更新日:2024.04.24
ー 目次 ー
通信費とは、業務を行う上で連絡または通信に関わる支出を指します。近年急増のテレワークによる諸費用も、事業に関連していれば通信費として計上可能です。
また、通信費は基本的に消費税の対象となりますが、以下の場合は例外です。
・国外取引のための通話料や郵便料は「免税」
・郵便切手は「非課税」
通信費は使用機会の多い勘定科目なので、消費税の対象となるかを確認しておきましょう。
通信費にあたる費用は主に4つあり、具体的な項目は以下のとおりです。
それぞれ業務で使用している場合は通信費として計上可能ですが、私的に利用したものは経費として扱うことができません。例えば、テレワークでインターネットを使用している場合、業務に使用した時間で費用を按分し、個人の利用分は差し引いて計上しましょう。
携帯電話や固定電話の料金、取引先に資料を送付するためのFAXの送信代は通信費に該当します。個人や業務で携帯電話を兼用している場合は、費用の按分が必要です。業務で使用している割合を客観的に判断し、費用を計上するようにしましょう。
また、自然災害などが発生した際に社員と連絡をとるために支給するテレホンカード代も、通信費として計上可能です。
インターネットの使用料は通信費に該当します。加えてインターネットを繋ぐための契約金や工事費も、すべて通信費として計上可能です。データを管理するためのシステム使用料や経理業務のための会計ソフトの利用代金も、通信費に含まれます。
自社でWebサイトを運営している場合は、レンタルサーバーの利用代金も通信費として扱うことができます。
郵送料は主に切手と郵便代の2種類が挙げられます。ただし、それぞれ注意すべきポイントがあるため解説します。
取引先や社員に書類を送付するための切手代は、通信費に該当します。切手代を計上するタイミングは、購入日ではなく実際に使用した日付です。購入から使用するまでの期間は、勘定科目の「貯蔵品」として計上しておきましょう。
他にも、連絡用のハガキは通信費として計上可能ですが、広告や販促活動に使用した場合は「通信費」に該当しないため、用途によって勘定科目を使い分ける必要があります。
メール便や簡易書留でのやり取りは通信手段の1つとして挙げられるため、郵便代は通信費に該当します。速達にかかる料金や配送のための送料も、通信費として計上できます。
ただし、商品の配送ための郵便代などは、通信費に該当しません。この場合「売上に関わるかどうか」という点から判断し「荷重運賃」などの勘定科目を使用します。
会社や店舗に顧客用のテレビを設置している場合、NHKの受信料は通信費として計上できます。ケーブルテレビを導入していれば、使用料金も同様に計上可能です。
また、近年普及している動画配信コンテンツを契約している場合は、サブスクリプション費用も通信費にあたります。
ここでは、仕訳例について以下の4つの通信費を例に解説します。
実際に仕訳する際に、ぜひ参考にしてください。
携帯電話や固定電話の料金を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
携帯電話の料金2万円を事業用の普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
固定電話の料金を計上し、支払いは月末払いである
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
5,000円 |
未払金 |
5,000円 |
インターネット料金を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
インターネット使用料3万円を事業用の普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
30,000円 |
普通預金 |
30,000円 |
インターネットを開通させるための工事費用20,000円を普通預金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
・インターネット使用料が10,000円で、個人用(40%)と業務用(60%)で按分して計上する
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
6,000円 |
普通預金 |
10,000円 |
事業主貸 |
4,000円 |
郵送料を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に書留を郵送するため郵便代800円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
800円 |
現金 |
800円 |
切手代を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に手紙を送るための切手代250円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
250円 |
現金 |
250円 |
・250円の切手をまとめて10枚現金で購入した
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
2,500円 |
現金 |
2,500円 |
・期末時点で未使用の250円切手が6枚ある
借方 |
貸方 |
||
貯蔵品 |
1,500円 |
通信費 |
1,500円 |
郵便代を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・取引先に書留を郵送するため郵便代800円を現金で支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
800円 |
現金 |
800円 |
テレビ受信料を仕訳する際の具体例は、以下のとおりです。
・店舗に設置してあるテレビのNHK受信料1,100円を普通預金から支払った
借方 |
貸方 |
||
通信費 |
1,100円 |
普通預金 |
1,100円 |
通信費として経費計上できるかできないかの基準は、「事業に関連するものかどうか」によります。そのため、使い方によっては経費計上できない場合もあります。その場合は通信費として経費計上できません。
事業に関連するインターネット料金は通信費になります。この場合、月額使用料はもちろん入会費や工事費なども経費として計上できます。また、個人名義のスマホ料金なども事業に関連していれば計上可能です。つまり、ポイントは「事業に関連しているのかどうか」です。
個人名義のスマホ料金も、プライベートで使用した分については当然通信費にはなりません。この場合は後述する按分を参考に、プライベート分と事業分を分けて算出することで、事業分を通信費として計上できます。
また、取引先にFAXを送った場合の用紙代や取引先に送った封筒の料金は経費になりますが、通信費ではありません。通信費として間違われやすい項目ですが、正確には消耗品費として計上します。
通信費を経費として計上する際に、以下の3つについて注意する必要があります。
これらのポイントをしっかり抑えておかないと税務調査を受けた際に、誤申告としてペナルティを課される恐れがあります。それぞれ解説しますので、しっかりと確認しましょう。
通信費に該当する項目は多数ありますが、使用用途によって混同しやすい勘定科目が4つあります。具体例を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
荷重運賃とは、商品の発送・返送に関連する費用を仕訳する際の勘定科目です。取引先との連絡手段として使用した費用は通信費に当たりますが、商品の発送にかかる配送料は「荷重運賃」に該当します。
通信費と荷重運賃を正確に仕訳するポイントは「売上に関係しているか」という点です。連絡であれば通信費、売上に関係する場合は荷重運賃のように使い分けましょう。
租税公課は、収入印紙をはじめとした税金に関する費用を仕訳する際の勘定科目です。そのため、切手と収入印紙は見た目が似ており混同しやすいですが、切手は「通信費」収入印紙は「租税公課」と、それぞれ異なる勘定科目を使用します。
間違えやすい勘定科目の1つですので、注意しましょう。
消耗品費は、使用期間が1年未満の消耗品もしくは、10万円未満の什器備品の代金を仕訳する際の勘定科目です。
郵便を送る際の切手代は通信費ですが、封筒は消耗品費です。一括りに通信費として計上してしまわないよう、気をつけましょう。
広告宣伝費は、企業の商品やサービスを宣伝するために使用した費用を仕訳する際の勘定科目です。
取引先への年賀状や連絡として使用するハガキ代は通信費ですが、広告や宣伝を目的としたダイレクトメール用のハガキは、広告宣伝費に該当します。
通信費に該当するものでも、プライベートで使用した場合は経費計上できません。しかし、事業と兼用しているものであれば、按分をすることで事業分を経費計上できます。例えば、事業と兼用でスマホを使っている場合は、第三者が納得するデータに基づいて使用割合を計算します。そのデータとは通話時間やネット利用量などです。
仮に月額のスマホ代が3万円だとして、使用割合がプライベート用40%・業務用60%であれば、18,000円を通信費として経費計上できます。あくまで、按分の参考にするデータは事業者によって委ねられており正解はありません。そのため、第三者が見ても納得できる按分基準を設定しておくことが大切です。
また、企業で在宅勤務を取り入れている場合の按分は、以下の方法で算出します。
業務のために使用した基本使用料や通信料等=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×(その従業員の1ヶ月の在宅勤務日数÷該当月の日数)×1/2
在宅勤務の際の電話料金やインターネット料金を企業が負担する場合は、上記の計算式を参考に正しく按分しましょう。
大手キャリアでは、携帯電話料金と商品購入などの代金を合算で支払う「キャリア決済」が提供されています。キャリア決済を用いて通信費以外の支払いを行った場合、適切な勘定科目を用いて仕訳する必要があります。
例えばイヤフォンやボールペンなどを、業務で使用するためにキャリア決済で購入した場合、通信費と消耗品費に分けて仕訳が必要です。支払いをまとめていても、使用する目的に分けて仕訳が必要になるため注意しましょう。
通信費は月にどれくらいかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、以下の3つのパターン別に解説します。
単身世帯と法人や個人事業主の通信費について、ご自身の状況を確認するための参考にしてください。
参照元のデータによると、単身世帯の平均的な通信費は19,901円です。近年のインターネットや動画コンテンツの普及により、通信費の割合が高くなっていると考えられます。
また、この通信費のうち携帯電話の通信料金は14,514円となっており、通信費の大部分がスマホ利用によるものです。2023年現在のスマホ端末の個人保有率は96.3%で、今や一人一台スマホを保有する時代であるためです。そのため、家計における通信費はライフラインと同等の費用として考える必要があります。
参考:「家計調査 家計収支編(2023年4~6月計)」総務省統計局
企業の平均的な通信費は、規模や業種によって大きく異なります。従業員にスマホを支給している場合や、取引先への連絡が多い業種であれば、その分通信費の割合も増えます。
おおよそにはなりますが、企業の規模別ごとの平均的な通信費は以下のとおりです。
とくに大手企業になると経費として扱える金額も増えるため、漏れなく計上するようにしましょう。
企業だけでなく、個人事業主も通信費を経費計上できます。スマホ代や固定電話代など、事業に関連していれば当然経費です。企業の場合、法人契約で社員に支給していれば業務専用で利用していると考えられますので、全額を経費計上することが可能です。また、自宅を事務所兼用している個人事業主のスマホ代やインターネット代も経費になります。
ただし、個人事業主の場合に注意したいのが、通信費を「プライベート用と事業用でしっかり分けられるか」です。事業用と兼用しているスマホ代は、そのすべてを経費にすることはできません。使用割合やデータ量に応じて按分することで、おおよその経費を算出します。按分の目安は厳密に定められているわけではありませんが、第三者がみても納得する目安を決めましょう。
例えば、スマホ代でいえば全体から業務に使用した通話料を算出したり、インターネット代でいえば勤務日数や勤務時間から割合を算出したりします。毎日8時間勤務していたとすると1日の1/3を按分として、インターネット代の1/3を経費として計上できると考えられます。個人事業主は発生する通信費が多いため、漏れなく経費に計上できるようにしましょう。
通信費は経費として計上できるものの、できるだけ通信費を抑えることで必要経費を抑えたいと考えることでしょう。とくに個人事業主は事業兼用でスマホを所持する方が多いため、通信費の節約は大きな課題です。全体の通信費を抑えることで全体の経費を抑えることにつながるため、私用の通信費の節約は事業においても影響を及ぼします。
この章では、使用の通信費を節約する方法について、詳しく解説します。
通信費の節約を考える上でやるべきことは、契約プランの確認です。まずは、契約しているキャリアの中で、最適なプランであるかを見直しましょう。従業員のスマホの使用頻度によっては、今よりも安価なプランで十分な可能性があります。企業によっては、契約しているスマホの台数によってビジネス割引が利用できるケースがあるため、キャリアの営業担当者へ相談してみるのもおすすめです。
また、使用していないオプション機能などがついていないかも確認しましょう。契約時に自動的にオプションに加入している場合があり、解約することを忘れているケースがあります。無駄な経費を支払うことになるため、契約プランの最適化と併せて確認しておきましょう。
そもそもスマホを支給していても、従業員が全く使用していないケースがあります。業務内容によって、スマホの必要可否が分かれる場合がありますので、改めてヒアリングやアンケートを実施するというのも有効です。
電話やメールのみでスマホを使用している場合、データ容量が多すぎないかを確認します。パソコンを使用する業務がメインの場合「スマホは1日に数回電話をする程度しか使用していない」ケースがあります。個人で使用するときのように、動画コンテンツを日常的に視聴したりSNSの高頻度で利用することはないので、データ容量を減らして通信費を節約しましょう。
個人事業主であれば、モバイルルーターを活用しスマホ料金とインターネット料金を節約するという方法があります。モバイルルーターであれば月額料金も安く、持ち運びができるメリットもあるため、外出先でインターネットを利用することも可能です。アプリのダウンロードなどは通信料が多くかかりますが、無料Wi-Fiスポットなどを利用することで通信費の節約ができます。
本記事では、通信費について詳しく解説しました。通信費とは、業務する上で通信や連絡に関連する支出のことです。通信費はほとんどの事業者が利用する経費なので、企業はもちろん個人事業主の方も概要を理解しておく必要があります。また、通信費は品目によっては荷重運賃や消耗品費と間違いやすいため、正しく区分できる知識が求められます。
個人事業主においても、とくに自宅を事務所兼用にしている場合、通信費を経費として計上するには利用分の一定割合を按分しなくてはいけません。また、按分の目安は、第三者がみて納得するデータに基づいている必要があります。インターネット社会において、通信費は今後も無くなることのない経費です。通信費を正確に計上し、事業の利益確保を行いましょう。