更新日:2025.07.28
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電子帳簿保存法に関して、特定の条件下で非課税法人も対象となるケースがあり、判断を誤ると、税務調査で指摘を受けて追徴課税や重加算税などの税法上のペナルティが科されるおそれがあります。
とくに、2024年1月からは電子取引のデータ保存が義務化されており、対象となる非課税法人では適切な対応が求められています。電子帳簿保存法に適切に対応するためには、自身の所属する法人が対象かどうかを正しく把握することが重要です。
本記事では、電子帳簿保存法における非課税法人の適用範囲について、対応要件とあわせて解説します。
電子帳簿保存法は、国税関係書類を電子データで保存する方法を定めた法律です。この法律では「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの保存区分で、それぞれ保存する際の要件を定めています。
とくに、2024年1月1日からは、電子取引のデータのままの保存が義務化されました。電子取引で授受された書類は、原則紙に印刷しての保存が禁止されており、電子データのままの保存が義務付けられています。
電子取引のデータ保存は原則すべての事業者に義務づけられている一方で、適切に対応すればペーパーレス化の促進や業務の効率化、テレワークの推進などのメリットが得られます。
電子帳簿保存法の対象は、所得税や法人税の保存義務者であり、これは税金を納めているかどうかとは直接関係ありません。したがって、非課税法人でも電子帳簿保存法の対象となる場合があります。
自身の所属する法人が電子帳簿保存法の対象かどうか把握していないと、場合によっては追徴課税や重加算税などの税法上のペナルティが科されるおそれがあるため、注意が必要です。
ここでは、非課税法人でも電子帳簿保存法の対象となる3つのパターンについて解説します。
2024年1月1日から、電子取引で授受された書類は電子データのままの保存が必須です。
ただし、電子帳簿保存法の対象は「法人税法上の帳簿書類の保存義務がある書類」に限られます。つまり、非課税法人であっても、法人税法上保存義務がある書類を電子取引している場合は、電子帳簿保存法の対象となります。
一方で、法人税法上保存が必要ない書類であれば、電子取引をおこなっていても電子帳簿保存法の保存義務はありません。ただし、NPO法や一般法人法、公益法人法などで保存を求められる可能性があるため、不安な場合は税理士や公認会計士などの専門家に相談するのがおすすめです。
収益事業をおこなっている非課税法人は、法人税の申告義務があるため、電子帳簿保存法の対象に該当します。
NPO法人・公益法人・宗教法人・学校法人などでも収益事業があれば電子帳簿保存法の対象です。一方で、収益事業をおこなっておらず、法人税法上の帳簿書類の保存義務のない非課税法人は対象にはなりません。
ただし、収益事業の判断は複雑なケースも多いため、具体的な事業内容は税理士や所轄税務署に確認・相談するのが望ましいでしょう。
認定NPO法人の場合は、法人税の納税義務がなくても、電子帳簿保存法への対応が必須です。
NPO法の規定により、認定NPO法人は青色申告法人の規定にもとづいて帳簿書類を保存することが認定要件となっています。国税庁によると、青色申告法人である公益法人などは、収益事業を含むすべての事業の取引に関する帳簿書類を保存する必要があり、電子取引の取引情報も保存しなければなりません(※)。
そのため、電子帳簿保存法への対応は、法人の規模や実情にあわせた選択が重要です。
(※)参考:国税庁 「収益事業を行う青色申告法人である公益法人等の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について」
電子帳簿保存法では各保存区分ごとに異なる要件が求められており、非課税法人が対象の場合も、これらの要件を満たした適切な保存をおこなう必要があります。
要件への対応では、データ改ざん防止や検索機能の確保など、技術的な措置が求められる点にも注意が必要です。また、法人の規模や取引状況ごとに利用できる緩和措置もあるため、自身が所属する法人に適した対応方法の選択が重要です。
ここでは、電子帳簿保存法対象の非課税法人が必須で対応するべき要件について解説します。
真実性の確保は、データの改ざん・削除防止のための要件です。この要件を満たすためには、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
これらの措置を講じることで、電子データの信頼性を担保できます。
可視性の確保は、保存したデータをいつでも確認できるようにするための要件です。この要件を満たすためには、以下の両方の措置を講じる必要があります。
これらの措置を講じることで、税務調査の際にもスムーズな対応が可能です。
電子取引の保存要件には、一定の条件下で適用される緩和措置が設けられています。前々事業年度の売上高が5,000万円以下の場合や、電子取引のデータをプリントアウトして「日付」および「取引先」ごとに整理されている場合には、検索機能の確保が不要です。
また、人手不足やシステム整備の資金不足など、電子取引のデータ保存ができない「相当の理由」があると所轄税務署長が認めた場合は、電子取引の保存要件のすべてに措置が設けられます。
なお、いずれの場合も、税務調査の際にデータのダウンロードの求めや、プリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じられるようにしておく必要があります。さらに、電子データの保存義務は変わらないため、電子データ自体は消さずに保存しておかなければならない点に注意が必要です。
非課税法人が電子帳簿保存法に対応できていない場合は、サービスやシステムの導入がおすすめです。導入により、法令遵守や罰則を回避できるとともに、データの一元管理や自動化が可能になり、業務効率化につながります。
法令遵守を確保しつつ、業務効率を向上させるためにも、早めに導入の対応を検討するのがおすすめです。
ここでは、電子帳簿保存法に対応できる代表的なサービス・システムについて解説します。
OneVoice明細は、帳票の受取・発行が簡単におこなえるクラウド型システムで、請求書の発行業務を90%軽減できます。請求書や納品書、支払明細などのさまざまな帳票に対応しており、現在の帳票のレイアウトをそのまま使用できる点が特徴です。
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電子帳簿保存法に対応しており、優良な電子帳簿として認められているため、法令遵守の観点からも安心して利用可能です。
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電子帳簿保存法に準拠しており、データの自動取込や仕訳が可能なため、効率的な運用が実現できます。
本記事では、電子帳簿保存法における非課税法人の適用範囲について、対応要件とあわせて解説しました。
非課税法人でも電子取引・収益事業・認定NPO法人の3パターンが電子帳簿保存法の対象です。対象となる場合は真実性の確保と可視性の確保の2つの要件への対応が必須で、適切に保存されていないと税務調査で指摘を受け、青色申告の承認取り消しや追徴課税のリスクがあります。
また、電子取引には緩和措置があるため、段階的な対応も可能ですが、自社での対応が困難な場合は、専門的なサービス・システムの導入で効率的に法的要件を満たせます。適切な対応により法的リスクを回避し、業務効率化も同時に実現しましょう。