更新日:2024.12.27
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キャッシュフロー計算書とは、企業の経営成績や財務状況を判断する材料となる重要な会計書類です。しかし、キャッシュフロー計算書の正しい見方や、何が示されているのかを知っている方は少ないのではないでしょうか。
そこで、本記事ではキャッシュフロー計算書の基本的な知識から、ほかの財務諸表との役割の違い、分析方法などを紹介します。経理初心者の方にもわかりやすい内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
キャッシュフロー計算書は以下の3つの区分によって構成されています。
この章では、キャッシュフロー計算書上のそれぞれの区分で、何が示されているのかを解説します。
「営業活動によるキャッシュフロー」では、主に営業活動による現金の動きが表されます。例えば、以下のような取引が該当します。
営業活動によるキャッシュフローは主に会社の本業の資金状況を表すため、プラスである事が望ましいとされています。プラスの場合は、本業でしっかりと利益を出し、会社に現金を残している状態であるため、経営が順調であると判断できるからです。
マイナスの場合は、利益が出ない商品やサービスの販売や、売り上げに対して現金の回収ができていないといった原因が考えられます。この場合、商品の価格の見直しや、本業以外の投資活動で利益を出すなど、対策を練る必要があるでしょう。
「投資活動によるキャッシュフロー」は、会社の成長のためにどれだけ投資できているかを表します。例えば、以下の項目が該当します。
投資活動によるキャッシュフローは、新たな設備購入や有価証券の購入などの投資を行うとマイナスになり、逆に所有する設備や有価証券を売却した際はプラスになるという特徴があります。投資を行えていない企業は現状維持となっているため、企業の成長のためには積極的な投資が必要です。そのため、投資活動によるキャッシュフローがマイナスになっているのは悪いことではありません。
「財務活動によるキャッシュフロー」からは、会社の資金調達の状況が分かります。投資家から出資を受ける場合や、金融機関から借入れを行った場合に、この財務活動によるキャッシュフローに区分されます。該当するのは、例えば以下のような項目です。
財務活動によるキャッシュフローがプラスだと、投資のために出資を受けている状態や、借入れを行っている状態です。マイナスの場合は、借入金の返済を行っている状態だと考えられます。
「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフローの数字がプラスかマイナスかを見ることで、企業の経営状況を8つのパターンに分類できます。以下の表から企業の状態や必要な対応などを確認して、参考にしてみてください。
タイプ |
営業CF |
投資CF |
財務CF |
特長 |
安定型 |
+ |
+ |
+ |
本業で十分に利益が出ているが、設備投資を行い資金調達もしている。将来投資を行うために資金を貯めたい企業が採用する。 |
改善型 |
+ |
+ |
ー |
本業と資産売却で得た資金を返済に回している。不採算事業があったり、事業縮小を図りたい企業が、財務内容改善のために採用する。 |
積極型 |
+ |
ー |
+ |
金融機関から資金調達をして積極的に設備投資をしている。 |
健全型 |
+ |
ー |
ー |
本業で十分に利益を出し、設備投資や借入金返済に当てている。堅実的な企業だと考えられる。 |
要注意型 |
ー |
+ |
+ |
本業の赤字を、資産売却と借入金で賄っている。銀行の融資姿勢次第で深刻な状況に陥る。 |
やや注意型 |
ー |
+ |
ー |
本業が赤字で、資産売却によって借入金を返済している。金融機関からの融資が止まった可能性があり、売却できる資産があるうちに、本業の回復が必須。 |
勝負型 |
ー |
ー |
+ |
本業が赤字だが、借入金によって設備投資を行っている。再建中の会社に見られる。 |
事業検討型 |
ー |
ー |
ー |
本業が赤字だが、設備投資を行い借入金返済も行っている。過去の実績はあるが現在は低迷している企業に多く、改善が必要。 |
キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを把握し、財務状態を分析するために重要な資料です。 「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフローのプラス・マイナスを見ることで、企業の経営状況を8つのパターンに分類できます。
それぞれのタイプの特徴を理解することで、企業の財務状態をより深く分析し、適切な経営判断を行うことができます。
キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを把握し、財務状態を分析するために重要な資料です。 しかし、ただ数字を見るだけでは、その企業の真の姿を捉えることはできません。
効果的にキャッシュフロー計算書を分析し、企業の財務状況を正しく理解するために、以下の7つのポイントに注意しましょう。
営業活動によるキャッシュフローは、企業の本業がどれだけキャッシュを生み出しているかを示す指標です。 プラスであれば、本業で安定して収益を上げていることを意味します。 しかし、マイナスの場合は、販売不振や不良在庫の増加など、収益構造に問題がある可能性があります。 継続的にマイナスになっている場合は、早急な対策が必要です。
投資活動によるキャッシュフローは、将来の収益基盤を築くための設備投資や研究開発費などが反映されます。 成長企業では、積極的に投資を行うため、マイナスになることが多いでしょう。 ただし、設備投資は将来の収益に繋がるものであり、短絡的にマイナスと捉えるべきではありません。 投資の内容や規模、将来性などを考慮して分析する必要があります。
財務活動によるキャッシュフローは、借入金や社債などによる資金調達、株式発行、配当金の支払いなどが反映されます。 資金調達が多い場合はプラス、借入金の返済が多い場合はマイナスとなります。 財務活動への依存度が高すぎると、返済負担が大きくなり、経営の安定性を損なう可能性があります。 資金調達の目的や返済能力などを分析することが重要です。
営業活動、投資活動、財務活動の3つのバランスを総合的に見て、企業の財務状態を判断することが重要です。 例えば、営業活動で生み出したキャッシュを、投資活動に回して事業を拡大し、財務活動で資金調達と返済を適切に行っている状態が理想的です。 3つの活動の相互関係を分析することで、企業の戦略や課題が見えてきます。
過去のキャッシュフロー計算書と比較することで、変化の傾向を把握し、問題点を早期に発見することができます。 例えば、営業活動によるキャッシュフローが減少傾向にある場合は、収益力の低下が懸念されます。 過去のデータと比較分析することで、より深い分析が可能になります。
業界や企業規模によって、キャッシュフローの特徴は異なります。 例えば、製造業は設備投資が多いため、投資活動によるキャッシュフローがマイナスになりやすい傾向があります。 同業他社や類似企業のキャッシュフロー計算書と比較することで、より客観的な分析ができます。
キャッシュフロー計算書だけでなく、損益計算書や貸借対照表と合わせて分析することで、より深く企業の財務状態を理解することができます。 損益計算書では収益性を、貸借対照表では資産と負債の状態を把握することができます。 これらの情報を総合的に分析することで、企業の財務状況を多角的に評価することができます。
キャッシュフロー計算書とは、企業の資金の流れとその根拠を示した会計書類で、「財務三表」の1つです。キャッシュフロー計算書は、損益計算書・貸借対照表の2つの情報に加え、詳細な経営成績や財務状況を把握できます。
キャッシュフロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分に分けられ、それぞれプラスかマイナスかによって、企業の経営状況を分析できます。
キャッシュフロー計算書を作成する主な方法は、直接法と間接法の2つです。直接法は、手間はかかりますがキャッシュの流れを詳細に把握できるというメリットがあります。間接法は、詳しいキャッシュの流れまでは把握できませんが、効率よく作成でき、多くの企業で採用されています。
キャッシュフロー計算書はすべての企業に作成義務はありませんが、企業の経営分析のために重要な書類です。読み方を正しく把握して、経営に役立てましょう。