更新日:2025.04.30
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電子帳簿保存法への対応が進むなかで、PDFファイルの取扱いに苦慮している経理担当者は少なくありません。とくに、「どこまでの加工が許可されて、どのような加工が禁止されているのか」の線引きがわかりにくく、コンプライアンス違反をおそれるあまり、必要な業務効率化ができないという声もあがっています。
PDFファイルの加工は、取引内容の改ざんに当たる変更は禁止される一方で、管理上必要なファイル名の変更やフォルダ分けなどは許可されています。しかし、その境界線が曖昧なため、多くの企業担当者が判断に迷っているのが現状です。
PDFファイルは、適切な方法で管理することで、業務効率化と法令遵守の両立が可能です。また、クラウドサービスやソフトウェアを活用すれば、要件を自動的に満たしながら効率的な業務運営を実現できます。
本記事では、電子帳簿保存法におけるPDFデータの加工可否と保存要件について解説します。
電子帳簿保存法は、事業者が税法で保存を義務付けられている帳簿や書類を電子データとしての保存ルールを定めた法律です。この法律により、従来は紙でしか保存できなかった書類を電子データでの保存が可能になり、保管スペースの削減や検索性の向上などのメリットが生まれました。
電子帳簿保存法には「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引のデータ保存」の3つの区分があります。区分ごとに具体的な要件は異なりますが、一般的には「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たさなければなりません。
電子帳簿保存法への対応で、業務効率化やコスト削減だけではなく、インボイス制度などの他の税制改正にも対応しやすくなるメリットがあります。
電子帳簿保存法におけるPDFデータの加工は、一律に「許可されていない」とは言えず、加工の種類や目的ごとに異なります。
基本的に電子帳簿保存法では、取引内容の真実性の確保が重要な要件です。そのため、金額の変更や日付の改変などの内容を改ざんするような加工は認められていません。一方で、ファイル名の変更やフォルダ分けなどの整理・分類のための加工は認められています。
許可される加工と禁止される加工の例は、以下のとおりです。
許可される加工の例 |
・ファイル名の変更 ・フォルダ分類 ・ファイル形式変換 ・メタデータの追加 |
禁止される加工の例 |
・取引金額の修正 ・取引日付の変更 ・取引内容の追加・削除・修正 ・タイムスタンプ付与後のデータ変更 |
電子帳簿保存法の趣旨では、取引の真実性を損なわない整理・分類目的の加工は許可される一方で、取引内容を変更する加工は禁止されています。
電子帳簿保存法にもとづいてPDFファイルを保存する方法は、そのPDFファイルがどの区分に該当するかで異なります。PDFファイルの入手方法や作成経緯で、適用される保存方法や要件が変わってくるため、自社で取り扱うPDFファイルがどの区分に該当するかを正確に把握することが重要です。
ここでは、電子帳簿保存法にもとづいたPDFファイルの3つの保存方法について解説します。
2024年1月以降、電子データで授受した取引関係書類は、電子保存が義務付けられています。そのため、印刷して紙だけでの保存は認められなくなりました。
以下のPDFファイルは「電子取引」に該当し、電子データとしての保存が義務付けられています。
以下のPDFファイルは「国税関係書類の電磁的記録」に該当し、電子保存は任意です。
これらのPDFファイルは、電子データで保存するか、印刷して紙で保存するかを事業者が選択できます。
紙で受け取った書類をスキャンしてPDFにした場合は「スキャナ保存」に該当するため、電子保存は任意です。ただし、電子保存する場合は法定要件を満たす必要があります。
具体的な法定要件は、以下のとおりです。
電子取引のPDFファイルを保存する場合は、電子帳簿保存法にもとづいた要件を満たす必要があります。要件を満たしていないと青色申告の承認取消しや税務調査の長期化・範囲拡大などにつながるリスクがあります。
ただし、一定の条件を満たす事業者(売上高5,000万円以下の事業者など)は、税務調査時にデータのダウンロード提供ができれば、検索機能の要件の一部または全部が免除されることになりました。
ここでは、電子帳簿保存法にもとづいてPDFファイルを保存する際の要件について解説します。
PDFファイルの保存では、以下のいずれかの方法で、真実性の確保の要件を満たす必要があります。
PDFファイルの保存では、可視性の確保も重要な要件です。具体的には、以下の2つの要素が必要です。
多くのクラウドサービスやソフトウェアが電子帳簿保存法に対応しており、これらの活用で、タイムスタンプの自動付与や検索機能の確保など、法令要件を自動的に満たせます。規模や業種、必要な機能ごとに最適なサービスやソフトウェアは異なるため、自社のニーズに合ったものを選択することが重要です。
おすすめのクラウドサービスやソフトウェアには、以下のようなものがあります。
多くのサービスは無料トライアル期間を設けているため、実際に使用してみて自社の業務フローに合うかを確認するのがおすすめです。
本記事では、電子帳簿保存法におけるPDFデータの加工可否と保存要件について解説しました。
電子帳簿保存法では、PDFの加工は取引内容の真実性を損なわない範囲でのみ許可されています。また、PDFの保存方法は「電子取引」「自社作成書類」「スキャナ保存」の3種類で要件が異なります。
電子帳簿保存法対応のシステムを活用すれば、要件を自動的に満たしながら業務効率化の実現が可能です。自社のニーズに合ったサービスの選択と適切な運用で、法令遵守と業務効率化の両立を目指しましょう。