更新日:2025.06.26
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注文請書をPDFやメールでやり取りする機会が増えるなか、電子化した場合の保存方法や印紙税の取り扱いに悩む事業者は少なくありません。
電子帳簿保存法への対応が制度として義務化されるなかで、多くの事業者が体制整備や制度理解に課題を抱えています。保存要件を満たさないまま運用してしまうと、税務調査での指摘につながる可能性があります。
インボイス制度施行後、電子取引の義務化への関心が高まるなか、注文請書を適切に保存するためには、紙と電子の違いや、電子帳簿保存法に沿った要件を正確に理解しておくことが不可欠です。
本記事では、注文請書が電子帳簿保存法の保存対象となるかについて、電子データ保存時の要件や保存期間、スキャナ保存の注意点を交えて解説します。
電子帳簿保存法では注文請書は「取引関係書類」に分類され、保存義務のある国税関係書類として取り扱われます。これは注文請書が請求書や納品書と同様に、取引の証拠として重要な意味を持つ書類であるためです
電子帳簿保存法では、書類のやり取り方法によって保存方法が異なります。
注文請書をメールやPDFなどでやり取りした場合は「電子取引」に該当し、電子データのままで保存しなければなりません。紙に印刷して保存するだけでは、法令違反となるため注意が必要です。
一方で、注文請書を紙でやり取りした場合は、従来どおりの紙保存または、要件を満たしたスキャナ保存のいずれかを選択できます。ただし、保存期間中は税務調査などに備えて、帳票を速やかに提示できるよう整理・保管しておく必要があります。
注文請書は、受取方法によって保存方法が異なります。PDFやメール添付ファイルなど電子データで受領した場合は電子取引保存で、紙で受領した場合は紙保存またはスキャナ保存での対応が必要です。
受領した方法にあわせた保存をおこなわなければ、電子保存帳簿法に違反していると判断され、青色申告の取り消しや追徴課税がおこなわれるおそれがあるため注意しましょう。
ここでは、電子帳簿保存法における注文書の2つの保存方法を解説します。
注文請書をPDFやメール添付などで受け取った場合は「電子取引」に該当します。この場合、電子帳簿保存法にもとづき電子データのまま保存しなければいけません。
PDFや添付ファイルで受け取った場合は、ファイルをダウンロードし、決められた保存フォルダやシステムに保存します。メールの本文に取引情報がある場合は、メール本文もPDFかやスクリーンショットで保存しましょう。
保存する際は「取引年月日」「金額」「取引先名」などの情報で検索できる状態にしておく必要があります。
注文請書を紙で受け取った場合は、これまでどおり紙のまま保存する方法と、スキャナ保存の2つから選択できます。
電子帳簿保存法に対応させる際は、スキャナ保存を選択しましょう。スキャナ保存をおこなうことで、書類を電子データで保存できるため、保存ミスや管理コストを軽減できます。
しかし、スキャナ保存を選択する場合、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たす必要があるため注意しましょう。
注文請書をPDFやメールなどの電子データで保存する場合、電子帳簿保存法では「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります。これらの要件は、保存されたデータが改ざんされておらず、正しく閲覧・提出できる状態であることを証明するためのものです。
ここでは、注文請書を電子データ保存する場合に満たすべき2つの保存要件について解説します。
電子帳簿保存法では、保存データが改ざんされていないことを担保するために、以下のような対策が求められます。
タイムスタンプの付与 |
・電子データの改ざん防止策 |
訂正削除の履歴管理 |
・データの真実性を確保するため |
電子データは、必要に応じてすぐに内容を見られるようにしておくことが必要です。電子帳簿保存法では、以下の要件を守ることが義務付けられています。
検索機能の確保 |
少なくとも2つ以上の項目(「取引年月日」「金額」「取引先名」など)で検索できる |
即時出力が可能な状態で保存 |
すぐに画面表示またはプリントアウトが可能な状態でデータを提示する |
データの判読性を確保 |
文字が明瞭に判読できる画質・フォーマットである |
注文請書を電子帳簿保存法に対応させるためには、システムの導入や保存期間の把握、スキャナ保存のルールを正しく理解することが重要です。
これらのポイントをおさえることで、法令違反の可能性を回避しながら業務効率化も実現できます。
ここでは、注文請書を電子帳簿保存法に対応させるための3つのポイントを解説します。
注文請書を確実に電子保存するためには、電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスや文書管理システムの導入が効果的です。多くのサービスでは、以下の要件を自動で満たせるよう設計されています。
こうした機能を備えたクラウドサービスを活用することで、電子帳簿保存法に対応した適切な運用体制の構築が可能です。また、自社の業務フローや社内体制に合ったサービスを選ぶことで、導入後も法令に準じた運用が見込めます。
注文請書を電子帳簿保存法に則って保存する場合、事業者区分によって保存期間が定められています。
法人 |
7年 |
青色申告の個人 |
7年 |
白色申告の個人 |
5年 |
保存期間を誤ると、税務調査で必要な書類を提示できず、電子保存法違反と判断されます。また、保存期間の起算日は事業年度の確定申告期限日の翌日とされており、起算日を間違えないよう、注意が必要です。
保存期間は、電子データであっても紙であっても同じです。年度ごとの管理や期日の記録を徹底し、必要に応じてデータを閲覧できるよう管理しましょう。
スキャナ保存は、一定の要件を満たしていなければ法的に無効とされます。おもな保存要件は以下のとおりです。
これらの要件を1つでも欠くと、スキャナ保存は認められません。スキャナ保存は、単なる画像保存やPDF化だけでは要件を満たさないため、国税庁が定めた要件に沿っておこないましょう。
本記事では、注文請書が電子帳簿保存法の保存対象となるかについて、電子データ保存時の要件や保存期間、スキャナ保存の注意点を交えて解説しました。
注文請書は、電子データで受領した場合「電子取引」として取り扱われ、電子帳簿保存法の要件に沿って保存する必要があります。保存方法を誤ると、税務調査時に不備と判断される可能性があるため、正しい対応が求められます。
このように注文請書の保存において、複数の法令や制度が関係しており、単に紙から電子へと移行するだけでは不十分です。法令に基づいた体制整備や、クラウドサービスなどを活用した仕組みづくりにより、コンプライアンスを守りつつ業務の効率化を図ることが重要です。