更新日:2025.08.12
ー 目次 ー
企業経営において「コスト削減」は、景気や業界動向にかかわらず、常に重要なテーマです。
特に近年は、人件費の上昇やエネルギー価格の高騰、サービス料金の相次ぐ値上げといった要因が重なり、利益が圧迫されやすい状況が続いています。
こうした状況のなかで必要なのが、一時的なコストカットではなく、無理なく、かつ継続的に実行できる"コストの最適化"です。
では実際に、企業はどのような取り組みを行い、どこに課題を感じているのでしょうか。
本記事では、株式会社インボイスが行った「コスト削減に関するアンケート」(対象:425名)の結果をもとに、企業のコスト削減への取り組みの実態を明らかにしていきます。
コスト削減の取り組みを"定期的に"出来ているかの調査では、「出来ている」と答えた企業はわずか9.9%にとどまりました。「割と出来ている」(33.9%)を含めても、全体の半数に満たない結果となりました。
一方、「あまり出来ていない」(29.9%)「全く出来ていない」(9.4%)と答えた企業は合わせて39.3%にのぼり、多くの企業が必要性を感じながらも、十分に実行できていない実態が明らかになりました。
削減に成功した企業のうち、最も多かった削減率は「3〜5%減」(20.1%)、続いて「6〜10%減」(19.3%)となっており、一定の成果をあげている企業がいる一方で「11%以上の削減」と答えた企業は1割程度にとどまりました。
また、「変わらない」(19.5%)、「高くなった」(7.1%)という回答を合わせると3割近くにのぼり、削減に取り組んでいても、効果を実感できていない企業も少なくないことが明らかになりました。
こうした背景には、人件費やエネルギー価格の上昇など、企業努力だけでは吸収しきれない外部要因の影響もあると考えられます。
過去の取り組みの中で、コスト削減の効果が高かった科目として最も多くあげられたのは「接待交際費」(35.7%)でした。次いで「会議費」(26.0%)、「旅費交通費」(26.0%)、「消耗品費」(24.5%)といった、比較的見直しがしやすく変動幅の大きい費目が上位を占めています。
一方で、「人件費」(10.2%)、「水道光熱費」(7.1%)、「設備費」(6.1%)など、固定費やインフラ関連の科目では削減効果が出にくいという結果になりました。
これらの支出は、短期的に手をつけられるものではなく、仕組みの見直しや中長期での改善が求められる領域であるため、なかなか見直しがしづらい科目であることが分かります。
コスト削減に取り組むきっかけとして最も多かったのは、「料金改定などのタイミング」(35.5%)でした。次いで「経営者や上司からの指示」(34.5%)、「予算超過や目標未達の可能性が見えた時」(31.3%)が続き、経営判断や業績管理として動き出すケースが多いことが分かりました。
一方で、「自部門や自身で余地を見出した時」(24.6%)や「社内からの気づき・要望があった時」(21.4%)といった現場からの自発的な動きも一定数ありますが、全体としては「必要に迫られた時に対応する」という受動的なスタイルが多数派である実態が浮き彫りになりました。
コスト削減の実施にかかる期間について尋ねたところ、「3ヶ月程度」(20.5%)や「半年程度」(16.7%)と、比較的短期間で対応している企業が全体の約4割を占めました。
一方で、「1年程度」あるいはそれ以上かかるケースもあり、取り組む内容や規模によっては、中長期的な視点での対応が求められていることも伺えます。
注目すべきなのは、「わからない」と回答した企業が全体の約4割にのぼった点です。計画や体制が十分に整っていない企業が多く、場当たり的な対応にとどまっているケースも想定されます。
今回の調査では、多くの企業がコスト削減の必要性を認識している一方で、実際には「定期的に取り組めていない」「成果が見えにくい」といった課題を抱えている現状が明らかになりました。
削減に着手するきっかけとしては、「料金改定」や「経営指示」など、外部要因や上層部の判断によるものが多く、現場主導で取り組んでいる企業はまだ少数派です。また、コスト削減の取り組み実施までかかる期間が"わからない"と回答した企業が4割を超えるなど、計画性や進捗管理といった体制面にも課題が見受けられました。
コスト削減は、単なる経費の圧縮ではなく、企業の強さや柔軟性を高めるための土台づくりでもあります。今後は、科目の見直しにとどまらず、「どの経費が本当に必要なのか?」という視点で、業務プロセスやコスト構造そのものを見直し、継続的にコスト最適化を図っていく必要があります。
まずは、他社の取り組みや課題を知ることが、今後のコスト削減をスムーズに進めるための第一歩となります。
さらに、
・コスト削減に取り組む際に感じる難しさ
・今後、コスト削減に取り組みたい科目
・企業が"やる価値あり"と判断するコスト削減額は?
など、企業が直面する課題や今後の動向については、調査レポートに記載しております。ぜひ、無料ダウンロードのうえご活用ください。