事業の健全な運営に影響を及ぼします。そこで経費精算に使われる勘定科目はある程度頭に入れておきましょう。
勘定科目 | 概要 |
租税公課 |
固定資産税、印紙税など
|
荷造運賃 |
荷物の梱包や運搬にかかる費用
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地代家賃 |
土地や建物の賃借料
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人件費 |
給与、賞与、社会保険料など
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水道光熱費 |
水道、電気、ガスなどの費用
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旅費交通費 |
出張時の交通費、宿泊費など
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減価償却費 |
固定資産の価値の減少分
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通信費 |
電話代、インターネット接続料など
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広告宣伝費 |
広告掲載料、宣伝費など
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接待交際費 |
取引先との接待にかかる費用
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修繕費 |
建物や設備の修理費用
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消耗品費 |
事務用品、日用品などの費用
|
雑費 | 上記以外の費用 |
そこで本記事では「経費の勘定科目」について各種経費に適切な勘定科目を割り当てる方法や、経費に勘定項目を設定する際の考慮点について解説します。経理作業の効率化や正確な経費計上に関心のある企業担当者の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
経費とは、事業において収益を得るために使用された費用です。金額の大小に関係なく、事業に関連するものであれば経費にできます。
事業で使用する経費はコンピュータや事務用品など、事業で直接使用する製品に限定されず、以下のような費用も計上されます。
一方で、以下のような事業活動に関係のない費用は、たとえ少額であっても経費として計上できません。
以上に挙げた支出は個人的な性質を持ち、事業の運営や維持に直接関連していないため、経理上の経費として認められません。したがって、事業経費と個人的な支出を明確に区別することが、正確で効率的な財務管理のために重要です。
勘定科目とは、取引の分類を明確化するために使われ、発生するお金の流れを示す「見出し」の役割を果たします。
一般的に、勘定科目は以下の5つの大きなカテゴリーに分類されます。
一般的な勘定科目の分類 |
内訳 |
資産 |
会社が保有する資産(土地、現金、有価証券など) |
負債 |
会社の債務(買掛金、借入金など) |
純資産 |
会社の資産と債務の差額(資本金など) |
収益 |
事業で生まれた収入(利息、売上げなど) |
費用 |
収益を生むためにかかった支出(人件費、仕入費など) |
これらの勘定科目を正確に記録して適切に管理することは、企業の財務健全性を維持して経済活動の透明性を保証するために必要不可欠です。経費精算においても適切な勘定科目の使用は、経営状況の理解と財務管理の基礎となります。
この章では、経費精算に勘定科目が使われる3つの理由について解説します。
ここでは、勘定科目を使うことの経理上のメリットについて詳しく見ていきましょう。
勘定科目ごとに経費を仕訳することで、取引内容を正確に記録することができます。税金の計算には、勘定科目明細の仕訳も必要です。勘定科目はビジネス上の意思決定、財務状況の報告や税金の計算など、さまざまな状況で重要な役割を果たします。
適切な勘定科目の利用により企業の財務状況を正確に把握し、その情報をもとに効果的な経営決定を下すことが可能です。企業はその財務状況をより精密に把握し、効率的なリソース配分や経営戦略の策定に活用できます。また適切な勘定科目の使用は財務報告の透明性と正確性を促進し、投資家やステークホルダーへの信頼を築く上でも重要な過程です。
企業活動において発生した費用を体系的に分類し、記録することで財務の明瞭性が向上し、正確な経営判断を後押しします。たとえば広告費や交通費、消耗品費といった勘定科目は、それぞれ異なる種類の支出を表します。
これによって企業は、より効果的にリソースの配布を行い、財務報告の精度を高められるでしょう。勘定科目は経費精算の過程で不可欠なツールであり、ビジネス運営の効率化を助け、企業の財務報告の信頼性を高める大きな役割を果たします。
この章では、企業が経費にできる以下の代表的な13個の勘定科目について解説します。
ここでは、具体的な勘定科目の詳細について見ていきましょう。
租税公課とは、企業が国家や地方自治体に支払う税や公的な費用を指す勘定項目の1つで、以下のような企業活動に関連する支出です。
これらは経費として取り扱われ、企業の財務状況を正確に反映します。さらに租税公課には「印鑑証明書の取得費用や住民票の手数料」「商工会議所や協同組合・町内会などの会費や組合費」が含まれます。租税公課の勘定科目は、企業の法令遵守に加えて財務報告の精度を向上するために重要です。
荷造運賃とは、取引先に製品を送るときの配送料を処理する際に使う勘定科目です。商品をビジネスパートナーに送付するためのトラック運賃や航空輸送費、包装資材費等が該当します。
荷造運賃は、主に販売者側が使う勘定科目で、商品の運搬料や配達料を払う際に適用されます。一方で商品や製品を購入した際の運賃は荷造運賃ではなく「仕入」の項目に商品の価格と一緒に計上されることに注意が必要です。
地代家賃とは、以下のような企業活動に必要な建物や土地の賃料に関する経費を表す勘定科目です。
地代家賃を計上する際は、消費税にも注意が必要です。建物の賃料には消費税が適用されますが、土地に関しては非課税の場合がほとんどです。ただし、駐車場など施設の利用に伴って土地が使用される場合などは、課税対象となることもあります。
人件費は、以下のような労働に対する費用全般を指します。
人件費は全てビジネス運営に不可欠な費用であり、経費として算入可能です。
人件費は「現金による給与の総額」や「現金以外の給与」などに分けられます。「現金による給与の総額」には、基本給やボーナス、各種手当などが含まれます。一方「現金以外の給与」には、退職金や福利厚生費などが含まれます。
人件費の適切な管理は、会社の財務状況を的確に理解し、企業が良好な経営を行うための重要な業務となります。さらに、労働生産性や人件費の適正比率など、経営分析の際に用いられる指標も存在します。これらの指標を活用して適切な人件費を算出し、ビジネス運営に役立てることが可能です。
水道光熱費は、水道・ガス・電力などのエネルギー費用を表す勘定科目です。法人においては「販売費及び一般管理費」の項目に水道光熱費が分類されます。
水道光熱費は、基本的には請求書に記載された月額を計上します。多くの場合は銀行自動引き落としとなるため、引き落とし日に計上することも多いです。また、期末に未支払いの分がある場合は「未払費用」として計上し、後日補填を行います。
旅費交通費は、以下のような業務上必要な移動や出張に関連する費用を計上するための科目です。
宿泊にかかる費用は、社会的に受け入れられる範囲であれば経費として計上できますが、極端に高額な宿泊費は認められない可能性があります。出張時の飲食費も、旅費規定に基づいて支給された費用は旅費交通費として計上可能です。一方で、旅費規定が存在しなかったり適切でなかったりする場合は、経費として認められないことがあります。
減価償却費は、企業が高価な固定資産を取得した際、その費用を数年にわたって経費計上するための会計手法です。この対象となる資産には、以下のようなものがあります。
減価償却費の算出には、主に定額法と定率法が使用されます。定額法では毎年一定の金額を費用として計上し、定率法では毎年の資産の帳簿価格に特定の割合を適用して経費を計上するのが違いです。
減価償却の仕訳処理には、直接法と間接法があります。直接法では、固定資産から減価償却費を直接控除します。間接法は固定資産の取得価格を保持しつつ、減価償却累計額を蓄積する方法です。
通信費は事業運営における経理作業で、頻繁に取り扱われる会計項目の1つです。この項目には業務上必要な通信に関連した、以下のような出費が含まれます。
通信費として計上できるかの判断基準は「業務に必要な費用であるか」です。たとえば、業務に必要なインターネット接続費の他、個人名義で契約しているスマートフォンの料金でも計上可能です。しかし、個人的な用事でスマートフォンを使った場合は、業務に使った部分のみを按分して計上する必要があります。
このように、個人と業務の利用を判別し、業務利用分を通信費として計上することが必要です。
広告宣伝費は、企業が製品やサービスの認知度を上げるために必要な費用です。この項目は、以下のような媒体で商品やサービスを宣伝する出費が該当します。
経理処理を行う際には、取引の詳細を摘要欄に記入することが重要です。取引の詳細には、以下のような項目を記載する必要があります。
摘要欄を空白にしてしまうと後から取引内容が曖昧になり、税務調査の際に問題となる可能性があります。また、広告宣伝費は基本的に消費税の対象となりますが、海外取引の場合は課税対象外になることに注意が必要です。また、商標登録に関する費用は無形固定資産として扱われ、広告宣伝費としては計上できません。
接待交際費は、企業がビジネス活動の一部として、顧客や供給者などの関係者への接待や贈り物に関連する費用を記録するための会計項目です。法人税法上、接待交際費は「交際費等」として扱われ、以下のような支出が該当します。
具体的には、取引先との飲食費や季節の挨拶として贈る「お中元」や「お歳暮」などの費用が該当します。接待交際費として計上できるのはビジネスに必要な費用のみで、個人的な飲食や会合は含まれません。接待交際費はビジネスの成長に必要な出費と認められ、経費として計上できます。
修繕費は、企業が経費として計上できる主要な会計項目の1つです。この項目は、企業が使用する建物や設備の修理やメンテナンスに関連する以下のような費用を処理するために利用されます。
修繕費の計上は「原状回復」や「メンテナンス」に必要な費用に限定されます。修繕の内容により、経費か資本的支出かを区別するためです。資本的支出は、固定資産の価値を向上させたり使用可能期間を延ばしたりするもので、修繕費とは区別されます。
一方で建物に避難階段を追加することや大規模な改装などは、資本的支出として扱われることがあります。
消耗品費は、企業が経費として計上する主要な会計項目の1つで、ビジネス運営で使われる消耗する性質のある以下のような資材やオフィス用品などが該当します。
上記の資材やオフィス用品は、日常的なビジネス活動において定期的に消費されるため消耗品費として経理処理されます。消耗品は数多く存在するため、仕分けするときに混乱しないように、普段から分類して整理しておきましょう。
雑費は企業の財務管理で利用される一部の勘定科目で、一般的には他の勘定科目に分類が困難な微量の費用や一時的な支払いに対して使われます。雑費として記録される出費の例は、以下のとおりです。
ただし雑費の項目を使いすぎると、税務局による検証を受けたり、資金調達が難しくなったりする可能性があります。そのため、たとえば移転費用は運送費として、大型廃棄物の処理費は清掃費として計上するなど、適切な勘定科目に分けるようにしましょう。
事業において収益を得る目的で使用される費用であれば、還俗企業は経費として計上できます。しかし一方で、企業の支出の中には経費として計上できない以下のような項目があります。
間違って経費に計上しないように、企業が経費にできない4つの支出について詳細を見ていきましょう。
ビジネスに直接関連しない個人的な出費は、企業が経費として計上できません。具体的には、事業とは無関係な「日常の商品や趣味に関連するアイテムの購入」「個人的な飲食費や友人との社交費」等が含まれます。正しく経費を計上をするには、経費とプライベートの支出が混同しないように、家庭用とビジネス用の口座や現金を別々に管理するなどの工夫が必要です。
余剰在庫は、経費として計上できない費用の1つに数えられます。過剰な在庫が生じると、以下のような費用が増加します。
余剰在庫を抱えることによる費用はビジネスの財務状況に直接影響を及ぼすため、適切な在庫管理と効率的な在庫削減策が必要です。ビジネスにとって、過剰な在庫の発生を防ぎ最適な状態に保つことは、ビジネスの健全性を維持する上で非常に重要です。
未使用の事務用品は、企業において経費として認められません。事務用品を購入した場合「その期間内に使用されるか」が、経費計上できる基準になります。使用されていない部分は資産として取り扱われ、消耗品として経費にできません。
たとえばボールペンを大量に購入し、決算時に未使用の部分が残っていた場合は、未使用部分は経費として計上することはできません。未使用の事務用品は「在庫品」や「ストック品」として資産に算入され、在庫が実際に使用された時点で経費に振り替えられます。
経費とは事業運営に必要な費用を指しますが、全ての支出が経費として認識されるわけではありません。たとえば法人税や法人住民税などの税金は、企業が該当年度に獲得した利益に基づき算定されるため、ビジネス活動の原価や費用とは直接的な関連性がないとみなされています。
そのため、法人税や法人住民税は経費として認識されず、企業が税金を支払う際には自己資金から支出する必要があります。したがって、ビジネスの経営者や財務部門の担当者は、法人税や法人住民税などの税金が経費として認識されないことを把握し、適切な税金計算と予算管理を行うことが必要です。
経費の勘定科目は、取引で発生するお金の流れを示す「見出し」の役割を果たすものですが、勘定科目を設定する際には注意するべき項目があります。
せっかく勘定科目を設定しても、お金の流れが分かりづらければ意味がありません。経費の勘定科目を設定する際の3つの注意点について理解し、誰の目にも分かるような勘定科目管理を心がけましょう。
経理の効率化と経費計上のミス削減を達成するには、社内の勘定科目管理に関するルールが不可欠です。具体的には、各取引や費用がどの勘定科目に割り振られるべきか、確かな基準と規則が設定されることが必要です。
たとえば「広告宣伝費にはどんな費用を含むべきか」「接待交際費には何を計上すべきか」など、一貫した対応を可能にするためのガイドラインを作成することが推奨されます。管理方法のルールを守ることは、経費計上のミス防止と経理作業の正確さの向上につながります。
勘定科目設定においては、決算書作成と帳簿管理で用いる勘定科目を統一しておくようにしましょう。これにより、帳簿データと決算書データの一貫性が保たれ、書き換えや再分類などの余分な手間を省くことができます。
たとえば「広告費」と「宣伝費」を別々に管理していたところを「広告宣伝費」として1つの勘定科目にまとめると、帳簿の整理や決算書作成が容易になります。
経費とは、企業が目指す収益を達成するために必須となる費用を指す言葉です。費用は、多様な勘定科目というカテゴリに区分して管理されます。勘定科目とは金融の流れやその詳細を示す見出しのことで、勘定科目を用いることで企業は自社の経営状況を詳細に理解することができます。
経費の勘定科目は、財務担当者だけでなく、他の社員や外部の関係者も簡単に財務状態を把握できるよう配慮しておきましょう。費用の詳細を一目瞭然にしておき、簡潔な説明を記述するなどして、誰の目にもわかりやすいように財務情報を整理することが必要です。
財務情報を整理することで、企業全体での対話が円滑に進行し、的確な経営判断を下すための基盤が構築されます。そのため経費の勘定科目設定は、ビジネス運営における非常に重要な作業と言えます。