更新日:2025.07.28
ー 目次 ー
電子帳簿保存法では、2022年1月以降に発生した電子取引の書類はデータで保管するよう義務付けられています。しかし、企業によってはコストや運用体制の問題から、すぐに対応できない場面も少なくありません。
電子帳簿保存法では、このような企業に配慮し、経過措置が設けられています。
経過措置には適用条件や期間が決められているため、理解しないまま利用しようとした場合、経過措置が認められず、電子帳簿保存法違反とみなされるおそれがあるでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法の経過措置について、宥恕措置や猶予措置の違いや条件も交えて解説します。
電子帳簿保存法の経過措置は、一般的に、2022年に決定された電子取引の書類をデータで保存するルールを指します。この経過措置は、企業の多くが電子保存体制を整備できていないことへの懸念から設けられました。
電子帳簿保存法の経過措置は、「宥恕措置」と「猶予措置」の2つが挙げられます。宥恕措置は、2022年1月から2023年12月までの期間が対象です。一方で猶予措置は、2024年1月からの完全義務化に対応できない企業へ向けた経過措置として施行されました。
「宥恕措置」と「猶予措置」はどちらも電子帳簿保存法に対する経過措置ですが、それぞれ期間や条件に違いがあります。
内容を混同したまま対応を進めてしまうと、経過措置が適用されず、電子帳簿保存法違反と判断される可能性があるため注意しましょう。
宥恕措置と猶予措置の違いは、下記のとおりです。
適用期間 |
条件 |
申請 |
|
宥恕措置 |
2022年1月1日〜2023年12月31日 |
・保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存できなかったことについて、税務署長が認めた場合 ・税務調査等の際に、電子取引データの印刷した書面の提示・提出が可能 |
不要 |
猶予措置 |
2024年1月〜終了未定 |
・保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存できなかったことについて、税務署長が認めた場合 ・税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードや印刷した書面の提示・提出が可能 |
不要 |
経過措置を活用する際は、対象や満たすべき保存要件にまで理解を深めておくことで、今後電子帳簿保存法に対応しやすくなります。制度を利用している場合も、経過措置の終了に慌てることがないよう、早めに体制を整えなければなりません。
ここでは、電子帳簿保存法の経過措置を活用する際のポイントを解説します。
電子帳簿保存法において、経過措置の対象となるのは「電子取引」のみです。
電子取引とは、チャットやメールなどのインターネットを使用してデータの送受信をおこなう取引を指します。このことから、郵送や手渡しのように、インターネットを使用しない場面で受領した書類は対象にはなりません。
近年は電子取引にあてはまる方法で書類を送信・受領する場面が多いため、企業によってはほとんどの取引が対象になることもあるでしょう。
電子帳簿保存法では、電子取引による書類を保存する際の要件が定められています。
保存要件は、おおまかに「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つにわかれています。
真実性の確保は、タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴が残るシステムの利用など、データが変更されていないことを証明することが目的です。一方で、可視性の確保には検索機能や画面表示についての要件があり、税務調査時にスムーズな提出ができるための項目が定められています。
経過措置中でも保存要件のすべてを免除されるのではなく、税務調査時にデータを提出する準備や取引内容の確認できるデータの保存が求められています。
経過措置はあくまで即時の移行が難しい企業へ向けた救済措置のため、活用している企業も将来的には電子帳簿保存法への完全対応が求められます。
現在は猶予措置のもとで一部条件が緩和されているとはいえ、対応の準備を怠れば、突然の税務調査に対処できず、罰則の対象となるおそれがあります。
このような事態を避けるために、経過措置を活用している企業は、速やかに電子帳簿保存法への体制を整えなければなりません。
電子帳簿保存法の経過措置は、2025年現在いつ終了されるかは未定です。しかし、終了が決まってから準備を進めるのでは、社内の業務フローの決定や必要なシステムの用意が間に合わない可能性があるため、早めに体制を整えましょう。
ここでは、電子帳簿保存法の経過措置中に企業がするべき準備を解説します。
電子帳簿保存法に対応するには、自社がデータで保管するべき書類の種類を把握しましょう。請求書や領収書、契約書、見積書など、日常業務で扱う書類のなかで、電子取引に該当し保存義務があるものを1つずつ洗い出します。
保存対象が明確でなければ、対応漏れや不必要な作業が発生するリスクがあります。書類の整理をおこなうことで、必要な機能や容量を備えたシステム選定にも役立ち、今後の業務フローを考える際にも役立つでしょう。
電子帳簿保存法では、「真実性の確保」と「可視性の確保」が保存要件として定められています。電子帳簿保存法に対応した運用体制を考える際は、保存要件を満たせるように考えなければなりません。
たとえば、タイムスタンプの運用ルールや、訂正・削除履歴を記録できる仕組みを準備する必要があります。また、承認フローや閲覧権限の管理など、人の手による運用面の整備も欠かせません。
システム導入以外にも、運用を担う現場スタッフを決定することで、電子帳簿保存法に対応した人員配備が叶います。
電子帳簿保存法の保存要件に対応する際は、適切な機能を備えたシステムの導入が必要です。たとえば、アップロードした書類へのタイムスタンプの自動付与、要件を満たした検索機能、変更履歴の管理機能などが欠かせません。
あわせて、電子帳簿保存法に対応する際の業務フローやルールをまとめた「事務処理規程」も用意しましょう。誰が、いつ、どのように書類を保存・修正・閲覧するかを明確にすることで、ミスを防げます。
保存要件に対応できるシステムを活用すれば、自社でおこなう作業が少なくなり、電子帳簿保存法への対応がしやすくなります。
電子帳簿保存法に対応したシステムで書類を発行する際は、OneVoice明細を活用しましょう。
OneVoice明細では請求書や納品書など、取引で必要な帳票の多くを発行できます。受領方法は取引先が決定できるため、自社の業務フローを変える必要はありません。
導入前には無料のトライアル期間が設けられており、自社の既存システムや会計ソフトとの相性も見極められ、納得したうえで使用を開始できるでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法の経過措置について、宥恕措置や猶予措置の違いや条件も交えて解説しました。
電子帳簿保存法では、宥恕措置と猶予措置という経過措置により、新制度への移行が難しい企業にも一定の猶予が与えられています。しかし、適用対象や保存要件を知らずに運用を続けると、電子保存義務への未対応や税務調査時に提出ができず、電子帳簿保存法違反とみなされる可能性があります。
このような事態を避けるためにも、経過措置期間中であっても、対象書類の整理や保存体制の整備を進めることで猶予措置が終了になっても焦らずに移行できるでしょう。
電子帳簿保存法への対応を進めるために何をすれば良いのか悩む際は、本記事を参考に対応を進めましょう。