更新日:2025.06.26
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電子帳簿保存法は、国税関係書類を電子データとして保存するためのルールを定めた法律です。国税関係書類は法律で一定期間の保存が義務付けられており、書類の種類や事業者の形態によって保存期間が異なります。
電子帳簿保存法によって電子化した書類にも適用され、国税関係書類の保存期間を守らない場合は、罰則が科せられるおそれがあります。罰則を科せられないためには、電子帳簿保存法の内容とあわせて、書類の保存期間や保存方法を理解することが重要です。
本記事では、電子帳簿保存法の保存期間について、対象となる書類の種類や保存方法を交えて解説します。
電子帳簿保存法の保存期間には、事業者の形態によって5年、7年、10年の3種類があります。電子帳簿保存法に対応する事業者は、自身の事業形態にあわせた保存期間を守らなければなりません。
国税関係書類を誤った期間で保存すると、罰則が科せられるおそれがあるため注意してください。
ここでは、法人・個人事業主別に電子帳簿保存法の保存期間を解説します。
法人の場合は、欠損金の繰越控除を受けているかどうかで国税関係書類の保存期間が異なります。欠損金の繰越控除とは、税務上の欠損金を次の事業年度に繰り越して節税する仕組みのことです。
欠損金の繰越控除を受けていない場合は、基本的に7年間の保存が必要です。
一方、欠損金の繰越控除を受けている場合は、対象の書類を10年間保存しなければなりません。
また、電子帳簿保存法に対応する際は、保存期間の起算点を理解することも重要です。一般的に、保存期間の起算点とは「事業年度終了日の翌日から2か月を経過した日」を指すため、しっかり覚えておきましょう。
個人事業主が白色申告をおこなっている場合、法定帳簿は7年間、それ以外の帳簿書類は5年間の保存が必要です。
対して、青色申告をおこなっている場合は帳簿や決算関係書類、現金預金取引等関係書類は7年間、それ以外の取引関係書類は5年間保存しなければなりません。
また、例外として課税売上高が1,000万円以上の課税事業者は、個人事業主であっても請求書や領収書などの書類を7年間保存することが求められます。
個人事業主の場合は最長の保存期間が7年間のため、白色申告・青色申告を問わず、7年間の保存と覚えておくことで保存期間を誤るリスクを低減できます。
紙の書類をスキャンして保存する場合、以前は原本を1年間保存することが求められていました。
しかし、電子帳簿保存法の改正によって、2022年1月1日以降に保存する国税関係書類に関しては、スキャン後に原本の破棄が可能です。
また、紙の書類をスキャンして保存する場合は、タイムスタンプの付与が必要であるかを確認しなければなりません。データの訂正削除の履歴が残るシステムを利用するのであれば、タイムスタンプは不要です。
一方、訂正削除の履歴が残らない場合は、タイムスタンプの付与によって書類の真実性を確保することが求められます。
くわえて、2024年1月1日以降はスキャナ保存に関して以下が変更されました。
新ルールで適切に対応するために、変更点を把握しておきましょう。
電子帳簿保存法の対象となる書類は、事業をおこなううえで発行・受領する機会が必ずあります。
対象となる書類を適切な期間保存していなければ、罰則が科せられる可能性があります。電子帳簿保存法を遵守して適切に保存するために、取り扱う書類がどのような種類に分類されるのかを確実に把握しておきましょう。
ここでは、電子帳簿保存法の対象となる3種類の書類を解説します。
国税関係帳簿は、法人税法や所得税法によって保存が義務づけられている帳簿類です。主な国税関係帳簿の例には以下があります。
上記の書類は、電子帳簿保存法において電子帳簿等保存の区分に該当します。そのため、事業者が会計システムを利用して書類を作成した場合、一定の要件を満たすことで電子データとしての保存が可能です。
国税関係書類は、「決算関係書類」「取引関係書類」の2種類に分けられます。おもな決算関係書類の例は以下のとおりです。
これらの書類は国税関係帳簿と同様に、一定の条件を満たすことにより電子データとして保存できます。
また、おもな取引関係書類の例は以下のとおりです。
上記の書類は取引先から受領したものだけでなく、自社で発行したものの控えも電子帳簿保存法の対象となります。また、スマートフォンやスキャナで読み取ることで、電子データとしての保存が可能です。
メールやダウンロードなどの電子取引で受領した書類は、電子取引データの対象となります。おもな電子取引データの例は以下のとおりです。
上記は国税関係書類の取引関係書類と同じですが、受領方法が電子取引である点に注意が必要です。また、2024年1月1日以降に電子取引において受領した書類は、すべて電子データのまま保存しなければなりません。
電子帳簿保存法に対応する際は、書類の形式によって適切な保存方法が異なります。
保存方法を誤ると、適切な帳簿・書類の保存違反とみなされ、罰則が科せられる場合があります。そのため、発行・受領した書類の形式ごとに、保存方法を理解することが重要です。
ここでは、形式別に電子帳簿保存法に対応した書類の保存方法を解説します。
2024年1月1日に電子帳簿保存法が本格施行されたことで、すべての事業者は電子取引によって受領した書類を電子データのまま保存することが義務化されました。そのため、従来のように書類を紙に印刷して保存することはできません。
電子取引の対象となるのは以下のとおりです。
電子取引に関する保存要件が定められているため、要件を満たしたうえで保存することが求められます。
ペーパーレス化が推進されていますが、請求書や領収書などの書類を紙で受領する機会は少なくありません。紙で受領した書類を保存する場合は、従来どおり紙のまま保存するか、スキャナ保存によって電子化するかを選択できます。
ただし、スキャナ保存を選択する場合は、電子帳簿保存法で定められた要件を満たす必要があります。2022年1月1日に電子帳簿保存法が改正された際に要件が緩和されており、以前よりスキャナ保存に対応しやすくなりました。
しかし、要件を満たさずにスキャナ保存した場合は、罰則が科されるおそれがあるため注意してください。
最後に、電子帳簿保存法の保存期間に関するよくある質問を紹介します。
電子帳簿保存法の保存期間は、事業年度終了日の翌日から2か月を経過した日を起算日とします。
また、法人が欠損金の繰越控除を受ける場合の保存期間は10年間です。そのため、事業年度の開始日に書類を受領した場合は、最長で11年2か月間の保存が求められます。
法人税法において、欠損金の繰越控除を受ける場合は帳簿と決算関係書類、取引関係書類を10年間保存する必要があります。
また、会社法においては、帳簿と決算関係書類が10年間の保存対象です。
本記事では、電子帳簿保存法の保存期間について、対象となる書類の種類や保存方法を交えて解説しました。
電子帳簿保存法における書類の保存期間は、法人・個人事業主のどちらかによって異なります。法人の場合は基本7年間で、最長10年間の保存が必要です。
一方、個人事業主の場合は書類の種類によって5年間または7年間の保存期間が定められています。
また、電子帳簿保存法の保存対象となる書類は3種類あり、それぞれ保存方法が異なります。保存期間や保存方法を誤ると、罰則を科されるおそれがあるため、しっかり理解したうえで適切に取り扱うことが重要です。