更新日:2024.10.04
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業務で車両移動する際には、ETCを利用する機会が多々あります。しかし、ETCから領収書が発行されないため、経費としてどのように申請・計上すべきか悩まれる方も多いでしょう。
ETCの利用料金を経費として計上する場合、以下の書類で代替することができます。
ただし、ETC利用照会サービスやETC利用履歴発行プリンターから発行される利用証明書は、ETCクレジットカードを利用した場合、インボイスとしては利用できません。インボイスとして利用可能な利用証明書は、ETC利用照会サービスから別途取得する必要があります。
ETCの利用料金を経費として扱うには、領収書代わりとなる書類の取得・申請・保存に加え、上記のようなインボイス制度に関するルールを正しく理解しておく必要があります。
出張や取引先を訪れる際に、高速道路を利用することがあります。この際に、ETCを活用した場合、高速道路の出入口通行時の対応は自動で行われるため、領収書が発行されません。
ただし、ETCは領収書の発行がない代わりに、以下の証明書となる書類の発行ができる方法があります。
これらの書類を用いることで経費の一部として勘定でき、軽減税率対象の物品やサービスに関する支払い証明書として利用される場合があります。
ETCは領収書の発行がない代わりに、代替書類の発行ができます。その書類の発行方法は以下の通りです。
この章では、これらの領収書代替書類の発行方法と現金払いと出口のみ一般レーンを利用による領収書の発行方法について説明します。
ETCカードとしてクレジットカードを高速道路で利用している場合、その利用料金がクレジットカードの明細に記載されるため、領収書代わりとして利用ができます。
経理担当者へ明細書を提出する際には、高速道路の利用料金を記載する必要があり、記載がない場合は必要に応じて明細に手書きで「領収書代わり」と記入することが必要です。また、クレジットカードの明細には個人情報の記載もあるため、個人情報が漏れないように慎重に扱うことが重要です。
ETC利用照会サービスとは、ETCカードの利用履歴をインターネット上で照会できるサービスです。このサービスでは、以下の情報が照会できるため、領収書代わりとして利用できます。
また、このサービスを利用するには登録が必須です。登録には、以下の情報が必要です。
※車両番号・車載器管理番号は、過去のご利用年月日に利用されたものが必要です。
利用履歴の取得には、登録や印刷などの手間はかかりますが、ETCを利用した証明になるため、ETC利用照会サービスの利用をおすすめします。
高速道路のサービスエリアやパーキングエリアなどには、ETC利用履歴発行プリンターが設置されている場合があります。このプリンターを利用すると、ETCの利用履歴の出力が可能です。
プリンターにETCカードを挿入し、利用履歴の印刷ボタンを押すだけで、以下の情報などが記載された利用履歴が出力されます。
設定されているETC利用履歴発行プリンターの台数には限りがあるため、順番待ちになる場合があります。また、経費申請を行う際には、出力したETC履歴が領収書の代わりである旨の明記が必要です。
領収書を貰う手段として、出口のみ一般レーンを利用する方法があります。入口はETCレーンを通り、出口は一般レーンを利用し、精算時にETCカードを使用することで利用証明書を発行してもらえます。
しかし、この方法は混雑緩和というETCの本来の利用目的と異なるため、推奨できません。
高速道路を利用した際に領収書をもらう手段として、現金払いがあります。一般レーンを利用し料金所で現金払いをすると、領収書の発行ができます。
ETC履歴の発行が難しい場合は、ETCを活用しないという選択肢もあると良いです。ただし、この場合はETCにかかる利用割の対象外となります。
ETC領収書代わりになる書類を取得した後は、経費申請時までに適切に保管しておくことが必要です。
申請する経費が多いと、領収書や代替書類の整理が煩雑化します。経費申請を円滑に行うため、書類の適切な管理が必要です。
この章では、ETC領収書代わりになる書類の保存方法と紛失時の対処法について紹介します。
ETC領収書代わりになる書類を取得した後は、適切な保存が必要です。特に、経費が多いと、申請すべき証明書類が見当たらないといった事態にもなり得ます。経費関連の書類は、以下のポイントがわかるように管理すると、申請時に探す手間が省けます。
また、領収書の保管期間は、紙媒体と電子にかかわらず7年間(欠損金の繰越控除を受ける場合は最長10年間)を要するため、紛失が起きないように丁重な管理が必要です。電子版の領収書の場合は、改ざんなどができないPDF形式で保存することが望ましいです。
参照元:国税庁|電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】
利用証明書やクレジットカードの明細を紛失した場合は、再発行が可能です。ただし、ETCの代替書類は個人情報が記載されているため、紛失しないように心掛けることが大前提です。
日頃から紛失が起きないように、保管する場所や方法を明確に定めておくと良いでしょう。
ETCを利用した際の料金明細書がインボイスとして利用できるかどうかは、支払い方法や利用レーンによって異なります。まとめると以下の表のようになります。
支払い方法 |
インボイスとして利用可能な書類 |
備考 |
料金所で現金・クレジットカードで支払い |
領収書または利用証明書 |
適格簡易請求書として認められており、宛名の記載がなくても有効 |
料金所でETCクレジットカードで支払い |
ETC利用照会サービスから発行される利用証明書(利用料金確定後) |
料金所で発行される利用証明書はインボイスとして利用不可 |
ETCクレジットカードでETCレーンを通過 |
ETC利用照会サービスから発行される利用証明書(利用料金確定後) |
クレジットカード会社から送付される利用明細書はインボイスとして利用不可 |
料金所で現金またはクレジットカードで支払いをした場合、発行される領収書または利用証明書がインボイスの代わりとなります。
これらの書類は、適格簡易請求書として認められており、宛名の記載がなくてもインボイスとして有効です。
引用元:ETC利用照会サービス「ETCクレジットカードを利用した高速道路利用に係るインボイス対応について」
この場合、料金所で発行される利用証明書はインボイスとしては利用できません。利用料金が確定していないため、インボイス要件を満たしていないためです。
インボイスとして利用可能な利用証明書は、ETC利用照会サービスより別途取得する必要があります。
この場合も、ETC利用照会サービスから発行される利用証明書がインボイスとして利用可能です。クレジットカード会社から送付される利用明細書は、インボイスとしての要件を満たしていないため、ご注意ください。
なお、ETC利用照会サービスで発行された利用証明書がインボイスとして認められるのは、以下の条件を満たす場合に限ります。
上記以外のETCカード(ETCコーポレートカード、ETCパーソナルカード等)をご利用の場合は、クレジットカード会社から送付される請求書がインボイスとなります。
ETC利用料金の支払いにおいて、インボイスとして利用可能な書類は上記の通りとなります。利用状況に応じて、適切な書類を保管するようにしてください。
引用元:ETC利用照会サービス「インボイス制度導入に伴う利用証明書のレイアウト変更について」
ETCの利用費用を経費として計上する場合、勘定科目「旅費交通費」として記帳します。出張に伴う交通費に該当するためです。支払いをした経費は、支払い対象や使途により記帳すべき勘定科目が異なります。
この章では、ETC利用料の勘定科目である旅費交通費と計上する際の税務上の注意点について紹介します。
旅費交通費とは、業務に伴う電車やバスなどの交通機関を利用した移動費や宿泊費を含む経費であり、ETCを利用した経費もこれに該当します。
旅費交通費は所得税や住民税の課税対象外とされています。ただし、上限額を超えると課税対象となるため、注意が必要です。また、使途が私的な場合も、課税対象になることがあります。
ETCの領収にかかる書類を経費として申告する際には、以下の項目を正確に記載する必要があります。
不正利用や誤りがある場合、税務署から指摘や罰則が課せられることがあるため、正確な情報を記載し、丁寧に扱う必要があります。また、ETCを利用した証明書類が領収書の代わりということも記載が必要です。
ETC利用料は、勘定科目「車両費」としても計上することが可能です。しかし、車両費は自動車に関する費用全般を含むため、私用分を兼ねている場合に自家按分計算が必要です。経理管理の複雑化やミスが起こる恐れがあるため、勘定科目「旅費交通費」として計上する方が良いでしょう。
以下の2つの表は、ETC利用料の仕訳例です。表1.では、高速道路の一般レーンを利用した際に現金払いしたケースです。表2.は、ETC料をクレジットカード払いし、高速道路を利用したケースです。
表1. 一般レーンを利用時(現金払いした場合)
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
旅費交通費 |
2000 |
現金 |
2000 |
高速道路利用料 |
表2. ETC利用時(ETCにクレジットカード使用した場合)
借方 |
借方 |
貸方 |
金額 |
摘要 |
旅費交通費 |
2000 |
未払金 |
2000 |
ETC利用料 |
旅費交通費として計上する際には、使途が明確になるように摘要を記載します。また、クレジットカードによる代金の前払いには、勘定科目「未払金」を使用します。
業務上発生したETCの料金は経費対象となるため、出張や取引先を訪れる際には必要に応じて活用しましょう。また、ETCの利用には、以下の3つのメリットがあります。
これらのメリットを受けることで、業務生産性の向上や経費の軽減が見込めるため、ETCの活用を検討すると良いでしょう。
ETCは、料金所のやり取りが不要になり混雑を解消する役割があります。そのため、ETCの利用を推奨する一環で、利用料金の割引を設けている場合があります。
ETC利用割には、以下の割引などがあります。
これらのETC利用割を上手く活用し、経費の軽減に努めましょう。
高速道路を利用する際には、入口では入場券の受け取り、出口の料金所ではスタッフと支払いのやり取りが必要です。そのため、高速道路の出入り口付近では、混雑する場合が多いです。
しかし、ETCを活用すれば、出入り口でのやり取りが不要になるため混雑の予防ができ、スムーズに高速道路を利用できます。
高速道路の一般レーンを利用する場合、高速道路の出口で料金の精算があります。そのため、普段から現金を持ち歩いておくことが必要です。
ETCの場合は、カードによる自動引き落としがされるため、料金所のやり取りがなくなります。結果として、現金の所持が不要になります。
ETCでは、領収書発行をされませんが、利用明細やETC利用照会サービスを活用することで領収書の代替書類を取得できます。
経費として計上する際には、「領収書代わり」であることを明記する必要があります。不正利用や誤りがある場合、税務署から指摘や罰則が課せられる場合があるため、正確な情報を記載し、丁寧に扱う必要があります。ETC利用時には、利用明細や履歴を活用することにより、適切な経理業務を行いましょう。