更新日:2024.10.15
ー 目次 ー
請求書などの重要書類には、印鑑を押すことが一般的です。しかし、そもそも印鑑が請求書に必要なのか、必要なら請求書に合わせて印鑑もデジタルにできないかと考えている人も多いでしょう。
そこで、本記事では電子印鑑の必要性や法的効力について解説します。
独立したての方や、電子印鑑の導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
請求書に押す電子印鑑は、エクセルかフリーソフトを使用すると無料で作成可能です。それぞれの作り方をみていきましょう。
エクセルで電子印鑑を作成する場合は、次の手順で行います。
慣れてくると10分ほどで完成します。簡単に作成できるため、ぜひ参考にしてください。
電子印鑑を作成できるフリーソフトはいくつかありますが、なかでも「Adobe Acrobat Reader」の無料版がおすすめです。Adobe Acrobat Readerを活用した電子印鑑の作成は、次の手順で行います。
たった3つの手順で作成できるため、エクセルよりも時間がかからず、簡単に作れるでしょう。
電子印鑑を有料で作れるサービスは、印鑑といえばシヤチハタやGMOなど、さまざまな企業で提供しています。ここでは、シヤチハタが提供している「Shachihata Cloud」というサービスを例に、料金や利用体系を解説します。
Shachihata Cloudは、業種・業界を問わず、101万件以上の企業が導入している電子印鑑サービスです。初期費用が無料で、月額110円(税込)から利用できます。
プランによってサービス内容は異なりますが、全てのプランで電子印鑑をオーダーメイドで作成可能です。エクセルやワードで使っていたフォーマットをダウンロードでき、登録した印影データを利用してすぐに捺印することも可能です。
電子印鑑も通常の印鑑も、請求書に押印すること自体は義務ではありません。正式な書類には印鑑が必須とする慣習が残っているだけで、電子請求書に印鑑なしで取引先に送付しても、違法にはならないのです。
印鑑は、請求書に記載された内容が改ざんされていないことを示すために行っている慣習の一つです。法的に問題という理由で、印鑑なしの請求書で貫き通しても問題はないですが、印鑑がないために受理してくれない企業もあります。
取引先に信頼感を与えて円滑な取引を行うためにも、ビジネスマナーの一環として、請求書には印鑑を押すようにしましょう。
請求書に電子印鑑が必須ではないとはいえ、ある状況下では電子印鑑の使用が望ましい場合があります。特に不正や改ざんリスクの軽減、取引先に対する信頼感の向上など、ビジネス上で重要であることがほとんどです。
請求書に電子印鑑を押しておくと、発行元がどこか分かるため、不正や改ざんリスクが低くなります。これは、改ざんや不正が発覚した時の処罰が押印の有無によって変わるためです。刑法第159条では、不正や偽造を行った場合の処罰内容が記されています。
(私文書偽造等)
第百五十九条行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
(引用:e-Gov法令検索「第十七章 文書偽造の罪-第百五十九条」)
つまり、印鑑がない文書の偽造は1年以下の懲役または10万円以下の罰金、印鑑がある文書の偽造は3ヶ月以上5年以下の懲役があるということです。電子印鑑の場合も、押印がある場合の請求書の方が厳しい処罰がなされるため、不正や改ざんリスクを回避できるといえます。
電子印鑑が請求書に捺印されていると、取引先は請求書の発行元を確認できるため、不安を払拭して信頼性が高められます。取引先によっては押印が必須のケースもあり、押印がないからと契約を取りこぼす心配もありません。
フリーランスや個人事業主は、取引先の信頼が特に大切なため、請求書に電子印鑑はできる限り押印するようにしましょう。
電子印鑑は、本人が押印したことと改ざんされていないことを証明できれば、法的に効力があると認められます。しかし、印影のみと電子証明書がある場合とでは法的効力が異なるため、扱いには注意しましょう。
請求書に押される印鑑には「印影のみの電子印鑑」と「電子証明書付きの電子印鑑」の2種類があります。どちらも印鑑であることは同じですが、法的効力が異なります。それぞれの違いを見ていきましょう。
印影のみの電子印鑑とは、押印された印鑑をそのままデータ化したものです。誰でも電子印鑑を簡単に複製できる手軽さがあります。
一方で、所有者以外も利用しやすく、改ざんされやすい注意点があります。本人が押印したと証明しづらく、残念ながら法的効力があるとはいえません。そのため、請求書や契約書などの重要書類には使用されず、回覧板などに使用される、浸透印や認印などと同じような位置付けです。
電子証明書付きの印鑑は印影のみの場合とは異なり、本人性が証明される印鑑のため法的効力があると認められています。指定の認証局から発行された電子証明書があることで、その印鑑が本人のものと証明されるからです。
また、電子証明書付きの印鑑にはタイムスタンプ機能が付いています。デジタルの文書は紙よりも改ざんされやすいですが、タイムスタンプによって押印時刻が記録され、押印以降は改ざんが行われていないと証明できるのです。
このような理由から、電子証明書付きの印鑑は、契約書や公的文書にも捺印できる法的効力があると認められています。
通常の印鑑は、民事訴訟法で次のように記されています。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
(引用:e-Gov法令検索「第四節 鑑定-第二百二十八条」)
つまり「本人が作成し、本人が押印した」と推定する要素になりえるため、法的効力が保証されているのです。電子印鑑も、電子署名法で次のように表記され、同様の位置付けになっています。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
(引用:e-Gov法令検索「第二章 電磁的記録の神聖な成立の推定-第三条」)
どちらも同じ効力を持っていることから、法的効力に違いはないといえるでしょう。
電子印鑑を導入すると、次の3つのようなメリットが得られます。
それぞれの注意点を見ていきましょう。
一つずつ見ていきましょう。
電子印鑑は、通常の印鑑を押すときに必ず使用していた、朱肉や捺印マットを用意する手間が省けます。これまでは請求書を印刷し、捺印してから再度パソコンに取り込んでいた手間が、全てパソコン上で解決するのです。
押印したものとしてすでにデータで存在しているため、押印を失敗する心配もありません。作業の時間短縮により、他の業務へ集中できるようになり、今以上の効率化を図れるようになるでしょう。
従来は出張や外出で押印できず、業務が進まないという事態が発生していたでしょう。しかし、電子印鑑を導入すると、紙に押すというステップがデジタルで行えます。
外出先でも請求書をはじめとするさまざまな文書に押印できるため、ボトルネックとなっていた部分を解消できるのです。電子印鑑を導入することで、他の書類もペーパーレス化が可能になるという点もメリットの一つでしょう。
これまでは、データベースの請求書を必ず一度は印刷しなければなりませんでした。印鑑も従来のものでは朱肉代がかかり、印鑑の縁が欠ければ購入し直す手間があったでしょう。
しかし、電子印鑑の導入によってそれらにかかっていたコストが不要になります。月に数枚しか押印しないならコストが小さく気にならないでしょうが、多くの請求書を印刷する場合は見過ごせない金額です。
保管場所を用意する必要もなくなるため、さまざまな面で節約できるようになります。
電子印鑑は便利でメリットも多くありますが、請求書に電子印鑑を押すときには気をつけるべき点が3つあります。
それぞれの注意点を見ていきましょう。
電子印鑑の押す位置は、会社情報が記載されている箇所の右側が一般的です。請求書や印影の偽造を防止するため、社名や住所と電子印鑑とが重なるように押印しましょう。
フォーマットが用意されている場合は気にしなくても良いことかもしれませんが、トラブル防止のためにも覚えておいて損はありません。
エクセルやワード、フリーソフトなどの無料で作成した電子印鑑は、契約書や請求書などの重要書類には使用できません。印影のみで電子証明書がない印鑑は、簡単に複製できてしまうためです。
無料の電子印鑑は重要度の低いメモや回覧板などに使用するようにしましょう。一方で、電子証明書やタイムスタンプが付与された電子印鑑の場合は重要書類に使用できるため、用途によって使い分けるように留意してください。
電子印鑑は、取引先によっては認められないケースがあります。電子印鑑は普及してからあまり時間も経っておらず、まだ書面での締結や文書のやり取りは紙でなければならないという企業も少なくありません。
請求書に電子印鑑を押印する際は、あらかじめ使用可能かを確認しておきましょう。また、紙でのやり取りを求める企業はセキュリティ性も重視しています。電子印鑑が使用可能でも、セキュリティに問題ないことをしっかりと伝えることで、取引先も安心できるでしょう。
今回の記事では、請求書に押す電子印鑑の必要性や法的効力についてご紹介しました。
電子印鑑は、法律的には必須ではないものの、コスト削減や業務効率化が図れるなどのメリットがあります。取引先の信頼性も獲得できるため、ぜひ導入を検討してみてください。
また、電子印鑑は印影のみと電子証明書がある場合とで、法的効力が異なります。請求書や契約書などの重要書類をやり取りする場合は、法的効力がある電子証明書付きの電子印鑑を使用しましょう。