更新日:2024.09.27
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ペーパーレス化は、単に紙の使用量を減らすだけでなく、業務プロセスのデジタル化や働き方改革にも繋がる重要な取り組みです。しかし、適切な計画と実行がなければ、かえって業務効率を低下させてしまう可能性も否定できません。
この記事では、ペーパーレス化のメリット・デメリット、推進方法、そして導入における注意点などを詳しく解説します。 ペーパーレス化を成功させるための具体的なステップや、起こりうる問題への対策を知ることで、企業の生産性向上と持続可能な発展に貢献できるでしょう。
この記事でわかることとしては以下のとおりです。
ペーパーレス化は、紙を電子化して活用したり保存したりすることです。「ペーパーレス」と呼ばれることもあります。
ビジネスにおけるペーパーレス化とは、紙で作成・保管していた文書や書類、資料などを電子化して、業務の効率化やコスト削減に取り組むことを言います。
ビジネス以外には、スマートフォンやタブレットで閲覧できる電子書籍、コンサートやテーマパークで使える電子チケットなどもペーパーレス化の一部です。
なぜ今多くの企業が、紙媒体から電子化への移行を進めているのでしょうか。ペーパーレス化が進む背景を解説します。
ペーパーレス化が進んでいる背景の一つとして挙げられるのが、政府が力を入れているDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。
DXとはデジタル技術やITテクノロジーを用いて、企業がデジタル時代に即した変革を行うことを指しています。経済産業省が発表した「DXレポート2 中間取りまとめ」の中で、ペーパーレス化は、コロナ禍をきっかけとして企業がすぐに取り組むべきDXに向けたアクションの一つとして掲げられています(※)。
※参考:経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」
働き方改革やコロナ禍の影響で、人々の働き方にはさまざまな変化が起きています。
代表的なのはテレワークの普及です。従業員がそれぞれの自宅やコワーキングスペースなどで働くテレワークにおいて、紙媒体での書類や資料のやり取りは現実的でありません。離れている場所同士でも円滑な業務を行うためには、紙媒体よりもデータ化された書類や資料の方が適しています。
電子帳簿保存法とは、従来紙媒体でしか保存できなかった税務関係帳簿書類の電子保存を認めた法律です。2022年の改正では、保存のための要件が緩和されるとともに、電子取引データのデータ保存が義務化されました(※)。
それまでは、メールなどで受け取ったデータを紙に印刷して保存することが認められていましたが、電子取引によるデータは全て電子データのまま保存しなければならなくなりました。要件緩和により電子保存がしやすくなったことに加え、電子取引を紙で出力することができなくなったことにより、企業のペーパーレス化を後押しする一因となっているでしょう。
電子帳簿保存法の基礎知識や対策に関しては、こちらをご覧ください。
※参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました(P1)」
ペーパーレス化をすることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。6つのメリットをご紹介します。
企業は日々膨大な量の書類を扱っています。紙媒体の書類の場合、保管場所を正確に決めていたとしても、必要な資料を見つけ出すのには時間がかかります。正しい場所に保管されていなかったり、一部の人しか保管場所を知らなかったりするケースもあるかもしれません。
ペーパーレス化をすれば、書類をデータで一括管理することが可能です。必要な書類データを短時間で探せるようになるため、業務効率アップが期待できます。また、書類の郵送や整理にかかる手間を削減できる他、複数人での情報共有もしやすくなります。業務効率が改善されれば、生産性の向上にもつながるでしょう。
書類や資料を紙媒体で作成・管理するには、用紙代やインク代、郵送代、保管代、処分代などさまざまな費用がかかります。1枚当たりでは数円だったとしても、多くの書類や資料を扱うことを考えると、そのコストは軽視できません。
ペーパーレス化を行えば、これまで紙媒体の作成や保管にかかっていた費用を削減できる可能性があります。
紙媒体の書類の場合、紛失や盗難への対策法は限られてしまいます。例えば、保管場所を正確に決めたり、保管するキャビネットに鍵をかけたりなどが挙げられますが、中には十分なセキュリティ対策がとられていないケースもあるでしょう。しかし、書類をデータ化することで、データにパスワードや閲覧権限を設定できる他、閲覧した人をログで管理できるため、情報漏洩への対策を強化できます。
また、紙媒体では破損や劣化により内容が読み取れなくなる可能性もありますが、電子データであれば、万が一パソコンなどのデバイスが壊れてもバックアップがあれば復旧が可能です。
データをクラウドに保存し、オンラインで書類や資料を扱えるようにすれば、多様な働き方にも対応できるようになるでしょう。
オフィスとは別の場所でテレワークをしていても、クラウドにアクセスすることでオフィスにいるのと同じように必要なデータを閲覧・使用できます。承認や決裁もオンラインでできるようにすれば、オフィスに行く必要もなくなり、時間や場所にとらわれない働き方を選択できるようになるでしょう。
紙媒体の書類をデータ化すれば、これまで書類の保管に使っていたスペースが不要になります。
従業員がより働きやすいレイアウトにしたり、休憩スペースを作るなど、空いたスペースを有効活用することが可能です。スペースが不要であればオフィスを縮小することもできるため、固定費の削減につながります。
ペーパーレス化は環境に配慮し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとも言えます。使用する紙の量の削減を推し進めていることをアピールすれば、SGDsに取り組んでいる企業として、企業イメージが良くなることが期待できるでしょう。
顧客や求職者からの信頼を得ることができれば、売上アップや人材確保にもつながる可能性があります。
ペーパーレス化をスムーズに進めるためには、具体的なステップを踏む必要があります。ここでは、3つのステップに分けて解説します。
ペーパーレス化を推進する前に、まずは現状を把握し、具体的な目標を設定することが重要です。そのためには、どのような書類が、どの部署で、どれくらいの量使用されているのかを調査し、紙の使用量が多い部署や書類の種類を特定することで、重点的に取り組むべき領域を明確にしましょう。
また、ペーパーレス化によって達成したい目標(例:コスト削減、業務効率化、環境負荷軽減など)を設定し、目標を数値化することで、進捗状況を把握しやすくします。例えば、「年間の印刷コストを30%削減する」「請求書処理にかかる時間を50%短縮する」といった具体的な目標を設定することが有効です。
現状分析と目標設定に基づいて、適切なシステムを導入し、ペーパーレス化を推進するための環境を整備します。
ペーパーレス化を成功させるためには、社内ルールを策定し、従業員への周知徹底を図ることが不可欠です。
企業にとってメリットの多いペーパーレス化ですが、デメリットもあります。ペーパーレス化をスムーズに導入するには、デメリットを知り、どのような対策を立てるか検討することも大切です。ペーパーレス化の4つのデメリットを解説します。
ペーパーレス化を実施する上では、パソコンやタブレットなど書類や資料を閲覧するためのデバイス、これまで紙媒体だった書類や資料を電子化するツールやシステム、スキャンを行うための機器、データのセキュリティ対策費用などが必要です。
紙媒体の作成や管理にかかるコストが削減できる一方で、まとまった導入コストが必要となるため、電子化への移行に踏み切れない企業も少なくないでしょう。
システム障害が発生した際に、書類や資料を閲覧・使用できなくなるリスクもあります。
インターネット環境や利用しているクラウドなどで問題が発生すると、解決するまで書類や資料を扱えないため、業務が滞ってしまいます。場合によってはデータが消えてしまう可能性もあるでしょう。
データのバックアップを定期的に取り、システム障害時にどのような対応を行うのかを事前に検討しておく必要があります。
閲覧するデバイスによっては、書類や資料が見づらくなってしまう可能性もあります。
特にタブレットやスマートフォンでは、画面のサイズが小さいと書類や資料全体を閲覧できないことがあるでしょう。また紙媒体であれば複数の資料を同時に広げて見ることができますが、データでは同時閲覧できる数に限界があります。
扱う書類や資料の性質によっては、紙媒体の方が適しているケースもあります。全ての書類や資料を電子化するのではなく、状況によって使い分けることも大切です。
ITを活用する上で必要なスキルを意味するITリテラシーは、個人差が大きいです。これまで紙媒体の書類や資料に慣れ親しんできた分、ITリテラシーが十分にない従業員はデータやデバイスの取り扱いに苦戦してしまう可能性もあるでしょう。業務効率化を求めてペーパーレス化を行ったにもかかわらず、逆に業務効率が下がってしまう恐れもあります。
データやデバイスの操作や扱いに関する研修を行うなどし、全ての従業員が対応できる土台作りが必要です。紙の書類や資料をデータ化するためのシステムやツールには、データやデバイスの扱いに慣れていない方でも直感的に使えるものもあるので、採用するシステムやツールの検討も重要になるでしょう。
ペーパーレス化は業務効率化やコスト削減などのメリットがある一方で、適切に進めなければかえって非効率になってしまう可能性も孕んでいます。ここでは、ペーパーレス化で陥りがちな問題点とその具体的な対処法を解説します。
紙媒体であればパラパラとめくって探せた書類も、電子化すると膨大なファイルの中から目的のものを探し出すのが困難になる場合があります。特にファイル名や保存場所が統一されていない場合は、検索に時間がかかり、業務効率が低下する可能性があります。
対処法としては以下のようなものが挙げられます。
ペーパーレス化は、ITシステムに大きく依存するため、システムトラブルが発生すると業務が停止してしまうリスクがあります。特に、サーバーダウンやネットワーク障害などが発生した場合、電子ファイルにアクセスできなくなり、業務に支障をきたす可能性があります。
対処法としては以下のようなものが挙げられます。
ペーパーレス化を進めるには、従業員が新しいシステムやツールを使いこなせるだけのITスキルが必要です。しかし、ITスキルに自信がない従業員にとっては、新しいシステムへの移行が負担となり、かえって業務効率が低下する可能性があります。対処法としては以下のようなものが挙げられます。
本記事ではペーパーレス化の概要や推進されている背景、ペーパーレス化のメリット・デメリットをご紹介しました。紙媒体から電子化への移行はメリットが多いですが、デメリットもあります。導入にあたっては、デメリットをどのようにカバーするか考慮することが重要です。本記事の内容を参考に、自社に合ったペーパーレス化の方針を検討しましょう。
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