更新日:2025.06.26
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2024年1月からの電子取引データ保存の完全義務化により、対応に悩んでいる事業者は少なくありません。電子メールで受け取った請求書PDFや、ECサイトからダウンロードした領収書など、日常的にやり取りされる電子データの保存方法が大きく変わったことで、多くの企業が対応を迫られています。
しかし、適切な電子帳簿保存法対応システムの導入は、法改正への確実な対応だけではなく、経理業務の劇的な効率化とコスト削減の実現が可能です。システムの導入で紙書類の管理に費やしていた時間や保管スペースから解放され、より戦略的な業務に注力できます。
本記事では、電子帳簿保存法対応のシステムについて、導入するメリットや選定ポイントもあわせて解説します。
電子帳簿保存法対応システムは、2024年1月1日から完全義務化された電子取引データの保存要件に対応しているシステムです。専門知識がない方でも法律に則ってデータを保存できるよう設計されています。
電子帳簿保存法対応システムのおもな機能は、以下のとおりです。
これらの機能により、電子帳簿保存法が求める重要な要件を満たすことが可能です。
電子帳簿保存法への対応は法令に沿った適切な事業運営の実現ができると同時に、業務効率化や生産性の向上といったメリットが得られます。とくに、中小企業では、限られた人的リソースを有効活用できるようになり、本来注力すべき経営戦略や顧客対応により多くの時間を割くことが可能です。
このようなことから、電子帳簿保存法にまだ対応できていない場合には、システムを導入するメリットに目を向けてみましょう。
ここでは、電子帳簿保存法対応システムを導入する4つのメリットについて解説します。
電子帳簿保存法対応のシステムを導入すれば、紙の書類のファイリングや封入・封緘、郵送といった手作業が不要になり、経理業務の負担の大幅な軽減が可能です。書類を探す時間が大幅に短縮されて必要な情報に瞬時にアクセスできることで、業務スピードが格段に向上します。
さらに、システムと経費精算システムなどを連携させれば、自宅などオフィス外からでも作業が可能になり、脱ハンコやテレワーク導入を促進できます。
紙ベースの書類保存にかかる印紙代・印刷代・インク代・保管用ファイル代・郵送費などのコストの削減が可能です。とくに契約書の収入印紙代の削減は、取引額が大きい企業ほど大きなメリットです。
また、物理的な書類の保管スペースが不要になることで、オフィス賃料や倉庫費用などのコストが削減できます。
電子帳簿保存法対応のシステムを利用して書類を電子データ化し、クラウド上で保存することで、閲覧制限の設定やデータの暗号化、不正アクセスの検知など、紙ベースでは難しい高度なセキュリティ対策が可能です。また、アクセスログの記録により、誰がいつどの書類を閲覧したかも把握できます。
さらに、クラウドサービスなどでバックアップを適切に取ることで、火災や水害などの災害リスクを大幅に低減し、安全に保存できます。
書類の電子化でオフィスに出社せずとも経理業務を遂行できるようになり、多様な働き方への対応が可能です。育児や介護などの事情を抱える従業員も継続して働けるようになり、人材の定着率向上にも寄与します。
さらに、電子帳簿保存法対応は、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として位置づけられます。
電子帳簿保存法対応システムは提供する会社ごとに、サービス内容や対応している機能が異なります。たとえば、画像からテキストデータに変換できるOCR機能や、改ざん防止のためのタイムスタンプ機能、また必要な書類をすばやく見つけられる検索機能などがシステムに搭載されています。
ただ、電子帳簿保存法対応のシステムを選ぶ際には、自社に最適なシステムを選ぶことが成功の鍵といえるでしょう。
ここでは、電子帳簿保存法対応システムを選ぶ際の5つのポイントについて解説します。
まず、自社の経理業務の具体的な課題を洗い出す必要があります。請求書処理に時間がかかる、領収書の紛失が多い、保管スペースが不足しているなど、現状の問題点を明確にすることが重要です。
次に、どの業務を、どの程度効率化したいのか、具体的な目標を明確にします。たとえば「請求書処理時間を20%削減」「ペーパーレス化率80%達成」など、数値目標の設定で効果測定が可能です。
システムが対応できる書類の種類や、電帳法のどの保存区分に対応しているかを確認します。請求書・領収書・契約書・見積書など、自社で扱う書類がすべて対応しているか確認しましょう。
紙の書類を多く扱う場合はOCR機能やスキャン機能が充実しているか、電子取引がメインの場合はタイムスタンプ付与や訂正・削除履歴管理機能が重要です。とくにOCR機能の精度は業務効率に直結するため、実際の書類でテストすることがおすすめです。
すでに会計システムや経費精算システムなどを導入している場合、電子帳簿保存システムがそれらと連携できるかどうかが重要なポイントです。システム間の連携がスムーズでないと、かえって業務が複雑化する可能性があります。
リアルタイムでデータ連携が可能な「Web APIでの直接連携」と、汎用性の高い「CSVファイル経由」の2つの連携方法があります。
システムの料金プランは、サービスごとに「月額固定制」や「従量課金制(利用ユーザー数や書類数に応じた変動制)」などさまざまあります。自社の利用規模や成長予測にもとづいた最適な料金プランの選択が重要です。
初期導入費用だけではなく、月額利用料やオプション費用、サポート費用など、長期的な運用にかかる総コストを試算し、自社の予算に見合ったプランを選びましょう。
導入したシステムが従業員にとって使いやすいかどうかは、定着率に直結する重要な要素です。画面の見やすさや直感的な操作性、ボタンの分かりやすさなどを確認し、ITに不慣れな従業員でも使いこなせるシステムを選びましょう。
無料トライアルがあれば、実際に試してみる方法がおすすめです。
電子帳簿保存法に対応するシステムには、請求書管理に特化したものや、経費精算と連携できるもの、会計ソフトと一体化したものなど、さまざまなタイプがあります。
これらはそれぞれ異なる強みを持っているため、選ぶ際は自社の業種や処理する書類の種類、既存システムとの連携が可能かなどを考慮することが重要です。
ここでは、おすすめの電子帳簿保存法対応システム5つについて解説します。
OneVoice公共は、厳格なセキュリティと高い信頼性が求められる公共機関での利用を想定したシステムです。
紙文書の電子化・電子データの長期保存・検索機能・アクセス権限管理など、公共機関特有の要件に対応した機能が充実しています。民間企業でも高いセキュリティレベルを求める場合におすすめです。
invox電子帳簿保存は、あらゆる国税関係書類の電子保存に対応する文書管理システムです。AI OCR・オペレーター入力・セルフ入力の3種類のデータ化方法を選択できて、高精度なデータ化が可能です。
月額契約で始めやすく、コストパフォーマンスの高さがユーザーから評価されています。
Bill Oneは、請求書の受領・発行、データ化、保管、承認フローの一元管理に特化したシステムです。あらゆる形式の請求書をクラウド上で管理できる柔軟性が特徴です。
AI-OCRとオペレーターによる99.9%の高精度なデータ化が強みで、インボイス制度への対応も同時におこなえます。
楽楽精算は従業員の経費精算業務を効率化し、領収書やレシートの電子保存を確実におこなうためのシステムです。スマートフォンアプリで領収書を撮影するだけで、AI-OCRが自動で読み取り、データ化・保存が可能です。
豊富な導入実績と高いサポート満足度も特徴で、多くの企業から支持されています。
マネーフォワード クラウド会計は仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿、決算関係書類を電子的に作成・保存するのに適した会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードとの連携による自動仕訳機能が充実しています。
経理業務の効率化に大きく貢献し、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。
本記事では、電子帳簿保存法対応のシステムについて、導入するメリットや選定ポイントもあわせて解説しました。
電子帳簿保存法上の電子取引データ保存の完全義務化は単なる規制ではなく、企業のデジタル化を加速させて、業務効率化やコスト削減を実現する絶好の機会でもあります。
電子帳簿保存法対応システムは、複雑な法的要件をクリアし、データの真実性と可視性を確保するための強力なツールです。適切なシステムを選定して計画的に導入を進めることで、経理部門の負担軽減だけではなく、企業全体の生産性向上にもつながります。
この機会を活かして電子帳簿保存法対応システムを導入することで、自社の企業価値の向上へとつなげていきましょう。