更新日:2024.09.27
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通信費とは、企業活動において必要不可欠な通信手段にかかる費用の総称です。 電話料金、インターネット利用料、郵便料金などが代表的な例として挙げられます。これらの費用は、企業の円滑なコミュニケーションや情報収集を支えるものであり、適切な会計処理が求められます。
現代社会において、ビジネスは通信手段に大きく依存しています。電話、インターネット、郵便など、円滑なコミュニケーションなしに企業活動は成り立ちません。しかし、これらの通信手段にかかる費用を経費として適切に処理することは、企業の財務状況を正確に把握する上で非常に重要です。
特に経理担当者にとって、通信費の会計処理は避けては通れない業務の一つと言えるでしょう。通信費は、その種類や利用形態によって適切な処理方法が異なるため、正確な知識と理解が求められます。
この記事では、通信費の定義から始まり、経費計上の際の仕訳方法、計上タイミング、さらには具体例を交えながら詳しく解説していきます。通信費の会計処理に不安を感じている方、より理解を深めたい方はぜひ最後までお読みください。
この記事でわかることは以下のとおりです。
通信費とは、業務を行う上で連絡または通信に関わる支出を指します。近年急増のテレワークによる諸費用も、事業に関連していれば通信費として計上可能です。
また、通信費は基本的に消費税の対象となりますが、以下の場合は例外です。
通信費は使用機会の多い勘定科目なので、消費税の対象となるかを確認しておきましょう。
通信費を経費として計上する際には、業務関連性と私的利用の区別が重要となります。ここでは、経費として認められる通信費と認められない通信費について、具体例を交えて解説します。
事業に関連するインターネット料金は通信費になります。この場合、月額使用料はもちろん入会費や工事費なども経費として計上できます。また、個人名義のスマホ料金なども事業に関連していれば計上可能です。つまり、ポイントは「事業に関連しているのかどうか」です。
用途 | 具体的な例 |
---|---|
顧客や取引先との連絡 | 電話、メール、ビデオ会議、チャットツール |
社内コミュニケーション | 社内電話、社内チャット、グループウェア、Web会議システム |
情報収集・発信 | インターネット回線利用料、ホームページ維持費、広告掲載料、ドメイン費用 |
その他 | 郵便料金(請求書や契約書などの送付)、宅配便料金(商品発送や書類送付)、名刺作成費用 |
個人名義のスマホ料金も、プライベートで使用した分については当然通信費にはなりません。この場合は後述する按分を参考に、プライベート分と事業分を分けて算出することで、事業分を通信費として計上できます。
また、取引先にFAXを送った場合の用紙代や取引先に送った封筒の料金は経費になりますが、通信費ではありません。通信費として間違われやすい項目ですが、正確には消耗品費として計上します。
用途 | 具体的な例 |
---|---|
プライベートな連絡 | 家族や友人との電話、個人的なメール、SNSの利用 |
娯楽 | ゲーム、動画視聴、音楽配信サービス |
福利厚生 | 社員に支給する携帯電話の料金(私的利用分を含む)、社員寮のインターネット回線利用料 |
ここでは、仕訳例について以下の4つの通信費を例に解説します。
実際に仕訳する際に、ぜひ参考にしてください。
携帯電話や固定電話の料金を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
携帯電話の料金2万円を事業用の普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
固定電話の料金を計上し、支払いは月末払いである
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
5,000円 |
未払金 |
5,000円 |
インターネット料金を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
インターネット使用料3万円を事業用の普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
30,000円 |
普通預金 |
30,000円 |
インターネットを開通させるための工事費用20,000円を普通預金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
・インターネット使用料が10,000円で、個人用(40%)と業務用(60%)で按分して計上する
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
6,000円 |
普通預金 |
10,000円 |
事業主貸 |
4,000円 |
郵送料を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に書留を郵送するため郵便代800円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
800円 |
現金 |
800円 |
切手代を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に手紙を送るための切手代250円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
250円 |
現金 |
250円 |
・250円の切手をまとめて10枚現金で購入した
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
2,500円 |
現金 |
2,500円 |
・期末時点で未使用の250円切手が6枚ある
借方 |
貸方 |
||
貯蔵品 |
1,500円 |
通信費 |
1,500円 |
郵便代を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に書留を郵送するため郵便代800円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
800円 |
現金 |
800円 |
テレビ受信料を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・店舗に設置してあるテレビのNHK受信料1,100円を普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
1,100円 |
普通預金 |
1,100円 |
通信費を経費として計上する際に、以下の3つについて注意する必要があります。
これらのポイントをしっかり抑えておかないと税務調査を受けた際に、誤申告としてペナルティを課される恐れがあります。それぞれ解説しますので、しっかりと確認しましょう。
通信費に該当する項目は多数ありますが、使用用途によって混同しやすい勘定科目が4つあります。具体例を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
荷重運賃とは、商品の発送・返送に関連する費用を仕訳する際の勘定科目です。取引先との連絡手段として使用した費用は通信費に当たりますが、商品の発送にかかる配送料は「荷重運賃」に該当します。
通信費と荷重運賃を正確に仕訳するポイントは「売上に関係しているか」という点です。連絡であれば通信費、売上に関係する場合は荷重運賃のように使い分けましょう。
租税公課は、収入印紙をはじめとした税金に関する費用を仕訳する際の勘定科目です。そのため、切手と収入印紙は見た目が似ており混同しやすいですが、切手は「通信費」収入印紙は「租税公課」と、それぞれ異なる勘定科目を使用します。
間違えやすい勘定科目の1つですので、注意しましょう。
消耗品費は、使用期間が1年未満の消耗品もしくは、10万円未満の什器備品の代金を仕訳する際の勘定科目です。
郵便を送る際の切手代は通信費ですが、封筒は消耗品費です。一括りに通信費として計上してしまわないよう、気をつけましょう。
広告宣伝費は、企業の商品やサービスを宣伝するために使用した費用を仕訳する際の勘定科目です。
取引先への年賀状や連絡として使用するハガキ代は通信費ですが、広告や宣伝を目的としたダイレクトメール用のハガキは、広告宣伝費に該当します。
通信費に該当するものでも、プライベートで使用した場合は経費計上できません。しかし、事業と兼用しているものであれば、按分をすることで事業分を経費計上できます。例えば、事業と兼用でスマホを使っている場合は、第三者が納得するデータに基づいて使用割合を計算します。そのデータとは通話時間やネット利用量などです。
仮に月額のスマホ代が3万円だとして、使用割合がプライベート用40%・業務用60%であれば、18,000円を通信費として経費計上できます。あくまで、按分の参考にするデータは事業者によって委ねられており正解はありません。そのため、第三者が見ても納得できる按分基準を設定しておくことが大切です。
また、企業で在宅勤務を取り入れている場合の按分は、以下の方法で算出します。
業務のために使用した基本使用料や通信料等=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×(その従業員の1ヶ月の在宅勤務日数÷該当月の日数)×1/2
在宅勤務の際の電話料金やインターネット料金を企業が負担する場合は、上記の計算式を参考に正しく按分しましょう。
大手キャリアでは、携帯電話料金と商品購入などの代金を合算で支払う「キャリア決済」が提供されています。キャリア決済を用いて通信費以外の支払いを行った場合、適切な勘定科目を用いて仕訳する必要があります。
例えばイヤフォンやボールペンなどを、業務で使用するためにキャリア決済で購入した場合、通信費と消耗品費に分けて仕訳が必要です。支払いをまとめていても、使用する目的に分けて仕訳が必要になるため注意しましょう。
通信費を経費として計上する際には、その内容を明確にする必要があります。例えば、スマートフォン料金を経費として計上する場合には、通話料金、データ通信料金、端末代金などを区分して計上することが求められます。また、領収書や請求書などの証拠書類を保管し、税務調査に対応できるようにしておくことも重要です。
通信費は、原則として、実際に通信サービスを利用した月に費用として計上します。これは、発生主義会計の原則に基づいており、費用と収益の対応関係を明確にするために重要な考え方です。例えば、スマートフォンの月額料金は、毎月の利用期間に対応する費用として、その月に計上します。
ただし、年間契約などの場合には、前払い費用として処理し、毎月の費用として按分計上することも可能です。いずれの場合も、適切な会計処理を行うことで、正確な損益計算を行うことができます。
通信費の家事按分は、事業用とプライベート用の使用割合に応じて行います。目安となる割合は、以下の要素を考慮して決定します。
一般的には、使用時間に基づいて按分を行うことが多く、客観的な証拠に基づいて割合を決定することが重要です。例えば、スマートフォンの使用時間が事業用60%、プライベート用40%であれば、通信費の60%を事業用として計上することができます。
家事按分は、税務調査において厳しくチェックされる項目の一つです。按分割合を決定する際には、客観的な証拠を確保し、税務署からの質問に答えられるように準備しておくことが大切です。
通信費は月にどれくらいかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、以下の3つのパターン別に解説します。
単身世帯と法人や個人事業主の通信費について、ご自身の状況を確認するための参考にしてください。
参照元のデータによると、単身世帯の平均的な通信費は19,901円です。近年のインターネットや動画コンテンツの普及により、通信費の割合が高くなっていると考えられます。
また、この通信費のうち携帯電話の通信料金は14,514円となっており、通信費の大部分がスマホ利用によるものです。2023年現在のスマホ端末の個人保有率は96.3%で、今や一人一台スマホを保有する時代であるためです。そのため、家計における通信費はライフラインと同等の費用として考える必要があります。
参考:「家計調査 家計収支編(2023年4~6月計)」総務省統計局
企業の平均的な通信費は、規模や業種によって大きく異なります。従業員にスマホを支給している場合や、取引先への連絡が多い業種であれば、その分通信費の割合も増えます。
おおよそにはなりますが、企業の規模別ごとの平均的な通信費は以下のとおりです。
とくに大手企業になると経費として扱える金額も増えるため、漏れなく計上するようにしましょう。
企業だけでなく、個人事業主も通信費を経費計上できます。スマホ代や固定電話代など、事業に関連していれば当然経費です。企業の場合、法人契約で社員に支給していれば業務専用で利用していると考えられますので、全額を経費計上することが可能です。また、自宅を事務所兼用している個人事業主のスマホ代やインターネット代も経費になります。
ただし、個人事業主の場合に注意したいのが、通信費を「プライベート用と事業用でしっかり分けられるか」です。事業用と兼用しているスマホ代は、そのすべてを経費にすることはできません。使用割合やデータ量に応じて按分することで、おおよその経費を算出します。按分の目安は厳密に定められているわけではありませんが、第三者がみても納得する目安を決めましょう。
例えば、スマホ代でいえば全体から業務に使用した通話料を算出したり、インターネット代でいえば勤務日数や勤務時間から割合を算出したりします。毎日8時間勤務していたとすると1日の1/3を按分として、インターネット代の1/3を経費として計上できると考えられます。個人事業主は発生する通信費が多いため、漏れなく経費に計上できるようにしましょう。
通信費は経費として計上できるものの、できるだけ通信費を抑えることで必要経費を抑えたいと考えることでしょう。とくに個人事業主は事業兼用でスマホを所持する方が多いため、通信費の節約は大きな課題です。全体の通信費を抑えることで全体の経費を抑えることにつながるため、私用の通信費の節約は事業においても影響を及ぼします。
この章では、使用の通信費を節約する方法について、詳しく解説します。
通信費の節約を考える上でやるべきことは、契約プランの確認です。まずは、契約しているキャリアの中で、最適なプランであるかを見直しましょう。従業員のスマホの使用頻度によっては、今よりも安価なプランで十分な可能性があります。企業によっては、契約しているスマホの台数によってビジネス割引が利用できるケースがあるため、キャリアの営業担当者へ相談してみるのもおすすめです。
また、使用していないオプション機能などがついていないかも確認しましょう。契約時に自動的にオプションに加入している場合があり、解約することを忘れているケースがあります。無駄な経費を支払うことになるため、契約プランの最適化と併せて確認しておきましょう。
そもそもスマホを支給していても、従業員が全く使用していないケースがあります。業務内容によって、スマホの必要可否が分かれる場合がありますので、改めてヒアリングやアンケートを実施するというのも有効です。
電話やメールのみでスマホを使用している場合、データ容量が多すぎないかを確認します。パソコンを使用する業務がメインの場合「スマホは1日に数回電話をする程度しか使用していない」ケースがあります。個人で使用するときのように、動画コンテンツを日常的に視聴したりSNSの高頻度で利用することはないので、データ容量を減らして通信費を節約しましょう。
個人事業主であれば、モバイルルーターを活用しスマホ料金とインターネット料金を節約するという方法があります。モバイルルーターであれば月額料金も安く、持ち運びができるメリットもあるため、外出先でインターネットを利用することも可能です。アプリのダウンロードなどは通信料が多くかかりますが、無料Wi-Fiスポットなどを利用することで通信費の節約ができます。
本記事では、通信費について詳しく解説しました。通信費とは、業務する上で通信や連絡に関連する支出のことです。通信費はほとんどの事業者が利用する経費なので、企業はもちろん個人事業主の方も概要を理解しておく必要があります。また、通信費は品目によっては荷重運賃や消耗品費と間違いやすいため、正しく区分できる知識が求められます。
個人事業主においても、とくに自宅を事務所兼用にしている場合、通信費を経費として計上するには利用分の一定割合を按分しなくてはいけません。また、按分の目安は、第三者がみて納得するデータに基づいている必要があります。インターネット社会において、通信費は今後も無くなることのない経費です。通信費を正確に計上し、事業の利益確保を行いましょう。