更新日:2025.12.18

ー 目次 ー
「うっかり物を壊されてしまった」「会社の備品を破損された」など、弁償を請求する場面で請求書の書き方に困っていませんか?トラブルを避け、スムーズに弁償してもらうためには、正しい知識に基づいた請求書の作成が不可欠です。この記事では、個人間の物品破損から会社が従業員に請求するケースまで、様々な状況ですぐに使える弁償請求書の文例をコピペOKでご紹介します。本記事を読めば、請求書の書き方や必須項目はもちろん、送る前の準備、万が一支払われない場合の督促や法的措置といった対処法まで理解できます。
請求書を送る前に冷静に準備を進めることが、スムーズな問題解決への第一歩です。
ここでは、後々のトラブルを未然に防ぐために、請求書を送る前に必ずやっておくべき2つの重要なステップを解説します。
弁償を請求する上で最も重要なのが「客観的な証拠」です。口頭での説明だけでは、損害の程度が正確に伝わらなかったり、「言った・言わない」の水掛け論になったりする恐れがあります。誰が見ても状況がわかるように、破損直後の状態を証拠として記録しましょう。
具体的には、以下のようなものを証拠として残しておくことが有効です。特に写真は、破損した物品の全体像と破損箇所のアップなど、複数の角度から撮影しておくと、損害の状況を明確に伝えられます。
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証拠の種類 |
残し方のポイント |
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写真・動画 |
破損した物品の全体像、破損箇所のアップ、様々な角度から撮影する。撮影日時が記録されるようにする。 |
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修理の見積書 |
修理にかかる具体的な費用を示す客観的な証拠となる。複数の業者から見積もりを取るとより信頼性が高まる。 |
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購入時の領収書・レシート |
破損した物品の購入価格や購入日を証明し、損害額を算定する際の根拠となる。 |
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第三者の証言 |
事故や破損の状況を目撃した人がいる場合、氏名や連絡先を聞き、可能であれば状況を記録してもらう。 |
請求書は、あくまで「合意した内容」を正式な形で通知するための書類です。
そのため、請求書を送る前に、当事者間で弁償すること自体や、弁償の範囲、おおよその金額について話し合い、合意を得ておくことが不可欠です。この合意を口約束で済ませてしまうと、後から「そんな約束はしていない」と覆されるリスクがあります。必ずメールや書面など、記録に残る形で合意内容をまとめておきましょう。
合意書やメールには、少なくとも以下の項目を盛り込み、双方の認識が一致していることを確認してください。この事前合意があることで、請求書送付後の支払いが格段にスムーズになります。
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項目 |
記載内容の例 |
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当事者の情報 |
加害者と被害者の氏名、住所、連絡先 |
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破損の事実 |
いつ、どこで、誰が、何を、どのように破損させたか |
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弁償への同意 |
加害者が破損の事実を認め、弁償することに同意する旨 |
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弁償の内容 |
修理費用の支払い、代替品の購入費用、弁償金額など |
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支払条件 |
支払期限、支払方法(銀行振込など) |
ここでは、後々のトラブルを防ぐために特に注意すべき3つの重要なポイントを解説します。これらのポイントを押さえることで、相手も納得しやすく、スムーズな支払いが期待できます。
弁償を請求する際、最も重要なのが「なぜその金額になるのか」という客観的な根拠です。根拠が不明確な請求は、相手に不信感を与え、「不当に高い金額を請求されているのではないか」という疑念を抱かせる原因となります。トラブルを避けるためにも、請求金額の算出根拠となる資料を必ず添付しましょう。
具体的には、以下のような書類が損害額の根拠として有効です。
請求内容の透明性を高めることが、相手の納得感に繋がり、スムーズな解決への第一歩となります。
大切なものを壊された場合、怒りや悲しみといった感情が湧くのは当然のことです。しかし、その感情を請求書にぶつけてしまうと、相手も感情的になり、問題がこじれてしまう可能性があります。弁償請求書の目的は、あくまで「発生した損害を金銭的に回復すること」であり、相手を非難することではありません。
請求書には、感情的な言葉や相手を責めるような表現は一切含めず淡々と、かつ客観的に記載することを心がけましょう。以下の良い例と悪い例を比較してみましょう。
悪い例(感情的な表現)
「あなたの不注意で、私が大切にしていたカメラがめちゃくちゃに壊されました。本当に信じられません。弁償するのは当たり前です。すぐに修理代を支払ってください。」
良い例(客観的な事実のみ)
「〇年〇月〇日、〇〇(場所)にて発生した事由により、当方所有のデジタルカメラ(製品名:〇〇)が破損いたしました。つきましては、本書記載の通り、修理費用をご請求いたします。」
請求書は、トラブル発生後に一方的に送りつけるものではなく、事前に当事者間で話し合い、合意した内容を確認するための書類としての役割も持ちます。請求書を送る前に、必ず相手と話し合い、合意を得ておきましょう。
口頭やメールなどで行った事前の合意内容と、請求書に記載されている内容が異なっていると、新たな不信感やトラブルの原因となります。「話が違う」という事態を避けるためにも、請求書は必ず合意内容に基づいて作成してください。
もし認識の齟齬が不安な場合は、請求書の備考欄などに「〇年〇月〇日、当事者間にて上記内容の通り合意済み」といった一文を加えておくと、より丁寧な確認となります。
ここでは、具体的な状況別に使える弁償請求書の文例を4つのケースに分けてご紹介します。個人間のトラブルから、法人が関わるケース、メールでの請求まで、様々な場面を想定しています。ご自身の状況に合わせて内容を適宜修正し、テンプレートとしてご活用ください。
書面ではなくメールで弁償を請求する際の文例です。事前に相手方とメールでのやり取りに合意している場合に有効です。件名で内容がわかるようにし、本文には請求の根拠と詳細を明確に記載しましょう。
件名:【ご確認のお願い】破損したカメラレンズの弁償に関するご請求
請求 太郎 様
いつもお世話になっております。
請求書 発行子です。
先般、◯年◯月◯日に破損されましたカメラレンズ(XX社製 EF-123)の件につきまして、修理費用の見積もりが確定いたしましたので、ご連絡いたしました。
つきましては、事前にご合意いただきました通り、修理費用を下記の通りご請求させていただきます。
お忙しいところ恐縮ですが、ご確認の上、期日までにお支払いいただけますようお願い申し上げます。
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【ご請求内容】
【お振込先口座】
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なお、修理会社から受領した見積書の写しを本メールに添付いたしましたので、併せてご確認ください。
ご不明な点がございましたら、本メールへの返信にてお気軽にお問い合わせください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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請求書 発行子
〒XXX-XXXX
東京都渋谷区〇〇 Y-Y-Y
電話番号:090-XXXX-XXXX
メールアドレス:example@email.com
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知人など、個人間で起きた物品の破損トラブルで使用できる基本的な請求書の文例です。当事者間で事前に話し合い、弁償金額や支払方法について合意した内容を基に作成しましょう。
請 求 書
発行日:◯年◯月◯日
〒XXX-XXXX
東京都世田谷区〇〇 X-X-X
請求 太郎 様
〒XXX-XXXX
東京都渋谷区〇〇 Y-Y-Y
請求書 発行子
電話番号:090-XXXX-XXXX
下記の通りご請求申し上げます。
ご請求金額:¥55,000-
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内容 |
数量 |
単価 |
金額 |
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スマートフォン(XX社製 ABC-123)の修理代金 |
1 |
50,000円 |
50,000円 |
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消費税(10%) |
5,000円 |
||
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合計 |
55,000円 |
【お振込先】
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 XXXXXXX
口座名義:セイキュウショ ハツコ
【お支払期限】
◯年◯月◯日
【備考】
◯年◯月◯日に発生したスマートフォンの破損に関する弁償費用として、ご合意いただいた金額となります。期日までにお振込みいただけますようお願い申し上げます。
従業員の故意または重大な過失によって会社の備品が破損した場合に、会社が従業員へ損害賠償を請求する際の文例です。
ただし、労働基準法では会社が従業員に損害の全額を請求することは制限される場合があります。請求を行う際は、就業規則を確認し、必要であれば弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
損害賠償請求書
発行日:◯年◯月◯日
請求書番号:2024-001
営業部
従業員 氏名 様
〒XXX-XXXX
東京都千代田区丸の内X-X-X
株式会社〇〇
代表取締役 会社 太郎
電話番号:03-XXXX-XXXX
貴殿の過失により発生した会社資産の損害につきまして、下記の通り賠償を請求いたします。
ご請求金額:¥30,000-
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項目 |
内容 |
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発生日 |
◯年◯月◯日 |
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破損物品 |
ノートパソコン(XX社製 型番PC-XYZ) |
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損害内容 |
液晶パネルの破損 |
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損害額 |
60,000円(修理費用見積額) |
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本人負担額 |
30,000円(損害額の50%) |
【お振込先】
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 XXXXXXX
口座名義:カ)マルマル
【お支払期限】
◯年◯月◯日
【備考】
本件に関するお問い合わせは、総務部(担当:鈴木)までご連絡ください。
お客様が店内の商品や備品を誤って破損してしまった際に、店舗側から請求を行う場合の文例です。お客様を刺激しないよう、丁寧かつ事務的な表現を心がけることが重要です。
弁償に関するご請求
発行日:◯年◯月◯日
お客様 氏名 様
〒XXX-XXXX
東京都中央区銀座X-X-X
レストラン〇〇
店長 店舗 責任者
電話番号:03-XXXX-XXXX
平素は当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。
さて、先般ご来店時に破損されました備品につきまして、下記の通りご請求させていただきます。何卒ご理解ご協力いただけますようお願い申し上げます。
ご請求金額:¥11,000-
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品名 |
数量 |
単価 |
金額 |
|
ワイングラス(XX社製) |
1 |
10,000円 |
10,000円 |
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消費税(10%) |
1,000円 |
||
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合計 |
11,000円 |
【お支払方法】
下記口座へのお振込み、または店舗レジにて現金でお支払いください。
【お振込先】
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 XXXXXXX
口座名義:レストランマルマル
【お支払期限】
◯年◯月◯日
【備考】
ご不明な点がございましたら、担当の店舗責任者までお気軽にお問い合わせください。
弁償請求書は、当事者間の合意内容を正式な書面として記録し、支払いを促すための重要な書類です。記載漏れがあると請求書として無効になったり、相手に不信感を与えたりする可能性があるため、以下の必須項目を正確に記載しましょう。
請求書をいつ作成・発行したのかを明確にするために、発行年月日は必ず記載します。
一般的には、書類の右上に「YYYY年MM月DD日」の形式で記載します。また、複数の請求書を管理する場合には、任意の管理番号(請求書番号)を振っておくと、後から問い合わせがあった際にどの案件か特定しやすくなり便利です。「No.2024-001」のように、年と連番を組み合わせると分かりやすいでしょう。
誰が請求しているのかを明確にするため、請求書発行者の情報を記載します。
個人であれば氏名・住所・電話番号を、法人の場合は会社名・住所・電話番号・担当部署・担当者名を明記してください。押印は必須ではありませんが、あると書類の信頼性が高まります。
誰に請求するのかを明確にするため、相手方の情報を正確に記載します。
個人の場合は氏名を、法人の場合は正式名称を記載し、敬称を間違えないように注意しましょう。個人宛なら「様」、会社や部署宛なら「御中」を使用します。
弁償を求める合計金額を、誰が見ても明確にわかるように記載します。
金額の前に「¥」マークを付けたり、末尾に「-」を(例:¥55,000-)とすることで、金額の改ざんや読み間違いを防ぐことができます。消費税が含まれる場合は、その旨を明記(例:55,000円(税込))すると親切です。
請求金額の根拠となる内訳を具体的に記載します。何に対する弁償費用なのかが明確に伝わるように、「品名」「数量」「単価」「金額」などの項目に分けて記載するのが一般的です。
いつまでに支払いをお願いするのか、支払期限を明確に記載します。
また、支払方法として銀行振込を指定する場合は、以下の情報を正確に記載してください。振込手数料をどちらが負担するのかも明記しておくと、より丁寧です。
弁償の合意が取れ、請求書を送付したにもかかわらず、相手方から支払いがないケースも残念ながら存在します。そのような場合は、感情的にならず、冷静に段階を踏んで対応することが重要です。
ここでは、支払いに応じてもらえない場合の具体的な対処法を3つのステップで解説します。
支払期限を過ぎても入金が確認できない場合、まずは「督促状」を送付しましょう。督促状は、支払いが遅れている事実を相手に通知し、改めて支払いを促すための書面です。単なる支払忘れの可能性もあるため、最初は強い言葉遣いを避け、丁寧な文面で送付するのが一般的です。
督促状には、以下の内容を明記します。
この段階では、普通郵便で送付しても問題ありませんが、相手に届いたことを記録として残したい場合は、特定記録郵便などを利用するのも一つの方法です。
督促状を送っても支払いに応じてもらえない場合、次の手段として「内容証明郵便」の利用が有効です。内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛てに送ったか」を日本郵便が公的に証明してくれるサービスです。
内容証明郵便には、以下のような効果が期待できます。
内容証明郵便は、通常の郵便とは異なり、文字数や書式に規定があります。また、相手が受け取った事実を証明するために「配達証明」を付けて送付することが一般的です。
内容証明郵便を送ってもなお支払いがない場合は、最終手段として裁判所を介した法的手続きを検討します。損害額に応じて、比較的簡易で迅速な手続きである「支払督促」や「少額訴訟」を利用することができます。
どちらの手続きも、弁護士に依頼せず個人で進めることが可能ですが、それぞれに特徴があります。
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手続きの種類 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
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支払督促 |
裁判所を通じて相手に支払いを命じてもらう手続き。書類審査のみで進められる。 |
・手続きが簡単で費用が安い ・裁判所に出向く必要がない ・確定すれば強制執行が可能 |
相手が異議申し立てをすると、通常の訴訟手続きに移行する。 |
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少額訴訟 |
60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる特別な裁判手続き。 |
・原則1回の期日で審理が終わり、判決が出るため解決が早い ・手続きが比較的シンプル |
・相手が希望すれば通常訴訟に移行する場合がある ・利用できるのは金銭の支払請求のみ |
これらの法的措置は、最終的な解決を目指すための強力な手段です。どの手続きが適切か判断に迷う場合や、手続きに不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
弁償請求書を作成したり、受け取ったりする際には、さまざまな疑問が生じるものです。ここでは、弁償請求に関して特によくある質問とその回答をまとめました。トラブルを円満に解決するためにも、ぜひ参考にしてください。
弁償は金銭で行うのが原則ですが、当事者同士が合意すれば、破損したものと全く同じ物や同等の品物を渡す「現物賠償」も可能です。
相手から現物賠償の申し出があり、あなたがそれに同意した場合、金銭のやり取りは発生しないため、通常は請求書を発行する必要はありません。もし既に請求書を送付してしまっている場合は、現物賠償で解決した旨を伝え、請求を取り下げることを明確にしましょう。
ただし、口約束だけでは後から「弁償されていない」といったトラブルに発展する可能性があります。そのため、現物賠償で合意した場合でも、「〇〇の損害について、同等品である△△の提供をもって、一切の賠償を完了したものとする」といった内容の合意書や示談書を作成し、双方で署名・捺印して保管しておくことを強く推奨します。
複数人が関与して物を破損させた場合、法律上、加害者全員が「共同不法行為者」として、損害額の全額に対して連帯して賠償責任を負うことになります(連帯債務)。
そのため、請求書の送付方法としては、以下の2つのパターンが考えられます。
代表者1名だけに請求することも可能ですが、その代表者が支払ってくれないリスクも考えられます。最も確実なのは、加害者全員に対してそれぞれ請求することです。この場合、請求額を人数で割るのではなく、全員に「全額」を請求します。誰か一人が全額を支払えば、他の加害者の支払義務は消滅します。(誰がどれだけの割合を負担するかは、加害者側の内部で話し合って決める問題となります。)
もし、加害者との話し合いの中で、それぞれの負担割合について合意が取れている場合は、その合意内容に基づいて個別に請求書を作成することも可能です。
損害賠償金に消費税を加算するかどうかは、その賠償金が「資産の譲渡等の対価」にあたるかどうかで決まります。原則として、不法行為などによって生じた損害を補填するためのお金は、サービスの対価ではないため消費税の課税対象外(不課税)となります。
しかし、損害額の算定根拠によっては、結果的に消費税を含んだ金額を請求するケースもあります。具体的な違いを以下の表にまとめました。
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ケース |
消費税の扱い |
具体例と請求書の記載方法 |
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損害の補填として請求する場合 |
加算しない(不課税) |
破損した物品の時価相当額を請求する場合など。 請求書の品目には「損害賠償金として」と記載し、金額には消費税を含めません。 |
|
修理費用や代替品の購入費用をそのまま請求する場合 |
加算する(結果的に税込額を請求) |
業者に支払った修理代金や、新品を購入した際の代金(領収書や見積書に記載された税込金額)をそのまま損害額として請求する場合。 請求書の品目には「〇〇修理代金(税込)」のように記載し、その根拠となる領収書や見積書の写しを添付するのが望ましいです。 |
個人間の物品破損トラブルでは、実際に発生した修理費用や購入費用(税込)を根拠に請求することが多いため、結果として消費税を含んだ金額を請求するケースが一般的です。
弁償請求書を作成する上で最も重要なのは、送付前の準備です。破損状況の証拠を残し、当事者間で弁償内容の合意を書面で得ておくことで、後の「言った言わない」といった無用なトラブルを未然に防ぐことができます。請求書を作成する際は、損害額の根拠となる見積書などを添付し、感情的な表現は避け、客観的な事実のみを記載することを心がけましょう。当事者間で合意した内容を正確に反映させることが、スムーズな支払いにつながる鍵となります。この記事が、あなたの問題解決の一助となれば幸いです。